乙がおもしろいと思ったところがいくつかあります。
まず、pp.145-146 です。日本の国債がどうなっているかを友達に金を貸した場合で説明しています。
友達があなたから100万円借金をしていて、あなたに90万円くれたとします。友達が再度100万円借りるとすると、あなたは手元の10万円と友達からもらった90万円で100万円を貸すことができます。
これを繰り返すことで、たとえば、190万円のお金があれば、1000万円を貸し付けることができるというわけです。これが日本の国債だというわけです。ここからの結論は、p.146 に書いてあります。「見かけ上の国民の貯蓄額と、国の借金の残高だけから単純に破綻の時期は推定できない」ということです。乙は、なるほどと思いました。どんどん国債を発行せよ(そうしても日本は破綻しない)という主張がありますが、乙はそれは間違っていると思います。なぜ間違っていると思うかをきちんと説明することはむずかしいのですが、ここでの比喩でなかりわかるような気がしました。
本書は、第5章「日本を滅ぼす5つの「悪の呪文」」が一番おもしろいと思いました。こんなことを言っているとダメだという例です。
・経済の豊かさより心の豊かさが大切
ブータン流ではダメだと喝破しています。
・大企業優遇はやめろ!
大企業こそ優遇せよと主張しています。
・金持ち優遇は不公正だ!
子ども手当の所得制限などはおかしな話だと切って捨てています。
・外資に日本が乗っ取られる
外資が日本に投資してくれるのだから、ありがたい話だと説きます。
・金をばらまけば、景気がよくなる
新しいサービスや産業を産み出していかなければならないとしています。
これらの5つの呪文はいろいろなところで聞こえてくる言説です。そうではないのだときちんと述べているところはわかりやすく、すっきりした気分になれます。
おまけに、「おわりに」の中ですが、p.214 で、経営は前例、他社、当局を見ていれば簡単にできるとしています。単純ですが、日本的経営の本質をついているように思いました。今後はそんな簡単な話ではなさそうですが、今まではそんなことも多かったように思います。
すっきりした気分になれる本です。