2009年11月23日

郵政300兆円、地方へ 政府・与党、活性化基金を検討

 産経新聞で見かけた記事です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091121-00000048-san-bus_all
 政府・与党は20日、日本郵政グループのゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の約300兆円に上る資金を地方企業への融資などに活用し、地域の活性化に役立てる制度を創設する方向で調整に入った。郵政以外にも政府や地方自治体、地元金融機関が出資してブロック別ファンド(基金)を設立し、地方にお金を還流させる案を軸に検討する。国民新党を中心に議論しており、今後、民主党と詰める。来年の通常国会に基金の設立などを可能にする法案の提出を目指す。
 郵便貯金の約8割、簡易保険の約6割が国債の購入に充てられており、より効率的な運用が課題になっていた。ファンドなどを通じた資金還流で地域経済の活性化に活用するのが狙い。ただ、民業圧迫の懸念があるほか、国債購入の減少で安定発行に支障が出る可能性もある。
 巨額の郵政資金について、鳩山政権は「地域で集めた資金が国債に流れている」(亀井静香郵政改革担当相)と問題視している。小泉政権の民営化でも、収益力強化のための運用多様化が課題となっていたほか、安易な国債引き受けにより、財政規律が緩むと指摘されていた。
 鳩山政権が検討している具体案では、地域活性化を目的としてファンドを地域ごとに設立。民業圧迫を避けるため、地域金融機関にもファンドへの出資を求める。与党では「競合するのではなく、協調しバッティングしないよう進める」(国民新党)としている。
 出融資の対象としては、地場産業などの企業のほか、町づくり、福祉・教育ベンチャー支援などを行う地域に根付いた「ご当地ファンド」と呼ばれる私募ファンドや地元企業の株式を対象とした投資信託などを念頭に置いている。
【以下、略】

 ゆうちょの資金を国債から地方発のファンドに回そうという考え方です。
 いやはや、困ったことです。
 ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険に巨額の資金があることがそもそも日本のあり方をゆがめているわけで、それを直そうというのが郵政民営化の趣旨でした。
 今は、国民新党の主張に基づき、この方向性が逆転して、再び国営になりそうな状態です。
 で、300兆円もの資金を自由に使えることになると、それは国としてもありがたい話でしょうが、基本的には、銀行の預金者や保険の契約者のお金であって、引き出しや解約で資金はいつでも引き上げられる可能性があります。したがって、利息分も含めて堅実な運用をしていかなければならないわけです。国債で運用するというのは、現実的な解の一つでしょう。民間の銀行なども預金として集めた資金の運用先が見つからず、国債に依存する程度がかなり高いのが現状です。
 というわけで、今回はゆうちょ銀行やかんぽ生命が保有する国債を売って、その資金を地方に回そうという発想です。
 日本はデフレということもあって資金の需要がない状態です。国債でも買っておくかというのは、銀行自身が適切な運用ができないことを物語っています。こんな状態で、資金だけを地方に回そうとしても、歪みがひどくなるばかりです。
 乙は、この問題に関する解決策を持っていませんが、役人たちが大規模な資金を運用してもうまくいくわけがありません。
 それにしても、運用先として「ご当地ファンド」が出てくるところは、いかにも思い付きだなあと思います。
 乙は、ご当地ファンドには投資しない方針でやってきました。
2006.9.7 http://otsu.seesaa.net/article/23378665.html
乙の場合は個人の判断ですが、国としての判断でも同じでしょう。ご当地ファンドに投資するべきではありません。
 では、どうするか。そもそも資金をどこに回すかを国が決定するようなこと自体が変なのです。本来は、個人レベルで貯蓄から投資への変化が起こらなければならないはずです。今まで、投資(家)教育に関して国が何もしてこなかったツケが改めて回ってきたのです。
 300兆円といえば、大変な資金量です。これが毀損しないようにしてほしいものです。ゆうちょ・かんぽとも、東京都の中小企業を助けるはずだった(しかし現実的には赤字垂れ流しの)新銀行東京のようにはなってほしくないと思います。
posted by 乙 at 04:22| Comment(2) | TrackBack(0) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする