通信社からの配信記事なのでしょうが、新聞各紙で同じ記事が読めます。(一部を以下に示します。)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071120-00000124-mai-bus_all
http://mainichi.jp/life/money/news/20071121k0000m020086000c.html
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007112001000499.html
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/economics/20071120/20071120_022.shtml
証券優遇税制を廃止する(株式投資で儲けた分の税率を 20% から 10% に変更する)ことでGDPが25兆円も減少するとはかなりの事件です。増税効果、取引減による株価下落、民間消費のほか設備投資などの企業活動も低下、延べ34万5000人が雇用を失い、平均賃金も0.8%下がるというのは無視できません。
試算では、優遇税制廃止の増税効果を年7000億円と想定したようですが、この金額はどれくらい妥当なのでしょうか。
ちょっと誤解を招きやすいのですが、25兆円は5年間の通算、7000 億円は単年度の数字です。比べるには両方を同じものさしで計らなければなりません。つまり増税効果は5年間で3兆5000億円としなければなりません。(大和総研さんもちょっとずるいですね。)
さて、GDPが25兆円減ると税収はどれくらい減るのでしょうか。概算ですが、日本のGDPが1年あたり500兆円、税収+税外収入が1年あたり50兆円とすると、GDPの1割が国の歳入ということになります。GDPが25兆円減少すると、歳入が2.5兆円減ることになります。増税効果が3.5兆円ですから、両者を比べれば、やっぱりトータルとして国の歳入としては多くなります。
これと関連する話で、大和総研からは以下のようなコラムがあります。
http://www.dir.co.jp/publicity/column/071106.html
証券税制は「不遇だ」というわけです。会社が儲けた場合、法人税・法人事業税として 40% を徴収され、その残りが配当・譲渡益として投資家に渡るわけですから、その段階で課税すれば、二重課税になってしまいます。確かに理屈の上では正しいと思います。
証券優遇税制に関しては、いろいろな考え方があります。
http://www.gci-klug.jp/klugview/07/11/16/post_1450.php
では、村田雅志氏が「合理的に考えれば、金融庁が主張すべきは、証券優遇税制廃止への反対ではなく、どのような投資・金融商品であっても一律の税率が適用される公平かつ簡素な税体系の構築のように思えます。」と述べ、株式だけを優遇する根拠がないと述べています。
一方、
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/03/7800.html
では、証券優遇税制を廃止しても、思ったほど税収は増えないだろうという主張をしています。
投資家の立場からは
http://d.hatena.ne.jp/sonbu/20071017
の視点がおもしろいです。この変更によって、零細投資家が被害を受けるのであって、本当の金持ちはこんなことでは損失を被らないと喝破しています。
乙は、証券優遇税制を続けるほうがいいと思います。株式を他の金融商品よりも少し優遇することで、資金を呼び込むという考え方のほうが大切だと思うからです。
本当に優遇税制廃止となれば、投資家の(特に外国人投資家の)日本株に投資する意欲が減少することは明らかで、それは結果的に日本株の下落につながります。それは、投資家だけでなく、さまざまな影響を通じて国全体(国民全体)に悪影響を及ぼすと思います。少しくらい税収が増えても、それを打ち消してしまうくらいの大きな影響でしょう。
野村證券の調査(株式投資経験者 1000 人が対象)によれば、
http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200711060046a.nwc
「証券優遇税制が撤廃された場合に「株式売却を検討する」と回答した人が 60.4%(前年同期 57.0%)に上った。また、同税制の「恒久化」「延長」を求める人は併せて 62.8%(58.4%)に達した。 」とあります。
投資家の考えることはみんな似たようなものですね。
この問題に関しては、NBonline の記事
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20071119/141025/
も参考になります。