ネットには四つのレイヤー構造があると説きます。
コンテンツ/アプリケーション、プラットフォーム、インフラ、端末です。検索エンジンなどがプラットフォームです。NTT や CATV がインフラです。そして、ネットの現状を見ると、プラットフォームが一人勝ちしていて、コンテンツ産業が疲弊しているということです。その例として、岸氏は新聞と音楽を取り上げます。ネットで何でも無料で手に入るかのような風潮がありますが、それはコンテンツ産業からプラットフォームに資金が移動しているだけで、いわばプラットフォームがコンテンツ産業を搾取していることに相当するとしています。
一番儲かっているプラットフォームに関連する企業はすべてアメリカにあることから、アメリカが世界を牛耳っているととらえることができます。言い換えれば、日本は敗北しているわけです。
実におもしろい見方です。
もちろん、「ではどうしたらいいか」が必要なわけですが、それは第5章「日本は大丈夫か」で述べられます。プラットフォームと端末が融合する動きがあり、そこからプラットフォームを巡る競争の激化があるとしています。そして、そのような変化を踏まえてジャーナリズムと文化をどう守るかを議論し、最後に日本はどうするべきかを述べます。
岸氏の主張は明解ですが、乙は、新聞も音楽も、そう簡単に復興するとは思えません。
一度、ネットがある世界に入り込んでしまうと、そこには非常に広大な「フリーの世界」が広がっています。もうそれにどっぷり浸かっている人がたくさんいます。そうなれば、今までの世界をそのまま維持することは不可能です。
新聞社は、世界各国で減っていかざるを得ません。何社かがつぶれるのは当然です。そうやってつぶれることで、生き残った新聞社に需要が集中し、何とかその新聞社が生き延びるのではないでしょうか。新聞社が全部なくなるとは考えにくいですが、今の日本のように、全国的な規模の新聞社が数社あるというのは多すぎるでしょうね。
テレビが登場することでラジオの性格が変わって別のメディアとして生き延びたように、ネットでニュースが見られるようになっても、紙の新聞が必要とされる面があると思います。乙の勝手な予想では、紙の新聞は20年くらいは命を保つと思います。
乙は、音楽文化についてはまったくわかりません。ネットからダウンロードして聞くなんてことをしたことがないのです。自分が保有する CD を繰り返し聞いているだけです。
本書は、クリス・アンダーソン(2009.11)『フリー』
2010.2.6 http://otsu.seesaa.net/article/140363533.html
と合わせて読むといいと思いました。