http://diamond.jp/articles/-/10672
個人も法人も合法的な節税に勤めていますが、そんなことをしないように、税金を払うと払ったなりのメリットがある「太陽政策」を採用しようという提案です。
その提案では「まず、過去5年間の納税実績を計る。もしその企業や個人が今後5年間に何か大きな変動に見舞われ資金需要が発生した時、その必要額のうち、過去5年分の納税額と等しい金額を政府が保証するのだ。」ということで、「納税マイレージのアイデアを節税中の、多くの高収益企業や個人にヒアリングしたところ、その制度なら喜んで納税したいとのことだった。」とお書きです。
乙は、この制度に反対です。自分だったら喜んで納税したいとは思いません。
第1に、後日の「変動」と「資金需要」をどうやって算出するか、きわめて不透明です。法人が新規に設備投資したいとなったら、そりゃ「変動」だ、「資金需要」だと言って(過去5年以内の納税額の範囲で)国が資金を出してくれるのですか。
あるいは、投資で損失が出た場合に国がその分を見てくれるのですか。そんなことをしたら、ブル・ファンドとベア・ファンドの両方を買っておき、ある年に損失が出るようにどちらかを売却するというのはどうでしょう。その損失が補填されるのですか。
突然の火災はどうでしょう。これだって、意図的な放火という問題があります。
そんなことは認めず、地震や水害、雷などの天変地異による損失だけになるのでしょうか。だとしたら、お金を受け取る機会はぐっと少なくなります。
納税マイレージは、どこまでをカバーしようとしているのか、はっきりしませんし、それによって賛成・反対が左右されます。アイディアとして未成熟です。
第2に、国の税収が落ち込むので増税しなければなりません。単純にいえば、今の制度と同じように納税しているとすれば、後年度、損失をこうむったときなどに国が保証する(つまり資金を出す)分だけ、確実に国の支出が増えるので、それはつまり税収が減ることと同義になります。ということは、今の制度よりも(国の支出が見込まれる分だけ)増税しないことには帳尻が合いません。
第3に、「保険」として考えると、納税マイレージは中途半端で実用的ではありません。自分の払った金額だけが戻ってくるというのでは保険になりません。保険は、払った保険料よりも格段に大きい金額が保険金として補償されるから意味があるのであって、小さな金額の保険金が返ってくるだけでは保険になりません。もしも、支払基準を地震や火災に限定したとして、自宅の再建に 2,000 万円かかるとしましょう。過去5年の納税額が 2,000 万円ある人(所得税 400 万円/年)はかなりの高額所得者でしょう。そんな人の住宅は 2,000 万円レベルではないでしょうね。逆に、一般の人は、過去5年の納税額分を返されたとしても、自宅の再建には全然足りないはずです。
とりあえず、3点だけ指摘しておきますが、納税マイレージについて、制度がさらに詳しく説明されれば、それに応じてもっと考えることができそうです。
今の段階では、この制度に反対です。
ラベル:納税マイレージ