同じ著者の『ヘッテルとフエーテル』
2010.4.19 http://otsu.seesaa.net/article/146977431.html
を読んだことがあったので、ちょっと気になって読んでみました。
童話仕立てで10個の話が出てきます。
その1 検索エンジンの表示が社会に大きな影響を与えている話
その2 文芸賞がどのように選ばれ、運用されているかという話
その3 流行は、誰かが意識的に作っている場合があるという話
その4 世界の貧困層への寄付の一部が別の用途に使われている話
その5 マンションを買って損をする話
その6 不動産の談合の話
その7 保険(会社)の話
その8 天下りの話
その9 試験でゼーリシになった人がいじめられる話
番外 国家破産の話
童話仕立てとはいえ、子供が読んでも理解できないでしょう。いろいろな企業や政治家の名前が、正式なものでなくかなり形を変えて登場します。それが何を指しているかがわからないと、おもしろくも何ともありません。それがわかるということは、日本社会に関するある程度の知識がある人ということになります。
それぞれの話は、業界の裏話的要素があり、おもしろく読めます。しかし、フィクションになっているので、迫力はありません。著者のせっかくの知識が活かされていないように思います。
内容は、もっともだと思うところが多かったのですが、乙が、ちょっと違う考え方をしているのはその4の寄付の話です。
某寄付集め団体の例が出てきますが、183.5 億円を集め、157 億円が海外にある本部に送金され、26.6 億円が活動費になっているということです。著者は、この活動費でりっぱなビルなどを持っていることを書いていますが、集めた資金の 15% ほどの経費率と考えれば、そんなものではないでしょうか。乙は、寄付をした全額が寄付先に行くとは考えていません。経費率が 50% くらいのこともあるのではないかと思っています。
経費率を下げることは重要です。しかし、普通の個人が年収の1%程度を寄付するとして、経費をかけずにどこかに寄付をするというのはなかなかむずかしいことです。1億円を寄付する場合は、手段もあるでしょうが、1万円では、実質的に寄付集め団体を経由するしか手段はないのではないでしょうか。そこで一部を抜かれてもしかたがないと思います。
もう一つ、番外編(special volume)も、「おや?」と思ったところです。預金封鎖と新円切替が起こるという話です。実際に 1946 年に日本であった話ですが、今後、こんなことが日本で起こるのでしょうか。政府が何をするのかはすべて国会で決められるようになっています。国会の議決なしに政府が個人のお金を巻き上げるようなことができるのでしょうか。国会で議論したら、議論の中身が公開されますから、預金封鎖も新円切替も意味をなさなくなります。まさか、1日で提案から可決まで行って、即日実施などということになるのでしょうか。そんなことをしたら、今まで政府が国民に説明してきたことは何だったのかということになります。こんな案に賛成した国会議員は次の選挙で全員が確実に落選します。そんな危険をおかして、国会議員がこんな決定をするものでしょうか。乙はありえないように思うのですが、……。
ラベル:マネー・ヘッタ・チャン