2009年11月30日

ジェレミー・シーゲルの「成長の罠」は新興国に当てはまるか(3)

 以前のブログ記事
2009.11.29 http://otsu.seesaa.net/article/134198101.html
の続きです。ジェレミー・シーゲルの『株式投資の未来』に関する考察を続けます。
 同書の p.262 には、図16-1「二国物語――中国株とブラジル株のリターンとGDP成長率」というグラフが掲載されています。
シーゲル図16-1.jpg
このグラフは、1992年から2003年までのブラジルと中国のGDP成長率とそれぞれの株式のリターンを示したものです。そして、ブラジルはGDPがあまり成長していないのに対して、株式のリターンが大きく、中国はGDPがぐっと大きくなっているのに、株式のリターンが小さい(それどころかマイナスである)としています。
 さて、この図16-1 が正しいのかどうか、あまりシーゲル氏を疑ってはいけませんが、ちょっと調べてみましょう。
 まずはブラジルと中国のGDPについて調べてみました。以下、1986 年から 2005 年を示します。
ブラジル
中国
名目GDP
総額
実質GDP
成長率
名目GDP
総額
実質GDP
成長率
1986
268,082
7.7%
295,476
9.6%
1987
294,311
7.1%
321,391
8.8%
1988
328,495
0.0%
401,072
9.4%
1989
447,473
0.0%
449,104
5.1%
1990
465,051
0.5%
387,772
3.8%
1991
407,751
1.1%
406,090
9.2%
1992
390,594
-0.6%
483,047
14.2%
1993
438,433
5.0%
601,078
13.5%
1994
546,222
5.8%
542,534
12.6%
1995
704,175
4.2%
700,219
10.5%
1996
775,025
2.6%
816,490
9.6%
1997
801,577
3.6%
898,244
8.8%
1998
787,742
0.1%
946,317
7.8%
1999
536,633
0.8%
998,678
7.6%
2000
601,732
4.4%
1,079,191
8.4%
2001
508,433
1.3%
1,191,157
8.3%
2002
460,838
1.9%
1,303,590
9.1%
2003
505,732
0.5%
1,470,699
10.0%
2004
603,948
4.9%
1,720,401
10.1%
2005
799,413
3.3%
1,981,648
9.9%


 名目GDP総額の単位は 1990 年不変価格による百万米ドル単位です。

 この数値の出典は、
1986-89年:「国際連合世界総計年鑑1994」表20「国内総生産、合計および1人あたり」
1990-97年:「国際連合世界総計年鑑1998」表18「国内総生産、合計および1人あたり」
1998年:「国際連合世界総計年鑑2005」表17「国内総生産、合計および1人あたり」
1999-2005年:「国際連合世界総計年鑑2006」表16「国内総生産、合計および1人あたり」
です。図書館で数値を丸写ししてきました。
 年鑑の毎年度版で、数値が少しずつ違うのですが、後日の訂正などが反映されているためでしょう。
 ちなみに、ネットでは
http://www.brics-jp.com/china/gdp.html
に 1998 年からの中国のGDP成長率がありますし、
http://www.brics-jp.com/brazil/gdp_brazil.html
に 1998 年からのブラジルのGDP成長率がありますが、それぞれは上の表とほぼ同じもので、IMF のデータだとしています。
 さて、上の表を基にブラジルについて計算してみましょう。
 1992 年から 2003 年までの名目GDP成長率は
505,732/390,594*100-100=29.48%
となります。また、同じ期間の実質GDP成長率は
0.994×1.05×1.058×1.042×1.026×1.036×1.001×1.008×1.044×1.013×1.019×1.005=1.336537
ということで、33.65% ということになります。
 シーゲル氏の図16-1 では、ブラジルのGDP成長率が 1992 年から 2003 年までで -6% となっていますが、この数値がどこから出てきたのか、わかりません。

 中国についても、同様の計算をすると、1992 年から 2003 年までの名目GDP成長率は 204.46%、実質GDP成長率は 214.27% になります。
 シーゲル氏の図16-1 では、中国のGDP成長率が 1992 年から 2003 年までで 86% となっていますが、この数値がどこから出てきたのか、わかりません。
 普通、GDP成長率といえば、インフレやデフレなどが関わってくる「名目」でなく、「実質」のほうをとると思います。
 まあ、ブラジルよりも中国のほうが高成長だったという結論は変わりませんが、乙は、シーゲル氏の主張にちょっとだけ疑問を感じました。
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posted by 乙 at 06:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月29日

ジェレミー・シーゲルの「成長の罠」は新興国に当てはまるか(2)

 以前のブログ記事
2009.11.26 http://otsu.seesaa.net/article/133921112.html
の続きです。ジェレミー・シーゲルの『株式投資の未来』に関する考察を続けます。
 同書の p.264 には、図16-2「新興成長国のGDP成長率と株式リターン(1987〜2003年)」というグラフが掲載されています。
シーゲル図16-2.jpg
このグラフは、1987年から2003年までの新興成長国のGDP成長率と株式リターンの関係を示したものです。そして、両者に負の相関関係が認められるということから成長率の高い国に投資することは、むしろよくないことだとされます。
 そこで、この図16-2のデータを目で読み取ってみました。だいぶいいかげんですが、まあそれでも大勢に影響はないでしょう。乙の目には、以下のように見えました。
国名成長率ドル換算の
年率リターン
ブラジル
1.8
18.4
中国
9.3
-10.0
ベネズエラ
-1
4.2
アルゼンチン
1.3
17.7
メキシコ
2.9
22
 
2.2
5
 
2.6
10.4
 
2.7
12.5
 
2.9
4.2
 
3.2
10
 
3.35
4.9
 
3.7
2
 
3.7
5
 
4
10.5
 
4.3
14.5
 
4.4
15.3
スリランカ
4.5
2
 
4.8
6.2
 
5.9
19
 
5.9
6.8
 
6.1
6.8
 
6.2
4.8
 
6.8
6.8
シンガポール
6.95
5.3


 この数値に基づいて24ヵ国のデータで相関係数(ピアソンの積率相関係数)を計算してみました。計算結果は -0.400 と出ました。確かに逆相関(マイナスの相関)になります。
 『株式投資の未来』の p.263-4 には次のようにあります。
 中国(成長率が首位、リターンが最下位)とブラジル(成長率が下から2番目、リターンが上から3番目)を除いても、対象国のGDP成長率と株式リターンが逆相関の関係にあることに変わりはない。

 乙は、このグラフを見たとき、中国とブラジルを消してみたら、逆相関があるようには見えませんでした。
 そこで、上の数値化したデータを使い、中国とブラジルを除いて22ヵ国で相関係数を計算しました。結果は -0.089 となりました。確かに負の値ではありますが、ゼロにきわめて近く、これでは「逆相関の関係にある」とは言えないと思います。
 乙は、シーゲル氏の主張に疑問を感じました。
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posted by 乙 at 06:01| Comment(7) | TrackBack(0) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月28日

無職生活を選択する?(2)

 先日書いたブログ記事「無職生活を選択する?」
2009.11.10 http://otsu.seesaa.net/article/132492787.html
の続きです。
 乙は「遊民」さんのブログ
http://koutou-yumin.seesaa.net/article/133967252.html
で知りました。
 ドケチで36歳にして無職生活を送っている人のブログ
http://blog.livedoor.jp/mushoku2006/
があります。
 一読して驚きました。
 まあ、人の生き方はさまざまですから、こういう生活があってもいいのかもしれません。
 しかし、年100万円で生活するというのは、こんなにもきびしくさびしいものなのでしょうか。
 「食事」カテゴリーを読むと、食生活についてもかなりわかりますが、それに関していえば、かなり心配なレベルです。こういう生活を数十年も続けて大丈夫なんでしょうか。野菜(植物繊維)不足のように思います。タンパク質もどうなんでしょう。
http://blog.livedoor.jp/mushoku2006/archives/50511050.html
によれば、栄養バランスは大丈夫だという話ですが、……。
 何を人生の目的とするかが乙の場合とは決定的に違っているように思いました。
ラベル:無職
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2009年11月27日

円高・ドル安

 26日は、一気に円高・ドル安が進みました。86円台になりました。
 乙は、90円のころ、ドルに両替しようと思って、88円50銭で申し込んでおきました。11月初めでした。しばらくレートはフラフラしていましたが、なかなかドルが買えないままでした。ここでドルの購入ができ、ちょっとホッとしたのですが、それを越えてさらなる円高・ドル安です。実際、驚きました。
 さて、ではここでさらにドル買いに出動するか。これが悩ましいところです。
 送金やドル購入には時間がかかります。今思いたったからといって、すぐに実行できるわけでもありません。毎日の仕事がたまっていて、時間も取りにくいのです。まさか、勤務時間中に出動するわけにも行かないし。
 機動的にFXで両替(ドル買い)というほどには円高一服とは思いませんし、見通しが立ちにくいものです。
 それにしても、こんなに円高が進むと、日本企業はいよいよ心配になってきます。日経平均の終値は 9383 円とだいぶ下がってきました。ドル買いでもいいけれど、日本株投資でもよさそうです。いや、資金にも限りがあるし、……悩ましい限りです。
ラベル:円高 ドル安
posted by 乙 at 05:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月26日

ジェレミー・シーゲルの「成長の罠」は新興国に当てはまるか

 乙は、ジェレミー・シーゲルの『株式投資の未来』
2008.4.7 http://otsu.seesaa.net/article/92505039.html
を読んで、「成長の罠」という考え方を知りました。
 そして、その考え方を正しいものとして、何冊かの本やネット内の記事を読んだときに、それを批判してきました。
 ベトナム株投資に関しては、上条詩郎(2008.6)『投資リッチの告白』光文社
2008.9.10 http://otsu.seesaa.net/article/106321818.html
中国株投資とインド株投資については、西野武彦(2007.12)『貯める、殖やす、守るためのゼロからわかる投資信託』PHP研究所
2008.6.26 http://otsu.seesaa.net/article/101553491.html
新興国投資全般に関して大前研一ブログ
2008.4.24 http://otsu.seesaa.net/article/94502294.html
などを批判的に見ています。
 乙は、シーゲル氏の本を読む前は、新興国投資が望ましいと考えていたのですが、その後、考え方を変えたわけです。
 しかし、最近、再び、シーゲル氏の考え方に少しだけ疑問を感じるようになってきました。
 新興企業、新興セクターなどに関するシーゲル氏の綿密な調査については、何も疑問には思っていません。
 乙が疑問に思うのは、新興国投資のことです。
 それについては、「新興国株の割合」のコメント欄をご覧ください。
2009.10.30 http://otsu.seesaa.net/article/131545735.html
 乙が、最初にジェレミー・シーゲル『株式投資の未来』を読んだときは、
2008.4.7 http://otsu.seesaa.net/article/92505039.html
 p.262 1992 年から 2003 年まで、ブラジルと中国のGDP成長率と株式のリターンをグラフ化しています。結論は、GDP成長率が高いからといって株式のリターンが大きいわけではないということです。第1章「成長の罠」を国際比較しているわけです。p.264 には、1987年から2003年までの新興成長国のGDP成長率と株式リターンの関係がグラフとして掲載されています。何と、負の関係が認められるというのです。このことから、成長率の高い国に投資することは、むしろよくないことだとされます。乙は説得されました。

と書きました。今は、これが本当に正しいかどうか、もやもやとした何かを感じています。
 シーゲル氏に反論するなどという大それたことではありませんが、そのもやもやの中身を考えてみると、新興国の為替レートの問題であるように思えてきました。
 この点について、自分でももう少し調べた上で、ブログに書いてみたいと思います。
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posted by 乙 at 04:57| Comment(0) | TrackBack(1) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月25日

イーバンクでハッピープログラムの詳細が決まる

 イーバンク銀行にログインしたときに【重要】というメッセージで気がつきました。
 【重要】2009/11/24 ハッピープログラムの詳細および開始予定日の変更について
という記事があります。
http://www.ebank.co.jp/kojin/service/happyprogram/index.html
【重要】と赤字で目立つように書いてありましたので、一体何のことかと思って、一通り記事を読んでみました。すると、イーバンク銀行と楽天とがリンクする使い方が決まったとのことです。乙は、イーバンク銀行の利用者ですし、楽天のカードも持っていて楽天市場で買い物もしますので、何かのときに両者がリンクしていると便利かもしれないと思いました。ただし、上記の記事を見ると、両者がリンクしても、利用者から見れば、あまりメリットはないようでした。
 楽天スーパーポイントがイーバンク銀行で使えるといっても、振込手数料や ATM 利用手数料としてだけです。乙は給与振込をイーバンク銀行にしていますから、振込手数料がかかることはありませんし、ATM から下ろすこともほとんどないので、ATM 利用手数料を払うこともありません。
http://www.ebank.co.jp/kojin/service/happyprogram/index02.html
には、イーバンク銀行を使うときの楽天スーパーポイントなども書いてありますが、乙はイーバンク銀行を使い倒しているわけでもないので、そんなに楽天のポイントがたまるとも思えません。
 まあ、気休め程度で楽天会員へのリンク登録を済ませておきました。
 それにしても、イーバンク銀行として、利用者へのサービスを考える上では、こんなせせこましいことではなく、もう少し「ハッピー」が実感できるようなサービス展開をしてほしいものだと思いました。
 これでは【重要】でも何でもないように感じます。
posted by 乙 at 05:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融機関 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月24日

住宅の修繕資金

 乙の自宅は、新築後10年以上経ちます。コンクリート式なので、頑丈だと思っていますが、いつまでもそのままということはありません。
 最近、建築を行った業者(の関連業者)が来て、2階や3階の屋上などあちこち調べた上で、屋上の防水層の取替工事と外壁の塗装工事を行う必要があると言ってきました。話を聞いてみると、10年から15年くらいでこの種の工事が必要になるとのことです。
 問題は費用ですが、見積書を見てちょっと驚きました。400万円ほどかかるというのです。
 まあ、今回は、普通に資金を都合することができそうですが、それにしても、少しは投資をお休みしなければなりません。冬のボーナスは投資に回せないでしょう。
 なお、この400万円は、数年先に必要な 1000 万円
2008.11.25 http://otsu.seesaa.net/article/110155141.html
とは別の話です。

 ところで、今後、死ぬまで10〜15年ごとに400万円ずつかかるとすると、かなり大変です。
 乙の場合、そのうち、自宅のエレベータの取替工事も行うことになりそうです。こちらもクルマと同様に、15年くらいすると耐用年数に達するという話でした。エレベータの取替工事も、ざっと200万円くらいはかかるでしょう。
 クルマの買い換えも数年後には必要になりそうです。これまた200万円くらいはかかるでしょう。クルマの買い換えも10〜15年ごとに行う必要があります。
 働いているときは、こういう出費は大したことないかもしれません(いや、それでも数百万円はかなりの出費です)が、老後は、だんだんと資産を取り崩しながら生活していくので、こういう出費があると、かなり大きな影響があります。
 安心して老後を迎えられるようにするためには、それなりの資金を用意しておかなければなりません。この金額は、意外と大きいように思います。
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posted by 乙 at 06:24| Comment(8) | TrackBack(0) | 消費生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月23日

郵政300兆円、地方へ 政府・与党、活性化基金を検討

 産経新聞で見かけた記事です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091121-00000048-san-bus_all
 政府・与党は20日、日本郵政グループのゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の約300兆円に上る資金を地方企業への融資などに活用し、地域の活性化に役立てる制度を創設する方向で調整に入った。郵政以外にも政府や地方自治体、地元金融機関が出資してブロック別ファンド(基金)を設立し、地方にお金を還流させる案を軸に検討する。国民新党を中心に議論しており、今後、民主党と詰める。来年の通常国会に基金の設立などを可能にする法案の提出を目指す。
 郵便貯金の約8割、簡易保険の約6割が国債の購入に充てられており、より効率的な運用が課題になっていた。ファンドなどを通じた資金還流で地域経済の活性化に活用するのが狙い。ただ、民業圧迫の懸念があるほか、国債購入の減少で安定発行に支障が出る可能性もある。
 巨額の郵政資金について、鳩山政権は「地域で集めた資金が国債に流れている」(亀井静香郵政改革担当相)と問題視している。小泉政権の民営化でも、収益力強化のための運用多様化が課題となっていたほか、安易な国債引き受けにより、財政規律が緩むと指摘されていた。
 鳩山政権が検討している具体案では、地域活性化を目的としてファンドを地域ごとに設立。民業圧迫を避けるため、地域金融機関にもファンドへの出資を求める。与党では「競合するのではなく、協調しバッティングしないよう進める」(国民新党)としている。
 出融資の対象としては、地場産業などの企業のほか、町づくり、福祉・教育ベンチャー支援などを行う地域に根付いた「ご当地ファンド」と呼ばれる私募ファンドや地元企業の株式を対象とした投資信託などを念頭に置いている。
【以下、略】

 ゆうちょの資金を国債から地方発のファンドに回そうという考え方です。
 いやはや、困ったことです。
 ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険に巨額の資金があることがそもそも日本のあり方をゆがめているわけで、それを直そうというのが郵政民営化の趣旨でした。
 今は、国民新党の主張に基づき、この方向性が逆転して、再び国営になりそうな状態です。
 で、300兆円もの資金を自由に使えることになると、それは国としてもありがたい話でしょうが、基本的には、銀行の預金者や保険の契約者のお金であって、引き出しや解約で資金はいつでも引き上げられる可能性があります。したがって、利息分も含めて堅実な運用をしていかなければならないわけです。国債で運用するというのは、現実的な解の一つでしょう。民間の銀行なども預金として集めた資金の運用先が見つからず、国債に依存する程度がかなり高いのが現状です。
 というわけで、今回はゆうちょ銀行やかんぽ生命が保有する国債を売って、その資金を地方に回そうという発想です。
 日本はデフレということもあって資金の需要がない状態です。国債でも買っておくかというのは、銀行自身が適切な運用ができないことを物語っています。こんな状態で、資金だけを地方に回そうとしても、歪みがひどくなるばかりです。
 乙は、この問題に関する解決策を持っていませんが、役人たちが大規模な資金を運用してもうまくいくわけがありません。
 それにしても、運用先として「ご当地ファンド」が出てくるところは、いかにも思い付きだなあと思います。
 乙は、ご当地ファンドには投資しない方針でやってきました。
2006.9.7 http://otsu.seesaa.net/article/23378665.html
乙の場合は個人の判断ですが、国としての判断でも同じでしょう。ご当地ファンドに投資するべきではありません。
 では、どうするか。そもそも資金をどこに回すかを国が決定するようなこと自体が変なのです。本来は、個人レベルで貯蓄から投資への変化が起こらなければならないはずです。今まで、投資(家)教育に関して国が何もしてこなかったツケが改めて回ってきたのです。
 300兆円といえば、大変な資金量です。これが毀損しないようにしてほしいものです。ゆうちょ・かんぽとも、東京都の中小企業を助けるはずだった(しかし現実的には赤字垂れ流しの)新銀行東京のようにはなってほしくないと思います。
posted by 乙 at 04:22| Comment(2) | TrackBack(0) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月22日

浅川夏樹(2009.8)『ETF』パンローリング

 乙が読んだ本です。「世界を舞台にした金融商品」という副題が付いています。
 本書をひとことでいえば、ETF の総合解説書です。今まで、こんな詳しい解説書は見たことがありません。
 ただし、日本で購入できないものも多数含まれているので、海外で口座を開き、そこで購入するしかないような場合も多いと思います。本書中には、そのような海外口座の開設法も説明されています。
 こういう多彩な投資手段がある世界(日本の国外)を見ると、日本国内で限られた投資手段しか提供されない現状が実に嘆かわしく感じられてしまいます。
 p.60 からは景気循環型ということで、セクターローテーションを取り入れている ETF の紹介があります。乙はこんなアクティブ・ファンドみたいな ETF があるとは知りませんでした。
 他にも、ファンド・オブ・ファンズ型の ETF やら、CDS に連動する ETF やら、VIX に連動する ETF まで解説されています。
 今後もさまざまなタイプの ETF が登場してくると考えられます。純粋にインデックス投資を行う場合には、現状でも十分かもしれませんが、少しは投資を楽しみたい人にはこういう選択肢も考えておいていいのではないでしょうか。
 世界に対する目を開かせてくれる1冊だと思います。
 もっとも、本書で紹介されている ETF を実際に買うかどうかは別問題で、悩ましい問題であることは事実ですが。
 自分自身で投資を実践してきた人らしく、具体的な記述にあふれる本です。その辺の投資本とは一線を画します。

ラベル:浅川夏樹 ETF
posted by 乙 at 09:43| Comment(5) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月21日

味彩せいじファンド

 乙は日経ビジネスONLINE の記事で知りました。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20091111/209494/
 「味彩せいじファンド」というのは、みんなで出資したお金で日本料理店を運営しようという話です。
http://www.zen-food.jp/project/
に説明があります。1口5万円で、850万円が最大募集額です。5年間の出資になります。
 出資者は、お食事優待券だけでも、毎年出資金額の10%、5年合計で50%を受け取ることができます。それに加えて、いくつかのイベントにも優先的に参加できます。
 ファンドの申し込みは、music securities のほうで行います。
http://www.musicsecurities.com/communityfund/details.php?st=i&fid=126
 わざわざ白金まで魚を食べに行くことがあるかといわれれば、普段ならそんなことはしないわけで、こういう出資はしないほうがいいのかもしれません。
 でも、何だか夢があります。自分のお金が出資金として日本の社会に出回っていく感じです。
 料理人「平原成二」氏を応援しようという意味で、乙としては出資してもよさそうに思いました。ホームページに書かれている内容には共感します。出資額は5万円ですから、これまた寄付みたいなものです。
 一方、リスクは大きそうです。お店が潰れれば何も返ってこないでしょう。赤字が続けば、出資金は償還時には大きく欠けてしまうでしょう。5年間、ちゃんと営業していけるか、まったくわかりません。飲食店は水物ですから。分配シミュレーションによれば、毎月 200 万円ほどの売り上げがあればトントンで、それ以上あれば出資額を上回る分配があり、下回れば出資額が毀損されるとのことです。
 「味彩せいじ」は11月7日にオープンしたとのことですから、滑り出しはうまくいっているといえます。
 24席の店ですが、毎日15人の客が来て 5,000 円使うとすれば、売り上げ 7.5 万円。1ヵ月で 187.5 万円程度と計算できます。これでは 200 万円に届きません。さて、平日を含めて、そんなに客が来るでしょうか。
 食べログにはすでに登録されていました。(写真1枚ですが。)
http://r.tabelog.com/tokyo/A1316/A131602/13099756/
ブログでも言及されています。
http://d.hatena.ne.jp/Jenesaispas/20091111

 というわけで、いろいろ悩みましたが、1口申し込んでみました。
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posted by 乙 at 05:39| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月20日

NY株と連動 投資信託東証へ上場

 19日の朝、テレビを何とはなしに(クルマの運転中だったので)聞いていたら、NHK のニュースで、ニューヨーク株に連動する投資信託が東証に上場するという話をやっていました。
 その語、検索してみると、確かに NHK のサイトに掲載されています。
http://www3.nhk.or.jp/news/k10013879751000.html
 さっそくいくつかのブログで取り上げられていました。
http://renny.jugem.jp/?eid=1247
http://randomwalker.blog19.fc2.com/blog-entry-1238.html
http://fund.jugem.jp/?eid=1234
http://pension.blog88.fc2.com/blog-entry-372.html
http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-cb5b.html
 NHK の記事でも、「19日に東証の承認を受けて来月10日に上場される予定」としていますので、20日くらいからあちこちで話題になるのでしょう。
 東証からはニュースの形で公表されています。
http://www.tse.or.jp/news/200911/091119_a.html
 さて、「「ダウ・ジョーンズ工業株30種平均」に連動する投資信託」とは、何でしょう。
 乙が購入した DIAMONDS TRUST SERIES I (DIA)
2007.6.8 http://otsu.seesaa.net/article/44165419.html
のことでしょうか。
 いいえ、それとは別物のようです。
 では、購入するべきか、否か。
 かなり迷いますが、今は買うまでもないように思います。いくつか問題点を感じます。
 第1に、上場されたあとで、実績がどうであるかという問題です。あまりに取引量が少なければ、上場廃止にもなりかねませんし、指数との乖離も大きくなりそうで、ETF らしくなくなってしまう可能性があります。そのあたりは、上場後しばらくようすを見てみなければなりません。
 第2に、東証での(前場・後場の)取引時間とニューヨーク証券取引所での取引時間の差の問題です。ダウ・ジョーンズ工業株30種は、すべてニューヨークで取引されるのが基本です。すると、ニューヨークがクローズしてから東証がオープンしても、理論的には取引時間帯には ETF の価格が変動しません。実際は、人気やら各種事件やら何やらである程度価格が変動すると思いますが、そのような価格変動は本来あってはいけないはずのものです。(これを利用した裁定取引が行われる可能性もあります。)東証がクローズしてからニューヨークがオープンし、株価の変動が起こることになります。そんなことを考えると、ニューヨーク株の ETF が東証に上場というのは、ETF らしくないともいえます。
 第3に、信託報酬が高いことです。0.6075% は高いですね。DIA は 0.18% です。これが世界標準です。
 一方、今までのアメリカ株の ETF と比べると、いろいろなメリットがあります。何といっても、東証で日本円で売買できるというのは日本の投資家にとってメリットでしょう。ドル/円の為替レートの影響はあるにせよ、今まで高い手数料を払ってドルに両替し、購入時にも割高の手数料を払っていた人にとっては、朗報になります。しかし、乙の場合、アメリカの証券会社に口座を開設して、ドルで ETF を売買しているので、特に日本円で購入したいということはありません。
 しばらくようすをみることにします。
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2009年11月19日

マカオのカジノの現状

 日経ビジネス ONLINE に、熊野信一郎氏が「アジアで始まる「カジノ大競争」」という記事がありました。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20091028/208270/
今やシンガポールもカジノが開業するという話です。
 ASEAN 以東の主要国でカジノを持たないのはタイとインドネシア、日本だけということで、それだけアジアでカジノが盛んになっているということでしょう。
 カジノといえばマカオです。上記の記事によれば、こちらも元気になったきたとのこと。マカオに投資している乙としては、うれしい話です。
 それにしても、マカオは中国政府に振り回されているみたいで、安心していいのか、心配するべきか、迷ってしまいます。
 こういう投資は早いところ足を洗ってしまいたい気分です。

参考記事:マカオは不動産バブルだったのか
2008.12.7 http://otsu.seesaa.net/article/110818084.html
UWマカオ・プロジェクト投資事業匿名組合
2009.5.31 http://otsu.seesaa.net/article/120527273.html
ラベル:マカオ カジノ
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2009年11月18日

水野和夫(2007.3)『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』日本経済新聞出版社

 乙が読んだ本です。
 本文は 300 ページほどですが、その後ろに巻末の注記が 62 ページも付いています。参考文献も 11 ページにおよび、本格的研究書になっています。
 ただし、実のところ、読みにくかったです。注が巻末にあり、しかもかなりの数の注が付いているということで、注まできちんと読もうとすると、本文の流れが断ち切られるし、しかも注の位置を探すのも大変になります。
 本書でおもしろいのは、きわめて長期の視点で経済を見渡しているところです。ざっと 500 年を見据えて議論していきます。こんな超長期のデータはどれくらいきちんと揃っているのか、疑問に思う面もないわけではないのですが、一応、著者の姿勢は一貫しており、乙はかなり信頼できると見ました。
 p.72 では、アジアの近代化を「収斂仮説」で説明しています。簡単にいえば、生活水準の低い国は豊かな国よりも平均して早く成長し、最終的には先進国の生活水準の7割から9割に収斂していくとのことです。過去 500 年の歴史で当てはまってきた考え方だというわけです。1600 年当時の先進国イタリア・スペインに対して、貧しい国・アメリカやオーストラリアがそうなっていきました。他にもたくさんの例が挙がっています。歴史は繰り返すといいますが、乙は、こんな長期的視点は持っていなかったので、驚きました。
 p.113 では、グローバル経済圏企業(IT企業、鉄鋼、輸送用機器)とドメスティック経済圏企業(情報通信と電力以外の非製造業)にわけ、前者が一人あたり GDP できわめて大きく(つまり生産性が高く)、後者はそうでないことを示します。今の日本でドメスティック経済圏企業(中小企業のかなりがこれに該当しそうです)が成長せず、各種の問題の原因になっていると指摘します。この二つを区分する見方も新鮮でした。現代日本の状況をわかりやすく説明してくれます。読んでいて腑に落ちます。
 p.182 では、インターネットの登場によって、それまでの国境線で区切られた「土地」という富の源泉を変えてしまったとしています。したがって、現在の成長物語は、pp.185-6 で述べられるように、小さな政府によってのみ達成可能になっているとしています。ここの記述も現代日本を考える上で重要な見方です。
 pp.194-5 で述べられる3回の歴史的断絶(1回目は紀元前 8000 年の新石器革命、2回目は16世紀の大不況を中心とする(ヨーロッパの)経済変動、そして3回目が現在のIT革命)の話もおもしろかったです。今が3回目なのかどうかは、もっと時間が経ってから検証するべきでしょうが、そういう見方があるということ自体が興味深いのでした。
 p.264 では、日本の就学援助率(生活保護を受ける家庭並みで、修学旅行費や給食費などが支給されるのが就学援助)を見ると、全国平均よりも高い地域として東京と大阪があるそうです。地方では職がないため、就職の機会が多い都会に若い人が集まり、最初は家賃の安い地区に住むことになります。東京のある区では就学援助率が 43.1% になるとのことで、驚きます。この区は足立区でしょう。
http://www002.upp.so-net.ne.jp/kyoiku-gifu/gakushukai-siryo9.pdf
このように、日本社会の中で二極化が起こりつつあるということです。
 いくつか、乙がおもしろいと思ったところを抜き出しましたが、まだ他にもあります。本書は図表をかなりたくさん使い、数値などの裏付けを持って語っていきます。その意味で、信頼性がある本です。今の日本をどう眺めたらいいかを考える上での好材料であるともいえるでしょう。
 直接投資に関わることではありませんが、視野を広げる意味では読んでも損はないように感じました。

ラベル:水野和夫
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2009年11月17日

国民年金基金の破綻?

 国民年金基金というのがあります。国民年金の加入者で、国民年金だけでは年金の額が十分でないと考える人向けに、2階建て方式で追加して年金を支給しようという仕組みです。
http://www.npfa.or.jp/about/shikumi/index.html
 それはいいのですが、国民年金基金は、破綻することなく、ちゃんと年金を支給してくれるでしょうか。
 国民年金基金の財政を見てみると、
http://www.npfa.or.jp/jigyo/finance/index.html
「平成20年度は運用環境が厳しかったことから、運用利回りがマイナス21%となり、責任準備金に対する積立不足額の割合も約20%増加し、38%程になっております。」と書いてあります。
 「年金財政の推移」を見ると、平成20年度末の給付確保事業について、こう書いてあります。
  資産額=9,735 億円、責任準備金=1兆 5,584 億円、実質過不足=5,948 億円
 5,948÷15,584×100=38.2% ということです。
 つまり、今まで積み立ててきた年金の資金があるわけですが、この時点で国民年金基金を解散して、加入者に積立金を返そうとすると、1兆5千億円必要なのだけれど、今は9千億円しかなく、6千億円が不足しているというわけです。これは膨大な含み損といえるでしょう。民間企業でいえば債務超過みたいなものといえばいいでしょうか。
 基金2口目以降についても同様の数字が並んでいます。
 国民年金基金は、運営理念として積立方式を念頭において運営されてきたはずですが、こんなにも含み損が多いと、実質的に若い世代が老年層を支える賦課方式になっているようなものです。
 将来的に、この含み損は解消されるのでしょうか。乙の見方では、かなり悲観的です。9千億円を1兆5千億円にするには、6割増の運用をしなければなりません。これはなかなか大変です。
 国民年金基金の長期的資産構成割合(基本ポートフォリオ)を見ると、
http://www.npfa.or.jp/org/unyo.html
国内債券 25%、外国債券(円ヘッジ)10%、国内株式 25%、外国債券 12%、外国株式 28% だそうです。
 先日紹介した岡本和久『100歳までの長期投資』
2009.11.15 http://otsu.seesaa.net/article/132857250.html
の資産クラスごとのリターンを使うと、外国債券(円ヘッジ)は国内債券と同じリターンとして計算することで、ポートフォリオ全体のリターンは 5.27% となります。
 毎年 5.27% の運用を継続したとして、資産が6割増になるには、9年かかります。
 けっこうなリターンをねらっているともいえますが、逆にリスクも相当に大きそうです。今後、株式市場の低迷などによって、さらに運用が悪化するかもしれません。
 ということで、国民年金基金は破綻するかもしれません。しかし、今は年金の解散などの破綻処理をするわけにも行かず、このままの仕組みを継続していくしかありません。
 何でこうなったのかといえば、年金の予定利回りが高く設定されてきたのに、実際はかなり低い運用しかできなかったからでしょう。運用の失敗というわけです。
 日本航空OBの高額年金が問題になっていますが、一つのアイディアとして、企業年金の積立不足を解消するために企業年金を解散したらどうかという話があります。他の企業でも同様の話があることでしょう。個々の企業年金の財政状態にもよるので、一概には言えませんが、年金の運用がうまくいっていれば解散も選択肢の一つですが、なかなかそういっていない例が多いのではないでしょうか。企業年金が解散したら積立不足は企業の負担になるので、解散しにくいでしょうね。
 国民年金基金もそのような「うまくいっていない例」の一つです。
 もしかして、国民年金基金が破綻することになったら、……国民負担(つまりは税金で尻ぬぐい)になるのでしょうか。そうならないために、年金一元化(厚生年金への吸収)を考えているのでしょうか。その場合、厚生年金側は、たかられるばかりで、いい迷惑です。いや、厚生年金もむしられてばかりだから、意外とたかるべきものがなかったりするのでしょうか。
 何だか、日本の将来を暗示するような感じがしてきました。
posted by 乙 at 04:16| Comment(10) | TrackBack(1) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月16日

ワタミ

 乙は、ワタミの株を買うことにしました。
 半分は株主優待ねらいです。あと半分は社長のことばが気に入ってといったところでしょうか。
 乙は、いくつか、飲食業の会社の株を持っていますが、すべて株主優待ねらいです。
 ワタミの場合、17万円ほどで 100 株を買うと、半年に1回、1000 円の割引券が6枚送られてくるというわけです。
 割引券が全部使い切れるかどうかですが、乙の場合、平日の夜にも飲みに行くことがあるので、使い切れるように思っています。わたみん家、あるいは和み亭に行きます。
 もしそうならば、12,000 円の優待になるわけで、年率7%に該当し、これはかなり大きいです。
 買ったら、すぐに株価が下がりましたが、そんなことは気にせずに、10年くらいは保有してみようと思っています。

 割引券はひとり1回につき1枚しか使えません。このあたりが微妙です。飲み代として、ひとり1回あたり数千円使うことになるので、割引券だけで飲食するわけではないから、割引券を使うことでワタミグループの売り上げにも貢献することになります。
posted by 乙 at 05:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月15日

岡本和久(2007.6)『100歳までの長期投資』日本経済新聞社出版局

 乙が読んだ本です。「コア・サテライト戦略のすすめ」という副題が付いています。
 内容は、スタンダードな投資入門書といったところでしょうか。
 対象読者は団塊の世代です。p.80 では、団塊世代用の本だと明記されています。60歳前後の人にお薦めの本です。たとえば、本書中に登場する架空の投資家はちょうど60歳。退職金を得て、6150 万円を運用しようとしています。大変身近な例であり、退職者としてはちょうどピッタリの例なのではないでしょうか。
 p.13 では、人生を30歳と60歳で区切って3段階に分けて考えるとよいとしています。学校を卒業するのは20代前半としても、就職した後は、まずは仕事を覚える時期があり、30歳くらいで一人前になるという考え方です。妥当な考え方です。そして、60歳は退職時で、これは当然でしょう。60歳を過ぎた時期がサード・エイジというわけです。これを 100 歳まで生きると仮定して人生を設計するのがよいというわけです。
 p.68 には、資産クラスごとのリターンとリスクが書かれています。
資産クラスリターンリスク
国内債券
2.50
5.00
国内株式
7.50
21.00
海外債券
3.50
12.50
海外株式
7.50
19.50

 データの出所は企業年金連合会のホームページで、1970 年以降のデータに基づいた円建てによる計算結果だそうです。
 以前だったら、「ふうん」という感じで、こういうデータを見ても当たり前のように感じて、通り過ぎていたでしょう。
 しかし、今は、この数値が違って見えます。
 海外債券が 3.5%、海外株式が 7.5% と国内並み(あるいはそれ以上)の成績を残していますが、これが円建てによる計算ということに注目するべきです。
 ドル/円の為替レートを考えると、1970年ころは、1ドルが 360 円でした。2007年ころは1ドルが 120 円でした。37年間で3倍の円高になったわけで、年率に換算すると、ざっと 3% 程度の円高です。つまり、現地通貨建てだと債券が 6.6% (1.035×1.03×100-100)のリターン、株式が 10.7% のリターンということになります。
 もちろん、米ドルだけが通貨ではなく、他の通貨と円の為替レートも考慮するべきですが、世界の経済のかなりの部分をアメリカが占めていることを考えれば、ドルだけを考えても、まあまあの線になるでしょう。
 つまり、円建てで見ると、海外の債券も株式も、国内のものと同様に見えるのですが、海外の視点で見ると、実はかなり高いリターンがあったのです。円高でそれが相殺されて見えているのです。
 海外から日本株を見ても同様で、単純な株価の上昇に加えて、円高もありましたから、日本株に投資しておくことで大きなプラスになったものと思われます。(実際、1970 年ころに外資が自由に日本株の売買ができたのかどうか知りません。たぶん規制があってできなかったのではないかと思います。)
 p.183-184 では、人気のある投信を買うのはまずいということが述べられています。乙は、以前、人気のあるものを買ったりしたのですが、それではダメだというのは自分の経験で痛感しました。本を読んで失敗を避けるのもいいでしょう。失敗を経験して痛みとともに学ぶのもいいでしょう。自分の失敗がないと、こういう本を読んでもなかなか納得できないのではないかと思います。
 巻末には索引が付いています。しかし、参考文献は挙がっていません。ちょっとだけちぐはぐな感じがしました。
 投資の入門書としては良書だと思います。乙は団塊の世代ではないのですが、割と近い年齢なので、本書は親しみを持って読むことができました。

posted by 乙 at 05:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月14日

イーバンク銀行からSBI証券に入金

 乙はしばらく気がついていなかったのですが、ネット操作で無料でイーバンク銀行からSBI証券に入金できます。
 今まで、乙は、いつもSBI 証券のサイトでみずほ銀行の口座から入金するような指示を出していました。これも無料でできます。
 乙の場合は、イーバンク銀行がメインバンクなので、ここから無料で資金が移動できるようになっていると一番便利なのです。
 ずっと前に変わったのかもしれませんが、最近は、あまり SBI 証券を使っていないので、気がつくのが遅れました。
 SBI証券では、無料で都市銀行3グループやネット銀行各社などいろいろな銀行から即時入金ができるようになっており、たいていの場合、まずは十分な体制だと思います。ゆうちょ銀行からも(即時ではないようですが)振替入金が可能です。
 こんなところで余計なお金は使いたくないものです。
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2009年11月13日

カッパ・クリエイトから第2四半期株主通信

 乙の手元にカッパ・クリエイトから第2四半期株主通信が届きました。せっかくなのでパラパラと眺めてみました。
 かっぱ寿司ではランチ90ということで、お昼は寿司が1皿90円で食べられるのですが、一部店舗では「平日終日90円」を行っているそうです。今は実験段階だそうですが、それにしても、積極的な経営方針です。お昼と夕方では寿司を食べる行動が違うような気もしますが、さてどうなんでしょうか。「実験」ということで、そのあたりを見極めるためにこういうことをしているのでしょうね。
 こうして、半年間で 455 億円を売り上げるという、外食産業としてはかなり大規模な企業になっています。純利益 18 億円というのも納得できます。
 なぜこのような順調な経営が継続しているのでしょうか。乙は、「会社の概要」に注目しました。従業員 1,118 名に対して、パート・アルバイトは 10,396 名(1日8時間換算)とのことです。アルバイトなどでは8時間も勤務しない例も多そうですから、実際の人数は、1万人をはるかに越えそうです。
 なるほど、かっぱ寿司ではパート・アルバイトの比率を高めて人件費を抑えているということですね。
 これからの企業としては、人件費の安いパート・アルバイトをいかに活用していくかが重要なのだろうと思いました。
 乙の勤務先でも、そのような傾向があります。
 まあ、その分、正社員に(外部からは見えにくい)さまざまな負担がかかってくるのも事実なのですが。
posted by 乙 at 04:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月12日

女性事務職はどこへいったのか

 乙は、日経新聞11月11日の夕刊11面「生活・ひと」の「さらりーまん生態学(いきざまがく)」というコラムを読みました。作家の高任和夫氏の執筆です。ごく一部を引用します。
 どうやら若い女性の職場が減っているようだ。【中略】
 私がいた会社は、高卒や短大卒の女性を事務職として多数採用していた。だがパソコンが普及するにつれ、総合職が自己完結するようになると、事務職に頼む仕事は激減した。よって以前のように採用しなくなった。このような変化は、方々で起きているに違いない。
 結局、何らかの専門性を身につけねばならないということだろう。そして、若者はこの現実に直面しているのではないか。私のように、ぼんやりと進学し、就職できた時代は去った。

 こういう話を聞くと、昔、多数採用していた女性の事務職(「女性」と限定してしまうと性差別的に聞こえますが、その昔は実際そういう女性が多かったように思います)は、具体的にどんな仕事をしていたのでしょうか。本当にそれらの仕事がパソコンに置き換わっていったのでしょうか。
 それぞれの職場で数十年かけて変化が起きているので、個々の事情と、日本全体を見渡したときの概観がかなりずれている面もあり、実際のところよくわからないように思います。
 よろしければ、年配の方の「記憶」をうかがいたいところです。
 乙の感覚では、高任氏の認識とだいぶ違います。データに基づいた議論ではなく、単なる感覚にすぎないのですが、……。
 昔は、女性の就職というのは、会社側にとって、男性社員の花嫁候補の採用という面が強かったのではないでしょうか。人事部の仕事は、容姿を確認するために面接し、自宅から通える人(親と同居している人)を採用することで、しっかりした(変な男性遍歴がない)花嫁候補を選ぶことができるといったことです。
 会社としては、男性社員にちゃんと家庭を持ってもらって、その男性が安定的にバリバリと働けるようにしてもらうということです。そのためには、専業主婦としてちゃんと切り盛りしていける優秀な女性(花嫁候補)を採用する必要がありました。したがって、女性社員を採用しても、これといった仕事は、ほとんど何もなかったりします。お茶くみやコピー取り等の雑用程度です。それでも、当人が若ければ、年功序列制度のもとでは給料が低いですから、アルバイトを雇うのと同じで、あまり人件費もかけずに採用しておくことが可能でした。そして、結婚退社してもらうか、女性は若年定年制で30歳程度で辞めてもらう(この年ではもう花嫁候補にはならない)という仕組みになっていたように思います。社内の規則がそうなっている例が多数ありました。
 その後、男女雇用機会均等法などで女性の若年定年制がなくなり、女性が働き続ける例が出てきます。すると、女性の人件費も年齢とともに上がっていくので、簡単な仕事を頼むのでは、コストに合わなくなります。そこで、総合職ということで、女性にも男性並みの仕事をしてもらうようになります。お茶くみやコピー取りは(本当に必要ならば)パートやアルバイトを雇って(彼(女)らは長期雇用ではありませんから)短期的にとっかえひっかえするようになります。こうして、会社の中では総合職とパート・アルバイトの2極化が進行し、女性事務員はいなくなります。
 このような解釈では、パソコンが事務職を駆逐するようなことはないということになります。
 乙も、仕事上でパソコンを使うことがありますが(というか、それがメインですが)、パソコンを使えば使うほど、補助的な仕事(データの整理等)が必要になります。そのために、人を使うことになりますが、それは総合職に頼む話ではなく、結局、パート・アルバイトに頼むことになります。
 こんなことを考えていくと、日本で若い人に非正規雇用者が多く、不安定な立場の人が増えているのは、男女雇用機会均等法のせいだ(いやまあそれだけではないでしょうが)というような議論になってきます。
 これからの日本は、一部の優秀な人を総合職の正社員として採用すれば十分であり、そうでない人は非正規雇用しか残されていないように感じています。大変な社会になっていくことが予想されます。
posted by 乙 at 05:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月11日

「銚子丸」の割当株券のお知らせ

 乙が保有している「銚子丸」の株が、株式分割されるようです。
 SBI 証券から連絡があり、11月15日に10株が 200 株になるという連絡がありました。
 株式分割は、乙にとっての初めての経験です。
 そういえば、最近、銚子丸の株価が上がっていましたが、株式分割が原因でしょうか。理論上は、株式分割が株価に与える影響はないはずですが、実際は、投資家心理など、微妙な影響があるものです。
 そういえば、銚子丸の株価っていくらだったっけと思い、SBI 証券にアクセスして、驚きました。
 保有株数=200、取得単価=1,503、現在値=45,400、評価損益=+8,779,400 と表示されたのです。30万円ほどで買った株が 900 万円になるなんてことはあり得ませんが、一瞬ものすごい利益を出しているように見えましたし、株式の評価損益の合計額のところもプラスになっているし、気分だけはいいものです。
 実際には、いうまでもなく、保有株数のところは 10 株で計算しなければなりませんので、現在価格で45万円ほどにしかなりません。
 夢とはいえ、いやあ1週間ほどは夢見心地が続きます。
 でも、正確な評価損益を表示しないやり方って、これでいいのでしょうか。1週間は自分のポートフォリオが正確に把握できない状態になるわけですが。
 まあ15年を基準に考えれば1週間なんてどうでもいいといえばどうでもいいのですが、ちょっとだけ気になりました。
ラベル:銚子丸 株式分割
posted by 乙 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月10日

無職生活を選択する?

 乙と同じく seesaa のブログで、「無職生活開始〜 by ぬこ」
http://ichinuko.seesaa.net/
というページがあります。
 ヘッダーのところに
15歳からバイト・バイト・バイトの生活を始め、
みんなが遊んでいるときもひたすら貯金!貯金!貯金!
18年間がんばりました。そして、33歳の時に
貯金が5000万円突破しました!

念願の無職生活開始です。

とあります。
 5000万円を貯めたことは、すなおにエライと思います。なかなか常人ではできないことです。
 そして、「ぬこ」さんは33歳で無職になりました。
 略歴は
http://ichinuko.seesaa.net/article/123160741.html
に書いてあります。
 乙とは考え方が違います。
 以下、2点ほどコメントします。

(1)5000 万円では、無職生活を選択するには少額すぎると思います。
 端的にいって、老後の生活が保てないと思います。
 国民年金は今でも払っているのでしょう(たぶん)。それにしても、老後は不安だと思います。
 何歳まで生きることになるか、わかりませんが、仮に83歳までだとしても、50年間です。5000万円を単純に取り崩すと1年間に 100 万円にしかなりません。
http://ichinuko.seesaa.net/article/123184847.html
では年間100万円で生活しているとのことです。
 今は(若いうちは)それでも十分とお考えでしょうが、中高年になると事情は変わってくると思います。

(2)仕事をすることは単にお金のためだけではないと思います。
 仕事を通じて、社会との関わりができ、周りの人とのつながりが生まれます。これは、お金とは別の「資産」だと思います。無職生活を続けることで、このような資産を持つことがしにくくなります。
 乙は、自分の仕事を通じて、それなりの満足感を得ています。
 人生の目的は、(こんな大上段にかぶった言い方は面はゆいですが)仕事が 1/3、家族(セックスを含む)が 1/3、趣味や娯楽が 1/3 ではないでしょうか。無職になることで、人生の 1/3 くらいを捨ててしまったように感じるのですが、どうでしょうか。

 なお、
http://koutou-yumin.seesaa.net/article/125675479.html
のブログ記事も参考になるかと思います。ちなみに、遊民さんは
http://koutou-yumin.seesaa.net/article/99590384.html
の記述によれば、1億円ほどの資産をお持ちのようです。

 そういえば、「素敵なセミリタイア」
http://blog.livedoor.jp/a08098859911/
というページがあります。
 こちらは、「16歳年下のカノジョがいる独身のアラフォーです。 金融資産は1億5000万くらい。金融商品で生活しています。 だって、働くの嫌だもん。」だそうです。
 乙とは考え方の違いを強く感じます。乙の場合、働くことが好きだし、やりがいを感じています。(ということは、それなりに幸せなんだろうと思います。)今は、金融資産が1億5000万円まで達していませんが、仮にそうなったとしても、それを理由に仕事を辞めることはないと思います。

 世の中には、さまざまな考え方の人がいるものです。
続きを読む
ラベル:無職
posted by 乙 at 05:27| Comment(31) | TrackBack(2) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月09日

ロシナンテスへの寄付

 乙は、知人から教えてもらって知りました。朝日新聞10月26日「ひと」欄に次のような記事があったとのことです。
スーダンで医療活動する元大使館医務官 川原尚行さん(44)
 多くの子どもがマラリアやコレラで亡くなっていく。だが、日本大使館の医務官としては、現地の人たちを診ることは許されない。
 アフリカ北東部スーダンに赴任、10人に1人が5歳まで生きられない現実を目の当たりにした。「おれは何をしているのか」。無力感と使命感。05年に外務省を辞め、現地で医療活動を始めた。住民と同じものを食べ、同じ水を飲む。何度も腹をこわし、粗相した下着を便所で洗い、ポケットに突っこんで診察した。
 年収1700万円から無収入に。援助もないなかで、助けてくれたのが母校・小倉高校(北九州市)ラグビー部の仲間だった。国連機関に勤める後輩がスーダン勤務になったのを機に家に転がり込んだ。05年秋に活動の基盤になるNPO法人「ロシナンテス」を設立。「1人の力は無力でも、協力すれば大きな力になる」という思いを、ドン・キホーテが乗ったやせ馬の名に託した。
 活動資金は小倉高、九大の母校OBら日本からの寄付が頼りだ。年2回帰国し、学校などで講演して支援を呼びかける。「混乱が続く国で子どもたちに夢を持ってほしい。子どもに必要なのは笑顔で遊ぶこと」。現地で学校建設にも取り組む。
 北九州市に残る3人の子を養うのは小学校講師の妻佳代さん(43)。「家族を思うと帰りたくなることはある。でもスーダンに骨を埋める覚悟。10年30年たち、自分が生きた後に道が開けていればいいなと思う」
 文・山根久美子 写真・藤脇正真(写真は引用省略)

 本当にびっくりしました。年収 1700 万円をなげうってしまったというのは、すごいというか、むちゃというか、信じがたい行動です。
 ネットを検索すると、ロシナンテスのホームページがありました。
http://www.rocinantes.org/
さっそく、微力ながら、寄付をすることにしました。これから毎年1回の寄付を続けるつもりです。
 当面は乙の定年までが目標ですが、できたら死ぬまで続けたいものです。とはいえ、定年後は収入が激減するので、むずかしいかもしれません。そのころまでに、資産運用がうまくいって、寄付ができるくらいになっていたら、余裕の老後が送れるという意味で、うれしいのですが。
posted by 乙 at 05:16| Comment(7) | TrackBack(0) | 消費生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月08日

日本のブログの利用者はネット利用者の4割

 日本のネットユーザー 300 人に対して、ブログに関する調査がありました。
http://japan.internet.com/research/20091105/1.html
それによると、ブログの作成経験はネットユーザーの4割程度だそうです。
 「作成している」との回答は 26.7% で、「過去に作成していたが今はしていない」13.7% との合計は 40.4% です。ブログはネットユーザーの中でかなりの割合で利用されているといえます。
 ただし、3人中の1人は、途中で止めてしまったわけで、そのあたりの理由などがわかるともっとおもしろい調査結果になったのかもしれません。まあ、ここの調査方針は、そういう自由回答などは扱わないようなので、実現は不可能だと思いますが。
 ブログの閲覧のほうでも、定期的にチェックしている人が約4割とのことですから、読む方もそれなりの割合でいることになります。
 日本人は書く方も読む方もブログ好きなようですね。
 乙のブログも、毎日アクセスしてくださる方がいらっしゃるということで、身が引き締まる思いがします。
ラベル:ブログ 作成経験
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2009年11月07日

売買手数料がゼロの ETF

 乙は、カン・チュンドさんのブログで知りました。
http://tohshi.blog61.fc2.com/blog-entry-802.html
 アメリカでは、売買手数料がゼロの ETF が登場したとのことです。
 これは、販売会社と運用会社が一体化することで初めて可能になる戦略です。なるほど、アメリカは進んでいますね。
 では、チャールズ・シュワブに口座を開設するべきか。
 それでもいいと思いますが、めんどうなのと、送金手数料がかなりかかりそうなのとを勘案すると、普通の人にとってはあまりメリットがないかもしれません。多額の資産運用をしている人は、可能性がありますので、検討してもよさそうです。あ、外国に居住する人間が口座開設が可能かどうか、確認していません。
 日本では、直販方式の投資信託もボツボツ出てきましたが、まだ少数です。さわかみ投信はかなりの資金を集めていますが、それ以外はまだ何ともいえない状態でしょうか。これでは、「インデックス・ファンドの直販」が始まるのはまだまだ先の話になりそうです。
 いや、しかし、投資家教育が進めば、意外と早くこんな投資信託(ETF)が実現するかもしれません。少なくとも、目指すべき方向はこちらでしょう。
 楽しみです。
 とはいいながら、一方では、日本ではなかなか実現しないだろうと予想しています。市場規模の問題、投資家層の厚みの問題、投資教育の普及の程度などで、日米の差はかなりあると感じています。
ラベル:ETF 売買手数料
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2009年11月06日

三菱UFJ投信の「eMAXIS」ブロガーミーティング

 乙は、11月5日の夜に開催された「eMAXIS」
http://maxis.muam.jp/e/
をテーマにしたブロガーミーティング
http://www.fund-no-umi.com/blog/2009/10/ufjemaxis-671f.html
に参加しました。19:30-21:30 に行われましたが、2時間はあっという間に過ぎてしまいました。
 初めに、三菱UFJ投信商品企画部の代田秀雄部長(話し方、話の内容から判断して、非常に頭が切れる人です)から、今回の eMAXIS シリーズのねらいなどの説明がありました。ネット専用で低コストの(ノーロードで信託報酬が安い)インデックス・ファンドという明解なポリシーでした。
 代田氏によれば、特に、ブランドにこだわったという話でした。普通ならば「三菱UFJ 」あるいは「MUAM」を投信名の先頭に付けるところですが、「eMAXIS」では、あえてそれをせずに、新しいブランドを立ち上げるという覚悟で臨んだのだそうです。
 すでに、三菱UFJ投信には MAXIS という ETF があり、乙も、購入しましたが
2009.6.9 http://otsu.seesaa.net/article/121124301.html
それとの共通性を意識した命名です。MAX(最大の)+ AXIS(中心軸)で MAXIS だそうです。「e」は economy あるいは economical の頭文字でしょう。
 現状の投信業界では、大口投資家である退職者が窓販で買うのが主流で、だからこそ毎月分配型の投信が売れたりするわけですが、eMAXIS は、ターゲットが違います。小口投資をする資産形成層、年齢でいえば30代から50代のサラリーマンをターゲットにするという発想です。
 その裏には、現在、窓販の販売量は伸び悩んでいるものの、ネット経由の販売はどんどん増えているという事情があります。だいたい3ヵ月で 1000 億円程度の販売量だそうです。そこで、そのような有望なターゲットにねらいを定めたのが eMAXIS だというわけです。
 乙は、運用総額の想定を質問してみましたが、代田氏によれば、中長期的に 500 億円だそうです。これくらい資金が集まれば安定的に運用していけるとのことでした。確かにそうでしょう。問題は、この投信が多くの人(比較的若い人?)に理解され、資金が集まるかというところです。ネット専用(ネット証券経由でないと買えない)ですから、退職者にはハードルが高そうです。若い人ならばネット経由の申し込みはどうということもないでしょう。
 乙は、若い人=投資初心者にインデックス・ファンドに目を向けさせること自体が難問のように思いました。投資家教育が重要なのですが、三菱UFJ投信がそこまでやるのはそれはそれでコストのかかることでもあるので、なかなか実現はむずかしいでしょう。
 eMAXIS は、10月30日スタートで、3日間で 1.5 億円の資金が集まったということでした。代田氏からは2〜3年で運用を止めることは考えておらず、10年くらいは育てていきたいという発言がありましたが、さて、それが実現するかどうかが問題です。日本の投信事情を考慮すると、投資家の多数を占める大口高齢層はこういう投信に見向きをせず、若い人は知らないままになる可能性もあると思われます。投資家としても、数年くらいようすを見てもいいのかもしれません。(みんながそうすると、この投信に資金が集まらないということになってしまうのですが。)
 三菱UFJ投信は、直販の免許がないので、投資家に直接販売することはできないし、証券会社に顧客を紹介することもできないのだそうです。したがって、ネット販売の証券会社と連携して、売り出すしかなく、どうやって顧客にアプローチするかが問題のように思います。しかし、ブロガーミーティングのようなことを行っていれば、しだいに浸透するようにも思います。ブログを書く人は少数でも、読む人は多数でしょうから。

 余談ですが、三菱UFJ投信では、200 本くらいのベビーファンドを4人で管理しているなどという話も聞きました。インデックス・ファンドは、資金が入ってきたら、ほぼ全額をマザーファンドに渡すだけですから、管理の手間はあまりかかりません。だからこそ、こんな体制になっているのですね。
 また、商品企画部では、6ヵ月で20本ほどの新しい投信を作っていると聞きました。それは大変なことです。乙の感覚では、次々と新しい商品を出す必要はなく、今回の8種類くらいの投信で十分なので、それらを長期的に成長させるほうが望ましいと思うのですが、新しい投信を作らないと、お客にアピールしにくいのでしょう。しかし、これは、投資家教育が行き渡っていないせいだと思います。特にインデックスファンドは新しいファンドを作ることは不要で、基本的な数本があればそれで十分だと思います。
 そんな貴重な内部事情なども聞くことができて、大変有益なミーティングでした。
 また、こんな機会を作ってもらいたいものです。

 ミーティングの途中で、トンカツサンドイッチとコーヒーが出ました。初めからペットボトル入りのミネラルウォーターもありました。ボールペンももらいました。だから言うわけではありませんが、この eMAXIS シリーズは、確かに若い人におすすめできそうな投資信託だと思います。
 では、乙はこれを買うか。残念ながら買いません。
 現在、乙は ETF を中心に投資しているので、低コストだという信託報酬(税込み 0.42% から 0.63%)でも、まだ高いと感じます。しかし、若い方や小口投資家には eMAXIS がかなり適しているように思います。
 日本でも、こういう投資信託が受け入れられることを願っています。それは、投資家がきちんと勉強しているということを意味しています。そうありたいものです。

 イーノさん、直接的に、間接的に、いろいろとお世話様でした。
posted by 乙 at 05:18| Comment(2) | TrackBack(2) | 国内投資信託 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月05日

京都府の公募型公共事業

 京都府では、2009 年から、全国初となる公募型公共事業をはじめました。
http://kyoto-np.jp/article.php?mid=P2009041400159&genre=A2&area=K00
 京都府のホームページ上に案内が出ています。
http://www.pref.kyoto.jp/koubo-kouji/
 雇用・経済対策の面もあるようで、こうやって60億円を注ぎ込んで、京都府を温めようとしています。
http://www.pref.kyoto.jp/koho/dayori/200904/toku_01.html
 審査委員会の開催結果も公開され、
http://www.pref.kyoto.jp/koubo-kouji/kyotosiiinkai.html
どんな審査・議論がなされたか、よくわかります。
 京建労(全京都建築労働組合)もこれをニュースとして取り上げています。
http://www.kyokenro.or.jp/info/2009/05/post-8.html
 もちろん、府民は誰でも要望が出せるので、業者側からの要望であっても問題はありません。
 日本の多くの地域では(中央政府も含め)こういう公共事業は役人が具体的な計画を策定し、議会での承認を経て実施されるものでした。そこに住民の意向は若干は反映されるものの、むしろ、役所が中心となってきた感があります。一部住民の陳情やら一部政治家のごり押しやらがあって、昔から、新幹線の停車駅を自分の選挙区に持ってきたとか、空港を作ったとか、変な査定がまかり通ってきたことが多いように感じていました。いかにも不透明です。
 今回の京都の話は、小規模工事とはいえ、住民の声が府を動かすものであり、たいへん興味深い事例です。無駄をなくし、本当に必要な工事を行っていくというのはこういうことなのかもしれません。こういう公共事業が他の都道府県市区町村でも行われるようになると、公共事業のあり方も変わってくるかもしれません。住民たちも、そのような経験を通して、政治とは何か、役所とはどういうところか、知る人が多くなり、自分たちの住んでいるところを自分たちの手で改善していくような動きが出てくるように思います。
 乙は京都市のやり方に賛成です。
 京都は、さらに先を行ってほしいとともに、国も地方公共団体も、お金の使い方・使い道をよく考えてほしいものです。
posted by 乙 at 05:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月04日

山崎元(2009.5)『資産運用実践講座T 投資理論と運用計画編』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 お金の運用に関する「中級」のテキストブックだとのふれこみです。
 まえがきにあるように、本書は、もともとフィナンシャルプランナー向けの解説だったものに手を加えて1冊にしたものだとのことです。それはわかるのですが、一読して、前半の第1章から第4章までがどちらかというと投資の考え方を述べたもので、FP向けの内容に感じました。一方、後半の第5章から第7章は投資家向けの内容のように感じました。個人投資家としては後半だけ読んでもいいのではないかと思いました。(それでは、著者の意図が伝わりませんが。)
 後半に書かれた内容は、山崎氏の以前の著述と重複するもので、やや新鮮味に欠けますが、しかし、変わらぬ真理はその通りにしか書けないので、これでいいのではないかと思います。個人投資家として心得ておくべきことはこれで尽くされているようにも思います。(乙は、以前、山崎氏とやや違う考え方を持っていたのですが、最近は、山崎氏の主張を正しいと考えるようになりました。)
 本書で乙がおもしろかった点を一つあげておきます。p.12 ですが、「年金生活者の資産運用方針」を述べたところです。110 歳まで生きることを仮定して、今の資産を取り崩しつつ 110 歳まで継続的に生活していく(70歳なら40年間で取り崩す)ように計算して、その金額を取り崩すという考え方です。毎年1回資産総額をもとに、取り崩し額を計算し直しながら生活していくというものでした。具体的な考え方を示されて、乙は「そうだ」と思いました。
 読んだ後、「本書の内容は確かに中級だ」と思いました。しかし、こういう本を読む人はどんな人だろうと思いました。具体的なイメージがわきませんでした。個人投資家で本書が役立つ人がいるのでしょうか。
 やや歯ごたえのある内容でした。

 なお、本書 p.132 の注1)では、「運用期間とリスクに関する数学的な議論は専門書(例えば『金融工学』野口悠紀雄・藤井眞理子著、ダイヤモンド社、pp.127-129)などを参照してください。」とありますが、そこを参照すると、ランダム・ウォークの極限としてのブラウン運動を定式化しているだけで、運用期間とリスクに関する議論ではないように思います。山崎氏の勘違いなのか、乙の読み取りが不十分なのか、わかりませんが。

ラベル:山崎元
posted by 乙 at 04:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月03日

アメリカの証券会社からIBへの資産移管

 VMax さんのブログに要注目です。
http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/usib-d2d4.html
http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/usib-5a5e.html
 「USのある証券会社の資産(ETFポジションを含む)をIBに全部移管してみました」ということです。
 VMax さんにお尋ねしたところ、現金を含めて全部移管できたとのことです。
 ということは、アメリカから全部撤収するとき(そんなときはウン十年先にしか起こらないとは思いますが)あちこちにおいてある資金をいったん Interactrive Brokers に移動して、そこから日本の銀行に送金するという使い方ができます。もっとも、VMax さんによれば、IB への移管には 6,000 円ほどかかったということですから、アメリカ国内の場合であっても、海外送金手数料並みの手数料が取られるわけです。
 乙の場合、アメリカの証券会社として、Firstrade と E*TRADE と Interactive Brokers の三つを使っているのですが、もしかすると、これを IB 一つにまとめるほうがいいのかもしれません。しかし、一方では、一つにまとめると不便なケースもありそうです。もしかして IB の営業がうまくいかなくなったり(法的整理されたり)したら、大変です。そのあたりのバランスを考えると、やっぱり今のように三つの証券会社を使い分けるほうがいいのかもしれないとも思います。
 悩ましい話です。

 いずれにせよ、撤収のしかたの選択肢が一つ増えたということでは、意味があります。
 ブログに書いておいて、備忘録代わりにしましょう。
ラベル:証券会社 IB
posted by 乙 at 08:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融機関 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月02日

門倉貴史+賃金クライシス取材班(2008.6)『貧困大国ニッポン』(宝島社新書)宝島社

 乙が読んだ本です。「2割の日本人が年収200万円以下」という副題が付いています。
 たくさんのワーキングプアに取材して、その生き様の具体例をちりばめた本です。大変きびしい生活が赤裸々に描かれます。中でも、pp.70-90 あたりでは、貧しさの故に売春するしかない(地方の)女性が登場します。いやもうどうしようもない感じです。また、男性の例では、pp.127-150 で闇職系若者を取材していますが、犯罪に手を染めるとなると、一線を越えたことになります。今の日本で、売春や犯罪と結びつくほどに、貧困が蔓延しているということです。貧しさ故にこんな人たちがいるのだと知るには、こういうルポ風の本が適していると思います。投稿する証言は全部匿名ですが、きちんと取材した結果だろうと思われます。
 本書では、最低賃金を引き上げることでこうしたワーキングプア問題を解決しようという提案をしていますが、話はそう簡単ではなさそうです。働き方を含め、日本社会のさまざまな事情が絡み合っており、それに対する簡単な解決策はないだろうと思います。
 多数のワーキングプアがいる日本の現状も問題ですが、日本社会の将来を考えると、さらに暗澹たる気持ちにさせられます。
 乙は、どうしたらいいか、まったく見当も付きません。マクロな日本社会の問題もさることながら、ミクロなワーキングプア個人のケースでも悩みは深いものがあります。
 乙の回りにも、働いていない若い人がいたりするのですが、そういう人をどうしたらいいか(どう働きかけをしたらいいか)、考えてもよくわかりません。困ったことだと腕組みするだけで、時間がどんどん流れ、そういう人たちが社会から取り残されていきます。10年、20年と経つと、みんなそれだけ年を取りますから、今のままでは成り立たないのですが、さりとて、展望はまったくありません。

posted by 乙 at 05:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月01日

ETF Connect が使えなくなりました

 乙は、海外の各種の ETF の現状を知るために、ETF Connect を利用してきました。
 しかし、最近、サイトの運営方針が変わって、ETF 関連情報が見られなくなってしまいました。サイト自体も CEF Connect
http://www.cefconnect.com/
になっています。
 さて、サイトを見ると、ETF のことを調べるなら、MarketWatch, Morningstar, MSN Money を見るとよいと書いてあります。
 三つとも見てみると、MSN Money がややわかりにくい気がしました。
 そして、一発で得られる情報量では、MarketWatch よりも Morningstar
http://www.morningstar.com/
がいいかなと思いました。
 今後は、ETF Connect の代わりに、Morningstar をブラウザのお気に入りに登録しておきます。
posted by 乙 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ETF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする