p.3 のまえがきを読み始めると、衝撃的な内容の一部がわかります。「今年(2009年)中は、もうたいしたことは起きない。ただ株がズルズルと下がり、為替でドル安になってゆく。“ドル安”はもう決まりなのだ。【中略】1ドルは60円を目指して落ちてゆく。次の株式と為替と債券(国債)の暴落が起きるのは来年(2010年)3月だろう。」
いやはや、こんな明確な予想は、なかなかしにくいものですが、副島氏は断言しています。
p.4 では、こんなふうに書いています。「私がこれまで他の本で書いてきたとおり、アメリカのオバマ政権は長くは保(も)たないだろう。金融危機の責任を取らされて、バラク・オバマは任期半ばで辞任してゆく。次の大統領はヒラリー・クリントンが取って代わる。2010 年末にはアメリカは恐慌に突入する。」
これまた明解な予測です。そして、その予測の精度について、同じく p.4 でこう書いています。「私はこれまで直球で自分の予測(予言)を書いて勝負してきた。私はこれまでのところ自分の予測(予言)を外していない。このことを私の本の読者は知ってくれている。予測を大きく外した金融・経済評論家は、客(読者たち)からの信用と評判を落として退場してゆくのである。もうあと何人も残っていない。私はこの本でも直球で勝負する。」
すばらしい話です。自信満々です。
しかし、副島氏が本当に精度よく予測できるならば、こんな本を書いているヒマはありません。ぜひ、その予測を活かして一財産を築いてほしいものです。確実な予測は預言者に膨大な富をもたらします。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part2」(1989)のビフ・タネンの話を思い出させます。
本書は、さまざまな予測にあふれています。
p.49 では、日経平均について、2010 年後半に「大暴落が起きて、5,000 円近辺まで下がるだろう。瞬間的には 4,500 円という最安値をつけるだろう。」と予測しています。その根拠は p.50 に書かれています。
さあ、大儲けしてください。株を信用取引で思いっきり売ってください。あるいは、ワラント債で日経平均を売ってもいいでしょう。副島氏が株価の暴落で儲ける方法を知らないはずはありません。こんな本を書いているヒマがあったら、ぜひ全力投球で大儲けするべきです。つぎ込む資金にもよりますが、この本の印税の百倍から千倍くらいの儲けが出るのではないでしょうか。
第2章は「1ドル=10円の時代」というタイトルです。為替レートについては、p.62 で、2012 年に米国債がドン底になり、そのときの為替レートを予想しているわけです。さあ、今度はFXの出番です。FXはレバレッジを効かせた売買が可能です。なるべく高いレバレッジで、ドル売り・円買いに乗り出すべきです。
副島氏がすでにそのような行動をしているのかどうか、本書中には記載がありませんが、予測を本に書くよりは自分で資金を投入して勝負するべきです。これは「投機」そのものです。それをせずに、本を書いているとしたら、印税収入(および著書執筆で得られるさまざまなメリット)のほうが、各種の投機的売買で得られる利益よりも大きいと断言しているようなものです。
p.158 では、アメリカのデノミネーションについてこう書いています。
アメリカがこのあと10年で、最低で 2000 兆円、最高で 4000 兆円を処理するためには、1ドル=10円にすると、ちょうど理屈が合うのである。1ドル=100円を、10分の1にする。すなわちデノミネーションを行う。そうすると魔法の手品にかかって、対外債務(外国からの借金)の分は実質で10分の1に削減されるのだ。アメリカは、対外債務が総額で 4000 兆円ぐらいあるだろうから、その返済の負担が、1ドル=10円になると10分の1で済む。すなわち 4000 兆円が 400 兆円の債務返済で済むのである。
デノミネーションは、単なる通貨の名称の変更にすぎませんから、借金を実質的に10分の1にすることはできません。そんなふうに1国の判断で借金が値切れるならば、国際取引は成り立たなくなります。
また、もしもアメリカにそんなことができるなら、日本も同じことをすればいいし、それよりも、日本が 100 分の1のデノミをすればアメリカの体外債務をもっと大きくすることが可能になります。いうまでもなく、そんなことはありえません。
デノミをすれば、表面上、借金を10分の1にすることはできますが、税金などの収入も10分の1になり、借金を返す負担はデノミの前後で何も変わりません。
副島氏はここのところ、何か勘違いをしているようです。
他のことは取り上げませんが、乙は、この本はあまりおすすめではないように感じました。
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