2008年11月09日

トマス・J・スタンリー, ウィリアム・D・ダンコ(1997.9)『となりの億万長者』早川書房

 乙が読んだ本です。「成功を生む7つの法則」という副題が付いています。
 この本を読もうと思ったのは、中桐啓貴(2008.7)『ほったらかしでも1億円の資産を生む株式・投資信託の始め方』
2008.10.13 http://otsu.seesaa.net/article/107997562.html
を読んだとき、お金持ちは安い中古車に乗り、安いスーツを着ているという話があり、ある人が、その話の出典がこの本だと教えてくれたからでした。
 乙は一読してびっくりしました。著者たちの徹底的な調査・研究の態度に驚いたのです。p.14 には、次のようにあります。「私たちは500人以上の資産家にインタビューし、また 11,000 人以上の資産家や高額所得者にアンケート調査した。」どうですか。この本はこのような膨大な調査・研究に基づいて書かれているのです。これに匹敵するような日本の資産家研究があるのでしょうか。乙は社会学方面にはまったくうといので、わかりませんが、たぶんないのではないでしょうか。この本はすべてアメリカの話ではありますが、億万長者の考え方は世界に通じるものと思います。
 本書のイントロダクションを読み始めて、すぐに驚きのことばに出くわします。本書の最初(p.9 ですが)の出だしの1段落を引用します。
 20年以上前、私たちは、人はどうやって金持ちになるのかを研究しはじめた。最初、私たちは、誰もが考えるように、いわゆる高級住宅地に住む人々を対象に調査を行なった。だが、そのうちどうも奇妙なことに気づいた。豪華な屋敷に住み、高級車に乗っている人たちは、実際にはあまり資産を持っていないのだ。そしてもっと奇妙なことに気づいた。大きな資産を持つ人々は、そもそも高級住宅地に住んでいないのだ。
 こうして本書が始まります。最初の1段落だけでも頭をガーンと殴られた気分です。これだけで「お金持ち」のイメージが変わってしまいます。
 p.26 では、金持ちの多くが1代で財産を築いていることを述べます。相続などではないのです。むしろ、金持ちの2〜3世は、必ずしも金持ちにならないのです。
 p.38 から、本書の最大のテーマが語られます。「倹約」が大事だということです。お金持ちは、収入よりはるかに低い支出で生活するのです。そのようにできる人が結果的に金持ちになるのです。
 p.128 金持ちの多くが株を持っています。しかし、売り買いはほとんどせずに、じっと持っているだけです。これも興味深い結果でした。
 p.181 親が子供に経済的援助を与えれば与えるほど、子供は資産を蓄えなくなるというのです。これもとてもおもしろい研究でした。
 p.292 お金持ちは、子供に会社を継がせず、むしろ専門職にさせようとするのだそうです。医者や弁護士や会計士などだそうです。
 乙は、億万長者ではありませんが、退職後は、それに近い状態になるように思います。そのとき、どのように振る舞うべきか、考えさせられます。自分の子供にどう接するべきかもとても大事な問題です。
 本書を通読してみて、乙の金持ちのイメージはすっかり変わってしまいました。何か、人生について大きな「学び」をした気分です。本書は、323 ページにわたって、比較的小さな活字でびっしり書いてあるのですが、「お金」から見た人生論が描かれています。読んでおいて損はない本です。出版年はやや古いですから、数字などは今のものに置き換えて理解する必要があるでしょうが、原則は変わらないものと思います。
 できれば、誰かが日本の富裕層に関する調査・研究をしてくれれば、それと本書の結果を比べることができるのですが、……。乙が知らないだけで、実は研究が行われているのでしょうか。


ラベル:億万長者 金持ち
posted by 乙 at 06:02| Comment(9) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする