2011年01月21日

ネット転送、著作権侵害

 最高裁の判決が出ました。国内のテレビ番組を海外でも視聴できるようにする「まねきTV」を運営する永野商店が公衆送信権を侵害しているという判断です。
 あちこちのニュースで見ることができます。
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E3EAE2E1828DE3EAE2E3E0E2E3E39180EAE2E2E2
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/110118/ent11011816160079-n1.htm
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00191441.html
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2011011902000016.html
http://www.47news.jp/CN/201101/CN2011011801000549.html
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2011011800761
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/entertainment/television/485676/
http://bizex.goo.ne.jp/news/jiji-110118X160/
http://sh.explore.ne.jp/yorozu/71493_1.html

 今の段階では、事実を報道するだけの記事が多いようですが、ちょっとその周辺まで書いてある場合もあります。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20110119ddm041040169000c.html
では、こう書いています。
ただし、判決は個人同士による番組転送まで違法としているわけではない。海外在住者が日本にいる家族や知人に送信用の機器を預けるなどすれば、現地で日本の番組を見ることは可能だという。

 これを考慮すると、個人が行えばOKで、業者が(金をもらって)行うとアウトというのでしょうか。
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20110118
では、この判決をおかしいとしています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110119-00000077-zdn_n-inet
では、1審、2審の判決と比べる形で今回の最高裁の判決を示していますが、乙が常識的に(素人として)読む限り、1審、2審の判決のほうがスジが通っているように思います。
 というわけで、乙は今回の判決をおかしいと思いますが、問題は、こういう判決が与える今後の影響です。
 まず、今回の直接の当事者である永野商店はこのサービスをやめるでしょう。類似の事業を行っている業者は30社ほどあるという話ですが、これらも同様の判断をするでしょう。
 その結果、海外に赴任する(あるいは居住する)個人は、日本のテレビが簡単に見られなくなります。日本国内の個人(たとえば家族)に依頼することができる人はいいですが、技術的な側面を含めて、個人が対応するのはむずかしい場合が多いのではないかと思います。
 こうして、テレビ局は自らの首を絞めることになります。テレビが見られなくなったら大変だと思っている人も、実はなくても何も困らないではないかということに気がつくのです。テレビを見る時間を、DVD や新聞やネットを見る時間に振り向けるようになります。テレビが見られなくなって一番困るのはテレビ局自身でしょう。
 現在、テレビ放送を行っている民放もNHKも、電波だからこそ広い地域に放送を届けられるのであって、いわばそのように多くの人に見てもらうことを使命としている存在です。みんなが見なくなったら、放送の意味はありません。テレビ局は「送りっ放し」をしているだけで、見てもらってなんぼの世界なのです。なのに、個人的努力で(お金を出して)テレビ放送を見ようとしている人を排除しようというのです。この感覚のズレは何なのでしょう。
 これから放送と通信は融合していくと考えられています。端的にいえば、放送局は、ネットに接続する動画サイトの一つに過ぎなくなるわけです。ネット時代にどうやってビジネスを構築していくか、放送局の対応が注目されます。ビデオオンデマンドなどはその典型でしょう。NHKなどは、関連子会社で過去のドラマを DVD 化して販売していますが、そういうのはなくなっていくのです。音楽業界では CD の売り上げがどんどん落ちていて、ピークの 1/3 まで下がったという話です。ネット配信がそれを補っているわけです。テレビ放送も同様の道を歩むものと思われます。
 そういう大きな展望を考えれば、今回のような1対1で送信しているようなケースは放送局の権利を侵害しているものでも何でもなく、「公衆」に「送信」しているのでもないと考えるべきです。
 海外在住者でテレビを見たいという強い要望があることをテレビ局はどう考えているのでしょうか。
 まねきTVのサイト
http://www.manekitv.com/service/index.html
によれば、入会金1万円(税込み 10,500 円)と月額料金 4,800 円(税込み 5,040 円)を払わなければいけないわけです。それを払ってもいいという人がたくさんいるわけですから、たとえば、テレビ局が自分たちでそういうしくみを作り、お金を取ればいいのです。大変なビジネスチャンスがころがっていたのです。自分たちでそういうことを行わず、業者が始めるとそれを訴訟という手段で叩く。これは一体何なのでしょうか。
 テレビ局は、訴訟で仲介業者を叩くのでなく、まずは、低額料金で世界中から日本のテレビ番組が見られるようにして、結果的にまねきTVのようなものが市場で負けて退陣するように仕向ければいいのです。
 放送用に作った番組をネットに流すことは法律でできないですって? だからこそ、議員を動かして、日本のそういう時代遅れのしくみを変えさせることが優先されるべきです。ネットに流すことは有線放送だと考えればいいのです。
 今までは、電波を利用しているので、テレビ放送は国単位で行われていました。しかし、今後は電波を使わないことで国境を越えることになるのです。日本のテレビ番組は諸外国に確実に売れます。日本語のままでも大丈夫です。日本人の海外在住者だけでなく、外国人も日本語を学びつつ日本のテレビ番組を見たいと思っています。
 テレビ局やその業界人は、こんな訴訟に関わっているよりも、もっと他にやるべきことがあるのではありませんか。
 こんなことを考えていると、海外進出をためらう産業は単に政治力で生きながらえているだけではないかと思えてきます。テレビ放送しかり、農業しかりです。あ、公務員もそういう「産業」の一つかもしれません。

 乙は、15年後くらいには海外で暮らしている可能性がありますが、そのころには、こんなくだらない問題は解決済みで、海外に住みながら日本のテレビ放送を自由に楽しめるようになっているでしょうね。デジタル放送でありながら、世界中に配信できないとしたら、一体何のためにデジタル化したのかということですよ。

参考記事:
http://agora-web.jp/archives/1201793.html
http://agora-web.jp/archives/1202683.html
http://blog.dandoweb.com/?eid=115444
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51605322.html
posted by 乙 at 04:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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