本書では、無料で提供するということがどういうことなのか、古今東西のたくさんの例を挙げながら考察していきます。もちろん、中心はGoogle を初めとするネット社会でのさまざまな無料戦略です。
無料とはいえ、その周辺には有料領域が広がっています。理由もなしに〈無料〉であるはずがありません。そのあたりの具体例を出しながら、なぜ無料にしているのか、なぜ無料にできるのかを述べます。
現代は、〈無料〉が幅広く普及しつつある時代といえそうです。この結果、新しいさまざまなビジネスモデルが登場していて、古いモデルの産業を衰退させているともいえます。我々は、そのような大きな流れの中にいることを自覚しなければなりません。
それにしても、消費者側は〈無料〉ですばらしいとだけ受けとめていればいいのですが、供給者側は大変です。〈無料〉にし、それを維持するためのコストをどうまかなうかという難問を解決しなければなりません。今までと同様の考え方ではダメです。発想の転換が求められます。とはいえ、そこは人間が判断するものですから、従前の判断の延長で考えてしまいがちです。
新聞や雑誌、本を無料で提供するべきか、有料のままにしておくべきか、立場によっても意見は異なるでしょうが、無料にする場合、その業界人はどうやって食べていくのでしょうか。食べていけないとなれば、その業界は衰退してしまいます。結果的に消費者側は供給がないということでダメージを受けます。
本書を一読して、これからの世界のあり方を考えていくことの必要性を感じました。
なお、本筋とはあまり関係ありませんが、p.92 に「時間とお金の方程式」というところがあります。子どものときは、お金よりも時間を多く持っていて、だから手間がかかっても無料のものを使うのが合理的ですが、年を取って時間とお金の関係が逆になると、お金を使って時間を節約するようになるというのです。乙は、この部分に強い共感を感じました。
参考記事:
http://renny.jugem.jp/?eid=1336
http://diamond.jp/series/brandnew/10250/