http://nikkeimoney.jp/0806/index.html
乙も、ちょっと回答しようかなと思いました。
しかし、Q51 まで答えて、だんだんばからしくなってしまい、途中で回答を放棄しました。回答時間は、ここまでで10分くらいでしたでしょうか。
昨年の 8841 人に尋ねたアンケートについては、
2008.2.13 http://otsu.seesaa.net/article/83789783.html
で問題点を指摘しておきましたが、今回のアンケートも相当にひどいものです。日経マネーの編集部のレベルがばれてしまいました。乙は、このアンケートの結果を公表しないことを望みます。こういうアンケートの結果を公表することは、日経マネーも傷つきますし、多くの個人投資家を惑わせますし、これからの投資参加者を間違った方向に導くものだと思います。
以下、このアンケートに対する批判を書きます。(いいところもあるのですが、それは書きません。)
(1)設問の数がわからない。
まず、アンケート開始時に、全体の設問の数が指定されていません。アンケートは1問ずつ(場合によっては数問ずつですが)答える形式になっており、どこまでいったら終わりなのか、最初に予想できません。乙は、答え始めましたが、Q51 までで回答を中断したというのは、無限に質問が続くような気がしたからです。せめて、何分くらいで記入が終わるとか、最大で何問であるとか、(途中で「あと半分です」とか)終わりを知らせるような工夫をするべきです。それをしないと、多くの回答者がそもそも回答をいやがったり、回答を始めても途中で逃げたりするでしょう。(乙は途中で逃げたわけです。)逃げないで全部回答した人は、立派ですが、多数の一般的・平均的な回答者と異なる「偏り」を持っている人です。長いアンケートにもめげずに回答できる忍耐力のある投資家です。このアンケートに回答できるだけでも大変な努力家だと思います。
たぶん、日経マネーではしていないと思いますが、途中で回答を放棄した人の集計も行うべきです。「次へ」ボタンを押したら、そこまでの履歴を記録すればいいのです。それを数十回繰り返します。最後まで回答した人だけをデータとして集計するべきですが、こういう記録を集めれば、途中で回答を放棄した人がいかに多かったかがわかります。
(2)Q2.年間、世帯収入の何%程度を貯蓄・投資に回していますか?
選択肢は、「0%、〜5%程度、5〜10%程度、10〜20%程度、20〜30%程度、30〜40%程度、40〜50%程度、50%以上」ですが、こういうのが「必須」では困ります。投資に回す割合を決めている人はいいですが、決めてない人(乙はその一人です)は回答がむずかしくなります。また、年によって割合が変動する人(乙はその一人です)も回答に困ります。さらに「世帯収入の」とあるのがやっかいです。夫婦が別会計の場合(乙はその例ですが)配偶者の収入を知りませんから、貯蓄・投資に回す割合が「世帯単位で」計算できません。
こういう設問及び選択肢を掲げるということは、調査者が、個人投資家はこれこれこういうものだ(たとえば、世帯収入をきちんと把握していて、投資や貯蓄に回す比率を事前に決めて運用している)という偏見を持っていることを物語っています。アンケートでは、そういう態度ではいけません。もっと個人投資家の声を素直に聴く必要があるのです。調査者にはそういう態度が決定的に不足しています。
こういう質問をする前に、「世帯収入をきちんと把握しているかどうか」を尋ねるべきですし、(それによって質問を変えることになりますが、)先に「投資に回す割合を決めているかどうか」を尋ね、それが YES の場合だけ、この質問をするべきだと思います。後者は、今の質問に対する選択肢として「貯蓄・投資に回す割合を決めていない」という選択肢を付け加えてもいいでしょう。
(3)Q3.現在の金融資産額はいくらですか?自宅用不動産の評価額を含まない概算でお答えください。
選択肢は「300万円未満、300万〜700万円未満、700万〜1000万円未満、1000万〜2000万円未満、2000万円以上具体的に__」ですが、選択肢の金額の切り方が変です。300万円、700万円、1000万円、2000万円となっています。
一般に、等間隔で区切るやり方が多いですが、金融資産額などは、多額の人はきわめて多額で、一方、少額な人が多数を占めますから、分布の形がいびつになります。したがって、少額のほうは細かく分けて、多額のほうは大きく区分するのがいいのです。今の区切り方は、幅を計算すると、300, 400, 300, 1000 となっており、これは変です。幅がだんだん広くなるようにするなら、300万円、700万円、1200万円、1800万円くらいがいいのではないでしょうか。どうしても1000万円と2000万円を区切りにしたいならば、300万円、600万円、1000万円、2000万円とするほうがベターです。これなら、幅が 300, 300, 400, 1000 となって、高額のほうが幅が広くなります。
(4)Q4.金融資産の現在の配分を教えてください。以下のカテゴリーにおよその%を記入してください。(合計が100%になるように記入してください)
以下、サブクエスチョンとして、八つが並んでいます。
SQ1.預金
SQ2.日本株(個別株、投資信託含む)
SQ3.日本債券(個人向け国債、MMF、MRFなど)
SQ4.先進国株式(個別株、投資信託、ETFなど)
SQ5.新興国株式(個別株、投資信託、ETFなど)
SQ6.外国債券(投資信託、外貨MMF、FX、新発・既発外国債券)
SQ7.コモディティ(金、金ETF、コモディティファンド、商品先物など)
SQ8.REIT(国内外とも)・不動産(マイホーム以外の投資用不動産)
こういう設問体系を考えるということは、個人投資家の金融資産の投資先はこのようにきれいに区分できると仮定しているということです。
ここで困るのは、グローバル株式ファンドです。投資先として先進国株も新興国株も入っているファンドは、それぞれの投資先の割合を調べて、按分せよというのでしょうか。バランス型ファンドなどもけっこう大変かもしれません。そして、ヘッジファンドが入っていません。まあ大した割合ではないと思いますが、ヘッジファンドはこの8区分ではどこにも入らないように思います。
ちなみに、合計が 100 にならないような値を記入しても、先に進めるようなので、あまり気にしなくていいのかもしれません。
(5)Q7.過去1年(07年2月1日〜08年1月31日)の運用実績は?株式投資などの含み損益部分(売却前の現状での損益部分)も含めた前年比で、以下の中から最も近いものをひとつ選んでください。
選択肢は「マイナス50%より悪い」から「プラス30%より高い」まで5%刻みで19カテゴリーに分かれています。これも、なかなか大変です。「株式投資などの含み損益部分(売却前の現状での損益部分)も含めた前年比」をきちんと計算している人はどれくらいいるのでしょうか。しかも、期間が特定の1年と限定されているのですよ。こういうアンケートは、月1回(月末に)自分の資産の洗い直しをしている人でなければ、回答できません。乙のように騰落率を気にしていない
2008.2.14 http://otsu.seesaa.net/article/83933945.html
場合は、答えようがありません。
きちんと記録している人でも、収入から投資に回す分をどう扱うかによって、求め方はなかなかやっかいだろうと思います。積立などにも同様の問題があります。
もしも、この設問に適当に回答する人が多かったら(そして乙はそう予想しますが)、このアンケート結果の全体が崩れてしまい、無意味なものになってしまいます。
(6)Q8.過去3年(05年2月1日〜08年1月31日)の運用実績は?
これまた(5)と同じ問題があります。
(7)Q10-SQ1.過去1年(07年2月1日〜08年1月31日)の運用成果に最もプラスに働いたものを以下のカテゴリーから、ひとつだけ選んでください。
選択肢は「預金、日本株(個別株)、日本株(日経225miniなど先物・オプション取引)、日本株(投資信託)、日本債券(個人向け国債、MMF、MRFなど)、先進国株式(個別株)、先進国株式(投資信託、ETF)、新興国株式(個別株)、新興国株式(投資信託、ETF)、外国債券(投資信託、外貨MMF)、外国債券(新発債券、既発債券)、FX、金・金ETF、商品先物、コモディティファンド、REIT(国内外とも)、不動産(マイホーム以外の投資用不動産)」です。この設問に正しく回答するためには、資産の増減を、ここにある区分にしたがって分割して記録・計算していなければなりません。しかも毎月です。収入の一部を投資に回す場合、この計算は非常にやっかいです。
「わからない」を選択肢に入れることもいい方法でしょう。
Q10-SQ2.も同じ問題があります。
(8)Q17.過去1年(07年2月1日〜08年1月31日)の株式投資の運用実績を概算で教えてください。含み損益部分(売却前の現状での損益部分)も含めた前年比で、以下の中から最も近いものをひとつ選んでください。
これは、日本株だけに関する設問ですが、(5)と同じく、きわめて答えにくい設問です。
Q18.は「過去3年」に関する同様の設問です。
(9)<以下の設問で、あなたの株式投資スタイルにより近いものを選んでください>
Q19.投資対象として選ぶのは? (必須)
選択肢は「成長(グロース)株、割安(バリュー)株」です。
インデックス投資が選択肢にありません。個別株の設問だとしても、山崎元氏などが提唱するように、産業別カテゴリーに区分して、その中から適当に企業を選んで10ないし20銘柄に分散投資するやり方があります。そんなとき、必ずしも「成長(グロース)株、割安(バリュー)株」を意識していないこともあるのではないでしょうか。
あるいは、デイトレード(短期投資)を中心にする人の場合、「成長(グロース)株、割安(バリュー)株」を意識することはないだろうと思います。
しかし、この質問ではどちらか一方を選ぶ必要があります。
つまり、この設問には、個別株式投資のやり方はこの2種類しかないのだという前提が潜んでいるのです。こういうのを「偏り=バイアス」のある質問といいます。
長くなるので、以下、個別の批判はやめておきます。書く気になれば、この数倍の疑問点が指摘できます。
乙の感覚では、このアンケートでは個々の設問が非常に回答しにくいのです。しかも、設問がけっこう多いわけで、このように回答者に負担を強いるアンケートをしてはいけません。こういうアンケートでは、集計結果も信頼できなくなります。
日経マネー編集部は、アンケート調査のことを知っている人に協力を求めるなどの工夫・努力が必要なのではないでしょうか。個人投資家数十人程度に準備調査をして、選択肢をどうするかなどを投資家の声で決めるようにする必要もあったでしょう。
少なくとも、こういうアンケートをして回答者をいじめ、結果的にアンケート嫌いの人を作り出すことだけはやめてほしいと思います。他のアンケート調査をやろうとしている人に大きな迷惑をかけます。
勝間和代氏のブログを見ると、
http://kazuyomugi.cocolog-nifty.com/private/2008/03/post_a4bf.html
勝間氏もこのアンケートの統計分析に参加するとのことです。分析に参加する以上、勝間氏が調査の企画段階でも加わっていたものと推定されます。乙は勝間氏の本を読んだこともあり、
2007.12.28 http://otsu.seesaa.net/article/75053894.html
本自体はよいものだと思いましたが、勝間氏がこういうアンケート調査に携わっていたとなると、勝間氏に対する評価はだいぶ下がります。
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