巻末に、次のような注記があります。「本書は、SANKEI EXPRESS に2008年4月から2009年4月まで掲載された連載、「国際政治経済学入門」を加筆・修正、再構成したものです。」
本書の第1部から第4部までは、ほぼ執筆順に収録されています。ここがあまりおもしろく感じられませんでした。いくつかの記述のダブりがあったりします。
この種の連載は、執筆内容とそのときのできごととの同時性が重要ですが、まとまった本として読むときは、全体として著者が何がいいたいかを理解したいものです。その点で、乙は、やや記述が散漫になっているように感じました。
書かれている内容も、(たった1年くらいのことなのに)ずいぶん古く感じられます。「麻生総理」が出てくると、今や「そういえば前は自民党政権だったなあ」という感じです。
さて、タイトルにあるように、世界は基軸通貨としてのドルを支えているわけですが、いつまで支え続けるのでしょうか。本書を読んでも回答は書かれていません。アメリカを中心に、中国やヨーロッパ(それに日本)がどんな態度で為替政策に臨んでいるかが記述されていますが、現状記述的な面が強いようで、著者がどう見ているのか、よくわかりませんでした。
今、日本がドル建て米国債を大量に保有しているので、もしもドルが暴落する事態になると日本は大損害をこうむることになります。(中国も同じです。)だから日本はドルを支えなければならないわけです。
しかし、それに対して、p.109 あたりと p.143 あたりで円建て米国債を発行するアイディアが書いてあります。いわゆるサムライ債です。こうすれば、為替リスクはアメリカが負う形になるので、日本にとっては安心して国債が購入できるというわけです。米国債ということで、日本の国債の金利よりは少しは色が付けられる(金利が高くなる)でしょうから、日本円の投資先として考えると、個人投資家としても、有望な金融商品になりそうです。
アメリカのサムライ債はおもしろいアイディアですが、日本の対米追従外交を見ていると、こんなことは(アメリカにノーといわれて)実現しそうにないように思います。