実は、乙は著者からこの本を寄贈していただきました。(だからといって、単純に本書を持ち上げる話を書くつもりはありませんが。)
基本は、「2世代マネープランニング」にあります。単純にいうと、30代の人に対して、親のマネープランニングと自分のそれと、両方を考えるようにしようということです。
p.33 には「2世代マネープランニングとは、あなたにできる最高の親孝行なのです!」とありますから、著者が信念を持って、こう主張していることがわかります。
乙は、2世代マネープランニングという考え方自体はよいものと思いました。しかし、親世代がきちんと考えていれば、それで大丈夫なはずです。むしろ、30代の子供世代は、働くことに忙しく、マネープランなどは考えている時間的余裕がないかもしれません。乙の場合も、30代の息子がいますが、もしも、息子から2世代マネープランニングが提案されたら、「そんなの必要ない!」というでしょう。自分なりにもう考えているからです。いや、2世代分を考えているわけではないけれど、自分たちの老後までを考えてプランしておけば、それで十分で、息子世代は息子世代で自分で考えればいいと思います。遺産が入った時点で考えてもいいでしょう。それまでに、さまざまな形で乙が息子たちに対する「投資教育」をしなければなりませんが、それは日常的な会話の中でも十分可能だと思います。
乙のような、親の立場の人間からすると、本書に書かれていることはわかりきったことで、内容的に不満が残ります。30代の人で、かつ、親が投資などに無関心な人には有用な面もあるかもしれません。
p.38 では、将来の(定年までの)給料の予測が出てきますが、こんなことわかるものでしょうか。
乙は、若いころは公務員だったので、俸給表に従って給料をもらっていたはずで、したがって調べれば将来の給料がわかったはずですが、一度も調べもしませんでした。庶務課の給与担当者が計算を間違えなければ(そして、計算はコンピュータ化されているので、ほとんどそういうことはあり得ませんが)、しかるべき給料をしかるべくもらうだけでした。
しかし、現在の民間の企業の給料は、なかなか将来予測が難しいと思います。雇用や給料のあり方が、単なる終身雇用・年功序列ではなくなりつつあります。
しかるべき年齢になって、後から若いころの給料を振り替えれば、そうだったと(なつかしく)思いますが、若いころ(30代)に、40歳で○○万、50歳で○○万くらい給料がもらえるだろうなどとは予測できないのではないでしょうか。
もしも、そういう予測ができたとしても、給料が増えると同時に教育費や住居費などがかかるようになってくるわけで、そんなのを踏まえてマネープランを作っても、実際とはかなり違ったものになるのではないかと思います。
本書を読んで、一番違和感があったのはタイトルです。子世代が親世代のスネをかじる話はほとんど出てきません。あくまで2世代マネープランニングが話の中心です。この点で、タイトルはミスリーディングです。まあ、2世代マネープランニングをすれば、結果的に子世代が親世代のスネをかじることになっているのかもしれませんが、……。
本書は、全体に着実平易な記述がされています。しかし、どこまで有効か、若干疑問に思う面もありました。6章の相続の話などはわかりやすく、現実的でした。しかし、5章の投資の話はやや不満でした。7つの金融商品を使い分ける主義のようですが、7分散でいいのでしょうか。国内と海外の株式と債券は標準的ですが、それに加えて、国内 REIT と海外 REIT とコモディティを加えています。このあたりは、正解がないし、考え方によっていろいろ変わってくるものなので、単純に7分散を説いているところには疑問を感じました。
本書は全体にわたって、1段落が1〜2行で構成されています。ちょっと段落が短く、乙は読みにくい印象を持ちました。今の若い人は、こういう改行が多い文章を好むのでしょうが、……。
参考記事:
http://kaeru.orio.jp/blog/2011/08/book_34.html
ラベル:小屋洋一 2世代マネープランニング