乙が読んだ本です。
必ずしも従来は経済学的に考えるとは思われなかったようないろいろな問題について、考えてみたというお話です。しかし、単なるエッセイ集ではなく、巻末に詳しい参考文献があります。本文中のすべての出典がわかるのではないかと思われます。つまり、本書の記述には具体的な裏付けがあるということです。このあたり、意外にしっかりしています。
扱われる議論の中身はさまざまです。乙は、p.23 からの売春婦の話がおもしろいと思いました。いったいいくらで体を売るのか、その値段を売春婦の側でつり上げたら、客の反応がどう変わるかということが書いてあります。実際に、町で商売をしている売春婦にインタビューをして書いているようです。
p.176 からは、障害を持つ人を雇うかという問題が出てきます。アメリカでは、障害を持つ人を差別しないように作られた法律があるそうです。しかし、そういう法律があるために、経営者は、障害を持つ人を簡単にクビにできないと考えて、最初から雇用しないようになってしまったというのです。法律は、意図通りには機能しないのですね。
p.267 からは終章ですが「サルだってひとだもの」がおもしろいと思いました。疑似コインを使うようになったサルの実験です。疑似コインがエサの代わりになり、それをオスがメスにプレゼントすることでサルがセックスをする、つまり、売春が行われるというあたり、実に興味深い記述でした。
ともあれ、気楽に読めるスタイルで、さまざまな問題を常識とは異なる側面から読み解いてくれます。読んでいて楽しい1冊です。
ま、しかし、読んだからといって経済学に詳しくなるわけではありませんので、ご注意を。