さっそく会社のホームページを見てみました。
http://www.schwabcapital.com/index.asp
このファンドの説明もホームページのすぐ下に掲載されています。
http://www.schwabcapital.com/trading-programs.asp
より詳しい説明は、以下の disclosure document でわかります。
http://www.schwabcapital.com/documents/SCA%20DDoc%20Current.pdf
このファンド、鼻息は荒いです。毎年 24%-48% の利益を上げるのが目標だというのですから驚いてしまいます。それだけでなく、実績もあります。
http://www.autumngold.com/Advisor/CTAProfile.php?op=profile&id=10164
を見ると、月当たりの実績が、8月 6.71%、9月 11.29%、10月 6.63%、11月 5.39% ということで、4ヵ月で 33.46% の成績をあげています。これなら、毎年 24%-48% というのも誇大広告ではないといえます。
乙は、こういうのを見ると、飛びつきたくなります。4ヵ月の成績だけではあんまりだから、1〜2年ようすを見てから投資するのもいいかななどと思いました。
が、しかし、このファンドはなぜこんなにも成績がいいのでしょうか。もう少し投資の仕組みを見てみましょう。以下、disclosure document による記述を参考にしています。
まず、このファンドは、オプションに投資しているとのことです。しかも「オプションの売り」です。「オプションの売り」は、30日や45日後の相場(この場合、e-mini S&P 500 Index がターゲットだそうですが)を予想して、コール・オプションならば、相場がある一定の金額以下なら儲けることができ、プット・オプションならば、相場がある一定金額以上ならば儲けることができるものです。オプションを売る場合は、プレミアム料といわれる部分だけが儲けになり、それはごくわずかです。しかし、株式の現物の売買ではないから、オプション投資ならばレバレッジを高くすることができます。そこで、このやり方はそれなりに安定した儲けが出ます。さまざまな条件のオプションを組み合わせることにより、条件を自分の好きなように設定することもできます。
では、このファンドの戦略は万能かといえば、もちろん、そんなことはありません。相場が予想通りに行けば、儲けが出るのですが、反対方向に行くと損失が膨らみます。「オプションの売り」であれば、損失はかなり大きくなることがあります。しかも、レバレッジを効かしているわけですから、あるとき、運用資金の全額がとんでしまうようなこともあるかもしれません。
そうならないようにするためにはどうしたらいいか。Risk Management が大事です。これは上記文書の p.8 から説明されています。月次成績が -5% 以内におさまるように運用し、最大でも -10% 以下に落ち込まないように運用するとしていますが、それは goal(目標)です。具体的にどうリスクを管理するのかは、ここの記述からはわかりませんでした。(乙の英語力がないからかもしれません。)もしかすると、あまりに開陳しすぎていては、他のファンド会社にマネをされると考えているのでしょうか。あるいは、それを隠れ蓑にして、もともとあまりリスク管理をしていないのに、十分しているかのように説明しているのでしょうか。
ということで、このファンドの4ヶ月間の好成績の秘密がわかりました。レバレッジを効かせたオプション取引がその正体だったのです。うまく行けば、このやり方は継続的に好成績を上げ続けます。しかし、いつなんどき、突然の暴落があるかわかりません。長期にわたって好成績を上げ続けていても、1回の暴落で資金全部がパーになるかもしれません。ここがバイ・アンド・ホールド式のファンドと大きく異なるところです。つまり、非常にハイリスク・ハイリターンな仕組みであると思います。
運用を開始してから最初の4ヵ月はうまくいっているわけですが、ま、うまくいっているからこそ宣伝して資金を集めようとしているわけで、これからもうまく運用できるとは限りません。たまたまの好成績に過ぎないかもしれません。ファンド全般にいえますが、設定直後の時期は資金量も少なく、効率的に(ねらい通りに)運用できるとしても、資金がたっぷりになると運用がむずかしくなるのが世の常です。
このファンドの手数料は毎年2%で、その他にインセンティブ・フィーが 20% かかります。前者は、投資金額の2%であり、後者は、投資資金の増加分の 20% ですから、ヘッジファンドとしては普通の手数料だと思います。ハイリスク・ハイリターンならばこそ、インセンティブ・フィーを取るのだともいえますね。儲けるだけ儲けて、最後は破綻しても、運用会社としては、上昇分の2割をすでに受け取っているわけですから、それなりの儲けが出ます。
こんなことを考えて、乙は、このファンドに投資しないことにしました。一見、おいしそうに見える話でしたが、やはり、この世界にはおいしい話はそう簡単に転がっていないのでしょう。
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