ある読者の方からエンジェルファンドというものの紹介がありました。
乙は、さっそく WWW を見てみました。
http://www.angelcom.co.jp/pr.htmlがPRのページです。
会社のホームページ
http://www.angelcom.co.jp/からも簡単にアクセスできます。
年間配当率が 30% というのを聞くと、思わず、身を乗り出したくなります。
しかし、WWW を一読して、乙は投資しないことにしました。
その理由を以下に書いておきます。
(1)30% もの高利回りを上げる仕組みが理解できない。
毎月 2.5% の配当を出すとのことですが、なぜ、こんなにも高利回りの運用が可能なのでしょうか。
どんな運用をしているのでしょうか。
WWW を見る限りでは、株式運用、FX、先物取引、不動産取引など、幅広く運用専門会社を探して、100 社以上の中からさまざまに検討して決めているのだそうです。しかし、これらの取引で年率 30% もの高利回りを達成することはきわめて難しいというのが常識です。
http://www.angelcom.co.jp/manabu/manabu.htmlには、「なぜ、そのような運用益が出るのか? 理由はとても簡単なことです。エンジェル・コムは、運用のプロフェショナル集団だからです。」とありますが、プロだから運用益が出るというのは、説明として十分ではありません。一時的には可能でも、それを継続することはどんなプロでも不可能に近いと思います。
(2)全体の資金運用額が明示されない。
さまざまなファンドを組成して、それらをまとめてマザーファンドにしているようですが、その全体の大きさ(つまり資金運用している金額)がまったくわかりません。WWW 中のどこにも書いてないのです。まさか 100 万円程度を運用しているとも思えませんが、1000 万円なのか、1億円なのか、はたまた10億円なのか、もしかして 100 億円もあるのか、それによって運用のしかたは大きく変わってくるはずです。それを明示しないのは、情報開示が不十分だといわざるを得ません。
(3)完全成果報酬制度を採用している。
完全成果報酬制度として、毎月 2.5% の運用益を越えた分が会社の取り分になるということですが、それでは、安定的な運用はできないと思います。マイナスの運用になったら(それが継続したら)会社としてファンドからの収入がなくなってしまいます。そんなことで会社がやっていけるのでしょうか。
ハイリターンを達成するためにはハイリスクな投資が必要です。ハイリスクということは、大きなプラスの運用になることもあれば、とんでもない下落に見舞われるということもあるということです。それを考えたら、「完全成果報酬制度」では会社がやっていけないと思います。
(4)今までの運用成績の開示が不十分である。
毎月 2.5% 以上の成績を上げ続けているという話ですが、今までの運用成績は、具体的にどうだったのでしょうか。何も開示されていません。
http://www.angelcom.co.jp/pr.htmlには、月当たり 2.5% を上回る成績が1年続いているグラフが掲載されていますが、そこには「成功報酬参考図」と書いてあり、これはあくまで参考図なのであって、実績ではないことが示されます。
こういうグラフこそ、実績に基づいて書くべきところです。
参考図では、毎月 3% 程度の運用益を出しているようですが、そういう実態の数字を出す必要があると思います。
配当達成率だけを示すのは、不十分です。
(5)配当達成率 99.9% というのはおかしい。
http://www.angelcom.co.jp/pr.htmlでは、配当達成率が 99.9% であることを示し、かつ「エンジェルファンドは、これまで30%/年間の配当を下回ったことは1度もありません。」と書いてあります。これは矛盾しています。99.9% ということは、0.1% だけ達成できなかったということです。「一度もない」ということはウソです。
次に、99.9% というのは、1000 回中の 999 回という意味ですが、運用期間と矛盾しています。
http://www.angelcom.co.jp/company.htmlによれば、会社設立は2006年(平成18年)2月20日とのことですから、まだ2年半ほどしか経っていません。毎月1回の配当をするならば、30回しかありません。つまり、1回下回れば、96.66…% になってしまいます。0回ならば、100% になります。99.9% という数字にはなりえません。
(6)出資金額が1口5万円と低額である。
一人何口も購入するケースがあるでしょうから、単純には考えられませんが、1口5万円の出資でもいいようです。
5万円程度の小口投資では、会社が投資家に連絡する際の手間(郵便でも80円かかります)などで、コストがかなり高くなってしまい、まともな運用はできないでしょう。
(7)投資家の人数を48人に制限している。
http://www.angelcom.co.jp/fund.htmlによれば、募集している投資家の数は48人だそうです。
こんなところで人数を制約する意味はあるのでしょうか。なぜ人数を制約するのでしょうか。
http://www.angelcom.co.jp/financial.htmlによれば、49人以下の人数にすることで適格機関投資家特例届出制度を利用するためのようです。
では、48人が5万円ずつ出し合ったらどうなるでしょうか。たった240万円しか資金が集まりません。これでどうやって運用するのでしょうか。
マザーファンド方式を採用しているので、大丈夫だという説明も可能でしょう。しかし、それを逆にいえば、本来、もっとずっと大きい規模のスキームであるはずなのに、法令のすきまを突いて48人ごとに区分して募集しているわけで、制度の趣旨に反する行為なのではないでしょうか。エンジェルファンド20号、21号などと区分していますが、募集終了日が同じだったりします。(募集開始日がずれていれば、まったく同じではないわけですが。)
(8)監査がどのように行われているか不明である。
匿名組合の形式で投資をするようですが、匿名組合では投資信託と違って、資金を受託機関に預けるわけではありません。自分でやりたい放題に運用できてしまいます。ですから、自転車操業(新しい投資家からの投資資金を前の投資家に配当として渡すこと)も可能です。
http://www.angelcom.co.jp/manabu/manabu.htmlでは、次のような部分があります。
質問)自転車操業ではないのですか?
お答え)当社は、全てのファンドに対して外部の監査を採用しております。
つまり、各ファンドの運用総額を、運用以外に使用できない環境となっております。
自転車操業ですと、監査法人に監査を通してもらうことが出来ません。エンジェル・コムの組成するファンドが監査を受けているという事は、自転車操業をしていない事の証なのです。
これはどれくらい信頼できるでしょうか。
まず、監査の内容が不透明です。入金・出金が正確に行われ、帳簿と通帳や現金の金額が一致していることを確認するだけなのではないでしょうか。仮に自転車操業が行われていても、帳簿の記載が正しければ、監査を通るのではないでしょうか。投資信託だって、運用成績がマイナスのときに分配金を出すことが認められています。「特別分配金」というものがそれです。匿名組合でも同様でしょう。監査の内容は、どこにも書いてありません。
次に、監査法人に関しても、若干問題があります。このファンドの監査法人は、東京都中央区京橋1-5-15にあるイデア監査法人というところだそうです。
WWW で「イデア監査法人」を入れて検索してみると、ある程度のことがわかります。
http://www.sigyo.net/list/archives/zeirisi-tateno-haruo.htmlでは、立野経営会計事務所が「イデア監査法人を併設するワンストップサービス対応型事務所です。」とうたっています。また、
http://www.ms-cpa.co.jp/introduction.htmlの中に、山口学氏が 2007 年12月にイデア監査法人代表社員に就任したという話が出てきます。
しかし、これだけです。WWW で検索して、まともにヒットしない監査法人というのは、どんなものでしょうか。
「中央区京橋1-5-15」を入れて検索してみると、ここには巴川製紙ビルというのがあるようです。
そのビルについては、
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/nfm/news/20080728/524698/によれば、東急がこのビル全体を購入したようです。さて、イデア監査法人はどんなところなんでしょうか。
(9)税金の話が載っていない。
毎月 2.5% の運用益を上げているとして、では、税金はどうなるのでしょうか。源泉徴収されるのでしょうか。この説明が何もありません。
たぶん、20% の源泉徴収だと思いますが、すると、毎月 2.5% の運用益というのは、2.0% に下がってしまいます。この点は明確に書いておくべきところです。
なお、自転車操業をしている場合は、源泉徴収はありません。自分の資金を取り崩しているのと同じことですから、「儲け」はなく、したがって税金を払う必要はありません。
(10)運用報告書がない。
運用期間がすぎ、すでに償還されたファンドもあるようですが、運用報告書の類を WWW に掲載しておく方がいいと思います。それがないと、過去にどんな運用がなされたのか、確認もできません。
どうせ出資者には運用報告書を配ったはずですから、それをそのままネットに載せるだけでいいのです。手間のかからない(しかし十分な情報開示になる)方法です。
それがないのでは、過去の運用について疑念が生じます。
ところで、
http://www.angelcom.co.jp/fund.htmlには、次のようにあります。
EDINET(Electronic Disclosure for Investor’s NETwork)とは、金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システムと言い、金融庁より行政サービスの一環として提供されているものであり、提出された開示書類についてインターネット上でも閲覧を可能とするものです。
過去組成のファンドにつきましては下記の有価証券届出書を提出しております。
エンジェル6号
有価証券届出書 EDINETコード番号:G06568
エンジェル7号
有価証券届出書 EDINETコード番号:G06573
エンジェル8号
有価証券届出書 EDINETコード番号:G06574
乙は、さっそく EDINET
http://info.edinet-fsa.go.jp/にアクセスしてみました。
提出者検索画面
https://info.edinet-fsa.go.jp/E01EW/BLMainController.jsp
で EDINET コード番号を指定してみましたが、3件とも「注意該当するデータが存在しませんでした。」になりました。 また、「発行者検索画面」
https://info.edinet-fsa.go.jp/E01EW/BLMainController.jsp?1218489784062で「エンジェル」を入れて、「前方後方検索」を指定しましたが、「該当するデータが存在しませんでした。」になりました。
このようないくつかの理由から、乙はこのファンドに対する投資を見送ることにしました。
ネットを検索してみると、この投資話について、ゆうきさんがすでに否定的な意見を述べていることがわかりました。
http://fund.jugem.jp/?eid=564続きを読む