第3章で投資の話も出てきますが、むしろ、著者の言いたいことは生活全体の見直しです。サラリーマンが日常生活で直面するさまざまなお金の問題をどう考えるかを述べています。その意味では、副題がこの本の内容をよく表しているように思います。
全体にとてもよく書けています。新書版のコンパクトさの中に、エッセンスがぎゅっと詰め込まれている感じです。必要なところには必要なグラフや表がきちんと示され、わかりやすくなっています。
乙が興味を持ったのは、第3章の投資の話です。
p.152 では、日本の過去50年分の株式リスク・プレミアム推計値のグラフが出てきます。それによると、1955 年ころにはリスクプレミアムが 25% もあったのですね。いい時代でした。最近は1桁になっていますから、あまり儲からなくなっているといえます。
p.153 では、日本の過去50年の株式市場指数の標準偏差のグラフが出てきます。リスクは50年で減っていないことがわかります。いずれも山口勝業氏の著書からの引用ですが、乙はこういう事実を知らなかったので、とても印象的でした。
p.189 では、年金積立金管理運用独立行政法人の『平成19年度 業務概況書』からの引用で、期待収益率・リスク・相関係数の表が出ています。
ただし、今はネットで 2009.7.1 に公開された『平成20年度 業務概況書』が見られます。
http://www.gpif.go.jp/kanri/pdf/kanri03_h20_p04.pdf
その65ページにも同じ表が出ています。
種類 | 期待収益率 | リスク |
国内債券 | 3.0% | 5.42% |
国内株式 | 4.8% | 22.27% |
外国債券 | 3.5% | 14.05% |
外国株式 | 5.0% | 20.45% |
短期資産 | 2.0% | 3.63% |
乙はちょっと意外な感じがしました。
以前読んだ田村正之(2009.2)『世界金融危機でわかった! しぶとい分散投資術』
2009.6.8 http://otsu.seesaa.net/article/121053721.html
では、同じ年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がまとめた2007年まで35年間の実績の数字に基づいた表があり、そこでの期待リターンは
日本株式=7%、日本債券=2%、外国株式=8%、外国債券=3%
となっていたからです。
株式の期待収益率がずいぶん違っています。なぜこんなに違うのでしょうか。違っていていいのでしょうか。
著者は、サラリーマンはインデックス投資と言い切っています。しかし、一方ではアクティブファンドの存在とその意義にも配慮された記述がなされています。
全体にバランス感覚がとてもいいと思いました。お薦めできる本だと思います。
ラベル:岡本吏郎