乙は、短期的に見た場合、株価はランダムに上下するものだと思います。
いろいろなインデックス投資の本でもそのように述べています。
さて、乱数で株価の動きをシミュレーションすることができる場合、利食いと損切りが儲けとどう関連するかを計算することができます。
簡単な方法でシミュレーションしてみましょう。
基準値から始めて、株価が 10% 上がったら、利食い(勝ち)ということで売ります。株価が 10% 下がったら、損切り(負け)ということで売ります。
この条件で、1万種類の株価がランダムに上下するという場合を検証してみましょう。
出島氏の主張の検証のために、乙が作ったプログラム
2007.1.6
http://otsu.seesaa.net/article/30915013.htmlを改変して今回のプログラムを用意しました。ですから、基本的な考え方は同じです。騰落率は、ゼロとしました。
3ヶ月間での勝敗の結果は、次のようになります。
A.標準偏差=10%の場合 勝率=35.2% 敗率=35.9% 未決着率=29.0%
B.標準偏差=20%の場合 勝率=50.1% 敗率=49.7% 未決着率= 0.2%
未決着率は、100-勝率-敗率(そんなことばがあるのでしょうか)で計算します。株が売れずに(株価が 10% を越えて上下することなく)3ヶ月後も手元に株を保有したままという場合です。
3ヶ月後の騰落率が0%である場合は、勝率も敗率も同じになります。株価がランダムに上下するのですから、当然です。
では、利食いラインを引き上げればどうでしょうか。利食いは 20% 上昇のとき、損切りは 10% 下落のときに行うということです。結果は、こうなります。
C.標準偏差=10%の場合 勝率= 5.2% 敗率=35.8% 未決着率=59.0%
D.標準偏差=20%の場合 勝率=27.6% 敗率=65.3% 未決着率= 7.0%
全般に敗率が高くなります。勝てば 20% の儲け、負ければ 10% の損失ですが、負ける率が高いので、結果は上とあまり変わりません。C.の場合、未決着率が高いので、何ともいえないと思います。
次に、利食い 10%、損切り 5% でシミュレーションしてみましょう。
E.標準偏差=10%の場合 勝率=27.9% 敗率=64.7% 未決着率= 7.4%
F.標準偏差=20%の場合 勝率=29.7% 敗率=70.3% 未決着率= 0.0%
結論が出るための上下の幅が狭いのですから、今度は勝敗がはっきり出ました。未決着率は非常に低くなります。
結論からいうと、騰落率0%の場合で、3対7の割合で勝敗が決まります。利食い 10% と 損切り 5% ですから、勝敗の比率は1対2になりそうですが、そうではありません。株価のランダムな上下を仮定するのですから、5%の変動のほうが 10% の変動よりも2倍以上出やすいのであって、3対7という結果で間違いはありません。
このことを納得するためには、正規分布の形を考える必要があります。いわゆる釣り鐘型ということですね。平均値(分布の中心)付近では出現確率の違いが小さいけれど、平均値から外れると出現確率の違いが大きくなる形のことです。これによって、騰落率0%のとき、3対7になるというわけです。
さて、ここで思い当たりました。
ということは、利食い 10%、損切り 20% とすれば株売買で儲かるのではないでしょうか。さっそくやってみました。
G.標準偏差=10%の場合 勝率=36.3% 敗率= 5.4% 未決着率=58.2%
H.標準偏差=20%の場合 勝率=65.8% 敗率=27.5% 未決着率= 6.7%
G.はC.の裏返し、H.はD.の裏返しの結果になります。
G.の場合、未決着率が高くて、はっきりしたことが言えません。H.のほうが決着が付きます。
標準偏差が小さくても、利食いと損切りの幅が小さければ結論が出ます。
利食い 5%、損切り 10% という方針では、次のようになります。
I.標準偏差=10%の場合 勝率=65.1% 敗率=27.9% 未決着率= 7.0%
J.標準偏差=20%の場合 勝率=70.2% 敗率=29.8% 未決着率= 0.0%
I.はE.の裏返し、J.はF.の裏返しになります。
このようにすれば7対3で勝てるのですから、得た儲けは次のように計算されます。
利益=0.7×5%=3.5%
損失=0.3×10%=3%
差し引きの儲け=3.5%-3%=0.5%
つまり、結論はこうです。株を買ったときの基準価格をもとに、利食いおよび損切りの価格を決めて株の売却をする場合、利食いの幅は損切りの幅よりも小さくするべきです。仮に利食い 5%、損切り 10% という方針をとれば、0.5% の儲けが期待できます。
これって、まさにデイトレードの論理そっくりです。上のシミュレーションは3ヶ月の株価の変動を仮定して計算したものですが、そのまま1日の動きに当てはめて考えることも可能です。
1日の間には、株価はランダムに上下すると考えられます。だとすれば、デイトレードでは少しの上昇で利食いするのが正しいことになります。損失はじっと我慢して、ある程度大きな(利食いの倍くらいの)損失になるまで我慢して売却(損切り)すればいいということになります。株価が上昇する場合が7割ですから、小さな利益を積み重ねることになります。
もっとも、利益の予想は、たった 0.5% ですから、1000万円を動かす場合でも利益は5万円しかありません。しかし、薄い利益も、繰り返せば、それなりのものになります。
ランダム仮説に基づくと、デイトレードの論理がわかってしまいました。デイトレードでも儲けることができるというのが乙の結論です。株を買ったら、その金額にわずかの利益をプラスして、指値で売り注文をし、同時に、その2倍の損失を想定して逆指値で売り注文をしておくということです。
このやり方は、利益率を考えてもいいですが、利幅を考えてもいいでしょう。これが、まさに、浜島昭平(2004.7)『ネット投資家の戦い方』明日香出版社
2007.1.24
http://otsu.seesaa.net/article/31992989.htmlが述べているやり方です。
このやり方のポイントは、未決着率がゼロになるようにすることです。未決着率がある程度ある場合は、その平均値は初期値よりも若干下がっていると考えられます。(だって、初期値の位置を基準にして、たとえば、上側5%、下側10%の範囲に株価が分布しているのですから、平均すればマイナスになるはずです。)利食いと損切りの幅をどれくらいにするといいかはなかなか難しい問題です。
いうまでもないことですが、上の計算では売買手数料を考慮していませんから、実際の売買の際は注意が必要です。
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