「ヘッジホッグ」とは、「ヘッジファンド屋」つまり、ヘッジファンドのファンドマネージャーのことです。そういう人たちがどういう日常生活をしているかを描いています。著者自身がファンドマネージャーであり、自分の身の回りに起こったことを描いているということで、ヘッジファンドの実態がわかるかと思って、読んでみました。
結果的には、あまりおもしろくなかったです。
特に前半は、ファンドマネージャーのそれこそ日常的なことが書いてありますので、まるで日記かブログか何かを読んでいるようなものでした。
印象的な話は、第1章 p.10 に出てきます。大手ヘッジファンドの大立役者が、娘に、10歳の誕生日に何がほしいか聞いたところ、娘は「航空会社の飛行機にいっぺんも乗ったことがないので、恥ずかしいから、一度乗ってみたい」というのです。この家族はいつも自家用ジェットで移動しているためだそうです。
第2章は、ヘッジファンドを立ち上げて損をしてしまったトレーダーの話です。
第3章から第4章は、著者の空売りの経験を描いています。
第5章はヘッジファンドの売り込み大会のことを書いています。どうやって金づるを見つけるかということです。
第6章も金集めの話です。p.104 には、成功したヘッジファンドも長く続かないという話が出てきます。厳しい世界のようです。
第7章は日記風の記述でした。このあたりまで読んできて、乙はちょっとめげました。これ以上読まないことにしようかなどと思いました。
p.179 では、イェール大学の話が出ていました。1970 年代でイェール大学寄付基金は購買力が45%下落したと書いてあります。購買力=運用成績とは書いてありませんが、ひどい経験もあったのですね。p.195 には、イェール大学寄付基金が再び登場して、2004.6.30 までの10年間、年率 37.6% を稼いだとのことです。1973 年に運用を開始して以来、イェールのプライベート・エクイティ運用のリターンは驚異の年率 30.6% だったそうですから、まさに驚きです。p.306 には、1978-2003 のプライベート・エクイティ投資のリターンの表が出ています。pp.211-221 でもイェール大学寄付基金の話が出てきます。
なぜ、乙がこんなにイェール大学にこだわるかといえば、以前イェール大学の運用のすごさを見たからでした。
2008.12.8 http://otsu.seesaa.net/article/110865657.html
p.182 には「初年度現象」が出てきます。生き残ったヘッジファンドは初年度の成績が一番いいことが非常に多いというのです。興味深い現象です。もっとも、だからといって、新しいヘッジファンドが一番いいというわけではないのは当然です。
pp.252-253 では、新興国株の投資について述べていますが、中でも、新興市場インデックスファンドを買ってもうまくいかないというのはおもしろかったです。市場に存在するものは、すでに成長した後の企業群だからだというわけです。そうかもしれないし、そうでないかもしれません。
p.278 ヘッジファンド業界は、スーパースターもクビになる世界です。具体的な話が次々と語られます。p.293 では、2〜3年負けるとクビになると書いてあります。
p.348 では、「2005年の年央現在、私はアメリカの住宅市場が全国的で全面的なバブルに陥っているとは思っていない。」と断言しています。確かに、バブルだったことははじけた後でわかることなのかもしれません。2008年現在、著者はアメリカの住宅市場をどう見ているのか、知りたいと思いました。
本書は、後半になると、さまざまなデータ(数値や表など)が出てきて、けっこうおもしろいのですが、素直に読み始めると、前半くらいで挫折してしまうかもしれません。
また、1冊読んでみても、ヘッジファンドについて理解が深まったとは思えませんでした。