内容をひとことでいえば、投資信託で勝ち残る道はインデックス・ファンドだということです。
本書の全体が「インデックス・ファンド万歳」という調子で書かれています。ボーグル氏といえば、バンガードの創設者であり、インデックス・ファンドをアメリカに広めた人ですから、そういう書き方になるのは当然でしょう。ボーグル氏の『インデックス・ファンドの時代』
2006.12.3 http://otsu.seesaa.net/article/28796648.html
と同様の主張ですが、こちらのほうが薄くて読みやすかったです。
内容は、もちろん、説得力があり、インデックス・ファンドがいいという主張は妥当だと思います。
p.62 図表4.1 は数値が間違っています。本文は正しいので、気が付きますが、それにしても、グラフが間違っているのは問題です。
長い投資期間を考えると、コストの影響が大きく、「リターンに関しては、時間はあなたの味方である。しかし、コストに関しては、時間はあなたの敵である。」というのは、その通りです。しかし、乙の場合は15年程度の投資期間を考えています。すると、コストの多少はそんなに決定的な「差」とも思えません。若い人で投資期間が何十年もあるような人の場合、このグラフが当てはまりますから、コストの安いインデックス・ファンドを買って、そのまま保持し続けるということがベストですが、それより短い人の場合でも、同じ考え方が当てはまるでしょうか。ボーグル氏はそうだというでしょう。しかし、乙は必ずしもそうではないかもしれないと思います。
p.116 3年間継続して好成績を上げたファンドでも、その後3年間でひどい成績になる場合があることを示し、だからインデックス・ファンドがいいと結論づけています。そうかもしれません。しかし、アクティブ・ファンドであっても、成績が下がる前にうまく逃げられれば、いい結果が残せるはずです。インデックス投資の考え方では、投資のタイミングを見極めることはできないから、いい時期にアクティブ・ファンドから逃げることはできないと考えます。本当にそうでしょうか。乙は、このあたりがわかりません。昨今のサブプライムローンの問題にしても、問題がささやかれ始めてから株価が実際下落したわけで、こんなふうに「株がこれから下落するだろう」というくらいは(数ヶ月単位の誤差があるとしても)わかるような気がします。その時点でファンドを解約すればいいわけです。ファンドを基準価格のピークで解約するようなことは不可能ですが、これから大まかには下がるだろうと思えるところで解約するのは、そんなにむずかしいことではないように思います。
p.196 図表15.1 では、市場全体に投資する ETF を長期保有するならば、インデックス・ファンドと同様に全部○になり、つまり、インデックス・ファンドと同様の成果が得られると読めます。しかし、p.199 で述べられるように、アメリカでは ETF が長期投資向けではないようです。p.200 では、短期指向マネーが ETF を購入するために、売買回転率が高くなり、したがって運用成績が悪くなると述べています。そういう面もあるかもしれません。しかし、ETF 自体は、インデックス・ファンドと同様の仕組みであり、インデックス・ファンドだって、大量の資金が流入・流出すれば ETF と同様になるのではないでしょうか。ボーグル氏の記述は、インデックス・ファンドに肩入れしすぎのようです。
p.233 からの第18章は「いま何をすべきか」と題された章で、投資戦略について具体的に述べています。個人投資家には大いに参考になるように思います。
p.237 では、ヘッジファンドに NO といっています。コストが高すぎるということです。乙も、そうかもしれないなあと思いつつ、資金の一部でヘッジファンドを購入しています。やはり、投資してみた上で、運用報告書などを読んでみて、いいものかどうかを自分の目で確認してみたいと思います。数年程度の経験を重ねることで、ある程度ファンドに対する目も養われるのではないでしょうか。乙は、現段階では、ヘッジファンドに NO というつもりはありません。「わからない」というところです。数年くらい運用してみて、やっぱりダメだとわかったら、その時点で方針を変更してもいいのではないでしょうか。残りの時間を有効に使えば、全体として大きなマイナスになることはないように思います。
この本は、個人投資家にとって必読の書です。まずは、インデックス・ファンドについて十分知った上で、各種投資の考え方を学んでいくのがいいと思います。
ラベル:ボーグル インデックス・ファンド