第1章「「年収崩壊」から「年収防衛」へ」は、前著『年収崩壊』(2007)から現在までの変化を描いています。p.27 で、新自由主義は英・米・日(小泉政権)だけだとしており、世界的に見て特殊な考え方だとしています。また、p.29 でオランダの社会民主主義の考え方を説明し、好ましいあり方のモデルとしているようです。パートタイマーでもフルタイマーと同じ給与水準だそうです。働く時間が短いので、その分収入は少ないのですが、それだけの違いだというわけです。確かに、こういう働き方も興味深いのですが、みんなが一生懸命に働く日本ではこの種の政策は採りにくいでしょうね。
第2章「「年収防衛」時代の働き方」は、今の時代に合わせた働き方の提案ですが、あまり新鮮味はありません。正社員の終身雇用が理想だとか、次を決めてから辞表を出すとか、当たり前のことが並んでいるように感じました。今は、そういうことができない人が多いから社会問題になっているというのに、森永氏の書いていることはどこかずれている感じです。
第3章「モリタク流発想術」では、トピック的にさまざまな話題を取り上げます。昭和の町、高齢者の恋愛、非婚など、現代社会を見る「目」が感じられます。しかし、だからどうせよというのか、趣旨が今ひとつよくわかりません。
第4章「モリタク流資産運用術」は、一番投資に近いところですが、たった13ページで、あまり突っ込んだ話にはなっていません。もう少しページ数を増やしてもらいたかったところです。
第5章「モリタク流節約術」では、さまざまな小手先の技術で生活費の節約を説いています。しかし、この多くはすでに知られていることの繰り返しであり、乙はつまらなく感じました。
第4章と第5章は、個人が行う話で、第3章までの社会を見る目とはかなり異なります。乙はかなり違和感がありました。
本書の末尾には、本書の内容がいくつかの雑誌の連載から構成されていると書いてありました。それで何となくわかりました。本書は、あまりつながりのない話の寄せ集めになっていたんです。
読了後、振り返ってみると、第1章が一番おもしろかったと思います。しかし、あとはどうも2番煎じのような気がしました。
乙が読みたくて買った本ではなく、飛行機に乗るときに、手持ちの読み物を読み終えてしまったので、空港の本屋さんで目に付いたものを購入しただけです。時間つぶしにはなりましたが、さて、こういう本を読む人というのはどんな人なのでしょうか。どうにもイメージがわきにくかったように思います。
参考記事:
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090130/184448
ラベル:森永卓郎