乙が読んだ本です。
毎月定額の積立投資を勧める本です。簡単にいえばドルコスト平均法です。
ドルコスト平均法は、理論的には得でも損でもない方法ですが、著者によると、これが一番いいとのことです。
定期的な収入のあるサラリーマンには、現実的には、積立投資がベストでしょうが、理論的に優れているわけではありません。
その意味では、少しだけミスリーディングかもしれません。読者は、あたかも、どんな場合でも積立投資がベストであるかのように誤解しがちだということです。
タイトルの「半値になっても儲かる」はインパクトがあります。実際にはどういうことかというと、10,000 円の基準価額でスタートし、7年後に 2,000 円まで下がり、10 年後に 5,000 円に回復した場合を考えています。
グラフを参照してください。
この場合、10年間の積立総額の 120 万円が 1,392,397 円になったということで、16% 増えたというわけです。
このシミュレーションは正しいです。乙も検算して確認しました。
こういうシミュレーションを見ると、なるほど、積立投資は有利だと思えますが、ポイントは、投資のはじめのころは投資金額が小さいので、基準価額が下落しても最終的な投資成績には大きな影響はないのに対して、投資の終わりのころは投資金額が大きくなっているので、基準価額の上下を大きく反映するということです。
投資は、10年で終わりではありません。仮に、あと1年長くして、11年としましょう。10年目で 5,000 円まで回復したものが、11年目で 4,300 円まで下がったとします。こんな話は本書には出てきませんが、シミュレーションを1年間延長するだけで計算できます。
7年間で8割減という「実績」のあるファンドならば、1年で 14% 減などというのはよくある話でしょう。
計算してみると、132 万円の積立額に対して、11年目の現在価値は 1,307,942 円ということで、成績は -1% ということになります。
つまり、だんだん投資金額が大きくなってくると、少しの基準価額の増減で現在価値は大きな影響を受けるわけです。
だからといって、積立投資がダメだと主張するものではありません。積立投資でいいと思います。しかし、本書は、各種シミュレーションのうち、比較的うまくいく場合の例を多数示すようにしていて、p.52 のように、損をするパターンもありますが、全体としては少な目です。その意味で、ミスリーディングかもしれないということです。
なお、p.202 には「全世界で【中略】60億人で「つみたて投資」をしたら、素敵だと思いませんか?」とあり、失礼ながら、乙は思わず笑ってしまいました。著者は全世界の人口を基準にして考えているようですが、投資ができるほどに余裕があり、積立投資ができるように定期的な収入があるのは、先進国に住む一部の人間に限られていると思います。