なぜならば、全文が PDF ファイルで無料で公開されたからです。
http://totodaisuke.asablo.jp/blog/2010/02/27/4910657
4月15日までですので、読みたい方はお早めに PDF ファイルをダウンロードしておくといいでしょう。
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166607235
乙も、さっそくダウンロードして読んでみました。
まずは、このような無料戦略について思ったことを書いておきます。内容面については、あとで書きます。
岩瀬氏は、上記の記事の中で「このように、大手出版社が、書籍を丸ごと一冊無料でダウンロードできるようにしたのは、おそらく国内で初めてのことだと思われる。文芸春秋社の英断には、大いに感謝したい。」とお書きです。
確かに、乙も、新書が1冊まるまるダウンロードできるというのは初めての経験でした。
この戦略は、「壮大な実験」でもあります。こういうことをして、出版社は儲かるかというのが一番興味があるところでしょう。
ついでにいうと、著者は、儲からなくていいと思います。こういうことで名前が知られ、ライフネット生命が知られ、そちらの営業成績が伸びれば、著者としてはまったく問題がないわけですから、無料でいいのです。
しかし、出版社は別です。こういうことが普通に行われて多くの本が無料になってしまって、それでも儲かるのでしょうか。
乙は、出版社も儲かると思います。だからこそ、文藝春秋は冷静な判断で PDF ファイルの公開を決めたのです。
最大のポイントは、期間限定であることです。しかも、新書本が出てから数ヶ月経ってからの公開でした。
新書は(いや書籍全体がそうですが)出版直後は売れますが、その後、だんだん売れなくなっていきます。
ということは、この本は 2009 年 10 月に出版され、適当な部数が売れ、出版社としてはもう「元を取った」状態のはずです。無料化してもしなくても、もう儲けたあとなのです。だから、ここで無料化戦略をとったとしても、出版社としては何の懐も傷まないのです。
さらに、この無料化戦略によって、その期間で(さらにはその後も)大きな話題になることがあります。現実にそうなっています。内容的にも興味深いものをたくさん含んでいます。たくさんの人がこの本を読むと、話題は一層広がり、クチコミの力で広がりを見せます。どこまでいくかはわかりませんが、ベストセラーはそうやって作られるものです。すると、無料期間を過ぎたあとで、「自分も読みたい」という人が多数現れます。そのときには、新書を買うしかありません。(古本屋で安く買うかもしれませんが。)それは、文藝春秋としてもありがたい話です。
もう一つ、副産物として、この本に対して興味を示す人たちの性別と年齢がわかります。ダウンロードサイトでは、性別と年齢を入れることになっています。こんなところでウソをついてもほとんど意味はありませんから、たいていの人は正直に性別と年齢を入れるでしょう。こうして、出版社は本の読者の性別と年齢という、ふだんならば手にできないデータを入手することができます。これは、今後の販売戦略を考える上で役立ちます。
ということで、どんな本でも無料化していいというものでもありませんが、内容がおもしろく、多くの人が読みそうなものをあえて無料化する戦略は「あり」だと思います。
この方法の成否は数ヶ月後ないし1〜2年後くらいにはっきりするだろうと思います。
もし成功したら(文藝春秋が大きく儲かるようなことがあったら)、出版界に激震が走ることは間違いなしですね。
参考記事:
http://renny.jugem.jp/?eid=1382
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/280
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/288
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100225/213027/
http://www.j-cast.com/mono/2010/02/28061120.html
http://diamond.jp/series/yamazaki/10120/