2009年08月22日

山田昌弘(2009.6)『ワーキングプア時代』文藝春秋

 乙が読んだ本です。「底抜けセーフティーネットを再構築せよ」という副題が付いています。
 ワーキングプアのさまざまな実態と、そのような日本社会における社会保障のあり方を提案する本です。
 いろいろ興味深いワーキングプアの例が挙がっていました。
 2章では、年金パラサイト・シングル(壮年・親同居未婚者)という例が紹介されています。年金をもらっている親(当然高齢です)と同居して生活を養ってもらっている独身者のことです。高齢の親が子どもの社会保障をしているわけです。こんな人が現実にいるんだと思うと、不思議な感じがしました。こういう人は、もちろん、親が死んだときが人生の危機です。
 3章では高学歴ワーキングプアが描かれます。乙の回りにもこういう人たちがいるので、生々しく受けとめました。その具体例は、次のようなものです。スクール・カウンセラー、オーバードクター、獣医師、歯科医師、ピアノ教師……。獣医師や歯科医師がワーキングプアだというのははじめて知りました。
 4章は、年金保険料を払う専業主婦の話です。サラリーマンの妻は、年金保険料を払わなくていいと思っていたのですが、夫が非正規雇用者の場合は、そもそも厚生年金に加入できないので、妻は国民年金に加入しなければならないということです。収入が少ない人が年金保険料を払わなければならない(一方、高収入の正社員の妻は払わなくていい)などというあたり、明らかに変です。
 5章では、遺族年金を利用して一生楽に暮らす方法が書いてあります。女性の場合、30歳を過ぎて結婚相手が見つからない場合は、60歳以上の不健康な高齢男性と結婚して扶養家族になるといいという話です。どうせ男性が先に死にますが、男性が年金を受給していれば、妻は自動的に遺族年金の受給者になり、死ぬまで年金をもらい続けることになります。遊んで暮らせます。これはすごい話です。実際、発展途上国の外国人女性が20歳以上も年上の男性と結婚して3児をもうけ、その後10年くらいして男性が死亡したため、その女性に毎年300万円が支給されているというのです。女性は出身国に子どもと帰ったのですが、当該国の平均年収の10倍の年金を日本から送金してもらうという生活をしているとのことです。
 乙は、妻と仲良く暮らしていますが、もしも妻が先立ったら、30歳過ぎの女性にねらいを定め「自分が死んだ後も、一生あなたのめんどうを見る」と約束して結婚相手を探してみましょうか。
 とにかく、今の日本の社会保障制度はおかしくなっています。それは、サラリーマンと専業主婦という標準家庭モデルと自営業の夫婦というモデルに当てはまらない人が多くなったからなのです。
 では、これからそのような多様化した日本をどうしたらいいでしょうか。
 著者の結論は、ミニマム・インカム(資力調査なしの現金給付システム)の導入です。その例として、「ベイシック・インカム」や「負の所得税」が考えられます。また、年金マイレージ制も提案されています。
 著者の構想が本当に実現するかといわれると、自信がありませんが、日本の現状のおかしいところをきちんと指摘し、それを解決するためには、これしかないということを知った上で、当面の年金制度や失業保険、介護保険などの問題を見ていく必要があるでしょう。
 大変おもしろい本でした。



posted by 乙 at 05:17| Comment(7) | TrackBack(1) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。