乙が読んだ本です。「絶望の時代に向けた希望の経済学」という副題がついています。320ページほどの、ぎっしりと活字が詰まった本です。
著者の名前がちょっと読みにくいですが、「う・そっくん」と「ぱく・くぉにる」と読みます。
「88万ウォン世代」というのは、著者たちの命名によります。月収が88万ウォンの若者層ということです。88万ウォンは、この世代の平均月収だとのことです。88万ウォンがどれくらいかというと、今、1円が 12.85 ウォンですから、日本円で換算すれば、68,500 円ほどになります。これでは生活は大変きびしいものになるでしょう。
乙は、韓国のワーキングプアの実態を描いた本かと思って手に取ったのですが、中身はまるで違っていました。韓国の20代の若者が世代的に搾取されている(誰から? 中高年世代からです)という話です。個々人の具体的な生活を描くというのではなく、韓国の20代の全体が置かれている厳しい状況を記述します。あたかも韓国の20代の全員がワーキングプアであるようにも読めます。もちろん、中にはリッチマンもいますので、全員に当てはまるわけではないのですが、リッチマンは20代の中の2%程度だと聞くと、残りの98%の人々にそのまま当てはまる話だということになります。
この問題の解決は簡単ではありません。韓国の社会全体がその方向に動いているわけですから、今の10代が20代になる10年後にも同様に(あるいはさらに深刻に)ワーキングプアが大量に存在していることになります。
このような若者の大変さを象徴しているのが、出生率といってもいいでしょう。韓国の少子化は日本以上に深刻ですが、これは、20代がいかに貧しいかを物語っています。ひとりでも生きていくのがやっとのときに、結婚して子供をもうけるなんて不可能に近いわけです。
韓国はなぜこうなってしまうのか。
詳しくは本書を読むしかありませんが、普通にアルバイトするとき、韓国では時間給で 300 円程度だという話です。日本では 700-800 円くらいにはなりますから、日本のワーキングプアのほうがはるかにマシです。
p.220 あたりから、韓国の教育問題に触れていますが、まるで学校が子供たちを人質にとっているようだとしています。非常に強圧的な学校のあり方が描かれます。
p.238 あたりでは、韓国の中小企業が崩壊してしまったことを述べています。この結果、多くの人々は買い物をスーパーでするようになり、ちょっとした商売である自営業(個人商店)が全滅状態になってしまい、結果的に人々の働き口がなくなってしまっているというわけです。スーパーの店員は、もちろん、時給で働く形であり、大した給料にはなりません。
この問題の解決はきわめてむずかしく、本書を読了して、乙は暗澹たる気分になりました。
そして、日本のことを考えると、韓国社会のこうした変化が、実は日本の将来を暗示しているように思われてなりません。今の日本は、就職氷河期などといわれていますが、この傾向は、もしかしたら今後10年も20年も続くかもしれません。若い人の中で非正規社員の占める割合がますます高まるかもしれません。大学を出ても、まともな就職の道はなく、フリーターになるしかないかもしれません。本書で描く韓国の姿はまさにこういった状態なのです。
日本の場合も、解決策はそう簡単に見つかるものではありません。
若者の奮起が必要なのですが、選挙にも行かないような若者層を見ていると、
2009.12.23 http://otsu.seesaa.net/article/136084374.html
解決ははるかに遠いように思えてきます。