乙が読んだ本です。
第1章は「新しい金融派生商品・新しい考え方」で、p.16 では天候デリバティブ、p.26 ではクレジットデリバティブが取り上げられています。こんな金融商品があるのですね。ただし、乙が不満に思ったのは、それぞれが具体的にどれくらいの利回りになるのか(どれくらいのプレミアムがあるのか)が書いてないことです。それなしでは記述が抽象的なお話にとどまると思います。個人投資家が直接買えない(機関投資家向けの)ものであっても、具体的な例を知りたいと思いました。
第2章は「金融工学はこう考える」ということで、基礎的なお話です。特に新しいことが書いてあるわけではありません。
第3章は「わかりやすい統計と確率の話」です。これは常識の範囲で、全部カットしてもよかったのではないでしょうか。乙は途中からここをスキップしつつ読みました。
第4章は「リスクとリターンの考え方」で、金融工学の考え方の中心部分を記述していきます。わかりやすいと思います。p.128 では、資産を分散させる場合について、対象数が 100 ぐらいまでしかリスク低減効果がないとしています。何百種類にも分散投資してもしかたがないのですね。
第5章は「オプション価格を求める理論」ということで、現在の金融工学の中心的な話題を取り上げます。一応、わかりやすく書いてあるのですが、p.173 からブラック=ショールズの公式の求め方が出てきます。乙は、これが理解できませんでした。ここは、数学の素養がないと手が付けられないと思います。本文中には読み飛ばしても問題はないと書いてありますが、数学が苦手な人のための解説がほしかったところです。
第6章は「金融工学の限界とそれに続く理論」ということで、行動ファイナンス理論の考え方と、正規分布を疑う話が書いてありました。乙は後者がおもしろかったです。p.202 で「べき分布」を正規分布の代わりに使おうという話は「ほうっ」と思いました。ただし、べき分布だと標準偏差が無限大になってしまうそうですから、これで納得できるリスク管理ができるのかどうか、よくわかりません。
本書は、全体として、よく書けており、金融工学とは何か、手っ取り早く知るには適していると思います。たった 215 ページですが、中身はかなり濃いと思います。