http://blog.livedoor.jp/tsurao/archives/1594392.html
その趣旨は国の資金のバラマキは、それでいいのだというものです。政府が富の再分配でいろいろやっても、結局計画経済のようなもので、うまくいかないことから、国が使途を決めるのでなくバラマキがいいのだということです。政府が将来有望な分野へ資金を投じるなどというのも難しい話で、政府に将来が有望な分野を見極める能力があるのかと疑問を投げています。
乙は、この趣旨に違和感を感じました。
なお、この議論の元は乙のブログ記事「日本の成長戦略とは」
2011.2.14 http://otsu.seesaa.net/article/185801658.html
ですので、こちらも合わせて御参照ください。
以下では、乙の考え方をメモしておきます。
(1)バラマキから計画経済まで、すべては程度問題である。
程度問題ではありますが、その「程度」をおおざっぱに並べると、以下のような順序になりそうです。
(1) 完全なバラマキ(ベーシック・インカム)
(2) 範囲を絞った共通ルールに基づくバラマキ
(3) 申請を審査した補助金・支援策
(4) 重要産業を国が支援
(5) 重要産業を国が設置・運営
(6) 国が全経済を計画・遂行・評価
乙は、完全なバラマキには懐疑的です。今回の成長戦略は (3) レベルに該当するように思います。
(2)子ども手当はバラマキであるが、完全なバラマキではない。
「吊られた男」さんは、子ども手当をバラマキの例としていますが、それだって完全なバラマキでなく、子育てをしている家庭を選んで優遇してそこに資金をつぎ込んでいます。
(3)補助金等は、何らかの審査・評価を経て行うほうが(無審査・無評価よりは)マシである。
乙の知り合いからの情報ですが、ある助成財団の研究助成(若手研究者多数が応募してくる)の審査をしてみると、専門分野が異なる審査員(年配の研究者)がほぼ一致する評価結果を出したという話があります。財団としては、そういう研究に助成するというわけです。
起業プランなども同様ではないでしょうか。
審査なしにばらまくよりは審査してもっともらしいものに配分するほうが効果的であろうと思います。
(4)審査なしでは、大量の詐欺師が紛れ込んでくるので、制度が持たない。
文部科学省による科学研究費の補助金が研究に有用だったかについては、両論ありますが、資金を配分する以上、研究計画を審査して高い評価の計画を採択するしかないと思います。
審査が 100% 正しいことはないと思います。しかし、国が研究内容について指示しているわけではなく、研究者の自発的な研究計画を評価して研究費を配分するわけで、そのようなしくみは割とうまく機能していると思います。
こういう競争は望ましいものと思います。
(5)ルール作りと規制緩和が必要なのは賛成。
起業プランに補助金を出すことについて、しかるべきルール作りが必要なのはその通りでしょう。
規制緩和は、今回の話とは別に、必要なことです。
もっとも、こういう起業による成長戦略がうまくいくかどうかに関して、心配な面もあります。
原悟克氏による「静かに報道される金融円滑化法の実態」
http://agora-web.jp/archives/1247324.html
によれば、中小企業向けの貸付の中に5兆円の不良資産があるという話です。
単に補助金を出してもダメということでしょう。
また、日経新聞2月28日朝刊3面に「中小企業向け融資 公的金融、1/4に迫る」という記事がありました。ネットでも記事全体が読めます。
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819694E0E4E2E2938DE0E5E2E0E0E2E3E39797EAE2E2E2;at=DGXZZO0195164008122009000000
これからわかるように、中小企業向けの貸出残高252兆円のうち、政府が関与する融資が61兆円にもなり、1/4 という割合は政府が中小企業に関与している割合が十分に高いことを意味しています。ここで10兆円の成長戦略基金を作ったとしても、それだけではいい影響があるとはいえなそうです。やはり、どう起業を後押しするかというプランが大切なように思います。