2008年01月27日

鈴木雅光(2008.1)『海外投資信託の選び方・買い方』テクスト

 乙が読んだ本です。「アメリカ・中国・インド…… 成長する世界に1万円から投資」という副題が付いています。
 海外に投資する投資信託をどう選び、どう買うかを述べた本です。これから海外に投資しようと考えている人には親切なガイドブックになるように思いました。
 本書の「海外投資信託」は、「海外で」投資するものではなく、「海外に」投資するものを扱っています。
 第1章「投資信託で海外投資をはじめよう!」は序論です。海外投資を勧めます。
 乙が引っかかったところを書いておきましょう。
(1)p.30 最後から3行目
 海外投資信託をどこで買うかという疑問に対して、「お勧めはネット証券会社」としています。その第1の理由として、「自社の商品だけでなく、さまざまな投資信託会社の商品を扱っています。」と述べています。しかし、ここの「自社」はどういう意味でしょうか。ネット証券会社が自分で投資信託を企画し、発売しているでしょうか。全くないとはいいませんが、これは例外であり、ほとんどの投資信託はさまざまな運用会社が売り出したものではないでしょうか。ネット証券会社は、単なる販売会社(仲介業者)に過ぎないことが普通です。
 もしかすると、「自社」→「系列会社」とするべきところかもしれません。
(2)p.31 最後の行からp.32 まで
 投資信託でわからないところを説明してもらうには窓口のある証券会社で質問するのがよく、その説明に納得したら、ネット証券会社で購入するという方法を紹介しています。まあ、家電製品でも、店頭で説明を聞き、購入するときは kakaku.com で最安店を探すことがありますから、一理ある方法です。しかし、鈴木氏がなぜネット証券会社を勧めるかといえば、p.31 にあるように、金融機関の店舗だと営業時間が日中(9:00-17:00)になっていて、会社勤めをしている人間には足を運びにくいということがあるわけです。だとしたら、ここで「窓口で尋ねよう」というのはちょっと矛盾するように感じます。
 窓口で聞くくらいなら、メールで質問するとか、(WWW の問い合わせフォームを使うとか、)電話するとか、いろいろな手段があるものです。まずは、そういう発想をするのが自然なのではないでしょうか。
 そもそも、乙の経験では、投資信託の場合、目論見書などをきちんと読めば、かなり細かい説明が載っているので、ほぼ全容がわかるような気がしますし、それでもわからないようなこと(たとえばこの投資信託は期待リスクが何%か)は、窓口で聞いても答えてもらえないのではないでしょうか。(乙は、窓口でそういう質問をしたことがないので、わかりませんが。)
 第2章「投資信託の仕組みを完全解剖」は、投資信託の仕組みの説明です。大変わかりやすいです。
(3)p.37 最後の3行を引用します。
中長期的に資産形成を行いたい場合、投資信託は個人にとって、とても有効な投資ツールになります。もちろん、そのためには数ある投資信託の中でも、本当の意味で中長期投資に耐えられる1本を見つける必要があります。

 この言い方も引っかかります。実は、p.151 にも、「長期保有できる1本を選ぶ」ということで、同じ言い方が出てきます。鈴木氏の言い方では、投資信託は最適な1本を見つければそれでいい(その1本に集中して投資すればいい)と言っているように響きますが、それはホントでしょうか。複数の投資信託を組み合わせるほうがいい場合も多い(というか、むしろそれが普通の)ように思うのですが。
 第3章「さまざまな海外投資信託の種類」では、投資先の種類に応じて12種類の投資信託を紹介しています。大変わかりやすい解説です。
 第4章「海外投資信託選びはここに注意」では、目論見書や運用報告書をどのように活用するかを述べています。
 第5章「海外ETFにもチャレンジしてみよう!」ということで、最近、日本の証券会社で扱いが増えてきている海外 ETF を取り上げて、解説しています。
 第6章「買ってはいけない「危ない」海外投資信託」では、海外投資信託詐欺に触れています。この章は、乙にとってちょっと違和感がありました。そもそも、こういう詐欺的海外投資信託というのは、証券会社(販売会社)が運用会社(実態があるかどうか知りません)と一体になって営業しているはずです。だから、名前の知られている(ネット)証券会社であれば、そこで扱っている海外投資信託で詐欺的なものはまずないだろうと思います。逆にいえば、マイナーな証券会社の場合は、扱っている投資信託に変なものが混じっている可能性があります。そういう場合は事前によく調べることが大事です。
 全体としてきちんとした本です。1470 円で必要な情報がコンパクトに詰まっている本といえるでしょう。
 しかし、ここまで書くなら、国内投資信託についても触れた方がよかったかもしれません。海外投資信託と国内投資信託で共通しているところもたくさんありますから、本書の記述の中でかなりの部分が国内投資信託にあてはまります。(それでは平凡な投資本になってしまうかもしれませんが。)
 また、乙は「海外で投資する」場合の投資信託についても言及してほしかった(それを期待した)のですが、それはかないませんでした。まあ、そんなことをするのは少数派なんでしょうね。ホントに意味があるかどうかもわかりませんし。


posted by 乙 at 05:13| Comment(0) | TrackBack(1) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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