タイトルを見ると、本書の内容がほぼ推測できます。こういうタイトルの付け方が好きです。タイトルは1冊の内容の要約になっていなければなりません。
第1章は「超大国「G2」の黄昏」で、アメリカがうまく立ち回って世界中から資金を集め繁栄してきたものの、今や崩壊しつつあるという認識を示します。中国も、そのうちバブルが崩壊するだろうとしています。
第2章は「お金の流れが変わった!」で本書の中心部分ということです。
p.54 では、ホームレス・マネー 4,000 兆円が世界を翻弄していると説きます。これがどこに向かうかで、その向かった先の国が大きな影響を受けます。
pp.105-106 シンガポールは、資金も人材も世界中から取り入れているのに対して、日本は両方とも拒否しています。日本にはホームレス・マネーがほとんど来ていないため、国民から税金で巻き上げるか、国債発行で将来から借金するしかなくなっていると述べ、国家をどう経営するかという点で、日本の特異性を指摘しています。
第3章は「21世紀の新パラダイムと日本」です。
p.118 から、財政出動によって実体経済に影響を与えようとするケインズ政策などのマクロ政策では経済がどうにもならなくなったと説きます。新鮮な見方でした。
pp.124-127 では、経済がサイバー化し、ジャスト・イン・タイム方式が普通になり、経営のしかたが変わってしまったと述べます。サイバー経済では無料が基本ということも見逃せないでしょう。
p.139 では、日本にホームレス・マネーが来ないことの契機がブルドック・ソース事件だったとしています。これによって世界のマネーがぱったり日本に入ってこなくなったというわけです。
p.162 では、大前氏のアイディアで日本航空をJR東日本に買ってもらったらどうかという大胆な提言をしています。陸と空の機能的融合でおもしろいことができるとしています。(民主党はそういう発想がないからダメだという文脈ではありますが。)
この第3章は、いろいろなアイディアにあふれていて、一番おもしろい章のように思いました。
第4章は「新興国市場とホームレス・マネー活用戦略」です。
日本と外国のあり方の違いの典型的な例として、p.227 では、日本の首長は永田町に陳情に行くのに、中国の各市長は自分の市を世界に売りこもうとし、日本に来るときも市の会社の社長を数百人単位で連れてくると述べます。何という発想の違いでしょう。お金の集め方、使い方の根本的違いを感じてしまいます。
本書は、全体として、これからの日本のあり方を述べています。こういうことが実現すれば、明るい未来がありそうで、日本も元気になるのですが、今の政治の状況を見ていると、とてもそんなことは望めそうにありません。
本としておもしろいし、ためになると思いますが、それを鏡にして日本の政治の現状を見ると、いよいよがっかりせざるを得ません。