2011年11月21日

藤巻健史(2011.6)『マネー避難』幻冬舎

 乙が読んだ本です。「危険な銀行預金から徹底せよ!」という副題がついています。
 今までにも藤巻氏の本はおもしろく読んできました。このブログを検索すると、以下のような本を読んでいます。

2010.11.8 藤巻健史(2010.8)『日本破綻』朝日新聞出版
http://otsu.seesaa.net/article/168656410.html
2010.6.22 藤巻健史(2010.3)『日本破綻』講談社
http://otsu.seesaa.net/article/154037696.html
2009.6.20 藤巻健史(2009.5)『100年に1度のチャンスを掴め!』(PHPビジネス新書)PHP研究所
http://otsu.seesaa.net/article/121785435.html
2007.8.24 藤巻健史(2007.7)『マネーはこう動く――知識ゼロでわかる実践・経済学』光文社
http://otsu.seesaa.net/article/52516511.html
2006.6.18 藤巻健史(2003.10)『藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義』(光文社新書)光文社
http://otsu.seesaa.net/article/19423811.html
2006.6.13 藤巻健史(2003.11)『タイヤキのしっぽはマーケットにくれてやる!』日経ビジネス人文庫
http://otsu.seesaa.net/article/19199262.html
2006.6.10 藤巻健史(2004.7)『藤巻健史の「個人資産倍増」法』講談社+α文庫
http://otsu.seesaa.net/article/19069474.html
2006.4.24 藤巻健史(2006.3)『藤巻健史の5年後にお金持ちになる「資産運用」入門』光文社
http://otsu.seesaa.net/article/16965888.html
2006.4.21 藤巻健史(2005.11)『直伝 藤巻流「私の個人資産」運用法』講談社
http://otsu.seesaa.net/article/16834359.html

 今回の本も、今までと同様の主張が書かれています。
 目次は以下の通りです。
Part 1 日本の財政はここまで悪化している!
Part 2 分不相応に贅沢だったこれまでの生活
Part 3 震災後、日本経済はどう動いたか
Part 4 電力不足は経済にどう影響するか
Part 5 財政破綻に拍車をかける大震災
Part 6 国債・円・株の暴落は避けられない
Part 7 日本経済はこれからどうなるか
Part 8 豊かでなくとも、豊かに生きる
Part 9 危険な銀行預金から撤退せよ!
Part 10 日本経済復活に向けて何をするべきか
Part 11 日本経済復興へのシナリオ
Part 12 円が暴落した後、日本は復活する
 何だか、目次を見ていると、本の内容が大体推測できるように思います。そして、その通りです。
 結論からいえば、藤巻氏は外貨への分散投資を説いています。そして、日本は円安になると予想しています。確かに、円安になれば、日本経済はうまく回りそうに思います。
 意図的に円安にしなくても、日本の財政破綻という形で、結果的にそのようなことになるのかと思います。しかも、その場合は、暴力的なほどに急激な円安が起きます。藤巻氏の意見もそれに近いのでしょう。それに備えて、今から外貨建ての資産を増やしておくべきだという話であれば、確かにもっともなことです。
 円を銀行預金に預けておくだけでは危ないというのはその通りです。しかし、すでに外貨建ての資産のほうが円建て資産よりも多くなっている乙のような人間には、本書が説くことはある意味で当たり前すぎるようにも思います。
 本書は、海外分散投資などに目を向けてこなかった人向けに書かれたものなのでしょう。

 問題は、日本の財政破綻がいつ起きるのかです。乙の勝手な予想では、今のままでは、数年から10年程度で起こりそうな気がしています。そういう事件が起こらずに、円高がずっと継続していく可能性もありますが、それが何十年も続くことはないと思われます。あくまで乙の勝手な予想ですが……。


ラベル:藤巻健史
posted by 乙 at 03:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月14日

FXですごい実績をうたう全自動売買ソフト

 乙のブログの読者(ちゃたさん)からコメントがあって、
http://otsu.seesaa.net/article/167423181.html
以下のようなおたずねがありました。

>FXの潟宴Cズワン さんの
>Bee Com という商品も気になっていますがご存じでしょうか?
>メール登録すると毎日の取引の決算を見ることがでくるのですが、お値段がこれまた、、、
>お時間ある時で全然構いませんのでどのように感じるかアドバイスくださいませ。
>お値段はるので失敗したくないなあと。

 乙は、現在、FXには投資しないことにしています。
 したがって、その意味では「やめておくほうがよい」ということになります。
 FX自体に投資しないと決めているので、それ以上語る必要はないのですが、ついでに、ちょっとどんなことを感じるかを書いておきます。
 以下は、http://www.bee-com.jp/ (およびその下のページの一部)を眺めただけでの感想や判断ですので、あまりあてにしないように願います。

(1)ソフトを販売するという方針がおかしい
 このソフトが本当に年利81%の実績があり、FX取引に有効ならば、開発者は、その全自動売買ソフトを他人に販売するなんてバカなことをするのでなく、開発者の手元で完全に秘密にしておき、開発者自身が大量の資金を投入してFXのデイトレードをするべきです。きっと大儲けすることができます。
 逆に言えば、この会社は、自分で大量の資金を投入して年利81%儲けるよりも、他人にこのソフトを販売する方が儲かると判断しているから販売しているわけです。ということで、年利81%も儲かるはずはないと思います。

(2)年利実績81%という数値があやしい
 全自動売買ソフトということですが、年利実績81%というのは、あやしいと思います。
http://www.bee-com.jp/jisseki.html
によれば、過去10年間のバックテストで81%を出しているとのことです。
 しかし、バックテストは、過去10年間の値動きに合わせて計算するものですから、過去10年間には当てはまっても、今後の動向に当てはまるとは限りません。
 なお、このページには「BeeComシリーズは10年間にのぼるバックテストにより、リーマンショック、サブプライムローン、ギリシャ問題など相場が急落した際にも対応し、長期的に極めて安定した資産運用が可能である事を証明しました。ロジックを常時更新しておりますので、今後5〜10年以降も最新のBeeComシリーズをご使用頂けます。」とあります。あくまで、ある一定のロジックで過去10年間運用していたとしたら、こうなっていたはずだというのがバックテストですから、ロジックを常時更新していくと、バックテストは無効になります。

 ちなみに、理論的にいえば、FXはギャンブルなので、儲かりません。しかし、(レバレッジもよりますが)FXはリスクが大きいので、大きく儲かることもあれば、大きく損をする場合もあるといったところでしょう。

(3)ソフトの価格が高すぎる
 このソフトの価格が、どこに書いてあるのか、よくわかりませんでした。もっとわかりやすく価格を表記するべきでしょう。
 それはともかく、「特定商取引法に基づく表記」
http://www.bee-com.jp/houki.html
のところに価格が書いてありました。それによれば、
  「BeeCom」ソフト代金:680,000円(税込)
  「BeeComEX」ソフト代金:798,000円(税込)
  「BeeComMINI」ソフト代金:298,000円(税込)
とのことです。他に、サーバー管理料金年額3万円などがかかります。
 ソフトの価格は、高い/安いを一概にいうことはできませんが、乙の感覚では、いかにも高いと感じます。
 これを購入して、結果的にペイするには、一体いくら資金をつぎ込めばいいのでしょうか。理論的にはペイしません。
posted by 乙 at 14:03| Comment(1) | TrackBack(0) | その他の投資 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月12日

笹子善充(2010.11)『はじめての海外ファンド投資マニュアル』実業之日本社

 乙が読んだ本です。
 タイトルに「はじめての〜」とあるので、海外投資の入門書かと思って読んでみました。しかし、どうもそうではなさそうです。
 目次は以下の通りです。
  CHAPTER 1 あなたはそれでも日本で資産を運用しますか
  CHAPTER 2 日本に一番近い国際金融センター 香港
  CHAPTER 3 海外に銀行口座を開設しよう
  CHAPTER 4 これだけは知っておきたい! 海外ファンド活用マニュアル
  CHAPTER 5 投資の現場最前線 突撃! 海外投資体験談
  CHAPTER 6 究極のキャピタルフライト 香港移住のススメ
 著者は香港在住で、各種投資コンサルタントであり、自らも投資を実践している人だそうです。
 読んだ後で、この本は、どんな人が読者対象として想定されているのか、わからなくなってしまいました。
 たとえば、p.186 以降には、香港と日本の税金の比較が載っています。所得税は日本が最大40%に対して、香港は15%。住民税は日本が10%に対して、香港はゼロ。相続税は日本で最高50%、香港はゼロ。贈与税も同じ。というわけで、日本を脱出する人が後を絶たないということです。
 それはそうですが、しかし、所得税が40%の人というのは、課税標準額が1800万円以上の人で、はっきりいえば富裕層、つまり金持ちです。相続税が50%というのも、課税標準(基礎控除後の金額)が3億円を越える人で、これまた金持ちです。金持ちは、カネを生み出す仕組みを持っています。単なる会社勤めのサラリーマンでは、なかなか金持ちにはなれません。もしも、会社の経営者だとすると、そのような所得を生み出す源泉が日本にあることになり、香港に移住することはそのような源泉から離れることになり、簡単にできることではありません。
 本書は、そのような(日本の税金が高いと思うような)金持ちを読者対象にしているようですが、そういう人は、すでに投資などをはじめているでしょうから、本書に出てくる解説が必要なのかどうなのか、大いに疑問に思います。
 本書中の記述で気になった点をいくつか書いておきます。
 p.002 香港の銀行で日本円を米ドルに両替すれば手数料が安いとのことです。日本の銀行に比べれば、確かに香港の銀行の方が安いのですが、それでも、両替手数料は「安い」といえるレベルではありません。こんなことで円安をねらおうなどと思っても、ダメです。銀行に裸にされてしまいます。もっと安く両替できるようでなければいけません。
 p.054 タックスヘイブンについて、直訳すると「税金天国」だとしています。著者は heaven(天国)と haven(避難所、避難地)を誤解しているようです。こういうミスをしている人がタックスヘイブンの利用を勧めていても、それは信じられないというレベルです。
 p.088 海外の銀行に最初に口座を開設する際には、現金を100万円ほど口座に入金しておくといいとあります。ここから海外ファンドなどを買うためです。しかし、このようにすると、実際に海外ファンドを買う際に、外貨に両替しなければなりません。金額にもよりますが、100万円程度(あるいはそれ以上)の資金では、両替手数料が海外送金手数料よりも高くなります。つまり、送金手数料を節約するために、こういうやり方をしても、トータルではあまり節約になっていないということです。
 p.090 海外送金について、日本の通常の銀行からの送金では1回につき最低1万円近くかかるとしています。著者は、香港在住ということで、日本の銀行からの海外送金の経験があまりないか、ずっと以前の経験しかないのではないかと思います。実際上、手数料 5000 円程度で送金できます。
 p.160 金(gold)投資を行う場合は、(日本で行う)円建ての取引よりも(海外で行う)米ドル建ての方が効率がよいとしています。昨今は、円高が進んでいるため、国内金価格はあまり上昇していないという話です。これは著者のまったくの勘違いでしょう。円で投資しても、米ドルで投資しても、金は金です。米ドル建てで一見金の上昇率が高いように見えても、円高で円建て価格が上昇していないように見えても、両者は同じことです。
 p.168 「人民元ETFで大きなリターンを狙え」ということで、p.169 では人民元の米ドルに対するレートの上昇のカーブがグラフで示されています。米ドル建てで人民元ETFを購入すると、大きなリターンが期待できるとしています。しかし、グラフをよく見ると、2005 年から 2010 年までで 25% ほどの上昇にすぎません。この期間の円高は、1ドル 120 円が1ドル 80 円くらいになっており、3割以上の上昇になっています。米ドル建てで大きなリターンがあるように見えても、円建てではさほどでもないということになります。いろいろな通貨で投資することを基準に考えると、人民元に投資したからといってリターンが大きいとはいえません。
 p.191 BVI(ブリティッシュ・バージン諸島)にペーパーカンパニーを設立する話が出てきます。確かにペーパーカンパニーは簡単に作れるでしょう。しかし、実際には、ペーパーカンパニーを作ったして、その後が問題です。そのペーパーカンパニーをどう活用するといいのでしょうか。単に法人税が安いというだけで、具体策は何も書いてありません。各自で考えよということでしょうか。何かの事業をする場合は、そういう会社があるといいのはわかりますが、普通のサラリーマンだったら、活用法はあまりなさそうです。いや、乙が知らないだけかもしれませんが。

 本書は、全体として、あまりおすすめではありません。海外ファンドに投資すること自体の問題もありますし、本書ですすめる具体的投資先は、イマイチのように思います。そして、上記のように、著者の考え違いがあちこちに散見され、この人にコンサルタントを依頼していいのだろうかと疑問に思えます。


posted by 乙 at 09:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする