2009年03月31日

早稲田大学の利付き債券

 日経新聞3月30日の朝刊1面に出ていた記事です。
 NIKKEI NET でも、その一部が読めます。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090330AT2D2700U29032009.html
 早稲田大学が利付きの学校債(10年満期)を発行する予定だとのことです。
 「早大が発行を検討しているのは卒業生や特定企業などに対象を絞った私募形式。10年満期で利率は10年物国債の半分程度を想定している。」とのことですから、私募ならば特に問題はないですが、乙は利率が国債の半分程度というところに興味を持ちました。
 普通は、国債の利率が一番低くて、それ以外の債券はリスクに応じて利率が国債よりも高くなるものです。倒産寸前の企業が発行する債券の利率はとてつもなく高くなるでしょう。まあそんなところの債券を購入する人はいないでしょうから、そんなことは考えられませんが、しかし、超短期では「あり」かもしれません。
 国債よりも安全なものは存在しないのですから、国債が一番低利率になるのは当然です。
 では、早稲田大学の債券を購入する人は、どういう考え方に基づいているのでしょうか。利率が国債の半分でいいということは、その差の分だけ早稲田大学に寄付をしているようなものです。
 実際、投資家の立場では、国債を10年間保有して、その受取利息の半分を大学に寄付しても同じ運用結果になります。
 一方、今回のような学校債の場合は、10年間にわたってその債券分の資金を早稲田大学が使うことができます。記事によれば施設整備費などに使われるようですが、これは大学側にすれば非常にありがたい話です。銀行からの借り入れで資金を調達しようとすれば、それはそれで相当高い金利を取られるでしょうからね。
 今回の話は、早稲田大学のために一肌脱ごうという人がどれくらいいるかを計るのに都合のいい話になります。
 さて、こういう債券が発行される場合、一体どれくらいが消化されるものなのでしょうか。
 乙の勝手な予想では、意外と消化されないように思います。やはり国債並みの利率は必要なのではないでしょうか。

ラベル:早稲田大学 債券
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2009年03月30日

TopHatenarでわかるブログの順位

 乙は renny さんの記事
http://renny.jugem.jp/?eid=905
で知りましたが、TopHatenar
http://tophatenar.com/
というサイトで、いろいろなブログのアクセスされる順位を知ることができます。
 やってみると、乙のブログでは次のような結果が表示されました。
購読者数:100
 全体で 4101位/155419人(上位 2.66% 以内)
 Seesaa ブログで 75位/3407人(上位 2.23%以内)
ブックマーク数:123
 全体で 8454位/155419人(上位 5.46% 以内)
 Seesaa ブログで 236位/3407人(上位 6.96%以内)

 乙のブログは renny さんにははるかに及ばないことがわかります。

 「購読者数」と「ブックマーク数」はどうやって求めているのでしょうか。
http://tophatenar.com/about
に説明がありました。
RSSフィード購読者数について
TopHatenarが『RSSフィード購読者数』として表示している数値は、livedoor ReaderとFastladderにおける、ブログのRSSフィード購読者数の合計値です。

ソーシャルブックマーク獲得数について
TopHatenarが『ソーシャルブックマーク獲得数』として表示している数値は、はてなブックマークにおける、ブログ内エントリーに対するブックマーク数の合計値です。

 なるほど、了解です。
 多くの方が乙のブログを RSS に登録してくださっているようで、身が引き締まります。

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posted by 乙 at 05:57| Comment(1) | TrackBack(0) | ブログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月29日

水野和夫(2008.12)『金融大崩壊』(生活人新書)日本放送出版協会

 乙が読んだ本です。「「アメリカ金融帝国」の終焉」という副題がついています。
 今の金融危機の時代を考える上で有用な本かと思って読んでみました。
 「アメリカ金融帝国」がなぜ生まれたかという問題はおもしろいと思いました。p.86 によれば、「強いドルが国益だ」というルービン財務長官の主張が基本となったようです。強いドルでどんどん輸入をしようということです。こうして、p.89 で述べるように、グローバル化で貯蓄が国内になくても他国の貯蓄を使えばいいという考え方が出てきます。日本は貯蓄率が高いわけですが、そうやって貯め込んだお金をアメリカが使ったということになります。
 このあたりはおもしろかったのですが、2点ほど間違いがあり、乙はこの段階で興ざめしてしまいました。

(1) ドルコスト平均法の間違い
 p.174 では、ドル・コスト平均法の説明が出てきます。しかし、それが間違っています。「ある投資家が1年間、毎日、ある会社に投資し、継続して1株ずつ購入している」ことだというのです。違います。「1株ずつ」ではなく「一定の金額ずつ」です。購入できる株数は、株価の上下によって変わってきますが、そこがドル・コスト平均法のいいところなのです。
 こうやって株を買うと、1年経てば購入価格は1年移動平均線と一致するというわけです。それはそうですが、ドル・コスト平均法ならば、(全体で買った株式数ないし資金量が同じであれば)1年移動平均よりもコストが低くなったと考えられます。

(2) 日経平均を買い続けた場合の損失の計算
 pp.175-176 では、88年以降、毎月、日経平均を一定単位で購入することにした仮想投資家を考えています。そして、20年に渡って買い進めたとして、08年11月に株をすべて売ると、49% も損失が出るというのです。
 これまた間違いです。配当が計算に入っていません。配当は、株価を基準に考えると、たいてい 1% とか、2% とか、一見大した金額ではないけれど、20年も経つとかなりのものになります。それを考えれば、20年投資を続けた仮想投資家が単純に 49% の損失になったとはいえません。
 こういう計算をするときの配当の大きさについては
http://blog.livedoor.jp/tsurao/archives/1045153.html
が参考になります。


 奥付によると、著者の水野和夫氏は三菱UFJ証券参与・チーフエコノミストで、早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了とのこと。ちゃんとした知識を学んだ専門家のはずですが、こんな間違いをしていていいのでしょうか。乙はかなり気になりました。
 というわけで、いいところもある本なのですが、乙は読み進める気力をなくしました。



posted by 乙 at 06:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月28日

基準価格を基準にして投資信託を選ぶ

 乙が驚いた話です。
 投資信託を選ぶ際に、基準価格が高いものを選んでみては、と勧める人がいるのです。
 元の記事は
http://moneyzine.jp/article/detail/133759
です。著者は、福永博之氏です。
 福永氏は
http://moneyzine.jp/author/9/
によれば、「株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)を経て、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)に入社。マーケティングマネジャー、投資情報室長、同社経済研究所チーフストラテジストを歴任。【中略】現在、投資教育サイト「アイトラスト」の総監修とセミナー講師を務めるほか、早稲田大学オープンカレッジで非常勤講師も務める。」だそうです。こういう経歴から見て、投資の専門家と言っていいでしょう。そういう人がこんなミスリーディングな記事を書いていいのでしょうか。
 なぜ、基準価格が高い投資信託を買うといいのかというと、福永氏の上述の記事によれば、「このようにして見てみると、基準価格が高く、一見割高と思われる投資信託であっても、当初募集時の価格にあたる基準価格1万円を上回っている時価総額が大きな投資信託は、これまでの成果と今後の機動的な運用に対する期待値とを合わせると、相当価値が高いと考えられるのではないでしょうか。」だそうです。
 そして、「1万円の基準価格を上回っている国際株式型の投資信託」として、具体的に以下の8種類を挙げ、

1. フィデリティ・チャイナ・フォーカス・OP
2. フィデリティ・アジア株・ファンド
3. JFチャイナ・アクティブ・オープン
4. 野村中国株ファンド Bコース
5. ワールド・ゲノムテクノロジーOP Aコース
6. ワールド・ゲノムテクノロジーOP Bコース
7. 野村チャイナオープン
8. 野村中国株ファンド Aコース

「これらの銘柄はすべて、1月末現在、基準価格が1万円を上回っており、繰り返しになりますが、未曾有の金融危機と呼ばれ、世界各国の株価が下落している中で設定当初の基準価格以上をキープしており、優秀なファンドと言えるのではないでしょうか。」と述べています。
 では、この8種類の投資信託は優秀であり、これらを購入していいのでしょうか。乙はそうは思いません。むしろ、福永氏の考え方は間違いであり、投資家を変な方向に誘導してしまうものだと思います。
 以下、乙の考え方を述べます。

(1)基準価格は、投信の購入時・売却時の計算に使う数値に過ぎず、高くても安くても、実質的に意味のちがいはない。
 投信の基準価格は1万口=1万円としてスタートします。最初の募集時に10万円で購入すると、10万口買えます。その後、基準価格が2万円になると、10万円で買えるのは5万口となります。また、基準価格が5千円になると、10万円で買えるのは20万口になります。
 このように、投信の基準価格は、買う時期によって購入者が有利/不利にならないように、そのときの時価評価に合わせて購入口数を調整します。このときに用いる数値が基準価格です。
 ですから、基準価格が2万円の投信があれば、「当初購入した人が購入分の資金を2倍に増やした」ことは事実ですが、それだけであって、その投信の購入者がみんな資金を2倍に増やしたわけでも何でもありません。新たに購入する人は2万円を基準に口数が決まるだけです。
 仮に、新規に募集して、1億円でスタートした投信があったとしましょう。(以下、信託報酬などの手数料は考えないものとします。)あっという間に資金を2倍に増やし、基準価格が2万円になりました。運用資産は2億円になったわけです。それを見て、資金が流入し、100億円が集まったとしましょう。当初の購入者は、十分儲かったとして、2億円分を解約します。その後、この投信は長く低迷を続け、資産総額100億円が60億円まで下がってしまいました。基準価格は2万円から 12,000 円になってしまいました。つまり、この投信を購入した人の大部分は、4割の損失を出したのですが、ごく少数の当初からの保有者だけは大儲けしていい時期に売り逃げたことになります。これで、この投信は「基準価格が1万円を越えているから優秀だ」といえるのでしょうか。今この投信を保有している人は全員が4割の含み損を抱えているのです。もしも、当初からずっと保有している人がいれば、1万円が 12,000 円に増えているという意味では含み益があることになりますが、そんな人はいたとしてもごくわずかです。
 投信の基準価格がいくらであろうと、それはその投信の今後を占うものでも何でもありません。

(2)最初の設定時がいつだったかを無視して、多数の投信について現在の基準価格を相互に比較しても意味はない。
 株価が低迷しているときに設定された投信は、その後、市場平均よりも運用が下手でも、基準価格が上がることは十分あり得ます。株価が高騰しているときに設定された投信は、その後、市場平均よりも運用が上手でも、基準価格が下がってしまうことも普通にあります。株式投信の運用のうまさは、市場平均をベンチマークとして、それとの相対的な上下で評価するべきです。
 設定された時期が違う各種投信を、現在の基準価格で比べても、何の意味もありません。それらを比べる場合は、「同じ期間」を基準にするべきです。同じ期間の基準価格の上下の割合を比べれば、正しい比較になります。(言うまでもありませんが、いくらという価格の「変動幅」ではなく、「比率」です。)
 福永氏が挙げた投信の最初の設定時を調べると、以下のようになります。

1. フィデリティ・チャイナ・フォーカス・OP 2004.10.20
2. フィデリティ・アジア株・ファンド 1998.12.1
3. JFチャイナ・アクティブ・オープン 2004.1.16
4. 野村中国株ファンド Bコース 2002.1.30
5. ワールド・ゲノムテクノロジーOP Aコース 2003.11.19
6. ワールド・ゲノムテクノロジーOP Bコース 2003.11.19
7. 野村チャイナオープン 1994.10.14
8. 野村中国株ファンド Aコース 2002.1.30

 というわけで、これらの投信の成績を現在時点(あるいは過去のどの時点か)で比べても、意味はありません。全ての投信が共通して運用されていた 2004.10.20 から以降について比べるならば意味があります。
 福永氏のように、ある時点のすべての投信の中から、「基準価格が1万円を超えるもの」を選び出したとしても、それは無意味です。

(3)分配金が考慮されていない
 投信の場合は分配金があります。分配金を出せば、その分基準価格が下がります。分配金を多めに出す投信と分配金を出さない投信を比べれば、後者のほうが基準価格が高くなります。
 多くの投信を相互に比較する場合は、したがって、分配金込みの基準価格(分配金を出さなかったとみなしたときの基準価格)で比べるべきです。普通、基準価格といえば、分配金を出した後の価格をいいます。
 福永氏はこの点に言及しておらず、福永氏の記事を読んで単純に信じた投資家に誤解を与えます。

 以上述べてきたように、基準価格がいくらかということを基準にして購入するべき投信を選ぶというのは間違った考え方だと思います。基準価格は無視して、それ以外のもろもろを考えて購入する投信を選ぶべきです。

posted by 乙 at 05:34| Comment(4) | TrackBack(1) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月27日

アメリカの AIG と CDS

 アメリカでは AIG を救済するために政府が資本注入をしたところ、経営陣に対して大変な額のボーナスが支払われたということで大きな問題になっています。
 さて、この問題の発端は、サブプライムローンですが、それを束ねて(他のものも混ぜて)作った CDO、さらには、その中からリスク部分だけを抜き出した CDS
2008.11.26 http://otsu.seesaa.net/article/110155462.html
がどんどん大きくなっていったことわけです。
 ローンが返せなくなった人が続出して今回の事態が起こったというわけですが、AIG の一部門が大量の CDS を引き受けていたということが問題になっています。CDS は一種のオプション取引ですから、わずかな手数料の分だけ儲かる場合が圧倒的に多いのですが、ごくたまに巨額の損失を出すという性質をもっています。
 金融工学(ブラック=ショールズの式)を使って、どの程度の確率でデフォルトが起こるかに基づいて、それに見合う手数料を算出することができます。プラスマイナスゼロになるところが理論上の(儲けを計上しない)手数料です。実際は、モノラインと呼ばれる格付け機関の格付けが間違っていたわけですから、デフォルトの確率が違っており、正しく算出されていなかったということもあるでしょう。しかし、理屈の上では、CDS の妥当な引受手数料は計算できるはずです。
 それに AIG が適当な比率の「儲け」を上乗せして、CDS の引受手数料を計算していたことでしょう。大量に CDS を引き受ければ、統計でいうところの大数の法則が働きますから、全体としては AIG が儲かる商品だったはずです。しかし、住宅価格の下落という変化が起こり、この儲けが吹っ飛んで、むしろ大変な負債を抱え込んだというわけです。
 大前研一氏の「「産業突然死」の時代の人生論 第169回 ダメな金融機関をつぶしてよい理由」
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/a/175/index.html
を読んでいたら、驚くべき AIG の実態が書かれていました。
2000年ごろからAIGはCDSの販売で利益を伸ばしたが、手数料収入の大半を利益計上してしまい、将来損失への積み立てが十分ではなかった。ということはつまり、この手数料収入でものすごい額のお金(つまりボーナスや報奨など)をもらい、潤った人間がAIGにいるわけである。彼らこそがAIGを傾かせたことは言をまたない。極論すれば、こういう手合い(FPの創業時から2008年に辞職するまでトップを務めてきたジョー・カッサーノ氏以下、数百人のスタッフ)は刑務所に収監するべきであるとわたしは思う。

 手数料収入は、CDS 引受手数料の全額ですが、本来の儲けはその一部でしかありません。しかも、いくら確率が低いとはいえ、デフォルトが起こることはあるのですから、それに備えて、利益を計上するのでなくむしろ積立をしておくべきだというのは当然の議論です。しかし、AIG の関係者がそれを食い散らかしてしまったのですから、これは大問題です。
 今回、高額報酬を支払ったことも問題ですが、それ以前に、AIG に間違った仕組みを導入した人たちがいたことが一番の問題でしょう。そういうことが通ってしまっていたという時点で、AIG は(さらにはアメリカが)病んでいるといわざるを得ません。
 大前氏の記事で、今回の金融危機の大きさ、根の深さに改めて思いをはせることになった気がしました。
 今回のアメリカ発の金融危機は、いろいろな「犯人」がからんでいるようですが、大前氏の記事は、AIG がいかにダメ会社であったかがよくわかる記事でした。こういう切れる人の書いた記事は大変おもしろく、また有益だと思います。

ラベル:AIG CDS
posted by 乙 at 05:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月26日

maneo の活動をどう考えるか

 テレビ東京の「ガイアの夜明け」(3月24日放送)を見ていたら、個人間の金融システムとして maneo が取り上げられていました。
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber/preview090324.html
 これについては、乙も過去にブログで「個人同士のお金の貸し借り」として取り上げたことがあります。
2008.9.5 http://otsu.seesaa.net/article/106037036.html
また、同様のサービスで「ウィキバンク」というのを紹介したことがあります。
2007.10.30 http://otsu.seesaa.net/article/63360523.html
 現在、ネットでウィキバンクの方にアクセスしてみると、今ひとつの感じがします。仕組みはわかるのですが、一体どれくらいの活動実績があるのか、借りたいというリクエストがどれくらいあるのか、さっぱりわかりません。もしかすると、構想だけで、実態は未だないのかも知れません。
 それに比べると、maneo のほうがずっと活発です。ホームページ
https://www.maneo.jp/
を見ると、いきなり「オークション状況」というのが見られます。今現在のマーケット状況も見られます。ローン総額 40,560,000 円、登録者 4,898 人、開催オークション17 件とあります。2008.10.22 にオークション開始とありますから、実際に始まったということです。
 貸し手(レンダー)として、maneo をどう見るか。乙なりの当面の感想を書いておきましょう。

(1) 手数料が高い
 「ガイアの夜明け」によると、手数料が、借り手(ボロアー)にも、貸し手にもかかるそうです。融資金額の 1.5% と言っていました(乙の聞き違いかもしれません)が、これはけっこう高いように思います。
 仲介するだけにしては、会社の取り分が多いように感じます。貸し手がほぼ全てのリスクを引き受けるわけですから、会社としてはけっこううまみのある商売だと思います。立ち上がった後、会員が増えていけば、それなりのおいしい商売になりそうです。

(2) 貸し手側のリスクが大きい
 ここでいうリスクは「危険性」という意味です。
https://www.maneo.jp/lender_risk.jsp
に貸し手側のリスクの説明が書いてあります。
 借入申込人の信用力の調査を会社が行うといっていますが、ここが心配です。どこまできちんとできるでしょうか。きちんと行えば手間がかかり、結局コストに跳ね返ります。
https://www.maneo.jp/about_announce.jsp
にあるように、詐欺師たちにねらわれたら、ひとたまりもない(貸し手側が大きな損失をこうむる)ように思います。

(3) 借り手側の状況の詳細がわからない
 いろいろと借り手側の申込はあるようですが、現在示される程度の情報では、貸していいのかどうか、判断が付きません。もっといろいろ知りたいと思うところですが、お互い匿名だと、あまり細かいところまで知ることはできないでしょう。いろいろ質問しても、借り手がちゃんと答えているかどうか、わかりません。となれば、「えいや」で貸すしかなくなりますが、それはリスクの評価ができないということと同じで、貸し倒れの危険性が予想外に高いように思えます。

(4) 会社の倒産が心配である
 まだ始まったばかりですから、何ともいえませんが、ローン総額4千万円程度では、その3%が会社の利益だとすると、1年で120万円しかありません。これでは会社としては持たないでしょう。
 今後の事業の拡大がどれくらいになるか、わかりませんが、ローン総額が少なくとも10倍、できたら100倍くらいになってほしいと思います。そのくらいになると、会社として安定してくるし、十分な利益があると思いますので、倒産の心配はないでしょう。
 今は、会社が倒産しそうで怖いです。

 以上の4点のようなことから、乙の感覚では、今は見送りで、もう少し事業が大きくなってきたら考えてもいいといったところでしょうか。時間がある程度経って、この会社に実績と経験が積み重なってきてから、貸し手になってもいいと思います。投資する立場からいえば、あせる必要はまったくないのです。
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2009年03月25日

新生銀行でも特定口座が可能に

 乙のところにメールがきて、新生銀行でも株式投資信託に関して、特定口座の利用が可能になったとのことです。
http://www.shinseibank.com/powerflex/tokutei/index.html
 税制の変更についても説明され、一応判断できます。
 乙は、特定口座のほうが便利だと思いますので、さっそく申し込むことにしました。
 電話で新生銀行に申し込むのですが、例によって24時間365日受け付けてくれますので、ありがたいです。
 その後、数日して書類が届きましたので、記入して、ハンコを押して、本人確認の書類のコピーとともに返送しました。
 各種手続きがこれくらい簡単だとありがたいです。
 まあ、特定口座の制度が導入されたときからこのようにしてくれていれば、それが一番ありがたかったのですが……。

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2009年03月24日

高橋洋一(2008.12)『この金融政策が日本経済を救う』(光文書新書)光文社

 乙が読んだ本です。
 タイトルに引かれて読む気になりました。今の不況をどうするべきか、高橋氏の考えを知りたいと思いました。
 プロローグを読み始めてすぐ、p.8 には「日本経済の先行き不安の原因は、サブプライム問題ではありません。」と太字で書いてあります。まさに驚きです。そして、日本の景気低迷の原因は06年から07年にかけての金融引き締めだというのです。確かに、このころ日銀は誘導金利を引き上げました。それにしても、たった 0.5% です。金利というのは、5% くらいあるのが当たり前だと思いますが、それが 0.5% くらいの引き上げで経済にダメージを与えるものでしょうか。乙は疑問に思いました。
 これについては、p.37 あたりで再度取り上げられますし、第5章「金融政策と株価の関係」が詳しく論じているところなので、高橋氏の主張を理解するためには、そちらを読むべきです。
 pp.75-77 で個別物価と一般物価の違いについて説明しています。個別物価は個々の商品などの物価のことで、一般物価はその平均です。そこで、個別物価が上がれば一般物価も上がると思いますが、それがそう簡単な話ではないというのです。2007 年に値上げされた即席麺や食パンは、それぞれの業界が値上げできる環境にあったからメーカーが値上げしたのだとしています。そういわれればそうかもしれませんが、やはり原料が高くなれば値上げするしかない(そうしなければメーカーとしてやっていけない)ように思うのですが、どうなのでしょうか。
 第4章「インフレ目標」では、日銀の金利政策のおかしさを述べています。この章は納得しました。物価上昇率に一定の目標を設けるほうがいいという話も、説得力がありました。
 エピローグの中ですが、p.199 から財政再建について述べています。日本政府の借金 981 兆円は、国民ひとり当たり 800 万円にあたるという説明もよく聞きます。しかし、高橋氏によれば、国の借金を個人や家計にたとえるのはまずく、むしろ、企業にたとえるべきだとのことです。借金をしていても、それが当たり前の状態なのです。そして、借金 981 兆円が世界最大であると同時に、政府が 690 兆円もの資産を持っており、こちらも世界最大であると述べています。というわけで、国債がデフォルトになることは(しばらくは)なさそうです。
 p.204 では、現在の非常時に対する具体的な提案が書いてあります。25兆円の量的緩和と25兆円の政府紙幣発行です。高橋氏が政府発行紙幣の賛成論者であることは以前から知っていましたが
2009.2.11 http://otsu.seesaa.net/article/114032329.html
それにしても、大きな構想です。実現はそう簡単ではないと思いますが、ぜひ、こういう話を政府に考えてもらいたいものだと思いました。
 本書は、新書サイズですから手軽に読めます。今の日本経済を考える上で有意義な本だと思いました。

 余談ですが、p.25 最後の1行に「株式などの債券」という言い方が出てきます。とんでもない間違いですが、著者の単純な勘違いなのでしょうね。



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2009年03月23日

西友ネットスーパーで缶ビールを買う

 乙は、西友のネットスーパーのチラシを見て、興味を覚えました。
2009.1.4 http://otsu.seesaa.net/article/112108796.html
 しかし、5,000 円以上送料無料というのでは、普段そんなには買わないなあなどと思っていました。
 最近、ふと考え直しました。
 乙は、缶ビールの配達を近所の酒屋に頼んでいるのですが、
2008.6.6 http://otsu.seesaa.net/article/99567672.html
それは、いくつかの近所の店を比べて、比較的安いということと、無料配達してくれるということを考慮したのでした。実は、その店は、通常価格で、アサヒスーパードライ 500cc×24 が 5,980 円、350cc×24 が 4,480 円なのです。
 もしも、西友のネットスーパーで買うとしたらいくらなのか、調べてみました。
http://www.the-seiyu.com/
から入って、「ネットスーパー<首都圏限定サービス>」を選び、「酒」→「酒ケース販売」→「ビールケース」をクリックします。
 すると、アサヒスーパードライ 500cc×24 が 5,800 円、350cc×24 が 4,350 円なのです。
 5,000 円以上は配達無料なのですから、500cc×24 はそのままで条件をクリアーしていますし、350cc×24 は、650 円だけ何かを買うことで悠々クリアーしてしまいます。それくらいは食料品でも何でも買うでしょう。ホントに買うものがなければ、ビールを2箱買うのでもいいと思います。(乙はビール好きなので2ケースくらいはすぐに消費してしまいそうです。)
 細かいことですが、近所の店は現金払いですが、西友のネットスーパーはクレジットカード払いで、1% のポイントが付きます。
 そんなわけで、乙は、ビールは近所の酒屋には頼まないことにして、西友のネットスーパーで注文することにしました。
 ちなみに、イオンもネットスーパーがあり、全国への配達が可能なようですが、ビールに関してはそちらのほうが若干高いようです。イトーヨーカドーのネットスーパーでは24個入りのケース販売はないようです。

 消費者の判断として、一番安いところで買って配達してもらうのは当然のことです。
 しかし、お店の側にしたら、大変な事態です。
 ネットは世界中を結んでいます。飲食物などの買物は日本の中だけを考えればいいでしょうが、それでもたくさんの店が競争しています。ビールのような工場生産の加工飲料は、どこの店で買っても品質は同じですから、単純に値段の勝負になります。まさにコモディティー化しているわけです。となると、一般のお店にとって、販売力のある大手スーパーに伍していくのは大変なことです。
 送料のことがあるので、近隣への配達は近所の店の強みかもしれませんが、それでも、今回のような話になるのですからね。
 些細なことですが、こんなことから消費構造の変化を感じてしまいました。

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posted by 乙 at 04:27| Comment(1) | TrackBack(0) | 消費生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月22日

大前研一(2009.1)『マネー力』(PHPビジネス新書)PHP研究所

 乙が読んだ本です。「資産運用力を磨くのはいまがチャンス!」という副題がついています。
 序章「世界は大変だが、日本はチャンス!」では、今の金融危機をどう見るかが述べられています。
 p.24 では、アメリカ経済のエンジンが壊れたとしています。爆弾が三つあるのだそうです。第1がサブプライムローン、第2がCDS、そして第3がクレジットカードそのものということです。乙は、クレジットカードそのものなどと思ってもみなかったので、驚きました。今やアメリカではローンを払えない人が多数いるのですね。
 p.26 では、アメリカの住宅が経済のエンジンになっていたことを説明します。アメリカでは住宅を担保に借金して消費するというわけですね。それが大きく狂ったわけですから、今回の金融危機の根が深いことがわかります。
 p.29 からはユーロの問題点を指摘しています。ユーロは16ヵ国の共同通貨なので、それを支える「国」がないというわけです。ユーロが安い方がいいという国と高い方がいいという国があり、ECB(ヨーロッパ中央銀行)は通貨防衛の力がないとしています。なるほど、こういう側面があるとは意識していませんでした。
 第1章「世界を見て、マネー力を磨け」では、日本の中だけを見るのでなく、世界を見ようと呼びかけています。マネーの動きも、世界を眺めれば理解できるとのことです。話はわかりますが、実際はそういう視野を持つこと自体がむずかしそうです。
 第2章「自分の資産は自分で守れ」では、世界のさまざまな経験を紹介し、世界の通貨を同時に考えることで、資産を守ろうとしています。
 p.87 では、2004 年の新札発行に際して、新札と旧札の交換比を1対1でなく、新札のほうを強くしてしまおうという話が実際にあったようだと述べています。一種の切り上げです。実際には、新円切り換えを秘密裏に行えなかった(情報が漏れてしまった)ので、そのままになっているというわけです。乙は、この話はまったく知りませんでした。
 p.88 では、日本の国債のデフォルトがあるとしています。その可能性はかなり高いのだそうです。乙は、なかなかこうはならないだろうと考えています。
 p.95 では、石油産出国がドルを見限る可能性があり、そうなるとドルが大暴落するとのことです。石油産出国の通貨はドルと連動していますが、そのようなドルペッグ制を維持するかどうか、2007 年末には真剣に検討されていたのだそうです。ドルはこれからその地位を下げることになるのでしょうか。すでに資産の一部をドルの形で持っている身としては、このような議論は注目に値します。
 p.98 では、ドルが基軸通貨から外れ、ユーロにシフトしていくと、ドルがユーロと一体になることも考えられるとしています。そんなことは本当に可能でしょうか。乙にはとても考えられません。
 第3章「資産運用力は世界に学べ」でも、日本の中だけを見ないで世界に目を広げることを説いています。
 p.115 では、「日本の金融機関には期待しない」と明言しています。乙もこの点は賛成です。
 pp.120-123 では、欧米で住宅が資産になっている例を説明します。一方、p.124 では、日本の住宅はまったくそれと違ってしまっており、制度上、ひどい住宅にならざるを得ないとしています。国をどう設計するかという初期アイディアが悪ければ、あとはどうしようもなくなるのですね。
 第4章「マネー脳の鍛え方」では、マネー力の強化にはITと英語が不可欠としています。英語でビジネスができることが必須なのだそうです。しかし、日本の現状はそれとほど遠いし、日本はそういう経験がないのではないでしょうか。
 p.136 では、ニートやフリーターをなくしても経済力は上がらないと述べています。ニートやフリーターに職業訓練をするよりも、世界で通用する人材を育てるべきだとしています。大前氏の意見は理解できるのですが、今の日本ではなかなか受け入れられない考え方でしょう。
 第5章「大前式資産形成術」と第6章「マネーの達人たちに学ぶ」は、大前氏の書き下ろしではないとのことで、実際読んでみるとややつまらないように思いました。
 終章「いよいよ日本の出番」は、これからの日本を展望する章です。
 p.199 では、オバマ大統領の取る景気浮揚策を予想していますが、景気浮揚の方法は基本的に二つしかないそうです。公共投資と戦争です。こういう割り切った話し方は、いかにも大前流の議論です。
 p.204 では、アメリカで相続税が下がっている状況を説明し、2010 年にはゼロにするのだそうです。日本でも、1年か2年だけ相続税をゼロにしてみてはどうかとしています。アイディアはおもしろいですが、「相続」が発生するタイミングで、高額な相続税を取られたり取られなかったりということでは、国民の間に不公平感が生まれてしまうように思います。
 ともあれ、大前流の割り切った考え方を知るには適当な1冊といえるでしょう。



posted by 乙 at 06:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月21日

第2回のオフ会を開催しました。

 20日(金:祝日)に新宿でオフ会を開催しました。参加者は乙を含めて4人でした。
 参加者は前回のオフ会
2008.2.12 http://otsu.seesaa.net/article/83649525.html
とはまったく重なりませんでしたので、皆さん、初めての顔合わせとなりました。
 飲み放題付きで2時間ほど食べたり飲んだりしましたが、何となく話したりない感じだったので、2次会にも行きました。アルコールがダメな人もひとりいらっしゃったので、少々恐縮でした。
 普段は、投資の話などをすることはありませんので、貴重な経験でした。ありがたい話でした。
 参加者の皆さんは知識・経験とも豊富で、それぞれにブログを書いたらきっとおもしろいだろうなあなどと思ったのでした。
 乙の場合と同様に、たぶん皆さんも周りの人と投資の話はしないままでしょう。誰にも語らず、黙々と(数十年も?)投資を継続するというのは大変なのではないでしょうか。乙は、思ったこと・感じたことをブログに書いていますが、このほうが気が楽です。
 ブログは簡単に始められると思います。ぜひ、こちらの世界でも付き合いの輪が広がることを期待したいと思います。

ラベル:オフ会
posted by 乙 at 07:34| Comment(0) | TrackBack(0) | オフ会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月20日

HSBC 香港の残高照会

 乙は、まったく意識していませんでしたが、
http://starexcel.blog105.fc2.com/blog-entry-181.html
によると、HSBC 香港では、1年半銀行口座を放っておくと、凍結されてしまうとのことです。放っておく(利用しない)というのがどういうことなのか、凍結というのがどういうことなのか、詳しい説明がありません。(HSBC 香港のホームページにもないように思います。)
 ネットで口座にアクセスすれば利用したことになるのでしょうか。ATM を操作しなければダメでしょうか。ATM で残高照会をすれば利用したことになるのでしょうか。
 「凍結」は、ATM が使えなくなるだけでしょうか。あるいはネットでの資金移動などもできなくなるのでしょうか。
 いやはや、いざ「凍結」になったらなかなか大変です。凍結を解除するために香港まで行かなければならないようなのです。
 以前、乙が香港に行って、パスポートの認証をしたときには、
2007.9.21 http://otsu.seesaa.net/article/56386470.html
ATM で一度出金しておけば、あとはずっとそのカードが有効だと聞いていました。てっきり使わなくても大丈夫だと思っていました。
 しかし、まあ、年1回くらいは、ATM を操作してもいいかもしれません。お金をおろす必要もないので、とりあえず残高照会をしようと思いました。
 そこで、近所のセブン・イレブンに行って、ATM に HSBC 香港のカードを入れてみました。
 メッセージは、英語、ハングル、中国語、ポルトガル語で表示されます。日本語はないのです。こんなところにも日本が世界で無視されていることを感じてしまいます。
 しかし、いざ ATM の前に立つと、乙は PIN という暗証番号を忘れていることに気が付きました。記憶の通りに操作してもダメなのです。
 一度、自宅に戻って、紙で確認して(やっぱり間違えて記憶していました)、再度セブン・イレブンに行って ATM を操作しました。
 今度は残高照会は簡単にできました。
 暗証番号はなかなか覚えていることがむずかしいものです。
 ATM を操作しているとき、残高照会は場合によって有料かもしれないというメッセージが出て「confirm」ボタンを押すようにうながされました。おやおや、日本の銀行と違って、残高照会でも有料なんでしょうか。
 ATM の操作は簡単で、しかも、口座残高は日本円で表示されました。香港ドルの残高を円換算しているのだろうと思います。乙は米ドル、ユーロ、カナダドルもわずかながらもっているのですが、それを含めたらもっと金額が多くなるはずだと思いました。
 その後、ネットで HSBC 香港にアクセスして自分の口座の金額を確認しましたが、以前と変わっておらず、残高照会は無料ではないかと思いました。(後日、手数料が引かれる可能性はありますが。)
 今後は、1年に1回くらいは ATM で残高照会をすることにしようと思います。

posted by 乙 at 09:04| Comment(7) | TrackBack(0) | 金融機関 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月19日

エマージング・ソブリン・オープン(毎月決算型)の運用報告書

 乙は、国際投信投資顧問が運用するエマージング・ソブリン・オープン(毎月決算型)にも投資しています。
2007.8.23 http://otsu.seesaa.net/article/52391498.html
 これは、新興国の債券で運用する投資信託です。
 最近、第65期の運用報告書が出されました。
http://www.kokusai-am.co.jp/fund/pdf/unyou/143104.pdf
ちょっとそれを見てみましょう。
 p.1 で、過去6ヵ月の基準価額とベンチマークの推移のグラフがあります。課税前分配金込み基準価額と「JP Morgan EMBI Global Diversified(円換算)」のグラフを見ると、ほぼ重なっています。この投資信託は、アクティブファンドで、信託報酬は 1.6485% と高めなのですが、実際の運用成績はインデックス並みということです。こんなことをしていて 1.6485% の報酬は高いと思います。
 p.3 では、過去6ヶ月間の基準価額の主な変動要因について述べています。債券要因はマイナス 11.1%、為替要因はマイナス 15.0% といずれも大幅なマイナスでした。
 p.5 では、「JP Morgan EMBI Global Diversified(米ドルベース)」の6ヶ月間の推移のグラフがあり、変化率が △11.9% とあります。ベンチマークの -11.9% と比べれば、この投資信託は -11.1% だから、ちょっとだけマシだといえます。(両方とも、債券の利息を含めて計算しているはずです。)
 p.6 では、過去6ヵ月の米ドル対円レートの推移のグラフがあり、変化率が △17.4% とあります。ベンチマークの -17.4% と比べれば、この投資信託は -15.0% だから、これまたちょっとだけマシだといえます。これは、p.2 にあるように、債券組入比率が約93%くらいで、7% ほどの差があるためでしょう。
 p.22 では、投資信託財産の構成が書いてありますが、マザーファンドが 98.7%、コール・ローン等、その他が 1.3% となっています。また、マザーファンドを見ると、p.35 ですが、公社債が 92.9%、コール・ローン等、その他が 7.1% となっています。というわけで、全部を米ドルで運用しているわけではないので、為替レートの影響も少しだけ限定的だということになります。
 p.4 では、ファンドの期間騰落率がベンチマークよりも 0.5% よかったことを述べ、その差異の要因としていくつか指摘していますが、どんな国の債券に投資していたか(オーバーウエイト、アンダーウエイト)ということだとしています。このあたりがアクティブ・ファンドのアクティブ・ファンドらしいところです。
 p.4 を見ると、円ベースのリターンで、エクアドル -73.7%、ウクライナ -55.7%、アルゼンチン -53.7%、ベリーズ -51.2% などと、半額以下になってしまった国が4つもありますし、-40% から -50% の成績のところも6ヵ国ありますから、今期はひどい成績になったといえると思います。そういう国を避けることができていれば、運用成績はプラスになる(正確にはマイナスにはならない)といえるでしょう。
 pp.7-8 では、マザーファンドのほうですが、国別資産配分が示されています。いろいろ考えてオーバーウエイト・アンダーウエイトしていることがわかります。
 しかし、そんなふうにがんばった結果としてベンチマーク比で 0.5% のプラスだとしても、信託報酬 1.6485% を考えたら、とうてい信託報酬ほどの成績は上げていないと見ることができます。大きく見れば、このファンドはインデックス並みの成績しか上げていません。債券のアクティブ・ファンドと言っても、インデックスに対して、若干国別配分を変える程度なんですね。なかなかアクティブな行動は取りにくいということがわかります。
 p.10 では、過去6ヶ月間の1万口当たりの損益と繰越分配可能額の推移を示しています。これによると、配当等収益(経費控除後=信託報酬を引いたあと)は、毎月 34-44 円程度になっています。一方、分配金は 60-80 円になっており、何としても分配金を出そうとしている方針であることがわかります。次期繰越分配可能額がだんだん減っていますが、今までの蓄積があるので、分配金を出し続けることも可能だというわけです。ま、このあたりはファンドの方針ということですが、乙のように、最近になってこのファンドを購入した人間から見ると、(過去の値上がりを享受しているわけではないので)分配金を出さないようにしてほしいと思います。自分の資産を取り崩しているだけですから。
 p.15 には、1万口当たりの費用の明細が書いてあります。信託報酬 63 円以外には、保管費用等 0 円、監査費用 0 円と安いものです。0 円といっても、タダというわけではなく、0.5 円未満の費用しかかからなかったということでしょう。マザーファンドのほうでも、p.34 にあるように、費用は、保管費用等が1円ということだけですから、債券の投資信託は、あまりコストがかからないものなのでしょう。p.34 でマザーファンドが行っている売買状況が示されますが、資産総額に比べれば大した金額ではありません。株式の投資信託ほどには頻繁な売買をするわけではないということがわかります。(結果的にコストがかからないということにもなります。)債券の投資信託としては当然のことかと思います。
 こんなことで、この投資信託は、信託報酬が高いので、あまりいいものではありません。乙としては、乗り換えたくなってきました。

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posted by 乙 at 04:52| Comment(1) | TrackBack(0) | 国内投資信託 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月18日

角山智(2009.1)『資産運用の強化書』パンローリング

 乙が読んだ本です。「銘柄選びよりも大切な投資の基本」という副題がついています。
 角山氏といえば、バリュー株の投資家だとばかり思っていました。
 『株価4倍「割安成長株」で儲ける収益バリュー投資術』
2006.8.4 http://otsu.seesaa.net/article/21894584.html
あるいは『超特価バリュー株「福袋銘柄」で儲ける週末投資術』
2006.8.2 http://otsu.seesaa.net/article/21794517.html
といった本を書いている方です。
 本書は、アセット・アロケーションに重点をおいた書き方になっており、以前の本とは立場が大きく異なっています。分散投資が中心です。
 これについて、まえがき中の p.6 で、次のように述べています。「私は、13年間投資を行ってきました。日本新興市場の小型株を好んで売買するという、よくあるタイプの個人投資家です。【中略】2006 年から、以前より興味を持っていたアセット・アロケーション重視の投資に切り替えたのです。債券や REIT を組み入れ、株式については ETF を活用した国際分散投資を行っています。」なるほど、角山氏は宗旨替えをしたのですね。
 本書に書いてある内容はまともなことですが、ある意味で退屈しがちかもしれません。分散投資の本というと、だいたい似たような内容になってしまうものです。
 乙は、第6章の「【株式】エマージング市場」が気になりました。はじめに、BRICs ブームがあったけれど、最近はめちゃくちゃになっていることが述べられています。それから、1990年代の「アジアの4匹の虎」(韓国、台湾、香港、シンガポール)でも同様で、ブームは怖いとしています。p.141 では、メキシコの IPC 指数の推移を載せ、メキシコ通貨危機の傷跡が残っているとしています。また、p.143 では、香港のハンセン指数の推移を載せ、アジア通貨危機のようすがわかるとしています。確かに大幅な下落が見てとれます。しかし、2枚のグラフを見ると、通貨危機があっても、その後は持ち直し、それ以前よりも株価は上昇しているのです。つまり、著者が説くように、「エマージング株式市場は危ない」のではなく、大きな価格変動があることもありますが、結果的には長期間保有を続ければ大きなプラスになったといえるのではないでしょうか。
 p.145 のタイの SET 指数では、大きな落ち込みのあと、株価が回復していませんし、p.147 のベトナム VN 指数でも、大きく落ち込んだままになっていますが、これらも、今後時間が経てば回復するのではないかと思われます。BRICs についても、同様に考えられるのではないかと思います。
 こんなことで、乙は、著者のいうほどエマージング市場が危ないとは思えませんでした。
 第12章「炭坑のカナリア」も気になりました。著者によれば、株価の変調は前もってわかるというのです。注意するべき指標があるというわけです。本書では六つの指標(長短金利差、イールドスプレッド、商品市況、銀行株指数、クレジットスプレッド、恐怖指数)を紹介しています。
 p.262 では、日本株でシミュレーションをしており、逆イールドが生じた場合、翌年は投資を行わないようにすると、何もせずにじっとしているよりは成績が大きく上昇するというわけです。これは本当でしょうか。こんなことで運用成績が上がるならば、プロのファンドマネージャーたちがそういう戦略を採らないのはなぜなんでしょうか。日本株ファンドでありながら、1年間も株をまったく保有せずにキャッシュポジションのままにしておくのは、本来、ありえないことかもしれません。しかし、それが正しい運用ならばそうすべきです。あるいは、一部のヘッジファンドのように空売りも行うような運用方針であれば、ここぞとばかり空売りで勝負するべきです。なぜ、プロがそうしないのでしょうか。乙はここがわからなかったです。
 六つの指数があるといったって、それらが相互に矛盾するとしたときどうしたらいいかという難問もありそうです。
 著者はタイミング投資はありではないかとしていますが、一般の個人投資家にとって、タイミング投資はきわめてむずかしいものと思います。
 本書は、海外分散投資の本ではありますが、全面的に信用していいかと考えてみると、少しだけ疑問を感じました。
 余談ですが、p.205 では、相関係数について「0.1%」と書いてあります。「%」が余分です。単なるミスプリであることを祈っています。



ラベル:角山智
posted by 乙 at 05:29| Comment(2) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月17日

老後の生活がどんなものか、想像できません。

 乙は、まだまだ15年くらいは働き続ける予定で、毎日忙しくしています。
 しかし、いつかは今の職場を辞める時期がくるでしょう。
 退職後(老後)の生活は、どんなものになるのでしょうか。
 早めにセミリタイアした人のブログ
http://blog.livedoor.jp/a08098859911/archives/763151.html
で「「毎日が盆と正月」になった。単純に生き甲斐がなくなった。」などと書いてあるのを見ると、「おや?」と思います。
 乙は、今の状態でセミリタイアしても、やるべきことがたくさんあって、それ以上にやりたいことがたくさんあって、生きがいだらけのように感じています。今の普段の生活の状態から「勤め先に行って仕事をする」を全部キャンセルしてしまっても、時間が足りないのではないでしょうか。
 それでも、15年後には「盆と正月」になってしまうのでしょうか。
 乙が今いろいろと忙しいのは、周りの人たちから「今の勤め先で○○の仕事をしているから△△を頼もう」などと思われているのでしょうか。そんなことはないと思います。
 乙の場合、ある意味では、すぐにでもセミリタイアしてしまってもいいと思いますが、まだまだ金融資産が少ないですし、あと15年くらいは給料をもらい続けないと、安心して老後を迎えることはむずかしそうなので、今後ともがんばるつもりでいます。
 勤め先が倒産したら……いきなりセミリタイア生活ですね。それはそれで踏ん切りが付けられていいのかもしれません。でも、15年分の給料がなくなってしまっては、将来計画としては大幅に狂ってしまいます。やっぱり同業他社に再就職するのでしょうか。できますかね?

posted by 乙 at 05:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 老後の生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月16日

オーストラリアに上場している ETF

 カン・チュンドさんのブログで、オーストラリアに iShares の ETF が上場していることを知りました。
http://tohshi.blog61.fc2.com/blog-entry-639.html
 オーストラリアは日本とあまり時差がない国です。
 では、なぜオーストラリアで欧米の株式などに投資する ETF が上場しているのでしょうか。
 香港の ETF
2009.3.15 http://otsu.seesaa.net/article/115670077.html
のところで書いたことと関連しますが、何といっても、英語の力が大きいでしょう。元々大英連邦の一角ですから、英語は普通に通じます。イギリスやアメリカからの移民も多い国です。
 アメリカで上場している ETF に関していえば、説明資料はそのままで、単にオーストラリアに上場すればいいのです。
 となると、日本で欧米の株に投資する ETF が上場しないのは、「時差」よりも「言語問題」(ないし日本政府の方針や規制)ということになりそうです。
 ここが日本の投資環境に関して乙が一番不満を覚えるところなのです。
 海外投資を心がける一つの理由は、まさにこれです。
 日本を脱出しないと、世界から取り残されるように思うのです。

posted by 乙 at 06:18| Comment(0) | TrackBack(0) | ETF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月15日

香港に上場している ETF

 以前、乙は、海外(欧米)の ETF はなかなか日本市場に上場されないだろうという見通しを述べました。
2009.2.28 http://otsu.seesaa.net/article/114926124.html
 しかし、香港では、さまざまな ETF が上場されています。
 日本では、ユナイテッドワールド証券経由で、香港の ETF に投資できます。
 香港に上場している ETF 一覧は、ユナイテッドワールド証券の以下のページで見ることができます。
http://www.uwg.co.jp/ad/etf/etf.html
 中国を中心としてアジア系の ETF が多いわけですが、中にはアメリカ株もあります。「リクソーETF FTSE RAFI US 1000」(02803)と「リクソーETF ナスダック 100」(02826)です。
 これらは、香港で上場していて、日本で上場していないのです。なぜでしょうか。
 リクソー社にとっては、香港のほうが日本よりも市場として好ましいと判断しているということです。香港は、歴史的な事情により英語が広く使われていること、地域の目標の一つとして投資立国を考えていて、税金も安く、多くの人にとって経済活動がしやすいことなどが理由なのではないでしょうか。
 こういう現状を見ると、「日本は遅れているなあ」ということになります。
 日本は、政治的に何とかしないと、地盤沈下が進み、世界から取り残されるのではないでしょうか。まあ、今の政治家を見ていると、とうてい無理なようにしか見えませんが……。

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ラベル:ETF 香港
posted by 乙 at 04:46| Comment(3) | TrackBack(1) | ETF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月14日

ETF転換権付き株式取得機構債(続)

 日経新聞3月13日朝刊1面に出ていた記事です。
 ETF転換権付き株式取得機構債については、すでにブログで述べたことがありますが、
2009.3.8 http://otsu.seesaa.net/article/115307279.html
政府・与党が検討に入ったということで、まだ決まったわけではありません。
 記事では、次のように述べていました。「機構は買い取り原資を調達するため、政府が元本を保証した無利息の債券を発行することを検討。投資家は将来、一定価格でETFに転換できるようにする。将来の時価が転換価格を上回っていれば、売却益を手にできる。売却益への税金を軽減することも検討する。」
 無利息とはいえ、元本保証であれば、この債券を買う人はたくさんいるでしょう。いや、それどころか、現在上場されている日本株ETFは、存在意義がなくなります。誰だって、元本割れの危険性を負いたくないですからね。
 こんな債券が売られている状態で、通常のETFを買う人がいるのでしょうか。いないはずです。それどころか、現在のETFは解約が相次ぐものと思われます。どちらも平均株価に連動し、一方は値下がりの可能性があり、他方はそれがないとすれば、通常のETFを買う人がいないのと同様、すでに保有している人はそれを売却してこちらの債券に乗り換えるでしょう。
 そもそも、現在、日本株に投資しようとしている人さえ、ためらわせます。この先どうなるかわからない日本株を直接買うよりも、ちょっと待って元本保証のETFに相当する債券で運用したほうがいいからです。
 こうして、資金が集まり、株価が上昇し、ETF価格も上昇し、みんながバンバンザイです。
 しかし、話はこれで終わりません。
 出口戦略はどうなるのでしょうか。
 債券ですから償還期限が決められていると思いますが、それにともなって、どの段階で売却すればいいか、なかなか悩ましい問題になります。特に、この債券に資金が十分すぎるほど集まりすぎると、それがカンフル剤になって株価が上昇しますが、その後債券を売ろうとすると、それだけで株価が下がり、したがってETF価格も下がる可能性があります。大きすぎる株式ファンドと同じ問題です。売ろうにも売れない事態になるわけではないのですが、価格が下がってしまえば、この債券のメリットはなくなってしまいます。
 この債券で運用し、ある程度経ったところで、償還日を迎えるよりは前に売却するのが良さそうです。
 それにしても、こんな債券が出たら、株式市場へのインパクトは大きなものになるでしょう。それがいいのかどうか、乙にはわかりません。

posted by 乙 at 05:13| Comment(2) | TrackBack(0) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月13日

堺屋太一(2008.12)『大激震』実業之日本社

 乙が読んだ本です。
 出版時期から考えて、今回の金融危機に関する本だろうと考えて読んでみることにしました。しかし、もっと壮大なスケールの内容が詰まった本でした。
 第1章「日本の凋落」では、今の日本は通り一遍の改革でなく、明治維新的な大変革をしなければどうしようもないと論じます。p.26 では、日本が規格大量生産を目指したけれど、それは人類文明の方向と違っていて、そのために90年代以降に日本が凋落したのだと説明しています。目が覚める思いがしました。
 では、どんなことがこれから必要になるでしょうか。堺屋氏は、自由貿易協定(FTA)と外国からの移民で開国せよとのことです。そして、公務員制度を改革して天下り全廃、道州制の導入、金融・財政の発想の転換、教育改革(規格大量生産向きの人材育成でなく、独創性と個性のある人間を育成しよう)などが説かれます。もっともな提言のようにも思いますが、こんな大きな改革が実現できるでしょうか。どうやって実現できるでしょうか。今の政治家を見ていると、到底不可能としか思えません。
 第2章「日本とは何か」では、歴史分析から日本のあるべき姿を探ります。ここも雄大な話が展開されます。
 第3章「「団塊の世代」が日本を変える!」では、団塊の世代に期待を表明しています。高齢者をうまく活用しようという趣旨です。これまた、ちぢみ行く日本に対して、興味深い提言でした。なお、p.85 では、合計特殊出生率のグラフが示されますが、3箇所で「%」が付いています。たとえば、2006 年は 1.32% というような具合です。もちろん、単位は「人」ですから「%」を付けてはいけません。堺屋氏の勘違いでしょう。しかし、3箇所もあるとなるとミスプリでは済ませられません。
 第4章「知恵の時代こそ、「個性」が大切」では、アイディアによる地域興しを説いています。p.139 では、そういうアイディアなしでは日本はアジアの田舎になってしまうと警告しています。では、どんな地域興しのアイディアがあるのでしょうか。あくまで一例ですが、p.144 では、原子力発電所の廃熱を利用して、2km の長さのコースを持つプールを作ろうと述べています。あっと驚きますが、実現は可能だし、乙はけっこうおもしろい話ではないかと思いました。
 第5章「大きく人類文明が変わる局面に来た」と第6章「世界を創った男チンギス・ハンに学ぶ」は、全世界の歴史を見ながら、今後の展望をしています。p.225 では、チンギス・ハンの孫のフビライ・ハンは、史上初めて不換紙幣を発行したと述べています。現在の米ドルにも通じる話です。そして、米ドルは80年くらいは保つのではないかとしています。1971年に米ドルがペーパーマネーになったわけですから、2050 年ころまではドルが大丈夫だとしています。そんなものでしょうか。乙はそのころには死んでいると思いますので、まああまり影響は受けないと思いますが、歴史を知ることは未来を考える上でおもしろいと思いました。
 最終章「新代「知価社会」の誕生」では、知価社会こそが世界危機脱出の唯一の方法だと説きます。大きな文明の流れが変わったのだから、それに適した方向に変わらざるを得ないというわけです。上述のように、乙は今の日本では、そういう「変化」はきわめてむずかしいように思います。このまま「凋落」が続いていくのではないでしょうか。
 本書は、スケールの大きさが一番の売りでしょう。ただし、書かれている内容は、著者の以前の本を読んでいる人には繰り返し的な印象を受けるのではないでしょうか。乙は、きちんと堺屋氏の本を読んでいるわけではないですが、いろいろなところで(雑誌記事などで)見かける堺屋氏の主張などと一致していて(それは当然ですが)既読感がありました。まあ、まとめて読んで堺屋ワールドにひたるのも悪くないと思います。



ラベル:堺屋太一
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2009年03月12日

損保ジャパン−フォルティス・トルコ株式オープンの第3期運用報告書

 乙は、ジョインベスト証券で「損保ジャパン−フォルティス・トルコ株式オープン」などというマイナーな投資信託を購入していたのでした。
2007.8.23 http://otsu.seesaa.net/article/52391498.html
 さて、最近、その第3期の運用報告書(決算日 平成21年1月26日)が出ました。
http://www.sjam.co.jp/dat/uh/uh0899.pdf
 p.1 によれば、第1期 +27.2%、第2期 +9.1% といい成績でしたが、第3期は -65.5% とさんざんな成績でした。
 乙は、妻の資金を運用するために、2007年8月(第2期の真ん中ころ)にこの投資信託を購入したのですが、結果的には高値づかみをしてしまったようです。
 p.2 によれば、2008年9月〜10月くらいに大きく値下がりしています。2ヵ月で一気に半額になってしまったのですから、その変動の大きさにはあきれるばかりです。
 p.3 で運用環境について説明していますが、イスタンブール・ナショナル100種指数の推移を見ると、期首を 100 としたとき、期末では約 60 になっていますし、トルコ・リラ/円のレートの推移を見ても、期首を 100 としたとき、期末では約 60 になっているということで、株安と円高のダブルパンチが襲ったことがわかります。0.6×0.6=0.36 ですから、-65.5% ということと符合します。
 p.6 では、運用経過が説明されています。この投資信託は銀行株の占める割合が 38.8% と高いことがわかります。新興国の産業を見てみると、銀行業は比較的手堅い商売のように思えるので、ここの投資割合を高めることは悪いことではないと思います。p.7 では「トルコの銀行は米国サブプライムローン問題の直接的な影響は受けていません。」とあります。乙の想像ですが、トルコの銀行は、日本と同様に(あるいはそれ以上に)海外への進出が遅れているのでしょう。
 なお、p.6 の「主な購入銘柄」で BIM BIRLESIK MAGAZALAR(食品・生活必需品)があがっており、「主な売却銘柄」で MIGROS TURK(食品・生活必需品)があがっています。株式の売買は、セクター別程度の区分でなく、個別企業の業績を見ているのでしょう(たぶん)。やみくもな売買ではないと信じたいです。
 p.8 では、期中の株式売買高比率が出てきます。株式の売買金額を組入株式の総額で割ったものですが、これが 0.91 です。1年間の間に、保有銘柄のほぼすべてを入れ替えていることになります。けっこう売買が激しいのですね。アクティブ・ファンドの一面が見てとれます。
 しかし、それにしても、p.5 によれば、この投資信託(厳密にはマザーファンドのものですが)の運用成績はMSCI Turkey 10/40 Index とあまり変わりません。激しい売買をしても、まあこんなものなのですね。信託報酬 1.995% を払うのはもったいないです、はい。
 乙が自分の資金でトルコ株の投資先を選ぶなら、ETF を利用するでしょう。iShares MSCI Turkey Investable Market Index Fund (TUR)
http://www.etfconnect.com/select/fundpages/etf_funds.asp?MFID=185114
がいいですかね。Expense Ratios 0.68% ですから、コストも安いです。
 でも、国内でトルコ株に投資しようとすると、まあこんなヘボな(失礼!)投資信託くらいしかないのではないでしょうか。
 少額資金を運用するのは、なかなかむずかしいことだと実感しています。
 いやまあそもそもトルコ株に投資しようなどと思ったこと自体が問題ですかね。

posted by 乙 at 04:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内投資信託 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月11日

ドルコスト平均法が最も賢い?

 日経新聞3月10日13面に載っていた記事で、「一目均衡」というコラムがありました。編集委員の前田昌孝氏の執筆です。
 23歳になったときからドルコスト平均法で毎月1回日経平均を買い続けたと仮定した場合、現在65歳未満の人は全員含み損を抱えてしまっているという話で、65歳以上の人だけが含み益があるという話です。
 前田氏は、記事の中で「物価上昇による目減り分も考慮すれば、戦後生まれにとって株式市場は資産を減らす場所だった。政府が「貯蓄から投資へ」と背中を押しても、賢い個人が動かないのは当然であろう。」と述べています。41年間もドルコスト平均法を続けてきて、それでもマイナスとは一体どういうことだといいたくなる気持ちもわかります。
 木田知廣氏のマネカレ指数
2009.3.2 http://otsu.seesaa.net/article/115015523.html
のように 2006 年からの(たった3年の)ドルコスト平均法でもマイナスになってしまうという話とはスケールが違います。41年間ですよ、41年間。
 しかし、前田氏のコラムをあまり単純に信じて、「だからドルコスト平均法は儲からないんだ」と結論づけてはいけません。
 なぜならば、前田氏の計算は、株価の水準として3月9日の終値(日経平均株価がバブル崩壊後の安値を更新したとき)を基準にしているからです。たまたま安値を更新した日の株価で計算したからこういう結論になったのです。ちょっと株価が上がれば、前田氏の計算は大きく変わってしまい、結論も違ってきます。(株価が下げても結論は変わりますが。)つまり、ドルコスト平均法による運用結果は、どの時点で評価するかで結論が大きく動くのです。
 安値を記録した日を基準に考えて「だからダメなんだ」と主張するのは、一方的です。
 いろいろな日を基準に考えて、ドルコスト平均法が有利か不利かを見るべきです。半年前だったら、結論が大きく異なるのはわかってもらえるでしょうね。それだけ、今の株価が異常なのです。

 メルマガ「一緒に歩もう!小富豪への道」
http://archive.mag2.com/0000141697/20090310150001000.html
では、前田氏の記事に同調して、ドルコスト平均法に関して悲観的な見解を述べています。
 定番のドルコスト法すら、日本株に当てはめるとほとんど無力で、長期投資によって日本人は資産を失ってゆくばかり、上記の計算結果はそのことを示しています。
 言い換えれば、長期投資の有効性をひたすら信じ、もっとも有効と考えられたドルコスト平均法で投資を行っても、65歳以下の人は全て投資に失敗したということです。

しかし、そんなに気にすることはないというのが乙の考えです。

posted by 乙 at 05:04| Comment(44) | TrackBack(0) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月10日

みずほフィナンシャルグループの優先出資証券

 乙は DIAMOND ONLINE の記事
http://diamond.jp/series/inside_e/09_03_07_003/
で知りました。
 みずほは、約800億円の優先出資証券を米欧の機関投資家向けに発行、資本増強を図る計画を打ち出した。
 だが、この優先出資証券の配当率の高さが尋常でない。なんと年利14.95%。今、国内で調達した場合、以前より上がったとはいえ3〜4%程度の水準だから、あまりの高水準に「目を疑った」と語る金融関係者は多い。

 確かに、15% 近い金利というのは驚きです。米欧の機関投資家向けだそうですから、ドル建てでしょうが、個人投資家がこういうのに投資できるとしたら、けっこう出資しようとする人がいるような気がします。それでも、みずほFGとしては、個人投資家を相手にすると「手間」がかかるので、機関投資家向けにして、一気に大量の資金を調達するというのがねらいでしょう。
 それにしても、こんな高金利を付けなければ資金調達ができないというのは、みずほFGが、今や危機的状態だということを自ら物語っています。
 さて、みずほFGは、今後どうなるのでしょうか。

 なお、みずほFGの正式なリリースは2月23日に行われています。
http://www.mizuho-fg.co.jp/release/pdf/20090223release_jp.pdf
それによると、14.95% の配当率は平成26年6月までの固定配当で、それ以降は変動配当だとのことです。

 関連ニュースとして、以下のような記事があります。
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090213/fnc0902132115018-n1.htm
http://business.nikkeibp.co.jp/article/reuters/20090213/186022/
みずほFGの大変さが伝わってきます。

posted by 乙 at 06:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融機関 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月09日

シティグループの債券の損失

 乙のブログに「与那国お」さんから質問がありました。
http://otsu.seesaa.net/article/115259871.html
 「シティの債権を保有してるのですが二月二十八日ロイターの記事で債権保有者は政府主導のリストラ措置への参加を強いられるとの記述がありました。倒産以外に元本が毀損することがあるのですか?」
 この記事は、
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36742920090228
のことです。
 その記事によると、ムーディーズやS&Pがシティグループの格付けを引き下げるということです。
 これで意味がわかります。(以下は、あくまで乙の解釈です。)
 格付け会社がシティグループの格付けを引き下げると、シティがこれから発行する債券は高利率のものにせざるを得ません。今まで通りの低利率の債券は、(格付けが低く、倒産の可能性が高まるので)買う人がいなくなってしまうからです。いわゆる高利回り債券とかハイイールド債券、ジャンクボンドとかいわれるものになるわけです。
 こうして、新規発行の債券の金利が高くなると、すでに発行済みの債券(既発債)の場合も、金利が高くなります。そういう金利でないと、既発債を買う人がいなくなり、流通しなくなるということです。
 債券は、金利が上がると価格が低下します。そのため、シティの債券に投資をしている人は、債券の金利上昇で債券価格が低下し、結果的に元本が毀損してしまうということになります。
 途中で売るときに元本が毀損してしまうのであって、満期(償還期限)まで保有していれば、元本は毀損しません。しかし、シティがそんなに長く持つのでしょうか。長く持たないとすれば、倒産して、元本が毀損します。今は、債券価格の下落で、そういう状況を市場が織り込み始めたと言っていいのではないでしょうか。
 乙の解釈が間違っていると思われた方は、ご指摘ください。

posted by 乙 at 07:25| Comment(1) | TrackBack(0) | 債券 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月08日

ETF転換権付き株式取得機構債

 変な金融商品が経団連から提案されています。「ETF転換権付き株式取得機構債」というものです。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-36845320090306
 これに対して、ゆうきさんは全面的に否定しています。
http://fund.jugem.jp/?eid=1003
 renny さんも同意見だそうです。
http://renny.jugem.jp/?eid=890
 他にもこの件に触れているブログ記事がいくつかあります。
http://401k.sblo.jp/article/27410364.html
http://nightwalker.cocolog-nifty.com/money/2009/03/post-30ac.html
http://ch01173.kitaguni.tv/e879965.html
http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-bbfa.html
 確かに、変な提案ではありますが、しかし、こういうものすごくお得な金融商品が出るなら、個人投資家としては、文句を付けるよりも、全力で買ったほうがいいのではないでしょうか。
 乙の意見はモンチさん
http://m0nch1.blog.shinobi.jp/Entry/564/
と同じです。
 詳細がどうなるか、わからない段階なので、あまり単純に判断するのもおかしいのですが、ロイターの記事にあるようなことならば、無リスクで日本株に投資できることになり、画期的な金融商品になります。
 しかし、こんな商品が実現可能でしょうか。
 ロイターの記事では、「機構は、ETF転換権付き債を発行するため、ETFをあらかじめ買い付ける。」としています。つまり ETF 運用が基本ということです。だとしたら、ETF の価格が暴落した場合、その損失を誰が(どこが)かぶるのでしょうか。考えてみれば、それは株式取得機構
http://www.bspc.jp/
です。銀行等保有株式取得機構の債券といえば、政府が保証しているわけで、つまり、債券が大きく毀損してしまった場合、結果的には国民の税金で穴埋めすることになるわけです。
 いやはや、これはすごい話です。巡り巡って、我々の税金が担保になっているわけですね。誤解を恐れずにいえば、いざとなったら、日本国民の金を投資家に移動させましょうというような話です。投資家としてはうれしい話だけれど、納税者としてはうれしくない話です。
 オプションを利用してこんな金融商品を生み出すという考え方もあり得ますが、購入した側にこんな有利なものを作るとなると、オプションを反対売買する側は必ず損をするようなことになりそうで、そもそも金融商品として成り立つのかどうか、大いに疑問です。
 この話が実現すれば、今後の日本株の投資先としては、ETF転換権付き株式取得機構債で決まりです。
 でも、資金が何兆円も、もしかして何十兆円も、ETF転換権付き株式取得機構債に流れることになったら、日本市場はどうなるのでしょうか。株価暴騰でしょうか。そういうとき、果たしてこの債券をうまく売ることができるでしょうか。たいていの人はそういうバブルには乗れずに、大けがをしそうです。売るときになって売れないような事態になるとか、別のトラブルになりそうに思います。

 他の日本株のファンドは資金の大量流失ですべて早期償還になるでしょう。だって、こんな有利な商品ならば、資金のシフトは当然であり、ファンドとしてまったく売れなくなるのですから。

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posted by 乙 at 05:31| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月07日

野尻哲史(2008.11)『退職金は何もしないと消えていく』(講談社+α新書)講談社

 乙が読んだ本です。「60歳から「経済的自由」を手にする投資勉強法」という副題が付いています。
 第1章「「団塊の世代」は逃げ切れるか?」では、団塊の世代も「逃げ切れない」ということを述べています。p.31 あたりでは、退職後の経済生活のアンケートに基づき、世代別の態度を次のように規定しています。
・おびえる20代
・運用できない現役
・反省するシニア
 なるほど、ポイントを突いています。それぞれにうまくいかないものなんですね。
 では、実際退職後の生活はどの程度なのでしょうか。年金に加えて、推定退職金と手持ち資産を余命35年で割るという計算をしています。その結果、退職後に使えるお金は、平均で1年間に328万円だそうです。退職前に700万円くらいの収入があったことを基準にすると、なかなか厳しい現実が待っているようです。
 第2章「人生を左右する「五つのリスク」」では、退職後のリスクとして次をあげています。
(1) 思った以上に長生き
(2) 減らない退職後の生活費
(3) 忍び寄るインフレ
(4) 「引き出しすぎ」の恐さ
(5) 偏った資産構成
 かなりのページ数を割いて、それぞれのリスクを説明しています。
 p.66 で「平均寿命を全うできる確率は「50%」ということになります。」と書いていますが、これは厳密には間違いです。平均寿命が「中央値」ならば、正確に50%になりますが、「平均」であれば50%ではなくなります。平均寿命が 79.19 歳であれば、平均よりも若いほうで0歳から79歳まで死ぬ確率があって、一方では、79歳以上で死ぬ確率もありますが、100 歳を越えて生き延びる確率はそんなに大きくなく、だいたい80〜90歳くらいで死ぬとします。平均を計算するとき、若い人が1人死ぬと、(平均の)79歳から大きく外れます(小さな値になります)。一方、79歳以上の人は+10年くらいのところに集中して死にます。つまり、死ぬときの年齢分布は正規分布のような山型分布でなく、若いほうに裾野が伸びた形(そして高齢のほうはストンと切れる形)をしています。ですから、平均寿命よりも年長の人のほうが50%以上になり、年少の人は50%未満になるのです。
 pp.113-115 では、引き出しすぎの恐さを説明していますが、引き出しながら使っていくときは、マイナス運用があると、早く資金が枯渇することがあるとのことです。p.113 の表が印象的です。同じ収益率の表なのですが、21年間にわたって平均収益率 10.4% でシミュレーションしています。そして、21年にわたる収益率を前後を入れ替えて表にしています。すると、最初の3年にマイナスが集中して現れるような不幸な場合、途中で残額ゼロになってしまいます。これはなかなかおもしろい話でした。はじめにマイナスにならないことが重要だというわけです。
 p.124 では、アメリカの年齢別の株式保有率のグラフが出ています。それによると、高齢者でも資産を株式に振り向ける割合が高いことがわかります。70歳くらいからはさすがに株式の比率が下がってきますが、60代まではけっこう高いと思いました。「100-年齢」が株式の比率だなんていえません。興味深いデータでした。もっとも、アメリカは格差社会ですから、株式に投資しているのは金持ちが多いということかもしれません。「普通の人」がどれくらい株式に投資しているかはよくわかりません。
 pp.128-130 では、アンケート調査で1年間で年金以外にどれくらいのお金が必要かと聞いています。平均値は186万円です。また、総額ではいくら必要ですかと聞くと、平均3044万円だったとのことです。割り算してみると、たった 16.4 年分でしかないのです。これでは(退職を60歳とすると)76歳で資産が尽きてしまうのです。多くの人はまじめに退職後のことを計算しているわけではないことがわかってしまいます。
 第3章「経済的自由を掴む資産設計術」では、投資の話です。
 p.147 では、75歳まで運用するという話が出てきます。現役時代は「働きながら運用する時代」、60歳から75歳までは「使いながら運用する時代」、75歳以上は「使う時代」です。乙は、退職までの15年くらいを考えて投資を始めたのですが、もっと先のことを考えておくべきだという意見です。なるほど、その通りですね。
 p.175 あたりでは、国内移住(都市から地方へ)も考えるといいという話で、確かに、そういう面もありそうです。乙は、海外移住を考えたりしましたが、
2008.2.19 http://otsu.seesaa.net/article/84738236.html
2008.2.18 http://otsu.seesaa.net/article/84564177.html
それよりも現実的かもしれません。選択肢の一つとして考えておきたいところです。
 本書は、新書でありながら中身が濃い本です。退職後(老後)の生活のことを考える上で大いに参考になりそうな本です。誰でも経験する「老後」ですが、それがどういうものかは、実際そうなってみないとなかなかわからないものです。



ラベル:野尻哲史 退職金
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2009年03月06日

アメリカ市場でアジア株の ETF が存在するのはなぜか

 先日の記事で、日本市場に欧米の ETF が上場する可能性は低いということを述べました。
2009.2.28 http://otsu.seesaa.net/article/114926124.html
 では、なぜ、アメリカ市場にアジア株の ETF(日本、中国、香港……)が上場しているのでしょうか。時差があるという条件は日本の場合と同じです。
 これは、アメリカ市場規模の大きさ(運用資金の厚み)、ヘッジファンドも含めた機関投資家の存在(投資家の厚み)、ドルという世界の基軸通貨で運用できること(ドルへの信頼)、英語という世界共通語で取引ができることなどが理由でしょう。今や、世界の投資家がアメリカで運用しようとしているのです。
 つまり、アメリカ市場にアジア株の ETF を上場した場合、それが大量に取引され、適切な値付けがなされる(可能性が大きい)のですね。
 アメリカには ADR という仕組みがあって、世界中の様々な企業がアメリカに株式を上場することができます。それを利用した ETF として、例えば、ADRE
2007.3.18 http://otsu.seesaa.net/article/36239471.html
などという新興国株の ETF もあります。市場が大きくなれば、こんなこともできるのです。
 日本市場も、こんな形になれば、世界の ETF が上場できるのですが、日本語というローカル言語を使い、小さな(!)株式市場でチマチマと取引しているのでは、世界から相手にされる可能性は低いのではないでしょうか。税金も高く、金融市場に関する日本政府の規制も強く、自由度がない市場には、魅力がありません。たとえば、外国企業が(ETF でも同様ですが)日本で上場する場合、かなりの量の日本語による説明文書を作成する必要があると思いますが、外国企業にとっては、これは相当な負担です。
 日本には、金融立国で(も)食っていこうなどというビジョンすらありません。このままだと、香港やシンガポールに負けるのは当然です。

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2009年03月05日

野口悠紀雄(2008.12)『世界経済危機 日本の罪と罰』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。野口氏の「現在」をどう見るかが書かれていて、大変おもしろい本でした。
 5ページほどの「まえがき」を読むだけで、1冊読んでみようという気にさせます。
 「日本の罪と罰」というタイトルも意味深長です。まえがきにありますが、今回の金融危機は、主犯がアメリカであることは事実ですが、実は、日本(それと中国と産油国)が共犯者であり、大量の資金をアメリカに提供したという「罪」があると論じます。日本は低金利政策を取り、為替介入を行って円安に誘導したので、円キャリー取引が行われ、低コストの資金を全世界(特にアメリカ)にばらまいたという「罪」です。そして「罰」ですが、対外資産の巨額の為替差損がそれに相当します。また、これから日本を未曾有の大不況が襲いますが、これも「罰」ということになります。
 第1章は「崩壊した日本の輸出立国モデル」というものです。ただし、この章は若干読みにくいと思います。文章の途中で、3章や4章で論じることを先取りしつつ、図表などを参照させている点です。たぶん、他の章を書いたあとで第1章を書いたのではないかと推測しますが、本は、そこまで読んできたことを前提にしつつ話を展開するようにするべきで、読んでいく途中で後ろから出てくることを参照するのは読みにくくなります。ただし、このような態度は第1章だけですので、本書全体としては読みにくいわけではありません。(まあ、2回読めば、何の問題にもならないわけですが。)
 p.107 では、アメリカの住宅価格とトヨタの車の売れ行きの関連を論じていて、まさにその通りだと思いました。アメリカでは住宅を担保に自動車ローンを組む人が多いわけです。したがって、「日本の自動車産業は、円安に乗ってアメリカでの自動車販売を増加させ、そこで得たドルをアメリカに投資し、(結果的には)住宅ローンを支援し、住宅価格バブルの増殖に手を貸したことになった。」ということになります。住宅価格が下落すれば、信用収縮がおき、クルマが売れなくなるのは当然です。今がまさにその状態だというわけです。
 p.133 では、2001 年に導入された量的緩和政策について、表向きは「デフレに対処するため」とされたが、真の目的は「為替介入による貨幣供給量の増加を放置すること」だったとしています。これまた鋭い見方でした。
 p.169 あたりで、食糧自給率の問題を論じていますが、野口氏は一貫して食糧自給率を上げる必要はないという立場を取っており、本書でも持論が展開されています。乙も、こんなふうに考えているので、興味深く読みました。

 本書は、各節末に内容の要約が書いてあり、大変読みやすくなっています。短時間で読みたい人は、その要約だけを拾い読みすればいいでしょう。(やっぱり本文を読みたくなるでしょうが。)
 本書は、今の経済の動きを解釈して見せており、なるほどなあと思わせるところが多くありました。本当は、こういう経済危機が起こる前に読みたかったのですが、なかなかそういうことはできないのでしょうね。しかし、後講釈でも納得できるところが多々あるという点でおすすめできる良書だと思いました。



ラベル:野口悠紀雄
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2009年03月04日

三菱UFJ信託銀行の「セカンドライフセミナー」(2)

 昨日の話
2009.3.3 http://otsu.seesaa.net/article/115064924.html
の続きです。
 後半はファイナンシャル・プランナーの神戸孝(かんべ たかし)氏でした。乙は、神戸氏の本(『幸せな老後を呼びこむ ほんとうに真っ当な資産運用』)もかつて読んだことがありましたので、
2006.6.24 http://otsu.seesaa.net/article/19747132.html
これまた著者の素顔を拝見した形になりました。
 「豊かなセカンドライフのための資産運用〜ハッピーリタイアメントに向けて〜」というタイトルで90分ほどの講演でした。
 こちらもパワーポイントの資料が別途印刷されて配布されました。
 神戸氏は、話し方を聞いていると、頭のよい方だとわかります。そういう話し方をします。ホワイトボードにいろいろ書きながら熱弁を振るいました。
 講演の内容は資産運用に関する正統派の考え方を紹介するものでした。
 まずは、ライフプランの話から入りました。ライフプランは、医者にたとえれば、診断→処方箋→治療に当たるものだという話でしたが、この比喩はわかりやすかったです。ですから、ファイナンシャル・プランナーに「今何を買えば儲かりますか」と尋ねてもダメだというわけです。それは、診断もしないで「薬は何が効きますか」と尋ねるようなものだということです。まずは、現状を認識し、ゴールを設定し、どのようにしてそのゴールにたどり着くかを考えるという手順が大切です。
 退職後のライフスタイルを明確化するという話もおもしろかったです。24時間時計で退職後の理想の1日の時間の使い方を夫婦のそれぞれに書かせると、まったく違ったものになるとのことで、いかにもたくさんの相談をこなされた方の話でした。
 資産運用に関しては、投資と投機の違いを説明し、株式売買に3つのスタンスがあるという話でした。
[1] 長期投資:5年(10年)以上保有を前提として銘柄選別、成長株中心
[2] 中期投資:半年〜1・2年、割安株中心
[3] 短期売買(投機):1週間〜1ヵ月、モーメンタム重視(順張り)
 そして、長期投資は企業を買う、中期投資は株価を買う、短期投資は勢いを買うという話でした。実にうまい言い方です。
 また、1000 円で買った株が 800 円に下がった場合、3つのスタンスのそれぞれで対処は違ってくるといいます。長期投資なら、バーゲンセールだということで、買い増すことになります。中期投資なら、割安だと思ったけれど、そうでもないということなので、当面は様子見です。短期投資なら、そもそも順張りで上がることを前提に買っているのですから、800 円になる前に、900 円あるいは 950 円の段階で損切りするというわけです。乙はなるほどと思いました。株式投資のスタンスの違いをズバリ指摘されたような感じでした。
 さらに、個人投資家は時間が最大の武器だということで、複利効果の話がありました。
 1000万円を4年間運用して、A さんは、+10%, +20%, -20%, +10% の運用をし、B さんは4年とも +5% の運用をします。利回りを単純に足せば、どちらも +20% です。結果的には、A さんは、1161.6万円になり、B さんは1215.5万円になります。A さんは、B さんに3勝1敗なのですが、それでも負けてしまいます。ここで大事なことは、いかに勝つか(高いリターンをねらうか)ではなく、いかに負けないか(マイナスにしないか)ということです。言われてみれば当然ですが、我々は、どうも、A さん的な考え方をしがちなように思います。自戒しなければなりません。
 あとは、分散投資の考え方の説明でした。乙がおもしろいと思ったのは、2点ありました。
 第1に、退職金が出たとき、一気に投資するようなことではダメで、半年ずつ3回に分けて1年でポートフォリオを作るようにするといいという話です。時間の分散は、なかなかむずかしいのですよね。
 第2に、日本と外国の株式と債券に分散投資する場合、外国株は新興国株がおすすめ(今後の成長に期待する)で、外国債券は先進国がおすすめ(安定した利回りを期待する)ということでした。確かに、この考え方も一理あります。新興国株を重視する考え方は、カン・チュンドさんの主張
2008.12.29 http://otsu.seesaa.net/article/111858818.html
とも一致します。しかし、乙は、先進国にも新興国にも株式と債券に投資しようと考えています。比率は適当に考えなければなりませんが。
 ともあれ、充実したお話を2件聞くことができて、ありがたい機会でした。
 無料セミナーということで、三菱UFJ信託銀行には感謝しています。

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2009年03月03日

三菱UFJ信託銀行の「セカンドライフセミナー」(1)

 乙は、3月1日(日)に開催された三菱UFJ信託銀行の「セカンドライフセミナー」
http://ac.nikkeibp.co.jp/nb/tr_mufg/
に参加してきました。
 東京国際フォーラムのB7ホールで開催されました。何人くらい入るのでしょうか。数千人入りでしょうか。とにかく大きな会場でした。
 セカンドライフとは、退職したあとの生活ということで、会場には50代から70代くらいの方が多かったように思います。夫婦で来ていた人もいましたが、圧倒的多数は男性でした。まあそんなものでしょう。
 講演は二つでした。
 最初は、国際エコノミストの今井澂(いまい きよし)氏でした。乙は、今井氏の本(『ヘッジファンドで増やす時代』)をかつて読んだことがありましたので、
2006.8.24 http://otsu.seesaa.net/article/22727990.html
著者の素顔を拝見した形になりました。
 「どうなる日本経済! 〜株式・為替などの見通しを中心に〜」というタイトルで60分ほどの講演でした。
 パワーポイントの資料が別途印刷されて配布されましたので、手元で資料が確認でき、かつ記録として保存もできるのでありがたいと思いました。
 講演の趣旨は、今後明るい展望があるのは、(1) 中国 (2) 金(gold) (3) 日本 の三つだということで、日本株の行き先を中心にした話がありました。
 今井氏が日本の復活が起きると予想する根拠は、
(1) 金融で、米・欧にくらべずっと軽い打撃
(2) 次世代の有望分野を押さえ込んだ産業界の実力(太陽電池、エコカー、原子力発電、水)
(3) メタンハイドレート(南海トラフは世界最大規模)
(4) 外的ショックに対して強い日本人の DNA
(5) アジアの興隆(日本は地理的・歴史的に強み)
という五つです。乙は、この中でメタンハイドレートの話に興味を持ちました。まもなく、本格的な調査が始まるそうですが、これが実現すると、日本は(今の石油と違って)消費エネルギーのかなりの部分を自国でまかなえることになるとのことですから、世界に対する日本の立場が大きく変わってくるでしょう。
 で、今後の見通しですが、今井氏は為替について次のように予想していました。
[1] オバマ政権の4年間に円高が続き、4年後には 73 円/ドル程度になるのではないか
[2] しかし、20年後には円安になり、160〜170 円/ドルになるのではないか
 また、日本株については、次のような予想でした。
[1] 株価はまだまだ下落し、今年10-12月には日経平均株価が 6000 円くらいになるだろう
[2] しかし、それが底値で、2011 年以降株価が上がっていくだろう
 為替も株価も予想はむずかしいもので、エコノミストの予想はたいてい当たらないものです。今井氏の予想もどれだけ当たるかはわかりません。予想が外れたら、今井氏の薄くなった頭髪を1本抜いて提供するというお話でしたが、乙は外すような気がしています。
 とはいえ、もしも為替が将来的に円高→円安のパターンになるならば、まもなくやってくるさらなる円高は海外に投資する絶好のチャンスということになりますし、日本株が下落→上昇のパターンになるならば、日本株に投資するチャンスということになります。今(この数ヶ月くらい?)は、投資をちょっと休んでおくこともいいことなのかもしれません。

 後半の講演については次回に回します。

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2009年03月02日

木田知廣氏のマネカレ指数

 木田知廣氏の考案による「マネカレ指数」というのがあります。「仮に、2006年7月19日(水)から、毎週水曜日に日経平均株価に連動する投資信託を1万円買いつづけた場合、平均購入単価はどうなるか」
http://www.money-college.org/blog/contents/takeoff/mc_index/
ということです。
 で、2月27日号のメルマガによると、
http://archive.mag2.com/0000220959/20090227122000000.html
2009年2月25日の
        マネカレ指数:  13,663円
        日経平均株価:  7,461円

これまでの投資金額:     1,320,000円
儲け:             -599,144円
単純な利益率:          -45.4%

ということになっています。
 きわめてシンプルなドルコスト平均法による投資で、こういう買い方が望ましいはずなのですが、それにしても、-45.4% です。
http://www.money-college.org/blog/contents/takeoff/mc_index/
には、「株価が下がっているときにも、「株価の下げ局面で毎月買うことにより、平均購入単価が下がって「儲けが出やすい体質」になるので我慢できる」とありますが、この通りの買い方を続けている人で、自分の保有している株が半額に下がってしまったとなると、かなり心理的にまいっているのではないでしょうか。これから日経平均がさらに下がっていく可能性もあるわけで、「我慢」はまだまだ続きそうです。一体、どれだけ続くのだろうかという気持ちになってきます。
 マネカレ指数で見ても、日本株の大幅で長期的な下落に追いついていないのです。
 いや、そんなことはなくて、日本株はあと数ヶ月で回復するという見通しの人もいるでしょう。そうなればなったでいいのですが、そうではないかもしれません。
 今後の見通しは、何ともいえないというところでしょう。

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2009年03月01日

みずほ銀行で他行宛の振込手数料が月間3回まで無料

 みずほ銀行から乙のところに郵便で案内が来て知りました。
 預金が50万円あれば、他行宛の振込手数料が月間3回まで無料になるというのです。
http://www.mizuhobank.co.jp/mmc/announce/index.html
 もともと、みずほ銀行に口座を開設している人は、自動的に「みずほマイレージクラブ」の会員になり、ある条件を満たすと、いろいろな優遇サービスが受けられるようになっていました。
2007.7.31 http://otsu.seesaa.net/article/49793409.html
 今回、この優遇サービスが大きく様変わりします。
 50万円であれば、ずっと寝かせておいてもいいように思うので、月末に預金残高がこれを下回らないように注意しながら使っていきたいと思います。
 これで、乙の場合、イーバンク銀行・新生銀行・みずほ銀行のそれぞれで無料振込ができることになり、日常的にネットショッピングその他で振込が必要になった場合でも、すべて無料でまかなえることになりそうです。
 今回のような無料振込が実現したことで、他のメガバンクも導入するようなことになると、利用者としてはありがたいですね。

 ちなみに、「みずほマイレージクラブカード」というクレジットカードもあります。
 乙は、その昔、UC カードなどという第一勧業銀行(みずほ銀行の前身)のクレジットカードを使っていたことを思い出しました。
2006.12.16 http://otsu.seesaa.net/article/29714524.html
 今でもこのカード会社が生き残っているようです。
http://www2.uccard.co.jp/
 ちょっと中を見てみると、今や、年会費無料になったんですね。
http://www2.uccard.co.jp/join/zero/freebo.html
 第一勧業銀行は、昔は UC カードだけと提携していたわけですが、みずほ銀行の今回のサービス改訂にともなって送られてきた書類を見てみると、今はセゾンカードやアメックスなどとも提携しているようです。銀行がどんどん変化していくようすがわかります。
 みずほ銀行さん、がんばってください。
 とはいえ、今の時代、ネット銀行に対抗していくのは、なかなか厳しいでしょう。支店を持っているだけでもコストがかさむように思います。そのハンディをどう乗り越えるか。知恵と工夫が必要です。

posted by 乙 at 05:19| Comment(2) | TrackBack(1) | 金融機関 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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