http://www.npfa.or.jp/about/shikumi/index.html
それはいいのですが、国民年金基金は、破綻することなく、ちゃんと年金を支給してくれるでしょうか。
国民年金基金の財政を見てみると、
http://www.npfa.or.jp/jigyo/finance/index.html
「平成20年度は運用環境が厳しかったことから、運用利回りがマイナス21%となり、責任準備金に対する積立不足額の割合も約20%増加し、38%程になっております。」と書いてあります。
「年金財政の推移」を見ると、平成20年度末の給付確保事業について、こう書いてあります。
資産額=9,735 億円、責任準備金=1兆 5,584 億円、実質過不足=5,948 億円
5,948÷15,584×100=38.2% ということです。
つまり、今まで積み立ててきた年金の資金があるわけですが、この時点で国民年金基金を解散して、加入者に積立金を返そうとすると、1兆5千億円必要なのだけれど、今は9千億円しかなく、6千億円が不足しているというわけです。これは膨大な含み損といえるでしょう。民間企業でいえば債務超過みたいなものといえばいいでしょうか。
基金2口目以降についても同様の数字が並んでいます。
国民年金基金は、運営理念として積立方式を念頭において運営されてきたはずですが、こんなにも含み損が多いと、実質的に若い世代が老年層を支える賦課方式になっているようなものです。
将来的に、この含み損は解消されるのでしょうか。乙の見方では、かなり悲観的です。9千億円を1兆5千億円にするには、6割増の運用をしなければなりません。これはなかなか大変です。
国民年金基金の長期的資産構成割合(基本ポートフォリオ)を見ると、
http://www.npfa.or.jp/org/unyo.html
国内債券 25%、外国債券(円ヘッジ)10%、国内株式 25%、外国債券 12%、外国株式 28% だそうです。
先日紹介した岡本和久『100歳までの長期投資』
2009.11.15 http://otsu.seesaa.net/article/132857250.html
の資産クラスごとのリターンを使うと、外国債券(円ヘッジ)は国内債券と同じリターンとして計算することで、ポートフォリオ全体のリターンは 5.27% となります。
毎年 5.27% の運用を継続したとして、資産が6割増になるには、9年かかります。
けっこうなリターンをねらっているともいえますが、逆にリスクも相当に大きそうです。今後、株式市場の低迷などによって、さらに運用が悪化するかもしれません。
ということで、国民年金基金は破綻するかもしれません。しかし、今は年金の解散などの破綻処理をするわけにも行かず、このままの仕組みを継続していくしかありません。
何でこうなったのかといえば、年金の予定利回りが高く設定されてきたのに、実際はかなり低い運用しかできなかったからでしょう。運用の失敗というわけです。
日本航空OBの高額年金が問題になっていますが、一つのアイディアとして、企業年金の積立不足を解消するために企業年金を解散したらどうかという話があります。他の企業でも同様の話があることでしょう。個々の企業年金の財政状態にもよるので、一概には言えませんが、年金の運用がうまくいっていれば解散も選択肢の一つですが、なかなかそういっていない例が多いのではないでしょうか。企業年金が解散したら積立不足は企業の負担になるので、解散しにくいでしょうね。
国民年金基金もそのような「うまくいっていない例」の一つです。
もしかして、国民年金基金が破綻することになったら、……国民負担(つまりは税金で尻ぬぐい)になるのでしょうか。そうならないために、年金一元化(厚生年金への吸収)を考えているのでしょうか。その場合、厚生年金側は、たかられるばかりで、いい迷惑です。いや、厚生年金もむしられてばかりだから、意外とたかるべきものがなかったりするのでしょうか。
何だか、日本の将来を暗示するような感じがしてきました。