2008年07月12日

大村大次郎(2007.10)『なぜあのサラリーマンは税金を払っていないのか』リヨン社

 乙が読んだ本です。「家・クルマ身のまわりの税金を安くする驚きの方法満載!!」という副題が付いています。
 序章「日本は脱税天国だ」では、いろいろな脱税の例が出てきて、そうか、この本は脱税の本なのかと思いました。それはそれでおもしろい話です。
 p.31 には「消費税というものは、人件費が大きな企業ほどたくさん払う仕組みになっている。」という文がいきなり出てきます。文脈なしでは、この文が何をいいたいのか、よくわかりませんでした。実は、第5章まで読み進めると、理解できます。序章は、他の章が書き上がった後に追加して書かれたものなのでしょう。
 第1章「サラリーマンこそ節税するべき」からは、脱税でなく、まじめな節税の話になります。p.44 で、自営業の経費というのは、非常に広範囲に認められていることを述べ、p.45 で、自営業の経費率が平均で 60% 程度だと述べています。乙はこういう事実を知りませんでした。この 60% という値は本書中で何回も繰り返されますから、事実なのでしょう。ということは、給与所得では活用法がありませんが、雑所得の経費をかなり高めにしてもいいということです。乙が過去に聞いた話では、必要経費を 30% くらいにしておけば、税務署が証拠なしで認めるということでした。それ以上は、領収書などをきちんと保存しておかないといけないとのことでした。毎年、領収書を保存・整理していますが、経費率は 60% くらいはいきそうで、年によってはもっと高くなることもあります。このあたり、日常的にもっとがんばる余地がありそうに思えてきました。来年の確定申告から、さらに努力してみましょう。
 第2章「源泉徴収の抜け穴」と第3章「あなたは税金を払いすぎていないか?」、および第4章「家、車、身のまわりの税金を安くする」は、各種の節税の知識ですが、乙にとって目新しいことは何もなく、読んでいながら退屈でした。当たり前のことが並んでいるだけです。
 ただし、p.159 で、定年後は海外に住民票を移すという話がおもしろかったです。住民税は1月1日現在の居住地でかかってきます。定年後1年目は、収入が激減するのに、前年の収入に応じた住民税がかかってくるので、負担感が大きいわけで、だからこそ、定年1年目は海外に住民票を移すといいのだそうです。まあ、定年後に長期海外旅行を考えているような人は、いっそのこと、こんな選択肢を選ぶこともいいかもしれません。
 第5章「会社と協力すれば税金は飛躍的に安くなる」は大変おもしろかったです。会社から給料としてもらって、その中からいろいろ買うことにすると、いわば税金を負担した後のお金で買うことになる、会社に買ってもらって、その分の給料を安くしてもらうと、労働者側は税金分だけ安くなり、会社も、消費税の関係で得をするというのです。このわざは、大企業では無理かもしれませんが、個人企業や家族企業では有力な手段です。会社を作ると得をするというのはこういったことなんでしょうね。乙は、こんな工夫を知りませんでした。
 本がおもしろいかどうかは、その段階での読者の知識によるのだなあと思いました。
 第6章「あなたの知らない税務署の秘密」は、「秘密」というべきことは書いてなく、まあ、当たり前の内容です。
 というわけで、本書全体を評価すれば、そんなに新鮮味があるわけではないし、かなり常識的な話でした。タイトルにある「なぜあのサラリーマンは税金を払っていないのか」は、キャッチーなコピーで、思わず手に取ってしまう人がいるでしょうし、出版社としてもそれをねらっているのでしょうが、実際は「節税術」であって、それを誇張したタイトルになっているだけです。
 裏表紙には著者紹介がありますが、「主に法人税担当調査官として10年間国税庁に勤務する。」とあります。なるほど、元国税庁の人ならば、極端な節税術(さらには脱税術)を書くはずもありません。タイトルに引かれてこの本を選んでしまったのは失敗だったかもしれません。


ラベル:大村大次郎 税金
posted by 乙 at 04:48| Comment(3) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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