2010年04月22日

遠藤誉(2010.2)『拝金社会主義 中国』(ちくま新書)筑摩書房

 乙が読んだ本です。
 日経ビジネスオンライン連載の「中国“A女”の悲劇」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080212/147023/
をベースに大幅に加筆したものです。
 連載も非常に興味深く読みましたが、こうしてまとまってみると、今の中国(人)の考え方が手に取るようにわかります。
 全5章構成ですが、やはり第3章「結婚できない「デキル女」たち」が読み物として一番おもしろいと思います。
 さらに、続く第4章「銭に向かって進んだ結果の就職難」も読みごたえがあります。2009年だけで200万人の大卒生が未就労と聞くと、中国はどうなってしまうのだろうかと思います。本書でその答えが描かれます。農村からの出稼ぎ者に向けた求人に大学生が殺到したり、むしろ村に行こうということで、村官の募集に大学生が長蛇の列を作ったり、兵隊になるものまで出ているのです。本書は、そういう中国の現状を余すところなく描いています。
 中国の中の不平等や格差はすごいものですし、一人っ子政策によって少子高齢化が進む現状も従来とは違った考え方が必要になるでしょう。これから中国がどういう方向を目指して変わっていくか、それを知るには、本書は貴重な1冊といえるでしょう。
 もう中国は共産主義の国とは呼べないようです。共産党は、従来のような農民や工員たちを代表するものでもありません。中国は、資本主義を導入したことによって、越えられない一線を越えてしまったような感覚です。
 ということは、別の面から見ると、中国に投資してもいいということになります。政治体制は若干世界標準から離れていますが、経済的には、もう世界の一員になってしまったのでしょう。

 なお、p.209 の表4に間違いがあります。以下のように示されています。

地区  一家庭当たりの平均年収
──────────────────
東部 1万2130.54 元(約 18万2000円)
中部   6124.11 元(約 9200円)
西部   5972.60 元(約 9000円)
城鎮 1万1550.27 元(約 17万3300円)
農村   5284.67 元(約 7900円)
総体   8282.57 元(約 12万4200円)

 たぶん、中部・西部・農村の円換算が間違っているのだろうと思います。10倍しなければなりません。
 また、p.209 の本文ですが、「ここで注目すべきは、内陸では上位 20% の家庭と下位 20% の家庭の年収の比率が約 17:1 であるということだ。もし年収 100 万円の家庭が上位 20% を占めているとすると、底辺にいる 20% の家庭の年収は 17 万円であることになる。」とあります。ここは計算間違いをしているとしか思えません。もし年収 100 万円の家庭が上位 20% を占めているとすると、底辺にいる 20% の家庭の年収は 17:1 ですから、5.88 万円であることになると思われます。

 とはいえ、現代中国を知るために、本書はおすすめです。

ラベル:遠藤誉 中国
posted by 乙 at 04:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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