はじめに楽天証券の社長の楠雄治氏のあいさつが10分ほどありました。楽天証券は、ネット証券としてがんばってきたし、これからもがんばりますという内容でした。
最初が澤上篤人氏の講演でした。いつものように、日本株に強気の発言がありました。1550兆円の資金が 0.55% の利回りで眠っているのはもったいないから、投資家としてはっきりした行動を示そうという話でした。日本は世界的に見て第二の経済大国・債権国だし、さまざまな技術を持っているので、経済としては大丈夫だという話でした。これから新興国の人々がみんな豊かになろうとするから、40億人の成長あこがれ層があることになり、さらに世界的には人口が増えるから、むしろ、食料や資源の供給不足が心配されるとのことでした。
澤上氏ならではの話でしたが、乙は、澤上氏がこんなにも日本株に強気になれることがうらやましく思えました。話のスジは理解できますが、日本の現状を見る限りでは、明るい展望が見えないように思うのですが、……。
30分ほどの講演のあと、質疑応答がありました。質問者のレベルは必ずしも高くなかったですが、澤上氏は適宜質問をさえぎって自分の「答え」を話していました。こういう答え方でいいと思いました。
そのあと、坂巻千弘氏の話がありましたが、乙はスキップして、お昼を食べに行きました。
午後からは広瀬隆雄氏の「新興国市場、いまから何が出来るか?」という講演でした。
新興国は 2003 年から継続的に株価が上昇し、1年あたり 37.6% になるとのことです。日本の周りを見ると、1980年代は「ジャパン・アズ・No.1」だったのが、1990年代には「グローバル・スタンダード」という名前のアメリカ中心主義になり、これからはどうなるだろうという話でした。新興国の時代ということになるのでしょうか。さらに、中国経済の構造変化を中心に話が続き、1964年の東京オリンピックのときを例に挙げ、開催後1年で製造業大手の設備投資が減ったことを指摘し、過剰設備問題が大きかったことを述べました。これを中国株にあてはめれば、オリンピックの終わったあとでは、製造業が伸びずに、第三次産業が発展するだろうということになります。これはこれで正しいと思いましたが、乙は、今は中国の個別企業に投資していませんので、まあどうでもいい話に聞こえました。
次が堀古英司氏で、「2008年 米国経済と株式市場」という題でした。
サブプライム層とは、所得が低い人ではなく、信用が低い人なのだという話から入りました。サブプライム層は、平均的に、年収が538万円あり、3162万円の住宅を買い、ローンが2564万円残っているのだそうです。けっして低所得ではありません。住宅価格が下がって、こういう住宅ローンが焦げ付くとアメリカ経済に打撃になるから、それを救済する目的もあって金利が下がっていくだろうという話でした。市場は金利が3%台まで下がることを織り込んでいるとのことでした。
さらに、武者陵司氏が続きます。「2008年の市場展望〜サブプライム問題を越えて」ということで、日米とも株が売られすぎであるとして、楽観論を述べました。サブプライムローンでも、84% の人はきちんと返済しているのだそうです。しかし、一方ではサブプライムローンを組み込んだ証券の価格が7割下落してしまったとのことです。不良債権としては3千億ドルの損失が発生したが、それでもGDP比で見れば 2.5% に過ぎず、大きな問題ではないとのことです。米国の過去50年の経済統計を見ると、リセッションに入るときというのは、労働分配率がピークアウトしていること、企業の債務残高がピークアウトしていることという条件があるのだそうです。今は、この二つが成立していないので、リセッションには入らないとのことでした。
日本については、株安、金利安、円安、物価安の4安状態だという話で、言い得ているなあと思いました。
パワーポイントの資料がたくさん用意されていたのに、言及されたのはごく一部にとどまりました。ちょっと残念でした。
休憩をはさんで、山崎元氏の「『合理的へそ曲がり』のすすめ」という講演になりました。日本株について、5月ころが株価の底とみているという話でした。また、投資のしかたとして ETF を勧めるということで、日本と外国の株を 4:6 くらいにもつのがいいということでしたが、これは、日本株と外国株のリターンが同じ(リスクが変わる)とした場合の計算結果であり、乙は実際には当てはまらないだろうなあと思いました。
あとは、テクニカル分析の講演がありましたが、乙はテクニカル分析には興味がないので、ここで席を立ちました。
全体に、日米の経済問題を中心に新興国市場の話も組込み、それらをどうとらえるかという内容でしたから、今の時期にピッタリでした。まあ、それぞれの講師の話はもっともだと思いつつも、経済見通しなどは必ずしもあたるとは限らないわけで、こんな見方もあるという程度に受け取っておけばいいのだと思いました。
朝10時から夕方5時までの講演会というのは、長かったですね。乙は、やはり、本や雑誌などの活字メディアを読む方が好きです。自分のペースで読み進めることができますし、あとから読み返すこともできますから。