2007年07月21日

吉田和男(2001.10)『日本経済再建「国民の痛み」はどうなる』(講談社+α新書)講談社

 乙が読んだ本です。
http://palcomhk.blog79.fc2.com/blog-entry-251.html
で PALCOM さんに教えていただいて、この本を読むことにしました。
 内容ですが、日本の財政破綻について、まじめに議論しています。いくつかの条件でシミュレーションをして破綻の時期を推定しており、議論は納得できます。

第1章 財政破綻に向かう日本
 今のままでは日本は財政破綻に向かわざるを得ないという警告の章です。
第2章 「まず景気対策を」の嘘
 宮沢内閣での1992年の10兆円の景気対策も、細川内閣による1993年の補正予算15兆円の対策も、その後の小渕内閣の減税と何十兆円もの景気対策も功を奏しなかったことから、この政策が間違いであったことを論じています。
第3章 景気対策はなぜ役に立たなかったのか
 いろいろ重要な議論が展開されますが、結論は p.121 でしょう。公共投資でも景気が回復しないのは、日本の経済システムに問題があるからだというわけです。不良債権問題や過剰投資の償却促進などをもっと前倒しで行うべきだったというわけです。
第4章 日本経済「三つのシナリオ」
 この章で、「破綻ケース」、「歳出削減ケース」、「増税ケース」の三つについてシミュレーションしています。p.143 のグラフによれば、現状のままなら 2020 年ころに日本経済は破綻するとしています。
 ただし、p.142 で、2020 年度には日本経済がなくなってしまう、ついにゼロとなってしまうと述べていますが、これは言い過ぎではないでしょうか。p.143 のグラフを見ると、2020 年でも、実質 GDP は 400 兆円あることになっています。もしかして、吉田氏がグラフを読み間違えたのではないかと思いました。(乙が間違っていたらごめんなさい。)
 p.149 では、「人々が財政問題に気づいたときには、すでに手を打つには遅すぎるわけで、破綻に向かって転げ落ちるのを見守るしかない。」と述べ、人々の認識の遅れを問題にしています。きっとそうでしょう。
 では、そのとき、どんなことが起こるのでしょうか。
 p.150 では、人々が破綻を先読みして海外投資を行うようになること、そして、金利上昇、為替レートの下落が生じるとしています。まずは、為替レート、次が金利上昇、そうして財政破綻という順番だそうです。
 こんな話を聞くと、最近の円安が不安になってきます。海外投資の隆盛もこういう大きな文脈でとらえる必要があるのかもしれません。
第5章 サラリーマンの生活はどうなる
 p.162 財政破綻で賃金が低下し、p.166 生活水準が切り下げられると予想しています。厳しい覚悟が必要なようです。
第6章 これから政治がやるべきこと
 p.202 「日本のように、高度な消費生活を前提とした場合でも、偏った資源配分を10年も続けると、これがもたらす問題はどうにもならないものになる。」というわけで、ばかげた政策を見直そうと主張しています。
 吉田氏は、増税と歳出削減しかないと考えているようで、それは当然ですが、p.204 には、恐い言葉が書いてあります。「増税と歳出削減を組み合わせても、現在の制度を前提とすれば、とても実行可能な政策を提言できなくなっている。」というのです。うーん。日本の破綻は避けられないのでしょうか。
 pp.214-215 に、乙が一番感心したことが書いてあります。「日本の財政は累積赤字の問題で、ほとんど最終的な段階にまで来てしまった。政治家の仕事は、現在を犠牲にしてまでも将来の日本国民を守ることにあるはずなのに、将来を犠牲にして、今日の人気取りを行うという姿を見せている。これでは本末転倒である。【中略】選挙で落ちることを覚悟してでも日本を救わなければ、政治家になる意味はない。」何と明解な言葉でしょう。今の政治家に聞かせてやりたい一言です。おりしも参議院選挙の時期ですが、消費税を上げるといったのいわないのと低次元なレベルの応酬を見ていると、政治家のあり方が根本的に間違っているんじゃないかと思えてきます。
補章 供給側モデルによるシミュレーション
 残念ながら、この章は乙には理解不可能です。もう少し数字と数式を出して説明してもらえればいいのですが、新書を意識したのか、言葉による説明だけになっており、それでは、このシミュレーションを自分で計算することができません。自分で計算できるようでないと、説明になっていません。まあ、乙の能力が低すぎるのかもしれません。その場合は、シミュレーションの計算については、吉田氏を信じるしかないのでしょうね。

 この本の出版時期は 2001 年 10 月です。6年も前の本なんです。この6年間、日本は財政の面で何かが変わったのでしょうか。乙はそうは思いません。国の借金は積み上がるばかりです。
2007.7.16 http://otsu.seesaa.net/article/47959253.html
 もう、政策でどうこうなる時期を過ぎてしまったように思えます。
 新書ながら、とても(内容が)重い本でした。


posted by 乙 at 04:49| Comment(1) | TrackBack(1) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする