日本経済はダメダメだといわれているのに、円高です。円高ということは、円が強くなっているということです。なぜ、こんなことになるのでしょうか。これを説明したのがこの本です。
新書サイズで読みやすく、しかし、中身はしっかりしていて、読んでいて納得感があります。
第3章 国力が為替相場を決めるわけではない――長期的な為替相場変動の要因――
ここでは、長期的に購買力平価が成り立っていると説きます。
第4章 円に買われる理由などいらない――中期的な為替相場変動の要因――
ここでは、投機筋がどうこうという話ではなく、貿易収支が重要だと説きます。
第5章 強い雇用統計で売られるドル――短期的な為替相場変動の要因――
ここでは、円がどうこうという話よりは米ドルが(アメリカが)どうなっているかで相場が決まると説きます。
これら三つの章で為替の問題がクリアーに説明されます。とても納得できます。
関連しておもしろかったのが
第8章 介入で「円安誘導」などできない――介入のメカニズムと効果――
です。日銀が為替相場に介入して、円安にしようとして、円を売ってドルを買っていますが、そんなことにはまったく効果がないと説きます。むしろ、外貨準備として大量のドルを積み上げる結果になっています。その資金は、国債を発行して、いわば借金しているわけです。
日本は、こうして大量のドルを積み上げて、円高/ドル安で大損をしているわけですから、結果的にアメリカに貢いでいるようなものです。日本はアメリカの植民地か属国なんでしょうか。
介入しても円安にならないならば、ドルを売って円を買って(円安介入の反対をして=円高介入(?)をして)も効果がないはずで、そんな大量に積み上がったドルはさっさと取り崩すべきだと思いますが、どんなでしょうか。
本書では、pp.220-221 で、円売り介入は円買い介入より楽であると述べ、数十兆円程度の大量の円買い介入をすると、資金が尽きてくるので、投機的な円売りが始まって円の下落がさらに加速してくると説きます。
なかなかむずかしいものですね。
何はともあれ、為替問題を明確に説いている点で、本書は読むに値する本だと思いました。