前著『本当はヤバイ! 韓国経済』
2008.11.14 http://otsu.seesaa.net/article/109644338.html
に続く第2弾ということで、期待して読みました。しかし、今回は、韓国のときとちがって空回りしている感じがしました。
著者の三橋氏は、中小企業診断士であり、各種の数表を読み解きながら、企業を診断します。その手法を国に適用したのが前著『本当はヤバイ! 韓国経済』というわけです。
では、今回、中国について同様の考え方が述べられているでしょうか。否です。第1章「中国の最悪の輸出品」で述べられますが、中国の発表する統計数値はまったく信用できないとのことです。三橋氏は、いろいろな数値が捏造されていると述べています。ということになると、中国の経済がどうなっているか、数字に頼った分析ができなくなるわけで、中国の発表するものが何から何まで信用できないとすると、経済の診断のしようがありません。
むしろ、中国の状況について、数字を出しながら書けば書くほど、「その数字はどこから得たのか、信頼できるのか」と疑問が膨らんでくることになります。数字を出さないとなると、マクロな記述はどうしてもうまくできません。
そんなわけで、本書は、中国そのものについて記述している部分ももちろんありますが、題名の割には、アメリカやヨーロッパなどの話がかなりたくさん出てきます。中国の貿易の相手として欧米が重要であることはその通りですが、このような態度では、中国経済の分析として、いかがなものでしょうか。
中国の統計があてにならないということで、外部の統計から中国の経済を描こうとする趣旨は理解しますが、……。
結果的に、本書は、前著『本当はヤバイ! 韓国経済』と比べて、迫力不足のように感じました。
本書のいうように、中国経済が危ないとしたら、どんなところが危ないか。これについては、pp.135-136 の2ページだけを読めば結論がわかります。6点の個条書きでまとめてあります。
乙は、中国経済がヤバイのではなく、「ヤバイかどうかわからない、世の中の人が思っているよりはヤバイかもしれない」くらいに考えていればいいのではないかと思いました。
なお、p.112 に出てくる国際収支の6段階という考え方はおもしろかったです。三橋氏のオリジナルではなく、他の人が言っているもののようですが、……。
第1段階 | 第2段階 | 第3段階 | 第4段階 | 第5段階 | 第6段階 | |
未成熟な | 成熟した 債務国 | 債務 返済国 | 未成熟の 債権国 | 成熟した 債権国 | 債権取り 崩し国 | |
経常収支 | 赤字 | 赤字 | 黒字 | 巨額黒字 | 黒字 | 赤字 |
貿易収支 | 赤字 | 黒字 | 巨額黒字 | 黒字 | 赤字 | 赤字 |
所得収支 | 赤字 | 赤字 | 赤字 | 黒字 | 巨額黒字 | 黒字 |
資本収支 | 黒字 | 黒字 | 赤字 | 巨額赤字 | 赤字 | 黒字 |
このうち、日本は第4段階だそうですが、中国は「どこにも当てはまらない」とのことです。これだけでも「変な国」ということになりそうです。