2008年08月31日

金利差と為替レート(3)

 昨日の記事
2008.8.30 http://otsu.seesaa.net/article/105715608.html
の続きです。

 ここのところ、金利差と為替レートの関連を考えていますが、この問題に関して、FX(外国為替証拠金取引)では、比較的話は簡単なようです。
 FX関連では、アメリカが高金利、日本が低金利の場合、為替レートは円高方向に動くとしています。
http://nikkeimoney.jp/gaika/school/old/kawase60.html
http://www.adpweb.com/eco/eco4.html
http://www.adpweb.com/eco/eco5.html

 為替ヘッジの話も、FXと同様です。
http://www.nomura-am.co.jp/basicknowledge/mame/15_kawase/index.html
http://www.nomura-am.co.jp/basicknowledge/mame/15_kawase/01.html
 金利差を考えると、円高だというわけです。
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa1091144.html
は先物の話ですが、同様です。

 以上見てきたように、金利差と為替レートをめぐっては、いくつかの立場から違った主張がなされています。相互に矛盾しているので、これらの清濁を合わせ飲むわけには行きません。
 しかしながら、両者の関係を一番スムーズに説明しているのは、FX、為替ヘッジ、先物の話です。理論的に一番はっきりしています。通貨間に金利差があれば、高金利の通貨は通貨安に、低金利の通貨は通貨高になるというものです。
 一部の人は、これと逆の主張をするのですが、
2008.8.29 http://otsu.seesaa.net/article/105661673.html
金利差があると、高金利国の通貨が買われ、その通貨が高くなるという考え方は、どうもおかしいと思います。たとえば、豪ドルが高金利である場合、単純に高金利を求めて豪ドルに資金が集中したら、豪ドルがさらに高くなって二重に儲かるということがあれば、単純明快な投資話であり、みんながそういう投資をするのではないでしょうか。なぜそうならないかと考えれば、豪ドルが(円に対して)安くなり、結果的に儲かるかどうかわからないからではないでしょうか。
 そして、FXにおけるスワップポイントにしても、先物の為替レートにしても、現に、高金利の通貨が通貨安になることを前提にして動いています。
 乙は、ことを単純化して考えれば、「通貨間に金利差があれば、高金利の通貨は通貨安に、低金利の通貨は通貨高になる」ということだと信じます。
 これで、とりあえず、乙なりの結論にたどり着いたように思います。
posted by 乙 at 03:23| Comment(3) | TrackBack(0) | 投資方針 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月30日

金利差と為替レート(2)

 昨日の記事
2008.8.29 http://otsu.seesaa.net/article/105661673.html
の続きです。
 ネットを見てみると、金利差と為替レートについて、過去の動きをフォローしたものもあります。
 たとえば、
http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/f0502dki2.pdf
では、「図表2、3 はそれぞれ名目、実質金利差と為替レート(前年比変化率)を重ねたグラフであるが、一見したところ金利格差の変動に対し、資産価格である為替レートが常に敏感に反応しているわけではないようである。つまり、他の変数と同じように、金利格差は為替レートを説明する可能性がある変数の中の一つに過ぎないことを物語っている。」と述べて、為替レートは金利差だけで決まるものではないので、もっと総合的に考えるようにいいます。
 類似の見方は、他にもあります。いくつか引用します。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20060821/108327/
 「異なる国の通貨の相対的な力関係を探る外国為替市場では、2国間の金利差は非常に重要な要因ではあるが、必ずしも決定的な要因ではない。」

http://www.mof.go.jp/f-review/r19/r_19_108_123.pdf
 「金利差ではドル高などが説明できないことがある。」

http://www.fxprime.com/excite/bn_ykk/ykk_bn30.html
 「為替相場はさまざまな材料や思惑で動くため、そもそも、為替レートは金利だけで決まるものではないのです。」
 とうわけで、そもそも金利差と為替レートを単純に考えることがよくないのかもしれません。しかし、(科学的な)考え方の一つとして要素還元的に物事を見るならば、他の影響を無視して単純に金利差だけを取り出して為替レートとの関連を考えることはできるはずです。
 ちょっと気になる記事は
http://rich-ojisan.com/fx68.html
です。「内外金利差が為替の変動要因になると言っても、単純に金利の高い通貨が買われるのではなく、これから金利が上がっていくと予想される国の通貨が上昇し、これから金利が低下していくと予想される通貨が下落する傾向にあります。」ということで、両者の時間的なズレを指摘しています。
(以下、明日に続く)
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posted by 乙 at 06:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資方針 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月29日

金利差と為替レート(1)

 乙は、高橋洋一氏の『霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」』を読んだとき、
2008.8.19 http://otsu.seesaa.net/article/104970946.html
「金利が高くなると為替は円高になる」とあったことで、疑問に思いました。
 この件について、再度、考えてみました。
 WWWで検索すると、高橋氏と同じように「金利が高くなると為替は円高になる」という説がたくさん見つかります。代表的なものとして、以下の3つを挙げておきます。
http://moneykit.net/from/topics/topics57_01.html
http://session343.jp/main/knowledge/advance/02.html
http://www.business-i.jp/print/article/200704180013o.nwc
簡単にいえば、金利差があると、高金利国の通貨が買われ、その通貨が高くなるというわけです。
 その反対に、円が低金利になっているので、円安なのだという説もあります。
http://www.best-investor.com/fx/topics13.html
 これは、上述のものと同じ主張ととらえてもいいでしょう。
 どうも、このあたりが一種の合意事項のようです。

 乙が持っている藤巻健史氏の本も見てみました。
 『マネーはこう動く――知識ゼロでわかる実践・経済学』
2007.8.24 http://otsu.seesaa.net/article/52516511.html
では、p.140 で、円の金利は超超超低金利だから、超円安は当たり前で、超超超円安でないとおかしいと書いています。しかし、一方では、pp.143-144 で、金利差が開くと(ドルが高金利で円が低金利であれば)先物取引で将来のドルが安く買えるという話も出てきます。つまり円高に振れるということです。
 基本は、為替レートはわからないということのようです。
 同じく、『藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義』
2006.6.18 http://otsu.seesaa.net/article/19423811.html
では、第1章「為替のマーケット」の pp.29-36 で、先物取引で、ドルの金利が高く円の金利が安いならば、円高になることを説明する一方、p.56 では、日米の金利差が開くとドルの買い要因になる(だからドル高になる)という説明も出てきます。一見矛盾する説明がなされています。

 ん? 何だか、わからなくなってきました。
(以下、明日に続く)
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2008年08月28日

前川貢(2008.5)『いま債券投資が面白い!』近代セールス社

 乙が読んだ本です。「資産運用の世界を変える債券投資のススメ」という副題が付いています。
 債券投資、中でも、外国債券投資を薦める本です。かなり珍しい本のように思います。債券は、預貯金と株式の中間に位置するような商品ですが、金融機関が個人投資家にあまりすすめるようなこともないので、何となく縁遠い存在になってるのではないでしょうか。そこに光を当てた本書は、それだけでも存在価値があるというものです。
 いくつか、気になる記述もありました。
 p.27 「為替の動きは一般的に、一定の範囲内で上下に変動を繰り返すもので、例えば一方的に円安になり続け1ドル=1000円になったり、逆に円高になり続け1ドル=0円になったりしません。」
 言っていることは正しいのですが、「1ドル=0円」は、理論的にありえない話なので、こう述べることは不適当なように思います。為替レートは、二つの通貨の交換の比率なので、どんなに円高になろうと、0.0000001 円のようになったとしても、理論的にゼロになることはないのです。一方、1ドル=1000 円は理論的にあり得る話で、実際はそうなる確率がきわめて低いというだけです。
 pp.28-29 前川氏は、円高になったとして、1ドル80円だろうと述べています。だからそれを前提に外貨投資を考えているというわけです。さて、この1ドル80円をどう考えたらいいでしょうか。乙は、15年後の為替レートとして、1ドルは60円から 240 円程度を考えたらどうかと述べたことがあります。
2006.6.19 http://otsu.seesaa.net/article/19489254.html
つまり、前川氏の言う1ドル80円説は、甘いと思います。まあ、これは個人的な感覚ですから、前川氏が不適当とも思いませんが、今までの為替変動を考えれば、1ドルが80円を超える円高になるのは普通にありうることのように思います。
 pp.143-144 個人が投資できる債券の例が国内と外国とに分けてリストアップされています。2007年12月10日現在と明記されています。たとえば、その最初の日本の国債のところを見ると、償還日 2012.8.17 とあり、残存期間 0.67 年とあります。両者は、ずれているようです。2011.12.31 を基準にしているならば、残存期間は 0.67 年です。2ページにわたる数十個の債券のすべてがずれているので、単なるミスプリではないようです。乙は理解に苦しみました。
 本書の構成は、四つの章と「巻末資料データ」からなりますが、巻末資料データは、80ページほどを占めます。全体が223ページですから、4割にも及ぶ長いものです。しかし、ここの記述は、あまりいただけませんでした。四つの章で述べられていることと重複する内容がけっこうあります。乙の感覚では、ここの記述は必ずしも「資料」ではないと思います。構成を変えて、適宜記述を適当な「章」に移してしまった方がずっとすっきりすると思います。本書を読んでいると、「巻末資料データ」になってしまって、「おや、もう終わりか」と感じますが、実はそこから延々と記述が続くのです。
 一通り読んだ後では、1冊の分量で債券投資だけを扱うのは、ちと企画倒れかなと感じました。詳しく説明されているので、それはそれで一つのあり方ですが、乙の感覚ではかなり冗長なように読めます。
 なお、この本については水瀬ケンイチ氏も取り上げています。
http://randomwalker.blog19.fc2.com/blog-entry-798.html


ラベル:前川貢 債券投資
posted by 乙 at 05:21| Comment(1) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月27日

TOPIX連動型上場投資信託の運用報告書

 乙が保有している TOPIX連動型上場投資信託の運用報告書が届きました。
 この ETF は、
http://www.nomura-am.co.jp/fund/funddetail.php?fundcd=141306
に説明があります。
 しかし、このページには、運用報告書がアップロードされていないのですね。不思議です。
 月次レポート、投資信託説明書(交付目論見書)、投資信託説明書(請求目論見書)、チャート、分配金の履歴、販売会社一覧などが見られるようになっているのに、運用報告書がネットで見られないのです。
 こういうことでいいのでしょうか。ETF (あるいはファンド)の実態を一番よく物語る資料だと思いますが、……。
 この ETF については、以前にも記事にしています。
2007.8.19 http://otsu.seesaa.net/article/51882447.html
 今期は、分配金が 1944 円出ていて、ある意味で順調なように見えますが、実はそうではありません。基準価額の下落は、それはそれでひどいもので、1年前に比べると、-26.7% です。惨憺たる成績です。しかし、まあ、市場の動向がこうなのですから、文句をいっても始まりません。
 p.4 には、100口当たりの費用の明細が書いてあります。信託報酬 197 円(投信会社 129 円、受託銀行 68 円)、保管費用 39 円で、合計額 236 円です。
 この期間での 100 口の基準価額は 15 万円くらいですから、それを基準にすれば、0.15% です。コストは安いです。
 とはいえ、この ETF の保有している株式の売買は、野村證券を経由して行われることが多く、p.4 によれば、野村證券との取引額は、買付額の 56.5%、売付額の 65.0% を占めているとのことです。ETF でも、証券会社からは切っても切れない関係にあるのですね。(株式の売買は、まあ、どこの証券会社でも大差はないと思いますが。)
 こういう大事な書類は、ぜひ、ネット内にアップロードしておいてほしいものだと思いました。
posted by 乙 at 04:03| Comment(0) | TrackBack(1) | ETF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月26日

正規分布と損切り・利食い(2)

 昨日述べたようなわけで、
2008.8.25 http://otsu.seesaa.net/article/105303133.html
損切り・利食いは、損切りを大きなレベル(たとえば -20%)で、利食いは小さなレベル(たとえば +10%)で行えばいいという結論に達しました。
 ここでの問題は、仮に損切りを利食いの2倍の水準とした場合でも、[-20%, +10%] という場合と、[-10%, +5%] という場合があるということです。この問題について、考えてみましょう。
 正規分布表では、Z という標準得点に基づいて分布(面積)が決まっています。
 そこで、Z の値を少しずつ動かしながら、「Z の値以上の面積」と「Z の2倍以上の面積」を比べてみることにしました。
 結果は、以下の通りです。
ZZ確率Z*2確率Z比率Z*2比率
0.1
0.4602
0.4207
52.24%
47.76%
0.2
0.4207
0.3446
54.97%
45.03%
0.3
0.3821
0.2743
58.21%
41.79%
0.4
0.3446
0.2119
61.92%
38.08%
0.5
0.3085
0.1587
66.03%
33.97%
0.6
0.2743
0.1151
70.44%
29.56%
0.7
0.2420
0.0808
74.97%
25.03%
0.8
0.2119
0.0548
79.45%
20.55%
0.9
0.1841
0.0359
83.68%
16.32%
1.0
0.1587
0.0228
87.44%
12.56%
1.1
0.1357
0.0139
90.71%
9.29%
1.2
0.1151
0.0082
93.35%
6.65%
1.3
0.0968
0.0047
95.37%
4.63%
1.4
0.0808
0.0026
96.88%
3.12%
1.5
0.0668
0.0013
98.09%
1.91%
1.6
0.0548
0.0007
98.74%
1.26%
1.7
0.0446
0.0003
99.33%
0.67%
1.8
0.0359
0.0002
99.45%
0.55%
1.9
0.0287
0.0001
99.76%
0.24%
2.0
0.0228
0.0000
99.87%
0.13%

 Z が 0.1 のような分布の中心に非常に近いところでは、「Z の値以上の面積」と「Z の2倍以上の面積」がほとんど同じ値になってしまいます。株式でいえば、1% 上がったら利食い、2% 下がったら損切りというようなものです。こうすると、両者の起こる確率がだいたい同じになります(厳密にいえば前者の方が後者よりも少し確率が大きいですが)から、全体として損をすることになります。逆にいえば、2% 上がったら利食い、1% 下がったら損切りとすれば、(手数料を無視すれば)儲かると思います。
 Z が分布の中心から離れていくと、「Z の値以上の面積」と「Z の2倍以上の面積」の差が大きくなっていきます。Z=0.6 のところで、「Z の値以上の面積」と「Z の2倍以上の面積」が約2倍違ってきますので、このあたりが境界線です。これよりも Z が大きい場合は、「Z の値以上の面積」が「Z の2倍以上の面積」よりも2倍以上大きくなりますから、儲けが出ることになります。驚いたことに、上の表からわかるように、Z が大きくなればなるほど、両者の面積の差が大きくなります。
 ということは、損切り・利食い水準を [-20%, +10%] とするよりは、 [-40%, +20%] とするほうがよいということです。
 ただし、このような大きな幅で損切り・利食い水準を決めると、そのようなレベルに達しないことが多くなり、損切りも利食いもしない(できない)状態、すなわち保有したままになることが増えます。Z=1.0 のところでも、「Z の値以上の面積」が 0.1587、「Z の2倍以上の面積」が 0.0228 ですから、合計しても 0.1815 にしかならず、85% は保有したままということで、儲けにつながらないわけです。損切り・利食いの水準を決める場合は、このことも勘案しながら、妥当な水準を決定しなければなりません。これはなかなかの難問です。
 ついでにいえば、株価の変動の程度(標準偏差)を求めることも難しい問題です。個別の銘柄ごとに相当に違ってきますし、期間をどれくらい取るかでも変わってきますから、けっこう大変です。

 ともあれ、株の売買において、損切り・利食いのレベルをどう設定すればいいかについて、乙なりの結論が出ました。
 株価がランダムに(その確率が正規分布を描くように)変動するものと仮定した場合の話です。
 一つは、+2% で利食い、-1% で損切りというようにごくごくわずかの差で手仕舞いする方針です。両者の起こる確率はだいたい似たようなものですから、利食い水準を損切り水準よりも高めに設定することで確実に儲けることができます。もっとも、これは非常に頻繁に株の売買を行うことにつながりますから、手数料がかなり多額になることが予想され、本当に儲けられるかどうか、よくわかりません。これはデイトレードの論理(の一つ)でしょう。
 もう一つは、+10% で利食い、-20% で損切りというような、大きな差で手仕舞いする方針です。後者が起こる確率は前者の半分よりもやや小さいですから、これも儲けることができます。ただし、この場合、標準偏差を考慮して、利食い水準を標準偏差の6割よりも大きい水準に設定し、損切り水準をその2倍とするのがいいということになります。
posted by 乙 at 05:01| Comment(2) | TrackBack(0) | 投資方針 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月25日

正規分布と損切り・利食い(1)

 乙は、株の売買における損切り・利食いのレベルをどうするかについて、以前、シミュレーションで結論を出したことがありました。
2007.9.16 http://otsu.seesaa.net/article/55103375.html
 これに基づいて、第三者の考え方を間違いだと述べたこともあります。
2008.8.13 http://otsu.seesaa.net/article/104660595.html
 最近、シミュレーション自体は妥当なものであっても、その解析的説明が十分でないと考えるようになりました。そこで、今日は、再度、この問題を考えてみました。
2007.9.16 http://otsu.seesaa.net/article/55103375.html
では、次のように述べています。
 このことを納得するためには、正規分布の形を考える必要があります。いわゆる釣り鐘型ということですね。平均値(分布の中心)付近では出現確率の違いが小さいけれど、平均値から外れると出現確率の違いが大きくなる形のことです。これによって、騰落率0%のとき、3対7になるというわけです。

 この説明は、正規分布曲線の縦方向の「高さ」に着目して説明しています。しかし、確率の問題ですから、平均値(分布の中心)からある程度離れたところから先の「面積」で説明しなければなりません。
 「10% の損切り」が起こる確率というのは、-10% よりもマイナス側の面積であると考えます。「20% の利食い」が起こる確率は、+20% よりもプラス側の面積です。
 もちろん、利食いと損切りが10%対20%がいいのか、5%対10%がいいのかという問題も解決したいところです。

 さて、正規分布表
http://www.biwako.shiga-u.ac.jp/sensei/mnaka/ut/normdisttab.html
http://www.koka.ac.jp/morigiwa/sjs/standard_normal_distribution.htm
では、Z という標準得点が基準になって面積が表になっています。+10% とか、-20% というのを標準得点に換算しなければなりませんが、これは、データの標準偏差がわかれば、それで割り算することで Z に変換できます。
 えいやっとばかり、10% を Z=0.6 と仮定してみましょう。20% は Z=1.2 となります。標準偏差が 16.67% 程度と仮定していることになります。
 Z=-1.2 よりも左側の面積は、Z=1.2 よりも右側の面積と一致します。
 Z=1.2 よりも右側の面積は 1-0.8849=0.1151 になります。
 Z=0.6 よりも右側の面積は 1-0.7257=0.2743 になります。
 両者の面積の比率を求めると、
 1.2 以上の面積=0.1151/(0.1151+0.2743)=0.2956
 0.6 以上の面積=0.2743/(0.1151+0.2743)=0.7044
となり、両者は3対7の比率で起こることになります。標準偏差が 16.67% 程度の場合、損切り -20%、利食い +10% とすれば、前者が3割、後者が7割の確率で起こりますから、わずかながら儲けが出ることになります。
 以前の乙のシミュレーションは、このあたりのことを求めていたのではないかと思われます。
続きを読む
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2008年08月24日

エンジェルファンドの書類を読んで

 乙は、WWW で見た限りで、エンジェルファンドには投資しないという判断を固めました
2008.8.22 http://otsu.seesaa.net/article/105136657.html
2008.8.14 http://otsu.seesaa.net/article/104714407.html
が、申し込みの書類をもらってみると、もう少し別の情報が書いてあるかもしれないと思って、送ってもらいました。
 いくつかの書類が郵送されて来ました。
 その中で「匿名組合契約の契約締結前交付書面」を見てみると、税金のことが書いてありました。「配当金は源泉徴収を行わずに配当いたします。」とありました。「確定申告の際は税理士または税務署等にお問合せください。」ともありました。配当金のうち、普通配当としてどれだけが「儲け」にあたるのか、特別配当として「自分の出資金」をどれだけ取り崩しているのかは、別途出資者には知らされることでしょう。この点では、乙が
2008.8.14 http://otsu.seesaa.net/article/104714407.html
で書いた税金の話は言い過ぎだったかもしれません。
 次に、「エンジェルファンド――短期運用ファンド――」という書類を見てみました。FX運用会社の平成19年度の運用実績が書いてありました。1月から12月までですが、21.70%, 12.90%, 15.70%, 20.07%, 19.35%, 18.22%, 14.79%, 19.01%, 8.27%, 12.34%, 10.92%, 8.86% というわけで、平均 15.22% と書いてありました。出資金が1年で 5.4 倍になったということです。大変な好成績です。FXでこんな運用成績が(安定して)上げられるものでしょうか。投資の世界では、ローリスク・ハイリターンはないとされます。かなり信じがたい数字です。
 この数字は2社の運用会社の平均だそうです。
 同じページには「2社のFX運用会社に分散投資のメリット」という説明があります。分散投資をすることでリスクを軽減することができるとのことです。この言い方自体は間違っていませんが、2社で「分散投資」といっていいものでしょうか。なぜ3社にしないのでしょうか。多ければ多いほど「分散」投資になると思うのですが。2社では「分散」というよりは「集中」だと思います。
 FX運用会社は、100社の中から1社を選んでいるそうです。ですから、200社を検討して2社を選んでいるということになります。その基準にはいろいろあるのですが、その中の三つを以下に示します。
・1年間で利益率100%以上のパフォーマンスを出しているか。
・リスクヘッジを行っているか。
・10年間以上継続して利益を出し続けられるか。

 この三つを満たすようなFXの運用会社があるものでしょうか。これも乙には信じがたいものです。
 「Angel-club」という書類もありました。それを見ると、エンジェル6号は毎月 2.5% の配当を1年間行った(そして償還された)ことが明記されています。しかし、以前 EDINET で見たように、
2008.8.20 http://otsu.seesaa.net/article/105031169.html
このファンドは半期で 1.5%(1年あたりで 3% 強)ほどの利益を上げているに過ぎません。毎月 2.5% の配当を出したのが事実であれば、自分の資金を配当に回している(いわゆるタコ足配当)のではないでしょうか。
 この書類では、エンジェル7号、8号についても、毎月 2.5% の配当を達成したことを華々しくうたっていますが、こちらも EDINET 上の半期報告書によれば、
2008.8.21 http://otsu.seesaa.net/article/105082749.html
2008.8.22 http://otsu.seesaa.net/article/105136657.html
エンジェル6号と同様に、大した成績を上げているわけではありません。やはりタコ足配当というべきでしょう。
 エンジェルファンドの12号以降はマザーファンド方式を採用していますが、その運用状況報告のところを見てみると、出資総額 100%、運用総額 102% などと書いてあります。ここは、具体的に何円と書くべきところで、パーセンテージで表示しては「総額」になりません。
 このような問題を考慮した結果、乙の「このファンドに投資しない」という判断はより強固になりました。
posted by 乙 at 05:24| Comment(5) | TrackBack(0) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月23日

妻の80万円の運用

 乙は、妻の資金を預かって、投資信託で運用しています。
 初めは、2005年10月で、資金は50万円だったのですが、
2006.5.1 http://otsu.seesaa.net/article/17248232.html
2007.4.26 http://otsu.seesaa.net/article/40055206.html
その後、30万円の追加がありました。
2007.8.23 http://otsu.seesaa.net/article/52391498.html
 その後、どうなっているか、7月末の段階で見てみましょう。

HSBC ブラジルオープン 46,299 円
LM オーストラリア毎月分配型ファンド 124,627 円
エマージング・ソブリン・オープン 46,213 円
DIAMワールド・リート・インカム・オープン 94,084 円
JPMF-JFアジア株・アクティブオープン 61,938 円
ソシエテ-SGロシア東欧株ファンド 39,297 円
三菱UFJチャイナオープン 88,241 円
SSGA 外国株式インデックス・オープン 45,308 円
ピクテ・ヨーロピアン 69,978 円
HSBCインド・オープン 135,132 円
MHAM 株式オープン 45,392 円
損保ジャパン−フォルティス・トルコ株式オープン 32,712 円
バンガード・スモールキャップ・インデックス 32,406 円
現金 4,435 円
合計=861,627 円

というわけで、最近の不調にもめげず、かろうじてプラスを維持しています。
 これらは積立をしているわけではないので、ただ単純に買って、じっとホールドしているだけですが、当初の50万円については、買った時期がよかったのでしょう。追加の30万円は、調子のいい(上げ相場の)ときでしたので、期待が大きく膨らんだのですが、その後の下落相場では、大きな損失をこうむってしまいました。
 それでもトータルすればプラスというのはけっこうすごいことです。
 上のようなポートフォリオを見ると、新興国に大きく偏っていることがわかります。乙がシーゲルの「成長の罠」
2008.4.7 http://otsu.seesaa.net/article/92505039.html
などを意識していない時期に買ったものですので、偏ったままです。
 では、この段階で一部の投資信託を売って、リバランスするべきか。これはなかなかむずかしいです。もともと、アセットアロケーションなどはまったく考えずに妻の資金を運用しはじめましたから、今さらリバランスするとなると、ほとんどの投信を売って、全面的な再投資にするしかありません。それも有力な方法ですが、投信は乗り換えるときに手数料がかかる場合が多いですから、運用成績はマイナスになりがちです。決心はどうしても鈍りがちになります。
 やっぱり、しばらくはじっと我慢していようかなと思います。
ラベル:投資信託
posted by 乙 at 05:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資方針 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月22日

エンジェルファンドの有価証券報告書(3)

 一昨日と同様の手順で、「G06574 エンジェル8号投資事業有限責任組合」を見てみましょう。
 3種類の書類が読めます。
H20.02.19 半期報告書(内国有価証券投資事業権利等) ‐ 第1期(平成19年5月22日‐平成20年5月21日)
H19.09.04 訂正有価証券届出書(内国組合契約出資持分)
H19.08.30 有価証券届出書(内国組合契約出資持分)

 「有価証券届出書」については、昨日、一昨日と同様です。
2008.8.20 http://otsu.seesaa.net/article/105031169.html
2008.8.21 http://otsu.seesaa.net/article/105082749.html
 「訂正有価証券届出書」は、日付を1日訂正するものなので、特に意味はありません。
 「半期報告書」を見てみましょう。
 出資持分総額は、57,750 千円とありますから、これが運用している資産ということになります。以前のものよりも運用している金額が大きくなっています。
 注目するべきは、自己資本利益率ですが、半期で 4.1% ほどの損失が出ていることが明記されています。
 6号、7号は、曲がりなりにもプラスの運用だったのですが、8号は半期ではマイナスだったのです。だから、このファンドでは分配金を出さなかったのでしょう。
 この書類でエンジェルファンドの実態の一部がうかがえます。運用成績は、大したことないというのが結論です。
 ところで、成功報酬制では、運用成績が伸びないと会社は何も儲けがありません。1年間に 30% 以上の利益を出さないと、会社の取り分がゼロなんです。そんなことで会社がやっていけるのでしょうか。乙にはわかりません。
 乙は、これらのエンジェルファンドの書類を見た限りでは、投資しない方針でいいと思いました。
続きを読む
posted by 乙 at 06:09| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月21日

エンジェルファンドの有価証券報告書(2)

 昨日と同様の手順で、「G06573 エンジェル7号投資事業有限責任組合」を見てみましょう。
 2種類の書類が読めます。
H20.02.19 半期報告書(内国有価証券投資事業権利等)‐第1期(平成19年5月21日‐平成19年6月20日)
H19.06.15 有価証券届出書(内国組合契約出資持分)

 このうちの「有価証券届出書」については、昨日の6号とほぼ同じです。
2008.8.20 http://otsu.seesaa.net/article/105031169.html
 「半期報告書」を見てみましょう。
 ここでも、自己資本利益率 3.4% というのは注目に値します。6号と同様に見ると、この投資組合は、1口当り、1,682.02 円の利益を上げながら、2,500 円を分配していることがわかります。
 これまた大した成績ではありません。
 このファンドは1年あたりで数十%もの高い利益を上げるものと思いましたが、そんなことはないのでした。
posted by 乙 at 04:30| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月20日

エンジェルファンドの有価証券報告書(1)

 乙は、勘違いをして、エンジェルファンドの有価証券報告書は EDINET で読めないと書いてしまいました。
2008.8.14 http://otsu.seesaa.net/article/104714407.html
 その記事は訂正しておきましたが、EDINET で読めます。
 さっそく、報告書を読んでみました。まずは「エンジェル6号」(EDINETコード番号:G06568)です。
https://info.edinet-fsa.go.jp/E01EW/
から「有価証券報告書」をクリックし、「ファンド検索」をクリックし、「G06568」を入れて「検索」します。
 2種類の書類が読めます。
H19.12.21 半期報告書(内国組合契約出資持分)‐第1期(平成19年4月4日‐平成19年10月3日)
H19.05.31 有価証券届出書(内国組合契約出資持分)

 まず、「有価証券届出書」を見てみました。
 「(13)【手取金の使途】」のところに「その全額を、投資先である株式会社フィナンシャルエージェント又は同会社取締役 志波清宏に対する金銭債権の取得及び保有を行い投資先会社はその資金をFX運用に充当します。」とあります。このファンドはFXをメインにしていたのでした。
 「B 設立報酬」のところでは、「本組合契約では、設立報酬として本組合契約29条第1項に定めるとおり、払込出資総額に対して10%を乗じた額を収受するものとする。」とあります。今は、特に記載がないので、その後設立されたファンドでは、こういう報酬はなくなったようです。設立報酬は申込手数料みたいなものですが、それが 10% というのはかなり高いと思います。
 書類の末尾の方に、「第2 関係法人の状況」の中に「(5) 事業の内容及び営業の概況」があり、株式会社エンジェル・コムがその当時運営していた組合の一覧が掲載されています。それぞれの出資金は 800 万円から 2,256 万円になっており、それぞれの規模がかなり小さいことがわかります。会社として、この規模でうまく運用していけるのでしょうか。

 次に、「半期報告書‐第1期(平成19年4月4日‐平成19年10月3日)」です。
 半年分の報告書ですが、自己資本利益率は 3.1% です。この読み方がよくわかりませんでした。
 注3のところに「自己資本利益率=中間純利益/期中平均純資産額(期首期末の純資産額の平均)」と書いてあります。中間純利益は 392 千円です。期中平均純資産額はよくわかりませんが、出資持分総額くらいでしょうか。すると、25,900 千円です。利益率を計算すると、1.5135% になります。半期分なので、1年あたりに直すと2倍になるということでしょうか。
 1口当りで見た場合、純資産 48,258.13 円、中間(当期)純利益金額 758.13 円ですから、当初の 47,500 円を運用して、758.13 円の利益を出したと読めます。758.13/50,000×100=1.516 ですから、ほぼ、上の計算と一致します。
 50,000 円と 47,500 円の差額は、書類中の1口当り分配金 2,500 円ということでしょう。つまり、この投資組合は、50,000 円の出資金から 758 円の利益を得ながら、2,500 円を分配しているわけで、分配金が一見多いようでも、実は自己資本を取り崩しているに過ぎないということがわかります。
 運用成績という面で見ると、大したことはないように見えます。
posted by 乙 at 04:25| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月19日

高橋洋一(2008.5)『霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」』(文春新書)文藝春秋

 乙が読んだ本です。
 今や、高橋氏は「霞が関埋蔵金男」と呼ばれているのですね(笑)。
 内容は、文庫編集部(?)のインタビューに応じる形で高橋氏が語ったものを文字化し、手を入れたものになっています。各所に(笑)があり、語り口がそのまま活かされています。
 第1章「「埋蔵金」とは何か」
 第2章「国のお金はどう動くのか――財政編」
 第3章「国のお金はどう動くのか――金融編」
 第4章「公務員制度改革の闘い」
 第5章「国家を信じるな」
という構成になっており、特に第3章が長めです。
 第1章は埋蔵金があちこちにあることを述べています。こういうことがあると、日本政府の財政破綻は(あるとしても)まだまだ先の話ではないかと思えてきます。
 第2章では、ガソリン税や道路特定財源などの話です。ガソリン税はピグー税として、高く設定して、ガソリンをあまり使わないようにする(そして一般財源化する)のが当然という話はわかりやすかったですね。
 p.58 には、「金利が高くなると為替は円高になる」という話が出てきます。乙は、これは話が逆なんじゃないかと思いました。
2008.6.1 http://otsu.seesaa.net/article/98767533.html
 この点については、さらに調べてからブログに書きたいと思います。
 第3章では、日銀総裁人事の問題も絡めて、日銀のあり方を論じています。普段あまり意識していないところですが、乙は日銀の「独立性」の意味も理解しましたし、高橋氏の解説でこの間の人事上のゴタゴタがすっきりとわかりました。
 第4章では、今の日本を「官僚内閣制」と呼び、真の「議院内閣制」にすることを主張しています。それくらいに官僚の力が強いということで、逆にいえば政治家のダメさ加減が描かれます。「国会議員と公務員の接触禁止」なんて、それだけを見ると、何のことか、理解できませんが、高橋氏の説明を聞くとよくわかります。官僚が国会議員に「ご説明」して、政治的決定がなされることがいろいろあるのですね。
 第5章では地方分権を論じています。
 全体として大変わかりやすいと思いました。分厚い経済書もいいですが、こういう新書で手軽に読めて、今の動きの意味が理解できるのはとてもありがたいことのように思いました。
 おすすめできる本です。


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ラベル:高橋洋一 埋蔵金
posted by 乙 at 04:12| Comment(2) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月18日

アブラハム・プライベートバンクからのメール

 先日、ブログでアブラハム・プライベートバンク株式会社のことを書きました。
2008.8.5 http://otsu.seesaa.net/article/104207792.html
 その後、乙のところにアブラハム・プライベートバンクからメールがありました。会って話がしたいということです。
 とうとう、乙もプライベートバンクに誘われるような立場になったかと感慨を持ちましたが、上の記事にも書いたように、ここに投資の助言を求めることは不要と思っていましたので、面談はお断りしました。
 しかし、それは乙の勘違いのようでした。乙のブログの記事が Google で会社のホームページよりも先に表示されるので
2008.8.15 http://otsu.seesaa.net/article/104762943.html
会社としては、ちょっと(かなり?)困っているようでした。会社の顧客が乙の否定的な記事を読んで不安になる(さらには顧客が離れてしまう可能性がある)のだそうです。乙が誤解しているような部分もあり、さらに、乙の記事が会社の顧客に誤解を与えるので、乙の記事を何とかしてほしいということのようでした。(そういう趣旨で乙に面談を申し込んできたということです。)
 もちろん、一番いいのは、乙自身がアブラハム・プライベートバンクに対して認識を変えることでしょう。そうすれば、記事を訂正するなり、後日新たな記事を書いて、旧記事からはそこにジャンプできるようにしたりするでしょう。そのため、会社からのメールで会社の考え方などを乙に説明してきたというわけです。
 メールの内容は、乙の個人あてのものですので、ここに掲載することはできませんが、乙は、その内容には多いに不満を持っています。WWW で説明していることとずいぶん違うのです。だったら、そういうメールの内容を WWW に掲載すればいいのにと思いました。
 乙のブログの執筆方針として、「会社名・商品名などは、伏せ字は使わず、差し障りのない範囲で実名主義で行く。」ということがあります。
2006.3.13 http://otsu.seesaa.net/article/14732420.html
 このことに直接関連しますが、乙のブログの執筆方針として、公表されている WWW 上での情報に基づいてブログを書くということがあります。(そこで、乙の記事にはしばしば URL が登場します。)WWW 上の情報ならば、第三者も確認できます。乙の意見が妥当であるのか妥当でないのか、誰でも WWW を見て確認すればいいのです。
 個人あてに来たメールに基づいてああだこうだ言っても始まりません。それは個人の経験でしかありません。他人からはメールの内容が確認できません。
 というわけで、アブラハム・プライベートバンク株式会社には、乙あてのメールで示したような話を WWW に書くことを要望します。それがアブラハム・プライベートバンク株式会社のことを多くの人に正しく(=ありのままに)受け止めてもらう一番いい方法なのではないかと思います。
 そうなればそうなったで、乙のブログでも違った書き方をするでしょう。

 なお、アブラハム・プライベートバンク株式会社には、乙から次のようなメールを送っておきました。(一部だけ示します。)
 確かに私の誤解がある部分もあるかと思います。私は、WWW で見ただけのことに基づいて御社のことをブログに書いたまでのことです。
 私の誤解を指摘なさる場合は、いろいろな手段が考えられます。(直接の面談は、よろしくないものと思います。)
 たとえば、私のブログの当該記事に対する「コメント」で、これこれを誤解していると具体的に指摘してくださるのが一番いいものと思います。コメントするときに「お名前」欄に仮名やペンネームを書くのでなく、御社の名前をお書きになることが望ましいと思います。
 あるいは、御社のサイト中に、「乙川乙彦の投資日記」のこれこれの部分は誤解に基づいていると記すことも一つの方法でしょう。
 そういうことがあれば、私が誤解していることを確認した場合には、訂正記事を書くなり何なり、対応をとらせていただきます。(御社のサイトに記述があれば、私の方でその URL を示した上で、ブログ記事を書くこともありうると思います。)
 私の誤解でなければ、「反論」の形で私の意見をさらに詳しく書くこともあり得ると思っています。
【中略】
 私のブログ記事に、第三者に誤解を与える部分があれば、それを修正することにやぶさかではありません。具体的に、どの表現が第三者に誤解を与えるのか、ご指摘ください。
 私のブログで固有名詞を省略することは、一般に行っていません。(過去のすべての記事で同じ方針です。)この方針については、私のブログにもすでに書きました。
2006.3.13 http://otsu.seesaa.net/article/14732420.html
 私のブログ記事は、(個人のプライバシーに関わるものなどは固有名詞を出しませんが)会社名、商品名など、すべて固有名詞をそのまま出しています。なぜならば、私のブログ中には URL をきちんと示すようにしていますが(これは情報の出典を明らかにすることであり当然のことです)、こうすることで、固有名詞を省略しても、読者は容易に固有名詞を同定することができてしまい、結果的に省略する意味がなくなってしまうからです。


posted by 乙 at 04:47| Comment(13) | TrackBack(2) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月17日

住友信託銀行、ユアパートナー総合口座の優遇サービス終了

 乙は、住友信託銀行に口座を開設して、利用してきました。
2008.1.4 http://otsu.seesaa.net/article/76319416.html
この口座は、インターネットバンキングを利用して振込みをすると、月5回まで振込手数料が無料になるという優遇措置がありました。しかし、この無料措置が今年の10月で終わってしまうとのことです。
http://www.sumitomotrust.co.jp/news/080813.html
 100万円の残高があれば振込無料が継続されるということです。
 さて、100万円を住友信託銀行に積んでおくべきかどうか。乙なりに考えてみました。
 新生銀行でも、投信等の残高が30万円あれば月5回の無料振込ができます。
2008.5.14 http://otsu.seesaa.net/article/96641965.html
 また、イーバンク銀行でも、給与振込を受け取っているため、月3回までは無料振込が可能です。
2008.7.2 http://otsu.seesaa.net/article/101976701.html
 イーバンク銀行から新生銀行に資金を移動するのに1回の振込が必要ですから、両方を合わせれば、月7回の無料振込ができます。乙の普段の生活を考えると、これだけあれば十分なように思います。
 ということで、乙は、住友信託銀行の口座を10月に解約することにしました。結果的に1年未満の短いお付き合いになってしまいました。
 乙は、使っている口座が多いので、少しは整理した方がいいと思っています。
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posted by 乙 at 04:15| Comment(3) | TrackBack(0) | 金融機関 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月16日

大前研一(2007.11)『大前流 心理経済学 貯めるな使え!』講談社

 乙が読んだ本です。実におもしろい本です。端的に言って、今の日本がなぜ閉塞状況に陥っているのか、それを解決するにはどうしたらいいかを説いた本です。図表も豊富で、わかりやすく、説得力があります。
 書かれていることが広範囲に及ぶので、ブログで要約することなんてとても無理です。本書自体を読むしかありません。読んだ後は、頭がすっきりします。日本のあり方、政治家が考えていること、官僚が考えていること、などなどがすうっと説明されてしまい、「そうだそうだ」と言っている自分に気が付きます。
 大前氏は実に合理的な考え方をする人なんだと改めて感心します。こんなにも明解に日本が進むべき道を示した本があるでしょうか。(大前氏の過去の著作は同一線上にあるものと思います。)今の政治家たちに本書を読ませてみたいと思います。
 基本は、1500兆円の個人金融資産を投資に回すことだと言います。それだけで日本は大きく変わるのです。
 ただし、乙が疑問に思ったことが一つあります。pp.252- です。「1500兆円の個人資産で世界最強のファンドを作れ」ということで、10兆円単位のシグニチャー・ファンド(運用者の個人名入りのファンド)をたくさん作り、世界で最も優秀なファンドマネージャーを雇い、互いに競わせ、1年間の運用実績を確認して次の1年間のファンドを組み替えるようにすることで、年率 10% 以上の運用利回りが実現できるとしています。
 本当にこれが可能でしょうか。シンガポールで年金資金が 9.9% で運用されているからといって日本でも可能でしょうか。
 乙は二つの点で疑問を感じています。

(1)優秀なファンドマネージャーがいつも好成績を上げるわけではない。
 インデックス投資の考え方からすれば、ファンドマネージャーが好成績を上げたとしても、それは単なる偶然だということになります。
 ウォーレン・バフェットのように、株式投資で継続的に好成績を上げる例があるから、ファンドマネージャーでも優秀な人がいるという話はありますが、乙はそうは思いません。
 10兆円という巨額な資金ともなれば、ちょっとした株を買おうにも、資金が大きすぎて、自分で株価をつり上げかねません。株を売るときには、資金が巨大すぎて、大幅な株価下落を引き起こし、まともに売れなくなるのではないでしょうか。
 つまり、10兆円をうまく運用することは基本的に困難で、かろうじて可能なのはインデックス運用しかないのではないでしょうか。現実には、10兆円ファンドが数十もできるのです。全世界でこれら全部が飲み込めるのでしょうか。
 また、ファンドマネージャーを公募するとなると、変なヤツが紛れ込んできます。これをうまく排除できるでしょうか。
 乙がファンドマネージャーなら、それっとばかりに申し込みます。10兆円ですから、手数料が 0.2% だとしても、1年で200億円です。こんなうまい話はありません。そして、若干の(2倍程度の)レバレッジを効かせた投資をします。オプションを利用すれば可能でしょう。株価が1年間で上がるか下がるかは、わかりませんが、長期的には若干上がる傾向にあるわけですから、1年間でも、下がるよりは上がる方が可能性が少し大きいと思います。うまく行けば、現物主義のインデックスファンドを2倍も上回る好成績を上げることができます。1年うまく行くと、次年度も運用を任されそうで、再度 200 億円+α(前期の上昇分の 0.2%)の収入です。失敗すると、運用資産が大きく目減りします。株価下落時にはインデックスの2倍の損失が出るからです。そのときは、契約の継続はできません。しかし、「運用が下手でした。ごめんなさい」で終わりです。200億円もらえれば、それで十分です。次年度以降、運用を委託されなくてもかまいません。1年だけの運用で、一生暮らしていけるだけの資産を築くことができます。
 こんなことを考える不埒なヤツもいそうですが、それを事前に見破ることができるでしょうか。誰が見破れるのでしょうか。

(2)日本円の低金利下では、高利回りの運用は難しい。
 円をドルに替えて、世界のマーケットで勝負すれば、10% くらいの運用は可能でしょう。しかし、日本が低金利、アメリカが高金利(サブプライムローン問題の影響で現在はさほど高金利でもなくなってしまいましたが)だとすれば、将来的には(理論的には)円高が起こります。そこで、せっかくドルで 10% 稼いだとしても、円換算では、そんなに高利回りにはならなくなります。
 大前氏は、これだけでなく、日本の金利を(5.5% くらいに)引き上げよと主張しているので、その場合は、年 10% の運用も可能なように思います。しかし、今の低金利では 10% の運用利回りはむずかしいのではないかと思います。

 この問題と比べると、小さいのですが、p.341 では「株式・資産形成講座のカリキュラムの一部」が出てきます。この中に「テクニカル分析実践」というのが含まれています。大前氏はテクニカル分析が有用だとお考えのようです。インデックス投資の考え方とは対立する考え方です。


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2008年08月15日

乙のブログの影響度

 先日、アブラハム・プライベートバンク株式会社についてブログで書きました。
2008.8.5 http://otsu.seesaa.net/article/104207792.html
ふと気が付くと、Google で「アブラハム・プライベートバンク株式会社」あるいは「アブラハム・プライベートバンク」を入れて検索すると、乙のブログが先頭に表示されるんですね。ここしばらくはそのままです。
 次が、ma-investment の記事
http://ma-investment.jp/
http://www.ma-investment.com/archives/2008/08/post_103.html
で、この記事にあるように、「※2008年7月15日より、社名がアブラハム・インベストメント株式会社からアブラハム・プライベートバンク株式会社へ変わりました。」だそうですので、こちらが本物のオリジナル・サイトです。
 Google のページランクは、どうやって評価しているのか、知りませんが、それにしても、本物のサイトを押さえてブログ記事を上位に出していいものでしょうか。乙のブログはそんなに影響度があるのでしょうか。乙としては、うれしいような気がする一方、ちょっととまどいを感じました。そんなに力を入れて書いたわけでもないし、……。

 ちなみに、Yahoo! では、本物のサイトが上位に並び、乙のブログは「アブラハム・プライベートバンク株式会社」の場合で17位、「アブラハム・プライベートバンク」の場合で48位に表示されます。もっとも、こういう順位はどんどん変わってしまうものですけれども。

 乙のブログは、単に書きつづっているだけで、SEO 対策は何もしていません。そんな必要はないし、……。
続きを読む
ラベル:ブログ 影響度
posted by 乙 at 03:44| Comment(0) | TrackBack(1) | ブログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月14日

エンジェルファンドには投資しません

 ある読者の方からエンジェルファンドというものの紹介がありました。
 乙は、さっそく WWW を見てみました。
http://www.angelcom.co.jp/pr.html
がPRのページです。
 会社のホームページ
http://www.angelcom.co.jp/
からも簡単にアクセスできます。
 年間配当率が 30% というのを聞くと、思わず、身を乗り出したくなります。
 しかし、WWW を一読して、乙は投資しないことにしました。
 その理由を以下に書いておきます。

(1)30% もの高利回りを上げる仕組みが理解できない。
 毎月 2.5% の配当を出すとのことですが、なぜ、こんなにも高利回りの運用が可能なのでしょうか。
 どんな運用をしているのでしょうか。
 WWW を見る限りでは、株式運用、FX、先物取引、不動産取引など、幅広く運用専門会社を探して、100 社以上の中からさまざまに検討して決めているのだそうです。しかし、これらの取引で年率 30% もの高利回りを達成することはきわめて難しいというのが常識です。
http://www.angelcom.co.jp/manabu/manabu.html
には、「なぜ、そのような運用益が出るのか? 理由はとても簡単なことです。エンジェル・コムは、運用のプロフェショナル集団だからです。」とありますが、プロだから運用益が出るというのは、説明として十分ではありません。一時的には可能でも、それを継続することはどんなプロでも不可能に近いと思います。

(2)全体の資金運用額が明示されない。
 さまざまなファンドを組成して、それらをまとめてマザーファンドにしているようですが、その全体の大きさ(つまり資金運用している金額)がまったくわかりません。WWW 中のどこにも書いてないのです。まさか 100 万円程度を運用しているとも思えませんが、1000 万円なのか、1億円なのか、はたまた10億円なのか、もしかして 100 億円もあるのか、それによって運用のしかたは大きく変わってくるはずです。それを明示しないのは、情報開示が不十分だといわざるを得ません。

(3)完全成果報酬制度を採用している。
 完全成果報酬制度として、毎月 2.5% の運用益を越えた分が会社の取り分になるということですが、それでは、安定的な運用はできないと思います。マイナスの運用になったら(それが継続したら)会社としてファンドからの収入がなくなってしまいます。そんなことで会社がやっていけるのでしょうか。
 ハイリターンを達成するためにはハイリスクな投資が必要です。ハイリスクということは、大きなプラスの運用になることもあれば、とんでもない下落に見舞われるということもあるということです。それを考えたら、「完全成果報酬制度」では会社がやっていけないと思います。

(4)今までの運用成績の開示が不十分である。
 毎月 2.5% 以上の成績を上げ続けているという話ですが、今までの運用成績は、具体的にどうだったのでしょうか。何も開示されていません。
http://www.angelcom.co.jp/pr.html
には、月当たり 2.5% を上回る成績が1年続いているグラフが掲載されていますが、そこには「成功報酬参考図」と書いてあり、これはあくまで参考図なのであって、実績ではないことが示されます。
 こういうグラフこそ、実績に基づいて書くべきところです。
 参考図では、毎月 3% 程度の運用益を出しているようですが、そういう実態の数字を出す必要があると思います。
 配当達成率だけを示すのは、不十分です。

(5)配当達成率 99.9% というのはおかしい。
http://www.angelcom.co.jp/pr.html
では、配当達成率が 99.9% であることを示し、かつ「エンジェルファンドは、これまで30%/年間の配当を下回ったことは1度もありません。」と書いてあります。これは矛盾しています。99.9% ということは、0.1% だけ達成できなかったということです。「一度もない」ということはウソです。
 次に、99.9% というのは、1000 回中の 999 回という意味ですが、運用期間と矛盾しています。
http://www.angelcom.co.jp/company.html
によれば、会社設立は2006年(平成18年)2月20日とのことですから、まだ2年半ほどしか経っていません。毎月1回の配当をするならば、30回しかありません。つまり、1回下回れば、96.66…% になってしまいます。0回ならば、100% になります。99.9% という数字にはなりえません。

(6)出資金額が1口5万円と低額である。
 一人何口も購入するケースがあるでしょうから、単純には考えられませんが、1口5万円の出資でもいいようです。
 5万円程度の小口投資では、会社が投資家に連絡する際の手間(郵便でも80円かかります)などで、コストがかなり高くなってしまい、まともな運用はできないでしょう。

(7)投資家の人数を48人に制限している。
http://www.angelcom.co.jp/fund.html
によれば、募集している投資家の数は48人だそうです。
 こんなところで人数を制約する意味はあるのでしょうか。なぜ人数を制約するのでしょうか。
http://www.angelcom.co.jp/financial.html
によれば、49人以下の人数にすることで適格機関投資家特例届出制度を利用するためのようです。
 では、48人が5万円ずつ出し合ったらどうなるでしょうか。たった240万円しか資金が集まりません。これでどうやって運用するのでしょうか。
 マザーファンド方式を採用しているので、大丈夫だという説明も可能でしょう。しかし、それを逆にいえば、本来、もっとずっと大きい規模のスキームであるはずなのに、法令のすきまを突いて48人ごとに区分して募集しているわけで、制度の趣旨に反する行為なのではないでしょうか。エンジェルファンド20号、21号などと区分していますが、募集終了日が同じだったりします。(募集開始日がずれていれば、まったく同じではないわけですが。)

(8)監査がどのように行われているか不明である。
 匿名組合の形式で投資をするようですが、匿名組合では投資信託と違って、資金を受託機関に預けるわけではありません。自分でやりたい放題に運用できてしまいます。ですから、自転車操業(新しい投資家からの投資資金を前の投資家に配当として渡すこと)も可能です。
http://www.angelcom.co.jp/manabu/manabu.html
では、次のような部分があります。
質問)自転車操業ではないのですか?
お答え)当社は、全てのファンドに対して外部の監査を採用しております。
つまり、各ファンドの運用総額を、運用以外に使用できない環境となっております。
自転車操業ですと、監査法人に監査を通してもらうことが出来ません。エンジェル・コムの組成するファンドが監査を受けているという事は、自転車操業をしていない事の証なのです。

 これはどれくらい信頼できるでしょうか。
 まず、監査の内容が不透明です。入金・出金が正確に行われ、帳簿と通帳や現金の金額が一致していることを確認するだけなのではないでしょうか。仮に自転車操業が行われていても、帳簿の記載が正しければ、監査を通るのではないでしょうか。投資信託だって、運用成績がマイナスのときに分配金を出すことが認められています。「特別分配金」というものがそれです。匿名組合でも同様でしょう。監査の内容は、どこにも書いてありません。
 次に、監査法人に関しても、若干問題があります。このファンドの監査法人は、東京都中央区京橋1-5-15にあるイデア監査法人というところだそうです。
 WWW で「イデア監査法人」を入れて検索してみると、ある程度のことがわかります。
http://www.sigyo.net/list/archives/zeirisi-tateno-haruo.html
では、立野経営会計事務所が「イデア監査法人を併設するワンストップサービス対応型事務所です。」とうたっています。また、
http://www.ms-cpa.co.jp/introduction.html
の中に、山口学氏が 2007 年12月にイデア監査法人代表社員に就任したという話が出てきます。
 しかし、これだけです。WWW で検索して、まともにヒットしない監査法人というのは、どんなものでしょうか。
 「中央区京橋1-5-15」を入れて検索してみると、ここには巴川製紙ビルというのがあるようです。
 そのビルについては、
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/nfm/news/20080728/524698/
によれば、東急がこのビル全体を購入したようです。さて、イデア監査法人はどんなところなんでしょうか。

(9)税金の話が載っていない。
 毎月 2.5% の運用益を上げているとして、では、税金はどうなるのでしょうか。源泉徴収されるのでしょうか。この説明が何もありません。
 たぶん、20% の源泉徴収だと思いますが、すると、毎月 2.5% の運用益というのは、2.0% に下がってしまいます。この点は明確に書いておくべきところです。
 なお、自転車操業をしている場合は、源泉徴収はありません。自分の資金を取り崩しているのと同じことですから、「儲け」はなく、したがって税金を払う必要はありません。

(10)運用報告書がない。
 運用期間がすぎ、すでに償還されたファンドもあるようですが、運用報告書の類を WWW に掲載しておく方がいいと思います。それがないと、過去にどんな運用がなされたのか、確認もできません。
 どうせ出資者には運用報告書を配ったはずですから、それをそのままネットに載せるだけでいいのです。手間のかからない(しかし十分な情報開示になる)方法です。
 それがないのでは、過去の運用について疑念が生じます。
 ところで、
http://www.angelcom.co.jp/fund.html
には、次のようにあります。
EDINET(Electronic Disclosure for Investor’s NETwork)とは、金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システムと言い、金融庁より行政サービスの一環として提供されているものであり、提出された開示書類についてインターネット上でも閲覧を可能とするものです。

過去組成のファンドにつきましては下記の有価証券届出書を提出しております。

エンジェル6号
有価証券届出書  EDINETコード番号:G06568
エンジェル7号
有価証券届出書  EDINETコード番号:G06573
エンジェル8号
有価証券届出書  EDINETコード番号:G06574

 乙は、さっそく EDINET
http://info.edinet-fsa.go.jp/
にアクセスしてみました。
 提出者検索画面
https://info.edinet-fsa.go.jp/E01EW/BLMainController.jsp
で EDINET コード番号を指定してみましたが、3件とも「注意該当するデータが存在しませんでした。」になりました。

 また、「発行者検索画面」
https://info.edinet-fsa.go.jp/E01EW/BLMainController.jsp?1218489784062
で「エンジェル」を入れて、「前方後方検索」を指定しましたが、「該当するデータが存在しませんでした。」になりました。

 このようないくつかの理由から、乙はこのファンドに対する投資を見送ることにしました。

 ネットを検索してみると、この投資話について、ゆうきさんがすでに否定的な意見を述べていることがわかりました。
http://fund.jugem.jp/?eid=564
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posted by 乙 at 05:50| Comment(12) | TrackBack(0) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月13日

株の売りのコツ

 日経新聞、8月12日夕刊の4面に出ていた記事で、阿部智沙子氏の書いた「目からウロコの投資塾」というものがあります。「株 売りのコツ」の1回目で「水準・期限を決めておく」というタイトルが付いています。
 その中に、こんな話があります。(一部引用します。)
 たとえば、買値よりも 10% 値上がりしたら売るという利益確定の基準を決めたとします。これに対して、損切りの基準が「20% 以上値下がりしたら売る」というものだとしたら、期待する利益よりも損失が大きくなってしまいます。仮に利益確定と損切りの回数が同じになるとすれば、資産は減る一方です。
 利益確定と損切りの最適な基準を特定することは困難ですが、例えば損切りの基準を利益確定の基準の半分にすれば、「5勝10敗で損益はトントン」というイメージになります。

 乙は、これは間違いだと思います。
 第1段落で仮定したように、「買値よりも 10% 値上がりしたら売り、20% 以上値下がりしたら売る」というものだとしたら、利益確定と損切りの回数が同じになるはずはありません。株価の変動がランダムだとすれば、10% 値上がりする確率(回数)のほうが、20% 値下がりする確率(回数)よりも大きくなります。
 問題は、10% 値上がりする確率は、20% 値下がりする確率の2倍かということになります。2倍以上大きければ、「買値よりも 10% 値上がりしたら売り、20% 以上値下がりしたら売る」という方針でいいことになりますし、2倍以下なら、この方針ではダメだということになります。
 阿部氏は上の引用部分の第1段落では1倍だと考えているようです。それでは「ダメ」という結論になります。もっとも、第2段落ではちょうど2倍と考えているようです。
 この問題については、以前、乙のブログに書いたことがあるので、ご参照ください。「株の売買における利食いと損切り(1)」
2007.9.16 http://otsu.seesaa.net/article/55103375.html
です。
 結論からいうと、株価がランダムに上下するという条件の下では、10% 値上がりする確率は、20% 値下がりする確率の2倍よりもほんの少し大きいのです。したがって、「買値よりも 10% 値上がりしたら売り、20% 以上値下がりしたら売る」という方針で問題はないというのが乙の考えです。
 阿部智沙子氏は「プロ」だそうですから(記事の副題に「プロに聞く」と書いてあります)、シロートの乙の考えと比べてはいけませんが、乙は、阿部氏が根拠を示さずに主張しているように思えてなりません。乙は根拠を示して阿部氏と反対の主張をしていますが、阿部氏の乙に対する「反論」をお聞きしたいものです。プロらしい反論が出てくるものと期待します。
 プロはシロートのブログを読んでくれないので、乙が阿部氏の「反論」をお聞きすることはほとんど期待ゼロなのですが、……。
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posted by 乙 at 04:34| Comment(8) | TrackBack(0) | 株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月12日

住信-STAM グローバル REIT インデックス・オープン

 乙が最近購入した投資信託です。
 とはいえ、実は、妻からあずかった資金を運用している分です。
2007.8.23 http://otsu.seesaa.net/article/52391498.html
 最近、解約した DIAM ワールド・リート・インカム・オープン
2008.8.7 http://otsu.seesaa.net/article/104325553.html
の資金で、こちらを購入しました。投資信託を乗り換えたことになります。
 乗り換えにあたっては、妻の意向を確認しました。当初の話のように、3年程度で投資をやめるならば、乗り換えなどせずに、そのまま数ヶ月程度待っているほうがいいでしょう。しかし、妻はさらに長期にわたって投資を継続したいという意向だったので、それならば、ここら辺で乗り換えてもいいのではないかと思いました。
 妻は、海外の銀行・証券会社を使うことに否定的ですから、国内の銀行・証券会社の中で、世界の REIT に投資するものを探しました。(といっても、ベストワンを徹底的に探したわけではありません(笑)。どうせ大した金額ではありませんから。)
 乙は、SBI 証券で、住信-STAM グローバル REIT インデックス・オープン
http://www.sumishinam.co.jp/fund/lineup/detail/index.php?fund_id=73
を購入することにしました。
 これは、ノーロードで、信託報酬は 0.861% です。DIAM ワールド・リート・インカム・オープンに比べると、コストは圧倒的に安いです。2008年1月9日に設定された比較的新しい投資信託ですが、今の純資産が20億円になっており、これからさらに増えるものと予想されます。このくらいあれば、早期償還にはならないでしょう。
 国内では、世界の REIT に投資する ETF は購入できないと思います。海外 ETF を国内の証券会社で買うと、為替手数料、買付手数料とも高すぎて、10万円くらいの投資ではペイしません。
 ということで、選択肢としては REIT のインデックスファンドが優れていると思いました。
 乙は、住信-STAM シリーズには好感を持っており、毎月積立にもこれを利用しています。
2008.4.5 http://otsu.seesaa.net/article/92292888.html
今回の購入の判断には、これも影響していると思います。
ラベル:住信 stam REIT
posted by 乙 at 05:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内投資信託 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月11日

橘玲, 海外投資を楽しむ会(2008.7)『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券会社編』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。本書は、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』
2008.8.8 http://otsu.seesaa.net/article/104383634.html
の姉妹編です。海外投資でよく利用される銀行・証券会社に関する情報を効率的に集めたもので、「究極の資産運用編」が金融商品の紹介ですから、この2冊があれば「どこで何を買うか」という二つの側面が満たされるわけです。
 本書の記述は、
Part 1 タックスヘイブンからプライベートバンクまで! 海外投資の基礎知識
Part 2 口座開設から格安海外送金術まで! 海外銀行口座活用マニュアル
Part 3 世界中の市場にアクセスする! 海外証券会社の使い方バイブル
の三つの部分に分かれます。それぞれの先頭にある Q&A が充実していて、ここを読めば必要なことが一通りわかるようになっています。この分量で、こんなにも豊かな記述ができるというのは驚きです。橘氏、および海外投資を楽しむ会のたくさんの蓄積のたまものでしょう。
 それぞれの銀行や証券会社の利用法を説明している部分は、あまりオリジナリティがありません(まあ当然ですが)。しかし、それでいいのではないでしょうか。
 乙は、この中のいくつかを利用していますが、自分の利用している銀行・証券会社の記述を見ると、一通りのことがコンパクトに書かれていて、妥当なように思えます。(WWW の画面を貼り付けて説明している部分はやや冗長のように感じますが。)一方、自分が利用していない銀行・証券会社の記述を見ると、それぞれの特徴が手に取るようにわかり、利用するべきか否かの判断ができるように思います。
 そんなことから、本書は、海外の銀行・証券会社の紹介としては、現在、もっとも優れたもののように思います。
 本書を読んでいて、自分でも知らなかったことがありました。p.112 ですが、HSBC 香港で、送金先を登録しておいた場合、長期間使わないでいると、セキュリティの観点からその設定がリセットされるというのです。登録は、紙に書いて郵送して行ったので、それなりに手間がかかっているのですが、それが消えてしまうとなると、かなり残念です。乙が死んだ後に、家族がこの口座にアクセスして日本宛に送金するようなことを考えていたので、その段階で乙の日本の銀行の口座登録が消えていると、(乙が死んでいるので)書類にサインができず、したがって再度口座登録ができないことになりますので、問題になります。また、中には、口座の指定が難しかった場合もあったりします。何回か試して正しく登録できた場合もあります。銀行のウェブページに送金先の記録があれば、次回の送金にはそれを使うだけでいいと思いこんでいましたから、そういう設定が消えるとなるとこれまた問題です。「長期間」がどれくらいの時間を指すのか、書いてあるとありがたいと思いました。
 また、本書を単純に読んでいると、矛盾するように思えるところもありました。インタラクティブブローカーズに関する記述ですが、p.239 下から2行目には「IB には両替機能はなく、」と書いてあります。一方、p.241 下から4行目では、「(乙注:日本円を)IB 内で米ドルに両替し、【中略】送金することで、格安のドル送金が可能になる。」とあります。実際のところは、FXで両替して、それが出金できるのですから、それは「両替機能がある」と見てもいいのではないでしょうか。
 「究極の資産運用編」では、ミスプリが多かったですが、
2008.8.8 http://otsu.seesaa.net/article/104383634.html
本書は少なかったです。乙が気づいたものは p.120 右上のところの「Rela-tionship」(ハイフンが余分)だけでした。
 本書も、ぜひ手元に置いておきたい良書だと思います。


ラベル:橘玲 海外投資
posted by 乙 at 05:48| Comment(0) | TrackBack(2) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月10日

資産管理方法(続)

 乙は、自分流で資産管理をしています。その方法については、すでにブログに書きました。
2007.11.24 http://otsu.seesaa.net/article/68477179.html
2007.11.23 http://otsu.seesaa.net/article/68476443.html
 その後、乙は木田知廣氏の資産管理ワークシート
2008.8.9 http://otsu.seesaa.net/article/104437941.html
を知りましたが、乙のオーダーメイドのオリジナルな管理方法は、万人向けのワークシートよりはるかに便利であると思います。(ただし、言うまでもなく、「乙にとっては」という限定つきです。)
 どういう点で便利なのか、木田知廣氏の資産管理ワークシートと比較して、書いておきましょう。

(1)以前の計算結果の保存は、テキストファイルなので、簡単で安全で長期保存が可能
 単純テキストファイルは基本的なファイル形式ですから、これが使えなくなることはないでしょう。30年は必ず持ちます(そう信じます)。
 30年後、OSが Windows でなくなっても、キーボードがなくなっても、パソコンが使われなくなっても、必ずコンバージョンプログラムが提供されるでしょう。30年前(パソコンがなかった時代)にすでにテキストファイルという形式が存在し、そのころ乙が書いたものが今でもそのまま生き残っています。(実際、たまに参照します。)
 ですから、情報をテキストファイルで保存しておけば、たいていは死ぬまで保存できます。
 資産一覧の30年分(360回分)を一つのファイルに収納しても、テキストファイルは容量が小さいですから、ラクラク入ってしまいます。そして、短時間に必要な情報を取り出すことができます。

(2)資産の種類は自分で自由に決められる
 オリジナルソフトですから、好きな区分のしかたが可能です。
 ただし、バランスファンドやファンド・オブ・ファンズの記入法は、やはり難しいです。乙は、バランスファンドは購入していませんし、ファンド・オブ・ファンズの場合は、それぞれを元資産ごとに分割して記入するようにしています。

(3)投資先地域の種類も自由に決められる
 これも、オリジナルソフトですから、好きな区分のしかたが可能です。
 ただし、こちらも、世界分散ファンドなどの扱いがちょっと難しいです。乙は、記録紙には「世界株」のように書いておき、プログラム中でそれを読み込んだ場合に、適当な配分比率でアメリカ、ヨーロッパ、新興国に分割してそれぞれに加算するようにしています。
 数年に1回は、この「配分比率」を見直す必要があるかもしれません。

 オーダーメイドのオリジナルな管理方法が使える人は使えばいいし、使えない人は自分で工夫するしかありません。その場合、万人向けのワークシートも選択肢の一つでしょう。

 ソフトの話を洋服にたとえましょうか。
 手間のかからない既製服だって、けっこういいのがあるし、体格が極端でなければ、たいていはそれで間に合うものです。一方では、自分で手縫いしながら服を作る人もいるわけです。どちらがいいかは、人さまざまです。自分に手縫いの技術があれば、自分にピッタリのものを自分で作ることができますが、なければ、他人に作ってもらうか、既製服にするかしかありません。他人に作ってもらう注文服は、一般に高価になります。既製服なら安いです。ただし、その既製服が本当に自分にピッタリかというと、若干問題があります。
 木田知廣氏の資産管理ワークシートは、まさに既製服であり、万人向けを目指しますが、乙の資産管理の方法は手縫いの服であり、自分専用、個人向けなのです。両者は、目指すところが違っていて当然です。
ラベル:資産管理
posted by 乙 at 06:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資方針 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月09日

木田知廣氏の資産管理ワークシート

 乙は、以前のブログ
2008.8.4 http://otsu.seesaa.net/article/104139445.html
で、木田知廣(2007.11)『これなら買える! 投資信託』ダイヤモンド社 を取り上げました。
 そうしたら、著者の木田氏からメールをいただき、資産管理ワークシートが(当該著書に書かれているものから)改訂されていることを知りました。
 乙は、木田氏から改訂版のワークシートをいただきましたが、それを見て、やっぱり自分には使えないなあと感じました。まあ、乙はもともと Excel を使っていないのですが、……(笑)。
 木田氏の資産管理ワークシートは
https://g203.secure.ne.jp/~g203105/kanri_dl.htm
からダウンロードできますので、必要な方はアクセスしてみてください。乙はアクセスしていないので、WWW からダウンロードできるものが、当該著書に掲載されているものと同じものなのか、改訂版なのか、わかりません。
 さて、乙が改訂版を起動してみて、いくつか問題があるように思ったところをメモしておきます。

(1)計算日が今回と前回の二つある(二つしかない)
 為替レート、日経平均株価、金価格に関して、前回の数値は、果たしてどういう意味があるのか、わかりません。(参考)と書かれているので、なくてもいいようですが、初めからないほうが自然なように思います。
 そういうのが用意されているなら、クリック一発で「今回」の数値が「前回」に移動できるといいかもしれません。まあコピペで移動しても大した手間ではなさそうですが。
 さて、前回以前のものはどうするのでしょうか。これははっきりとは書かれていません。

(2)以前の計算結果の保存
 乙は、毎月1回自分の資産残高を計算していますが、計算結果は長期にわたって保存しています。たぶん死ぬまで保存を続けるでしょう。何年前はどうだったなどと、後から振り返ることも多いからです。30年分くらいは保存しておきたいと思います。
 では、木田氏のワークシートは以前の計算結果はどうするのでしょうか。たぶん、一番いいのは、シートをそっくりコピーして、別のシートを開いて、そこにペーストしておくことでしょう。
 毎月1回ワークシートに記入する場合は、毎月シートが1枚ずつ増えていくことになります。
 30年で360枚になりますが、さて、Excel では、シートは(一つのブック中に)何枚まで入るのでしょうか。何年何月分と指定して、さっとそのシートに移動できるものでしょうか。複数のファイルに分かれて格納されたりすると、検索が不便なように思いますが、この辺のハンドリングはどうなっているのでしょうか。
 さらにいうと、今から30年後、Excel は使われているでしょうか。まあ、他のソフトが使われるようになっていても、Excel からの移行がたぶん保証されているとは思いますが、心配ではあります。(こういう心配があって、Multiplan も、Lotus 1-2-3 も、使わないままに過ごしてきたわけですが。)

(3)資産の種類は株式、債券、その他(それに現金)しかない
 一般的には、この分類でいいと思いますが、「その他」を区分して、不動産(REIT)、商品、金(ゴールド)、ヘッジファンドなどを分けて管理したいという人もいるでしょう。
 なお、バランスファンドを利用する人は、どう記入するべきか、かなりむずかしいように思います。(「その他」なのでしょうか。「その他」でいいのでしょうか。)

(4)投資先は海外と国内の二つしかない
 投資先の地域別ですが、海外は、先進国と新興国とに分けて管理したいとか、乙のように、アメリカとヨーロッパと新興国に3分したいという人もいるでしょう。
 もっとも、分けて管理すると、広く世界各国のインデックスに投資するファンドをどう扱うべきかという問題が発生します。(3)と似たような問題です。

 このように考えてくると、やっぱり、万人に適した資産管理ワークシートというのは無理があるように思います。オーダーメイドで自分に適したものを作るのが一番いいと思います。

 なお、木田氏のブログもあります。興味のある方はどうぞ。
http://www.money-college.org/blog/user/stayhungry/
posted by 乙 at 04:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資方針 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月08日

橘玲, 海外投資を楽しむ会(2008.7)『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。表紙には「ETF 1080 本完全ガイドつき!」という副題(?)がおどっています。
 海外投資に関する徹底的な案内書が出たというべきでしょう。海外投資を行っている人、これから行おうという人は、ぜひ1冊を手元に置くべきです。
 前著:橘玲(2008.3)『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』ダイヤモンド社
2008.5.29 http://otsu.seesaa.net/article/98372824.html
では、橘玲氏の単独名だったのですが、今回は「海外投資を楽しむ会」も共著者として入っています。乙が想像するに、本書は、橘氏だけによるものではなく、16,000 人もの会員数を誇る「海外投資を楽しむ会」が執筆に携わっているということでしょう。事実、本書に書かれているようなことを一人で調べ上げるというのは大変な苦労だと思います。一方、たくさんの人の協力があれば、一人ひとりの知っている範囲は狭くても全体としては「集合知」の原則が働き、網羅的な記述が可能になります。Wikipedia のような考え方です。
 本書は、金融商品の紹介に重点をおいていて、この1冊があれば、海外投資に必要になるさまざまな商品が一通りわかりますし、どういうものに投資すればいいかもわかるようになっています。
 以下、乙がおもしろく思ったところを中心に、いくつかコメントします。
 p.23 ETF や金融先物を使ったインデックス投資では、日本株の場合、TOPIX よりも日経225のほうがいいと述べています。日経225のほうが取引量が多いためだというわけです。山崎元氏などは、日経225が構成銘柄の入れ替えがあって、指数の連続性に問題があることと、その際に、わずかながら裁定取引があって長期保有している投資家が少しだけ損をすることを述べています。どちらがいいかは悩ましい問題ですが、橘氏のような先物活用派は、日経225ということになるのでしょうか。
 p.80 ブル型ETF とベア型ETF にどんな特徴があるかを説明していますが、これはなかなかおもしろかったです。乙は、それぞれの存在はすでに知っていましたが、自分で売買したことはなく、その特性についても考えていませんでしたので、新鮮な指摘として読みました。
 p.81 人民元 ETF (CYB) があるということを初めて知りました。乙は、人民元投資をどうしたものか、わからないままに過ごしてきました。たとえば、ブログでは
2008.7.19 http://otsu.seesaa.net/article/103164638.html
のような関連記事を書きました。しかし、長年の疑問がこれで氷解しました。今の乙は、投資を控えている時期なのですが、
2008.6.8 http://otsu.seesaa.net/article/99784901.html
今後、機会があれば、この ETF を試してみようと思います。
 p.86 から ETF の一覧が始まります。とにかく「すごい!」のひとことです。こんな資料は見たことがありません。これだけでも、本書の価値があります。
 ただし、本書には残念なこともありました。ミスプリがかなり多いのです。今までの橘氏の著作では、ほとんど感じなかったのですが、どうしたことでしょう。
 ざっと一読したときに気が付いたものを以下に指摘しておきます。これで全部のはずはありませんから、丹念に読めば、この数倍はあるものと推定します。気のせいか、英語関係のミスが多いように思います。
p.39 2行目 Grobal→Global
p.39 7行目 DR→GDR
p.40 D Noth→North
p.108 2行目 Exchanged→Exchange (p.113 下から4行目は正しい)
p.110 下の方 iShares の読み「アイシュアーズ」→「アイシェアーズ」
p.111 4行目 INRG のところ FESE→FTSE
p.111 下から4行目 IPRP のところ FEST→FTSE


posted by 乙 at 04:53| Comment(0) | TrackBack(2) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月07日

DIAM ワールド・リート・インカム・オープンの解約

 乙は、DIAM ワールド・リート・インカム・オープンの運用報告書を読み、
2008.7.26 http://otsu.seesaa.net/article/103606107.html
この投資信託が信託報酬だけでなく、他の面でも高コストであることを知りました。そこで、これを解約することにしました。
 先日、取引報告書が来ました。
 2005年10月に投資した 10 万円は、結果的に、93,567 円になってしまいました。一時は 15 万円以上にもなっていたのに、ずいぶんと下がったものです。
 後から考えれば、15万円から、たとえば2割下がったところで売ってしまうというようなことも可能だったでしょう。しかし、こういうのは、「言うは易く行うは難し」です。乙は、資金のある部分はリートにも投資しようと思っていましたから、下がったからといって売るというのは、本当に正しい選択かどうか、何ともいえません。
 さて、手元に現金が戻ってきました。
 で、考えてみると、やっぱり世界のリートに投資しようと思います。まだまだ基準価額は下がるかもしれませんが、そのうち下げ止まるでしょうし……。
 自分で最適な投資タイミングを見つけるなんて、不可能に近いと思っています。
ラベル:DIAM リート
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2008年08月06日

投資助言の手数料

 昨日の記事
2008.8.5 http://otsu.seesaa.net/article/104207792.html
で、投資助言の手数料 0.945% が高いということをいいました。
 乙としては、もっと手数料が安ければ、助言を受けてもいいような気がしています。その場合、どのあたりまで出せるでしょうか。ざっと考えて、0.2% くらいならばOKでしょうか。1億円運用する場合で、手数料20万円です。投資家としては、せいぜいこんなものでしょう。
 さて、この話を会社側の立場で考えてみましょう。
 1年あたり 0.2% の手数料ということになると、会社としては多くの投資家から多額の投資資金を任されなければ経営が成り立ちません。100億円分の助言をすることでやっと手数料が 2000 万円ですから、社長1人分の人件費くらいになりそうです。投資顧問会社が 100億円分の申し込みを受け付けるのはけっこう大変でしょう。ちょっとした投資信託でも純資産額が 100 億円にならないことが多いように思います。
 会社としてやっていくには、オフィスの賃料など人件費以外にもさまざまな経費がかかります。それを考慮すると、100億円をはるかに越える金額の投資助言を行わなければなりません。それだけの資金を集めるなんて、かなりむずかしい話です。
 ということで、投資顧問業は手数料が高めにならざるを得ないし、そうなれば助言を受ける人が少なくなるだろうしということになります。
 こんなことを考えると、投資助言を業とする会社は成立するのかどうか、かなりむずかしいように思えます。

 0.945% の手数料ならば、100億円の助言を行うことで、毎年 9450 万円の収入になりますから、何とかやって行けそうです。
 でも、1社が助言する資産残高が本当に 100億円もあるのでしょうか。乙にはわかりません。
ラベル:投資助言 手数料
posted by 乙 at 05:18| Comment(0) | TrackBack(1) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月05日

アブラハム・プライベートバンク株式会社

 乙は、たまたま知りましたが、投資助言業を営む会社で、アブラハム・プライベートバンク株式会社というのがあります。
http://abraham-bank.com/
 富裕層に対するアンケートでは、「自分の資産は自分で管理する一方、実績のある投資マネージャの助言を受けながら個別投資案件を吟味したい」という声が強いということから、投資の助言に特化した会社ができたとのことです。
 さて、気になるのは手数料ですが、初年度は「26.25 万円もしくは助言範囲資産額の 0.945% の何れか高い方」で、2年目以降は助言範囲資産残高の四半期毎 0.23625%(年換算 0.945%)だそうです。この手数料で、個人にとって最適なのは、26.25 万円が 0.945% に該当する場合ですから、助言範囲資産額は 2778 万円となります。この金額以下では、手数料が割高になってしまうということです。
 乙の場合は、金融資産額がこの金額を越えていますから、利用する可能性があるということになります。
 さて、では、0.945% の手数料を払ってここを利用することが望ましいことかどうか。このあたりが悩ましいところです。
 この会社の WWW を見ていくと、FAQ があります。
http://abraham-bank.com/faq/?la=0006
その中に、次のような部分があります。
Q 投資顧問報酬ですが、これは一般的に見て高くないのでしょうか。
A 例えば、国内大手証券のSMAやラップ口座ですと、毎年、預かり残高の約2%前後の手数料がかかります。またスイスのプライベートバンクでも、預かり残高の1.3%の手数料が毎年かかることが多いです。
一方弊社では、初年度は投資助言資産残高の26.25万円または助言範囲資産残高の0.945%の、いずれか高い方を投資顧問報酬として頂戴しています。先の例と比較していただいても、低く設定させていただいていることがお分かりいただけるかと思います。

 乙は、SMA やラップ口座は手数料が高すぎて、問題がありそうに思っています。
2006.10.11 http://otsu.seesaa.net/article/25246641.html
 スイスのプライベートバンクは、乙は利用していませんが、1.3% をとるというのはやはり手数料が高いと思います。
 アブラハム・プライベートバンク株式会社は、それに比べると良心的ですが、さて、0.945% を高いとみるか、安いとみるか。このあたりが判断の分かれ目でしょう。
 この会社の WWW 内の資料を見ると、高利回りの金融商品が並んでいますが、これらは結果的にそうなったのであって、投資する前にこれがわかっていたかどうかといえば、やはり「わからない」のではないでしょうか。本当にこの会社が「わかる」ならば(1年で数十%上昇する金融商品を見分けることができるならば)、他人に投資助言するよりも、自分で資金を集めてきてそういう金融商品に投資する方がはるかに儲かりそうです。この会社は、それよりも助言範囲資産残高の 0.945%(あるいは 26.25 万円)を受け取る方がよいと判断しているわけですから、期待利回りはあまり高くないはずです。
 やはり、投資にうまい話はないように思います。
 こんなことを考えて、乙は、この会社に投資助言を申し込むのはやめることにしました。
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posted by 乙 at 05:42| Comment(16) | TrackBack(2) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月04日

木田知廣(2007.11)『これなら買える! 投資信託』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「物語で学ぶ、賢い投信の選び方」という副題が付いています。
 全体として、投資信託の初心者に対する入門書といったところでしょうか。各章が「ストーリー」と「解説」の2本仕立てで書かれていますが、乙の印象では、これは成功していないと思います。ストーリーの部分は、どちらかというと小説仕立てなのですが、冗長だと思います。別の言い方をすると、中身が薄いのです。本当の意味の初心者ならば、こういう話で納得するのかもしれませんので、一概にこの本を否定するものではありませんが、乙は、おもしろくないように読みました。
 p.176 および p.182 に変な円グラフが出てきます。一見して何か間違っている印象です。
 標準的なアセット・アロケーションとして、日本株式 30%、外国株式 20%、日本債券 10%、外国債券 20%、その他 20% を示す円グラフです。しかし、どうも、それぞれの比率(円グラフでいうと面積の比率あるいは外周の長さ)が違うように見えるのです。念のため、円グラフを分度器で測ってみました。(分度器を使うのは何年ぶりでしょう!)
日本株式 30%=120°
外国株式 20%= 60°
日本債券 10%= 30°
外国債券 20%= 90°
その他  20%= 60°
 なるほど、ずれています。同じ 20% のところで 90°のところと 60°のところがあります。正しくは以下の通りです。
日本株式 30%=108°
外国株式 20%= 72°
日本債券 10%= 36°
外国債券 20%= 72°
その他  20%= 72°
 2箇所で同じグラフが出てくるとなると、単なるミスプリとは思えません。著者はこれでいいと判断していることになります。この本の主張の一番大事なところでこういう間違いがあるというのは問題ではないでしょうか。
 p.228 では、エクセルのワークシートが出てきます。「マネー・カレッジ」で提供している資産管理ワークシートなのだそうです。まあ、こういう試みも意味があるとは思いますが、これで十分なのでしょうか。乙は、香港ドル建ての資産があるのですが、香港ドルはどうやって記入するのでしょうか。
 もちろん、エクセルをいじれば、香港ドルを追加することはやさしいのですが、このようなワークシートを使うレベルの人は、香港ドルの欄を増やすだけでも非常に困難だと思います。それが簡単にできるという人は、こんなワークシートを使わずに、自分でこのワークシート並みのものを作るでしょう。つまり、万人にあてはまるようなワークシートを作ることはむずかしいという話です。
 乙は、自分の流儀で資産管理のプログラムを作りましたが、
2007.11.24 http://otsu.seesaa.net/article/68477179.html
設計の基本は、自分の資産管理は、自分の流儀で行うということに尽きます。第三者の用意したものでは、自分には合わないのです。このようなオーダーメイドのやり方のほうが便利だと思います。
 この本は、インデックスファンドに分散投資せよということが中心命題ですから、内容はまともだと思います。そのような真っ当な投資をやさしく説いた本といったところでしょうか。
 この本は、末尾に索引がついていますし、参考文献もついていますから、今後の読書にも役立つでしょう。良心的な作りです。
 ただし、参考文献の並べ方にちょっと問題を感じました。著者の50音順に並べていますが、アメリカ人に関しては、(名字ではなく)名前(First name)の50音順なのです。これは索引では一般的ではありません。たいていは、姓の50音順が多いと思います。これならば、日本人と混ぜても、姓の50音順ということで一貫して並べることができます。
 まあ、姓名ともに覚えているような有名人はいいのですが、「J. C. ボーグル」は、「斎藤」の次、「渋井」の前に並んでいます。う〜ん、これでいいでしょうか。「ジョン」だとすると、「渋井」の次のように思います。「ジェイ」と読むならば、この位置でいいわけです。もしかして、参考文献の表記を「J. C.」などと書かずに、「ジョン, C.」と書くほうがよかったかもしれません。ところで、C. は何の略でしたっけ? 乙が過去に読んだ(日本語訳の)本でも、明記されていませんでしたが……。

ジョン・C・ボーグル(2007.8)『マネーと常識――投資信託で勝ち残る道』日経BP社
2007.9.23 http://otsu.seesaa.net/article/56400186.html
J.C.ボーグル(2000.11)『インデックス・ファンドの時代』東洋経済新報社
2006.12.3 http://otsu.seesaa.net/article/28796648.html

 というわけで、本書は、若干の欠点はあるものの、投資の初心者には勧められる本でしょう。すでに投資している人には、当たり前すぎて、おもしろくも何ともないと思います。


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2008年08月03日

森木亮(2008.4)『日本国増税倒産』光文社

 乙が読んだ本です。「格差是正が招くデッド・エンド」という副題が付いています。
 森木氏の著書は、何冊か読んだことがあります。だいたい論調が似ています。
森木亮(2007.12)『日本はすでに死んでいる』ダイヤモンド社
 2008.2.21 http://otsu.seesaa.net/article/85113371.html
森木亮(2006.2)『日本国破産への最終警告』PHP研究所
 2008.1.25 http://otsu.seesaa.net/article/80486553.html
森木亮(2007.3)『2011年 金利敗戦』光文社
 2007.6.5 http://otsu.seesaa.net/article/43904848.html
森木亮(2007.2)『ある財政史家の告白「日本は破産する」』ビジネス社
 2007.2.27 http://otsu.seesaa.net/article/34777467.html
森木亮(2005.2)『2008年 IMF 占領』光文社
 2006.4.16 http://otsu.seesaa.net/article/16624855.html

 「はじめに」の p.8 には、とても興味深いことが書かれています。今まで消費税を含めた増税論に対して、著者は国家財政の破綻を防ぐという観点からやむをえないと考えてきたのに対し、本書では「消費税の増税をするな」という主張になってしまったことです。
 著者の考え方が変わることはありうることですし、それが悪いわけではありません。しかし、p.8 によると、著者の考え方が変わったのは、光文社編集部と十分な討議をしたためだとのことです。著者は「ペーパーバックス編集部というのは、このように、見識を持って著者と本をつくりあげるという点で、日本で類を見ない編集部である。」と述べていますが、本というのは、もともと著者の考え方が先にあって、編集部はそれをいかにしてうまく引き出すかが仕事なのではないでしょうか。著者の考え方を変えてまで編集部の意見が反映された本を出すのが「見識」でしょうか。乙は、大きな疑問を感じます。
 序章「増税倒産とは」では、本書の内容を手短にまとめたようなものになっています。日本は、現在でもすでに実態は破産しているのだから、一刻も早く「破産宣言」するべきだというわけです。乙も、この議論はわからないではありません。しかし、国家が破産する手続きはどこにも書いてないわけで、法律もありません。国家は破産しないことが前提になっています。とすれば、誰が破産宣言できるでしょうか。福田総理が破産宣言できるでしょうか。できるわけはありません。法律に書いてないことを勝手に行うことなど、誰もできません。今の日本が破産状態だというなら、その原因は何か、今までの政府や官僚は何をやってきたのかという責任問題になります。過去の日本を(そして自民党政権を)否定するようなことができるはずがありません。日本は延命策をとるしかないのです。
 第1章「重税国家ニッポン」では、日本の税制を論じ、日本が世界的に見て重税国であることを述べます。今の日本株の1人負けの真因は税制無策にあったというわけです。グローバル経済を基準に見て、日本の税制がおかしいところを指摘していますが、もっともな議論です。さらに所得税が高くなれば、お金持ちが逃げていく(p.43)と述べていますが、それはそうでしょう。法人税が高いと企業も国を出て行くのが当然です。
 第2章「税と納税意識」では、税金の考え方を説明しています。その上で、森木氏は「小さな政府」を支持しています。論理的必然でしょう。
 第3章「税の品格」では、日本の税制には、歴史的に見ても品格がないことを論じています。
 p.107 には、1950 年からのシャウプ税制について、「理想的な税制」というふれこみで、大蔵省は一芝居打ったのだと述べています。当時は、こういうことでもないと、共産主義革命が起こるかもしれないと考えられたのだそうです。うがった見方かもしれませんが、一方ではこんな見方も確かに成立しそうです。
 その後は、消費税の問題点を述べています。真っ当な議論です。
 第4章「年金もまた税金」では、歴史的な経緯もふまえて、日本の年金の問題点を述べています。ここも納得できる話です。
 第5章「国家財政の病理」では、日本の借金が、もう返せないところまで増大してしまったことを論じています。もう債務超過の連続で、どうしようもない状態だとのことです。特別会計という「裏帳簿」が不健全財政の元凶だとしています。本書の中心をなす記述でしょう。
 第6章「デッド・エンド」で、具体的に起こる破産状態について記述しています。悲惨な話です。
 その中で、p.197 から夕張市の例を引き、住民が夕張市から逃げ出している状況を描いています。そして、p.198 では国家のデッド・エンドについて「だが、自治体破産と違う点が1つだけある。それは、私たちが日本国民である以上、事実上、日本から逃げ出せないことである。」と述べています。しかし、これは、p.43 の記述と矛盾しているように思います。p.43 では、お金持ちが逃げていくと言っています。夕張市の場合でも、お金持ちは(プチ金持ち層も含めて)夕張市から逃げ出したのではないでしょうか。逃げ出せなかったのは、引越費用や、新住所での生活の見込みが立たない非お金持ち層だったのかもしれません。だとすれば、国家レベルでも同じことが起こりえます。海外に移住する手があるのです。ただし、日本で働き、日本に住まざるを得ない非お金持ち層は、その手段はとれません。もっとも、夕張市から逃げ出す費用と日本から逃げ出す費用では後者のほうが圧倒的に大きいことはいうまでもありませんが。
 第7章「増税してはならない!」では、増税しても各種の格差を是正することはできないから、増税は止めようと論じます。そして、中国人の労働改善を働きかけようとしています。破産処理のためには、公務員の首切りと、給料や退職金のカットをするべきだということを主張します。消費税は撤廃し、その代わりに「所得型付加価値税」を導入するようにすすめます。道州制も必要だとのことです。
 これらの主張はわかりますが、国家が破産する(すでにしている)ときに、増税するかどうかなんて、議論してもしかたがないことではないでしょうか。むしろ、破産した後の新しい日本のあり方を考えることが必要でしょう。第7章の議論は、日本が破産しないことを前提にしているようで、何とも違和感があります。
 本書の「格差是正が招くデッド・エンド」という副題の意味は、「格差是正を目的にして増税すると日本がデッド・エンドしますよ」ということだったのです。全体を読んだ後では、この副題も理解できますが、最初に見たときは一体何のことかと思いました。

 さて、こういう国家破綻本を読むと、日本の先行きが暗く思えてきます。では、乙は日本から逃げ出すべきでしょうか。いいえ、そうはしません。国家破綻が絶対ないとは言いきれませんが、ここ数年は大丈夫でしょうし、もしかすると20年くらいはそういうことにならないように思います。確たる根拠はありません。しかし、日本の現在の諸制度を考えると、破産宣言なんてできません。何かおかしいと思いつつも、国債を順次償却していくような道しかとりようがないと思いますが、それでも、日本は破産せずに何とかやって行けそうに思っています。20年くらいして破産するとしても、そのときは乙は退職していますから、日本にこだわる必要もないので、海外に移住することを考えると思います。

 場合にもよりますが、森木氏とはまったく逆の立場の、菊池英博(2005.12)『増税が日本を破壊する----本当は「財政危機ではない」これだけの理由』ダイヤモンド社
2006.4.14 http://otsu.seesaa.net/article/16553677.html
も合わせて読んでおくといいと思います。

 なお、森木氏のこの本は、他の光文社ペーパーバックスと同様に英語混じりの表記がなされています。しかし、これはかえって読みにくいと感じました。英語が邪魔をしています。名詞に英語の説明をつけるくらいならまだわかるのですが、p.114 では「細川内閣は税率7%とする国民福祉税構想を打ち出 make a plan したが、」などと書いてあり、とてもスムーズには読めないと思います。著者が書いた日本語原稿に、後から別の人が英語を付けたような感じです。余計なお世話のように感じました。


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2008年08月02日

HSBC 香港の CD(譲渡性預金)について

 5月に「りょうえき」さんからコメントをいただき、
2008.5.21 http://otsu.seesaa.net/article/97417369.html
気になっていたのですが、HSBC 香港の CD(Certificates of Deposit=譲渡性預金)について、考えてみました。
 まず、CD について、概括的知識を得ましょう。Wikipedia の記述で十分でしょう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AD%B2%E6%B8%A1%E6%80%A7%E9%A0%90%E9%87%91
によれば、「銀行がそれに対して無記名の預金証書を発行する特別の定期預金をいい、預金者がこれを金融市場で自由に譲渡できることからその名がある。簡単に言うと、他人への譲渡が可能な特別なタイプの預金のこと。」ということです。日本では、「最低預金額は5,000万円以上と高額なものがほとんど(近年は1000万円からというのもある)で、個人が持つことはまず無く、企業などが決済用に利用するものである。記名式でないことから、預金保険の対象とはならない。」ということですから、個人投資家としては、ちょっとどうかというようなものです。
 金利水準は、よくわかりませんでした。
http://note.masm.jp/%BE%F9%C5%CF%C0%AD%CD%C2%B6%E2/
を読むと、自由金利とあります。
 参考までに、みずほ銀行の説明を読むと、
http://www.mizuhobank.co.jp/setsumeisho/pdf/jyouto.pdf
なるほど、5000万円以上の預け入れと書いてあります。適用利率は「その時点での市場実勢を反映し決定いたします。」とあるだけで、きわめて不親切であり、何の情報もないというべきでしょう。「店頭もしくは当行担当者までお問い合わせください。」という言い方は、まさに「木で鼻を括った言い方」です。これが客商売をしている企業の態度なんでしょうか。
 徳島銀行
http://www.tokugin.co.jp/manual/pdf/0122.pdf
や、りそな銀行
http://www.resona-gr.co.jp/resonabank/pdf/jyouto.pdf
や、青森銀行
http://www.a-bank.jp/html/yokin/pdf/joutoseiyokin.pdf
も同様です。ただし、青森銀行は、別のページ
http://www.a-bank.jp/html/yokin/joutoseiyokin.html
で「金利は当行ホームページに掲載しています。」と書いてあり、さっそく見てみましたが、
http://www.a-bank.jp/html/kinri/main.html
からたどると、
http://www.a-bank.jp/schtml/rateprintpage.cgi
に行き着きますが、CD に関しては、何も記載されていません。
 また、鹿児島銀行
http://www.kagin.co.jp/100_kojin/pdf/list_yokin_ncd.pdf
のように 1000 万円から受け入れるところもあるようです。
 しかし、まあ、国内では定期預金と同じで、低金利であることは間違いないでしょう。おもしろくも何ともない金融商品だと思います。
 さて、HSBC 香港のほうに目を転じましょう。
 CD に関する主たる説明は
http://www.hsbc.com.hk/1/2/hk/investments/cd
が詳しいわけですが、さすがに香港です。各種通貨ごとに金利(年利回り)が明示されています。
 しかし、Extended Maturity Date を見ても、過去の日付がかなり載っています。このリストはかなり古いのでしょうか。
http://www.hsbc.com.hk/1/2/hk/investments/cd-size#list
のほうには、預け入れ金額が書いてありますが、香港ドルの場合で5万ドルや10万ドルが多いようです。1香港ドルは14円くらいですから70万円ないし140万円から投資可能となります。日本よりもはるかに低額で、これなら投資も考えていいように思います。
 アメリカドルの場合は、最低預け入れ金額が3万ドルですから、約300万円になりますが、これでも個人が投資可能です。
 CD は、定期預金の一種で、元本は銀行が保証するものです。その意味では社債よりも安全で、国債よりは安全でないでしょう。
 MMF は、投資信託の一種ですから(わずかながら)元本が毀損する可能性があります。それに比べると、CD のほうが安全であると思います。CD の利回りは MMF よりも低いと思います。
 HSBC 香港は、定期預金の金利が意外と低いですから、その代わりに CD を利用するという手はあるように思います。
 外貨 MMF の代わりに CD に投資するのは、結論として「あり」ということになります。
posted by 乙 at 02:46| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月01日

太田創(2008.3)『ETF投資入門』日経BP社

 乙が読んだ本です。「上場投信・徹底活用ガイド」という副題が付いています。
 著者の太田創氏は、『7戦7勝 10万円から始める南山式 ETF(上場投信)投資術』
2006.7.23 http://otsu.seesaa.net/article/21235708.html
を書いた南山宏治氏と同一人物です。「南山宏治」のほうがペンネームだそうです。
 同じ分野の中で、同じ人が違う名前で上梓するのは、なるべく避けてもらいたいところです。名前で著者としての人格が同定されますから、違う名前ということは別人格ということになります。
 この本は、ETF に関して幅広く解説する趣旨の本です。
 pp.17-18 で ETF の市場規模について言及されています。あんなにたくさんの ETF が上場されているアメリカでも、実は、ミューチュアル・ファンドに比べれば、ETF は相当にマイナーな存在だという指摘があり、乙は驚きました。アメリカでさえ、4.1% を占めるに過ぎません。逆にいえば、95.9% がミューチュアル・ファンドというわけです。しかし、ETF 投資は確実に増えているわけですから、今後はもう少しメジャーなものになっていくと思われます。
 pp.102-106 では、ETF を使った短期投資が出てきます。数日間で行うスイングトレード、数週間から数ヶ月のポジショントレードが解説されます。確かに、コストが安いことを考えると、こういう手法も考えられないわけではありません。アメリカでも、もしかしたら、こういう投資手法が盛んなのかもしれません。こういう考え方もあるんだなあといったところでしょう。乙はバイ・アンド・ホールドを中心に考えていますが。
 pp.121-124 では、「ETF による国際分散投資ポートフォリオ組成」が説明されています。(1)ハイリスク・ハイリターン・ポートフォリオ、(2)オルタナティブ・ポートフォリオ、(3)分配重視型ポートフォリオの三つです。おや、先進国の ETF を適当な比率で買ってじっと持っておくポートフォリオがまったく説明されていません。pp.80-85 で、先進国の ETF にどんなものがあるかを説明しているから、それで十分だということなんでしょうか。乙はそうではないと思います。ここで先進国型をきちんと説明しておくべきだと思います。
 p.125 からは「ヒラメ戦術+ドルコスト平均法」が語られます。普段からドルコスト平均法で順次 ETF を購入しながら、年数回株価が下がることがあるので、そのときは手元資金を投入して多く買う方針だとのことです。まあ、この意義もわからなくはないのですが、この方針が一番トクかといえば、必ずしもそうではありません。インデックス投資の考え方からすれば、この方法では、投資しないで手元に置いておく現金が必要になり、その分、リターンが低くなってしまうと考えます。もちろん、株価が下がるときといっても、どこまで下がるかは誰もわかりませんから、どのタイミングでどれくらいの資金を投入するといいかはまったくわかりません。つまり、太田氏のやり方は理想かもしれないけれど、実際には実行困難だと思います。
 乙は、1冊読んできて、太田氏の考え方に違和感を感じました。
 本書で解説されている部分も、新しいことはあまりありません。(ETF がマイナーな存在だということは乙にとって新鮮でしたが。)本書は、解説書ですから、広く情報を集めてくればいいのでしょうが、すでに知っていることばかり並べられても、ありがたくはありません。日本で買えない ETF の話もたくさん出てきますが、では、こういうのを一体どうやって買うのでしょうか。もちろん、海外の証券会社に口座を開設すれば買えますが、それはそれで(一部の(多くの?)人には)大変な作業かもしれません。このあたりの記述はまったくありません。
 ミスプリも目に付きます。p.13 下から4行目では「最も」が2回繰り返されていますし、p.28 9行目では「のの」という繰り返しがあります。著者も何回か校正しているはずですし、編集者も(日経BP社の校正担当も)見ているはずですが、その結果として、こんなお粗末なミスが残るというのは仕事が雑だということを物語っています。
 ということで、本書はおすすめしません。こういう考え方もあるのだということを知れば十分でしょう。


ラベル:太田創 ETF
posted by 乙 at 05:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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