乙のブログ
2007.11.27 http://otsu.seesaa.net/article/69519485.html
に対する「えんどうやすゆき」さんからのコメントでこの本の存在を知りました。
全体にとても読みやすい本でした。吉本氏は金融工学のことが完全に理解できているのでしょう。だからこそ、こんなにも読みやすい本が書けるのだと思います。
第1章「リスクのない資産はない」ということで、リスクの説明です。株価などの予測がなぜできないかを示すものです。「1.株価の予測にコンピュータは役立つか?」というようなタイトルが付いており、興味をそそります。
第2章「デリバティブは妖怪じゃない」では、オプション取引を中心に説明していきます。
p.66「日本の企業は通貨オプションを買うことを嫌う」ということで、オプションを買うときにプレミアムを払いますが、わずかながらも必ずプレミアムを払うことが日本企業に嫌われたと述べています。そして、p.69 から、オプションを売るということをベースにした商品が開発され、急拡大していったとしています。なるほど。日本でのオプションにはこんな歴史があったんですね。
p.70 から、オプション商品の評価が重要だということになります。ただし、p.71 で述べているように、オプションを組み込んだ商品は買わない方がいいとしています。オプション価格の計算がむずかしいので、そういう商品は手数料ぼったくりになる場合が多いということです。
この話を読んで、乙は、パワーリバースデュアル債
2007.12.17 http://otsu.seesaa.net/article/73067545.html
のことを思い出しました。こちらもオプションを組み込んだ金融商品でした。
p.73 から、具体的なオプション価格の計算法が出てきます。p.85 には、ブラック=ショールズ・モデルによるオプション価格の計算式も出ています。これは、真壁昭夫(2005.4)『はじめての金融工学』(講談社現代新書)講談社
2007.12.3 http://otsu.seesaa.net/article/70624375.html
の p.178 に出てくるものと同じですが、吉本氏の式の方がわかりやすいように思いました。式中にでてくるSとかXとかが全部説明されているからです。(真壁氏の説明も、全部読めば書いてあるはずですが、長くて、かえってわかりにくいと思います。)
しかし、本書の特徴は、このようなむずかしい式などを使わずに、簡易計算法を提示していることです。乙にとっては、まさに目からウロコでした。簡易計算法で、オプション価格の計算法を知った上で、ブラック=ショールズ・モデルを見ると、何となく、計算しようとしていることがわかりそうな気がしてきます。
この第2章の説明はとてもよく書けていると思いました。
第3章「個人のためのファイナンス講座」では、外貨預金が不利であることや住宅ローンの考え方が出てきて、身近な話題を金融工学の目でどう見るかが説明されます。
第4章「応用と実践のファイナンス講座」では、ヘッジファンドや通貨オプション、セット商品などを取り上げて特徴などを解説しています。乙は、ヘッジファンドの話がおもしろかったです。いろいろな手法が説明されていますが、ヘッジファンドといっても、特別な運用をしているわけではなく、いくつかの基本的な手法の組み合わせに過ぎないと看破しています。
やや古い本ですが、とてもいい本だと思いました。