日本学術会議が提言をまとめたそうですが、その内容が「企業側が、大学を卒業して数年の「若年既卒者」を新卒と同様に扱う」ことを求めるとのことです。「数年」というのは、3年程度を考えているとのことです。
この話は、(一部ですが)ネットでも読むことができます。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100814-OYT1T00945.htm
http://osaka.yomiuri.co.jp/university/topics/20100815-OYO8T00208.htm
http://news.biglobe.ne.jp/social/540/ym_100815_5401555567.html
http://news.nifty.com/cs/domestic/societydetail/yomiuri-20100814-00945/1.htm
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20100814-567-OYT1T00945.html
http://news.www.infoseek.co.jp/society/story/20100814_yol_oyt1t00945/
しかし、これで企業の「新卒優先」が解決するかといえば、乙はそんなことはないものと思います。
第1に、若年既卒者を新卒と同様に扱うとしても、求人数が増えるわけではないということがあります。むしろ、日本企業の現状を反映して、外国での求人は増えるものの国内の求人は減る傾向にあるのではないかと思います。とすると、学術会議が言うように、既卒者が採用されるようになった分、新卒者がはじかれてしまうわけで、大学を卒業してもすぐには就職できない人の数はさらに増えることになります。大学生の卒業後就職率がさらに下がるという結果になります。氷河期がいっそうひどい超氷河期になります。
第2に、企業側の論理が抜け落ちています。22歳で卒業し、定年の60歳まで(今後は65歳定年制になるかもしれませんが、当面は60歳として考えておきましょう)働くとすれば、勤務年数は38年間ということになります。既卒者を採用するとすると、1年既卒者で勤務年数は37年間になり、新卒者と比べると3%ほど短くなります。同じような仕事をしてもらうことを考えると、3%の差は大きいと思います。あれこれ手間をかけて(現在の社員の手間と時間を使う以上は、その分のコストがかかっているわけです)既卒者を含めて採用人事を進めるよりは、新卒者に絞ってしまったほうが平均的には企業にプラスでしょう。求人数よりは求職者数のほうが多い状態なのですから。
この論理は、同じく新卒者といっても、卒業までのどこかで足踏み(浪人や留年など)してしまって、年齢が上になってしまった人も、同様に不利になります。
もっとも、多くの人が3%ほど短く働くようになることで、雇用者数を3%ほど多くしよう(その分、就職率が上がるはずだ)という考え方ならば、成り立ちますが、そのような「後ろ向き」の姿勢では、問題の解決にはならないでしょう。
なお、日本の企業文化の中では、年功序列・終身雇用が確立しています。今後それが崩れるとしても、大きく変わることは少ないでしょう。とすると、3年経って入ってきた年増の新入社員をどう待遇するべきかという点で、各企業の中で「きしみ」が生まれるのではないでしょうか。これは企業の問題であると同時に、社員一人ひとりの問題でもあります。自分がそういう新入社員に日々どう接するかという問題です。
今の就活は会社説明会に参加することから始まりますが、ここが大変な関門になっているようです。説明会の定員をはるかに越える参加希望者があるため、申し込もうとすると5分で満員などということがあるそうです。今やネットが普及していますからねえ。
企業側としても、膨大な手間をかけて何万人も相手にするよりは、何らかの方法で数千人(あるいは数百人)にしぼって、その中から選考するほうが、トータルでは低コストで新卒採用ができるということです。
若年既卒者を新卒扱いにすることで、就職希望者が増大することがあれば、この面からの企業の論理も無視できなくなると思います。
大学生の就職問題は、簡単には解決できない問題です。
日本の経済状況が好転して、求人数が増えるようであれば、かなりの部分は自ずと解決できそうにも思いますが、それはそれでなかなかむずかしい別の問題になります。
参考記事:
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-43d8.html
http://blogs.dion.ne.jp/calcio/archives/9633631.html