2012年02月29日

若林栄四(2011.7)『デフレの終わり』日本実業出版社

 乙が読んだ本です。「2012年に「千載一遇」の買い場がくる」という副題がついています。
 タイトルに引かれて読み始めました。
 読み始めてすぐに、驚きの説明が出てきます。序章ですが、「相場は「黄金分割」で定められている」ということです。で、チャートなどは、水平線に対して36度の角度をもつラインが重要だとのことです。相場が急上昇するときは72度だそうです。(p.21)角度なんて、縦軸/横軸に何をとるか、どれくらいの間隔で目盛りを振るかで変わってくるものです。そんな説明なしで、いきなり36度といわれても、まったく無意味です。
 各種サイクルについても、27(年)とか162(ヵ月)などという数字が重要だとのことです。(p.31)
 なぜこの数字が重要か、なぜこのような数字に従って経済が動くのか、まったく説明ができていません。
 著者は、本気でこんな数字に頼って投資を考えているのでしょうか。
 第1章の50ページほどを読んで、説得力がまったくないことで、乙はこの本を読むことを止めました。
 巻末の著者紹介を見ると、1966 年、京都大学法学部卒業です。金融畑一筋で 1996 年に退職したとのことです。この業界には、こんな人がいるのだと知って、ちょっと恐くなりました。


ラベル:若林栄四
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2012年02月26日

佐々木融(2011.10)『弱い日本の強い円』(日経プレミアシリーズ)日本経済新聞出版社

 乙が読んだ本です。
 日本経済はダメダメだといわれているのに、円高です。円高ということは、円が強くなっているということです。なぜ、こんなことになるのでしょうか。これを説明したのがこの本です。
 新書サイズで読みやすく、しかし、中身はしっかりしていて、読んでいて納得感があります。
  第3章 国力が為替相場を決めるわけではない――長期的な為替相場変動の要因――
 ここでは、長期的に購買力平価が成り立っていると説きます。
  第4章 円に買われる理由などいらない――中期的な為替相場変動の要因――
 ここでは、投機筋がどうこうという話ではなく、貿易収支が重要だと説きます。
  第5章 強い雇用統計で売られるドル――短期的な為替相場変動の要因――
 ここでは、円がどうこうという話よりは米ドルが(アメリカが)どうなっているかで相場が決まると説きます。
 これら三つの章で為替の問題がクリアーに説明されます。とても納得できます。
 関連しておもしろかったのが
  第8章 介入で「円安誘導」などできない――介入のメカニズムと効果――
です。日銀が為替相場に介入して、円安にしようとして、円を売ってドルを買っていますが、そんなことにはまったく効果がないと説きます。むしろ、外貨準備として大量のドルを積み上げる結果になっています。その資金は、国債を発行して、いわば借金しているわけです。
 日本は、こうして大量のドルを積み上げて、円高/ドル安で大損をしているわけですから、結果的にアメリカに貢いでいるようなものです。日本はアメリカの植民地か属国なんでしょうか。
 介入しても円安にならないならば、ドルを売って円を買って(円安介入の反対をして=円高介入(?)をして)も効果がないはずで、そんな大量に積み上がったドルはさっさと取り崩すべきだと思いますが、どんなでしょうか。
 本書では、pp.220-221 で、円売り介入は円買い介入より楽であると述べ、数十兆円程度の大量の円買い介入をすると、資金が尽きてくるので、投機的な円売りが始まって円の下落がさらに加速してくると説きます。
 なかなかむずかしいものですね。

 何はともあれ、為替問題を明確に説いている点で、本書は読むに値する本だと思いました。


ラベル:佐々木融 円高
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2012年02月24日

鈴木亘(2010.9)『財政危機と社会保障』(講談社現代新書)講談社

 乙が読んだ本です。
 今の時代にぴったりの本です。
 日本の財政危機と社会保障とが関連する問題であることがよくわかります。
 いくつか、特におもしろかったところを抜き出しておきましょう。
 p.80 では、菅首相のいう「強い社会保障が成長戦略だ」が間違いであることが明確に書かれています。2010年当時、こんなにはっきり間違いを指摘した人がいたでしょうか。いたかもしれませんが、乙は知りませんでしたので、とても興味を持ちました。
 p.141 では、技術的に年金は破綻しないこと、一方、p.145 では、政治的に年金が破綻しうることを述べています。なるほどと思いました。今の政治家たちのアホさ加減を見ていると、これこそが日本の危機であるという思いを強くします。これから日本がどうなるのか、心配が募ります。
 本書は、全体として、日本の財政危機と年金・医療・介護・保育所などの問題をわかりやすく説くものです。一読することで、日本のこれらの問題をどう考えるべきか、正しい視点を得ることができます。

 それにしても、本書は、2010年9月刊行の本なのに、「菅首相」などが出てきて、古さを感じさせます。たった1年半前なのにです。日本では総理大臣がころころ変わっていて、日本という国は、なんて安定感のない国なんだろうと思います。


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2012年02月12日

石角完爾・田代秀敏(2010.12)『日本国債暴落のシナリオ』中経出版

 乙が読んだ本です。
 日本国債がデフォルトすることを予測しています。なぜそうなるかといえば、日本国債を買う人がいなくなるからです。そして、第4章では、国債が暴落することで、日本国民の生活がどうなるかを描いています。円安、インフレになり、政府、企業、金融機関、農業、年金、公的サービスがどうなるか、変化を予想しています。
 記述はおおむね妥当でしょう。
 一番の問題は、このような日本国債の暴落に備えて、では何をすればいいかということです。本書では第5章で若干の記述がありますが、大したことは書いてありません。基本的には、それを受け止めるしかないというスタンスです。
 投資の観点からは、分散投資をすすめています。まあ当たり前でしょう。しかし、p.203 では「損切りのルールを守る」などということが出てきて、「あれ?」と思ってしまいます。
 それにしても、国債が暴落するとは、一体、いつごろの話なのでしょうか。もしも、今のままの日本のあり方が継続するとして、数年先でしょうか。10年先でしょうか。あるいはまた20年ほど先なのでしょうか。それによって影響が全然異なります。しかし、本書にはそういう時期の話は一切出てきません。なぜなのでしょうか。
 p.18 では、他の記事の引用で「今から50年以内に……」というようなことがちらっと書いてあるのですが、50年後ならば、乙は当然死んでいますから、どうでもいい話です。少なくとも心配するような話ではありません。
 本書を読んで、わかったような気になる一方で、どうにもわからなくなりました。


posted by 乙 at 11:27| Comment(4) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする