2010年02月26日

ETF 市場 日本出遅れ

 日経新聞 2010.2.24 朝刊4面の記事です。
 大きな見出しで「ETF 市場 日本出遅れ」と書いてあります。その下には「商品数4倍、残高は4割減」とあります。記事の趣旨は、日本の ETF は、さまざまな種類が上場されるようになってきたが、残高が大きく減っていて資金が流出しているということです。
 記事を一部引用します。
 米運用大手ブラックロックの調査によると、2009年末の世界のETF残高は前年比45%増の1兆323億ドルとなり、過去最高を更新。一方、日本のETFは9%減の2兆2907億円と3年連続で減少した。世界の市場では新興国の株式や債券に投資するETFに資金が流入したが、日本の市場ではETF残高の大半を占める国内株の資金流出が続いた。

 記事にはグラフまで付いていました。以下、スキャナで取り込んで引用します。
nikkei20100224.JPG
 この図を見ると、ETF の純資産残高が大きく減少していることがわかります。
 では、これがすなわち日本のETFから資金が流出していることを意味するのでしょうか。
 そうではありません。
 記事にも書いてありますが、日本のETFは国内株に投資しているものが多いのです。国内株は、過去数年を見ると、成績が振るいません。つまり、ETFの資金流出ではなく、単に国内株の株価が下がっただけではないでしょうか。
 そこで、これを確認してみます。
 引用したグラフを目で読み取って、純資産残高を見てみました。拡大コピーして、目盛りに合わせて等間隔に直線を引き、定規を当てて 0.5mm 程度の誤差で読み取りました。
 資産残高1年騰落率
2006.124兆1625億円 
2007.123兆9500億円
-5.11%
2008.122兆5625億円
-35.13%
2009.122兆3375億円
-8.78%

 記事では、2009.12 は2兆2907億円とありましたが、グラフを読み取ってみると、乙の目には2兆3375億円に見えました。乙の読み取った数値で 2008.12 と 2009.12 を比べると、ほぼ9%減になっていますから、読み取りの数値がおかしくても、まあ精度や相対的な金額としては十分でしょう。
 次に、日経平均株価と TOPIX を調べます。
 TOPIX1年騰落率日経平均株価1年騰落率
2006.12
1681.07
17225.83
2007.12
1475.68
-12.25%
15307.78
-11.13%
2008.12
859.24
-41.77%
8859.56
-42.12%
2009.12
907.59
+5.63%
10546.54
+19.05%

 三者を比べると、2007.12 と 2008.12 では、TOPIX と日経平均の下落率が ETF の資産残高の下落率よりも大きく、つまり、ETF に資金が流入していたことがわかります。2009.12 では、TOPIX と日経平均がともにプラスになっているのに対して、ETF の残高はマイナスであり、資金が流出していることを物語っています。
 記事では、2009年末に日本の ETF の残高が 9% 減だったとしていますが、そうではなくて、もっと大きな資金流出があったのだけれど、株価が上がったおかげで 9% 減で済んだように見えたということです。
 記事中のグラフを見ると、2006.12 をピークにして、資金が流出しているように見えますが、それは見かけだけで、実際は、2008.12 まで資金は流入していたのです。しかし、株式市場全体が振るわなかったので、ETF の純資産残高もそれに準じて下がってしまったということです。
 日経新聞の記事のグラフの示し方は、ミスリーディングではないでしょうか。記事中の「3年連続して減少した」は正しいですが、資金流出が3年続いたと読んでしまってはいけません。しかし、このグラフの示し方は、あたかも資金流出が3年間続いているように見えます。

 経済を中心とした新聞社が、こんなグラフと記事を書いているのですね。
 乙は驚きました。
ラベル:ETF 残高 国内株
posted by 乙 at 04:48| Comment(3) | TrackBack(0) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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