この本は、もともと週刊ダイヤモンド 2005 年4月から2006 年3月までに書いた連載「『超』整理日記」をまとめたものです。
題名は、あとからつけたものですが、乙の感覚では、本書の内容を表してはいません。もっと広い話題を扱っています。しかし、野口氏は、p.241 で本書の内容はすべて日本経済に関するものだとしています。「経済」の指し示すものが乙と野口氏でずれているのでしょう。
内容は、目次を見るだけでもわかります。(目次を見るだけで内容がわかるというのはわかりやすさの典型例です。)そして、内容を読むと、さらにわかった気がします。野口氏の議論に納得させられてしまいます。
第1章「経済の現状を虚心坦懐に見つめよう」では日本経済(ひいては日本株)の悲観論がえがかれます。家計に犠牲を強いて企業が生き返っただけで、日本経済はどうしようもない状態であると述べます。
第2章「ライブドア事件を考える」は、「企業価値最大」を目指すことはいいのだけれど、ライブドアのやり方ではダメだと論じています。グーグルと比べれば大違いというわけです。
第3章「株主不在の日本式経営」では、企業が株主軽視を続けているし、株式市場にも問題が多いとしています。
第4章「企業の社会的責任論を排す」では、企業は従業員の生活保障や寄付などを主目的にしてはダメで、あくまで儲けを出し、それで税金を納めることが最大の社会的責任だと述べます。
第5章「財界と国策会社」では、旧態依然とした「財界」は死語になってほしいと願っています。
第6章「インターネットのビジネスモデル」は、グーグルに代表される新しいビジネスモデルを紹介し、ソニーが過去の成功体験を乗り越えられるかを考え、東証のITに対する無理解を嘆きます。
第7章「何で今ごろ郵政民営化?」では、郵政民営化の問題点を指摘します。
第8章「人口減少社会で必要なのは何か?」では、人口減少でも、一人あたりの生産性を上げれば豊かな社会が作れるとしています。しかし、今の少子化対策では役立たずで、そもそも政治体制が長期的視野を持てないようになっていることが問題だと述べます。
第9章「小泉税制改革を総括する」では、「税制改革」が真の意味の税制の改革になっていない点を指摘し、給与所得控除や消費税、相続税、役員報酬などの面から日本のあり方を考えます。
第10章「国の形を考える」では、年金問題をとりあげ、これを民営化するべきだと主張します。そして小さな国を目指そうといいます。
第11章「世界は大きく変わっている」は、世界の現状を「小さな国がリードする時代になった」ととらえ、グローバリゼーションのあり方を考えます。
乙は、本書を一気に読んで、すっきりした気分になりました。野口氏のものの見方は、ずばり的を射ています。大変おもしろかったです。本書で野口流の考え方・哲学を教えてもらったような気がしました。
乙は、このコラムの最新版を読むために週刊ダイヤモンドを定期的に読んでもいいかなという気分になりました。
こんな方が、閣僚の中にいたら、日本もおもしろい国になったでしょうに。いや、さすがの野口氏だって、やはり、閣僚になればなったで、自分の主張だけで話は済まないから、内部に埋没してしまうのでしょうかね。
それにしても、本書の出版後、1年半になりますが、日本の現状を眺めると、どうにもやりきれない気分にならざるを得ません。
こういう本を読んで、「そうだ、そうだ」という感覚を味わうといいと思います。
それにしても、野口氏はこういう密度の濃いコラムを週刊誌に毎週連載しているんですね。そして、1年分をまとめて1冊の本にしているわけですが、それが本書で11冊目になっているのです。あきれるくらいにすごい人です。
野口氏の書いた他の本を読みたくなりました。