一読して、年金・医療・介護の諸問題がすっきりと頭に入ったような気がしました。
「だまされないための」という題名は刺激的です。だまされないのは「読者」ということですが、では、誰がだますのでしょうか。「はじめに」に出てきます。政府、政治家、厚生労働省、社会保険庁などです。つまり、本書は、今普通に考えられている社会保障制度を批判し、基本に立ち戻ってどうあるべきかを論じたものなのです。
本書中で一番おもしろいのは第3章「年金改革の現状と問題点」でしょう。現状をどうとらえるのでしょうか。答えは p.145 に書いてあります。「現在の高齢者への既得権保護・利益供与」、「先送り主義」、「情報操作」、「本質的でない論点へのすり替え」だと喝破しています。いかにも鋭い指摘です。
第4章「医療保険・介護保険改革の現状と論点」も興味深い記述がたくさんあります。
p.205 あたりでは、医師不足対策は診療報酬の決め方で解決できるといった、「経済」的な観点で割り切った議論が展開されます。痛快です。「経済」という観点から快刀乱麻を断っています。
第5章「最初で最後の社会保障抜本改革」もすばらしいところです。年金を、賦課方式から積立方式にするというものです。世代間の不公平をなくすには、これしかないということです。乙はこの議論を大変おもしろいと思いました。一見すると不可能なように思えますが、本書を読むと、積立方式が実現可能なように思えてきます。
p.252 で、相続資産からの負担徴収もあり得るという指摘にも感心しました。
本書の描く「改革」こそが真の意味の改革であり、これが実現するような政治が行われるようでないと日本の未来は危ういように思いました。
巻末には参考文献もあげてあって、著者の勉強ぶりが見てとれます。
本書を一読して、年金・医療・介護について考えておくことは、老後の生活を準備する上で必須のことだろうと思いました。
p.154 l.10 で、福利(正しくは「複利」)の間違いがあったのは残念でした。
他の人の記事も参考になると思います。
http://angel.ap.teacup.com/newsadakoblog/1240.html
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/44ee1862b7436fea185cbf4f85428c27