クイズ形式で50問が出されます。なかなかおもしろい本でした。
p.54 株価の予想を連続して当てる方法が説明されています。しかし、数字がちょっと違います。
1通目の予想メールを10万人に出したとします。予想があたった人に2通目を出すわけですが、それを4万人としています。3通目は3万人、4通目は1万人、5通目は 6000 人としています。実際、そうなのかもしれませんが、株価の上下は確率 1/2 で当たると考えるほうが理論的に自然です。すると、1通目10万人とすると、2通目5万人、3通目 25,000 人、4通目 12,500 人、5通目 6,250 人となります。吉本氏は当然このことを知っているはずですが、なぜこちらの数字を使わなかったのか、不思議に思いました。あえて理論値を少しずらして書いて現実感を醸し出そうということでしょうか。
p.56 20年続けて株で勝ち続ける人の確率を計算して、0.01% としています。その途中で「株式投資で失敗が続いた投資家が株式投資をやめる確率」を5%として考慮しています。しかし、この5%は勝ち続ける人の確率を計算するときは、値が何であれ計算には関係ないはずです。なぜここでこれを持ち出してきているのか、乙は理解できませんでした。
p.87 あやしげな商品先物会社と一流有名金融機関で同じファンドを買う場合、大損の確率が高いのはどちらかというクイズが出ます。乙は、まったくわかりませんでした。「同じ」だと思いました。p.88 の解説では、悪質金融商品の購入を取りやめて返金をしてもらう場合、一流有名金融機関のほうが投資家にとって不利だというのですが、この説明を読んでも、どうにも腑に落ちませんでした。
p.126 成功報酬制は、無謀な投資につながるとしています。しかし、現実は、そうでもありません。成功報酬制を取るヘッジファンドの多くは、ファンドマネージャーに自己資金を投入させているようです。ですから、ファンドマネージャーが損失を出すと、自己資金が減ってしまうのです。というわけで、成功報酬制だけを取り出して、それが危険だというのは、現状にはあてはまらない面があると思います。
また、ファンドマネージャーの立場で考えても、「後は野となれ山となれ」的な発想で運用するとは、必ずしも言えません。顧客に損失を与えなければ、さらにその後も運用を継続してくれるでしょうから、未来の報酬が期待できます。損失を与えたら、解約が相次ぎ、結局報酬の総額が減ってしまうことも考えられます。一定期間だけの報酬を基準に考えるのか、先まで基準に考えるのかによって判断は分かれると思います。
もっとも、だからこそ、任期があれば、その中だけの最適な方略を考え、その先のことは考えないということはいえますが。
p.155 「運用のリバランスを定期的におこなうべきか」というクイズです。金融機関は「下がったら売る」という運用(いわゆる損切りに当たります)をしているから、リバランスは正しくないということです。これには、大いに疑問を感じました。
金融機関は、総合的な資産運用を心がけているのではないと思います。プロとしてアクティブ運用をおこなっているのではないでしょうか。一方、リバランスはインデックス運用のときに必要になるテクニックです。だから、金融機関がしていないからといった理由で個人投資家はリバランスが不要というのは、議論としてずれているように思います。
ともあれ、金融リテラシーを高める上で、本書は有意義だと思います。
ラベル:吉本佳生