2012年05月28日

藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「もう代案はありません」という副題が付いています。ちょっと副題の意味がわかりにくいですが、今の資本主義の仕組みが最善であって、これを上回る仕組みは存在しないということです。いろいろ問題はあるものの、それを改善しつつ、何とかやりくりしていくしかないということです。
 内容は、章目次でだいたいわかります。
第1章 マネーは踊り続ける
第2章 小一時間でわかる経済学の基礎知識
第3章 マクロ経済政策はなぜ死んだのか?
第4章 グローバリゼーションで貧乏人は得をする
第5章 もう代案はありません

 一読して、納得する内容でした。図表なども適当に含まれていてわかりやすかったと思います。
 この本が「経済学」の本かどうか、わかりませんが、少なくとも、日本を中心に世界を見る「見方」が述べられており、しかも、その見方は妥当であると思えました。
 日本の現状をどう見るか、あれこれを関連付けてきれいに解釈してくれています。一読して、すっきりした気分になりました。
 日本の閉塞状況を打ち破るためにも、著者の指摘する現状の問題点などを知ることはとてもいいことだと思います。日本の今後を考える必要のある政治家など、本書を読むといいのではないでしょうかね。
 しかし、既得権の圧倒的に強い日本社会を見ていると、現状の問題点を知ったとしても、それを改善することなんてできるんだろうかという気持ちにもなります。
 それはそれでまた別の話なのかもしれませんが……。


タグ:藤沢数希
posted by 乙 at 04:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月26日

きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わってきました。』日本実業出版社

 乙が読んだ本です。長いタイトルですが、タイトルが本書の中身を十分語っています。
 フリーのライター&イラストレーターである著者が税理士に税金について質問をし、税理士が回答する形で書かれています。
 サラリーマンを対象にした節税の話は(需要が多いので)いろいろな本に書かれていますが、フリーランスの人を対象にした本は(サラリーマンよりは圧倒的に需要が少ないので)ほとんどないように思います。
 税金と社会保険の話から始まって、記帳業務の大切さを説きます。さらに、白色申告と青色申告の違いを説明し、青色申告をするように説きます。
 消費税についても書いてあります。1千万円を超える売り上げがあると消費税にも注意しなければなりません。本書では、フリーランスの人に対しては、手間を省いて簡易課税を推薦していますが、たしかにこれで十分なように思います。
 さらに、その後の話として、法人化も視野に入れていますが、このくらいの規模になると、フリーランスで働いているというよりは会社の社長として働いているわけですから、本書とは違った側面の知識が必要になるでしょう。しかし、それならそれでいろいろな本がありますから、そちらで知識を得るほうがいいと思います。
 最後に「税務調査」の話が書いてあります。実調率(実際に調査に入った比率)については、個人の所得税なら1%、法人だと6〜7%という統計が示されます。ずいぶん低いものです。
 岩松正記(2011.2)『個人事業、フリーランス、副業サラリーマンのための「個人か? 会社か?」から申告・節税まで、「ソン・トク」の本音ぶっちゃけます。』ダイヤモンド社
2012.4.21 http://otsu.seesaa.net/article/265912899.html
とは少し値が違いますが、まあ似たようなものです。
 ただし、乙は、所々に入るイラストが不要だと思いました。本文との重なりが気になります。また、話し言葉(対話調)で書いてあるのも、ちょっと冗長な感じで、これなら普通の書き言葉で書いてあるほうが読みやすいのにと思いました。
 とはいえ、税金について知りたい場合、全体としてまあ良書だと思います。


posted by 乙 at 06:36| Comment(0) | TrackBack(1) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月20日

山田順(2011.10)『資産フライト』(文春新書)文藝春秋

 乙が読んだ本です。「「増税日本」から脱出する方法」という副題が付いています。
 第1章は「成田発香港便」で、実際に現金を運んでいる人を取材しています。夫人と二人でバッグに500万円ずつ詰めて運んでいるような人ですから、普通のサラリーマンではありません。普通のサラリーマンなら、年収は数百万円のオーダーでしょうから、1000万円の現金を目にするようなことはなかなかないものです。
 p.28 では、普通のOLが香港の銀行に口座開設する話が出てきます。口座を開設するのは個人の考えですから、他人がどうこういうことは慎むべきですが、「普通のOL」ならば、わざわざ海外に持ち出すほどの現金を持っていることもないのではないかと思います。安易な気持ちで口座を開設しても、有効に活用できるのか、乙は心配になります。
 第2章は「震災大不況」で、3.11 の震災の後外資金融が東京を逃げ出したことを描いています。中でも、p.53 で、菅首相(当時)が浜岡原発の全面停止を要請したことを日本人の多くが評価していることをとりあげ、これに対して外国人投資家、そして日本人投資家も驚いていることが書いてあります。原発を停止して天然ガスを何十億ドルも購入して、電気料金を上げ、税金も上げるというやり方は、どうにもおかしいとしています。こんなことが積み重なって、外国人投資家も、日本人投資家も、日本を見限ってしまうのですね。
 p.56 から、歴史のアナロジーとして18世紀のポルトガルの例を引き、1755年のリスボン大震災で大きな被害が出てしまい、その後、街は復興したものの、産業は戻らなかったことを記述しています。今の日本と実によく似ています。
 第3章「海外投資セミナー」では、日本国内でさまざまな海外投資セミナーが開かれていることを書いています。ここでの「海外投資」は、海外に投資することではなく、(それを含みますが)海外で投資することです。
 第4章「さよならニッポン」では、富裕層が日本を捨て永遠のトラベラーになることを書いています。まあ日本の制度を見ていると、それはそれでしかたがないかもと思います。
 第5章「富裕層の海外生活」では、海外の富裕層を取材して書いていますが、あまりたくさん実例にあたっているわけでもないようで、やや迫力に欠けます。
 第6章「税務当局との攻防」では、武富士裁判や『ハリポタ』翻訳家の申告漏れ事件を取り上げ、オフショアが発展している様を描きます。
 第7章「金融ガラパゴス」では、日本のおかしな制度を指摘しています。
 第8章「愚民化教育」では、日本の教育全般の批判です。英語教育が特にやり玉に挙げられています。
 第9章「愛国心との狭間で」では、日本の税制などの不備を指摘するものです。
 全体として、まあよく書けていると思います。
 しかし、著者がいう「資産フライト」は、富裕層を念頭に置いているようです。一般のサラリーマンにはあてはまらないような話がたくさんあります。ただし、そういう富裕層なら、こんな本を読まなくても、実務的な相談相手がいることでしょう。となると、本書はいったいどんな読者を想定して書かれたのでしょうか。そう考えてみると、著者の立ち位置がだんだんわからなくなってきました。
 巻末の著者紹介を見て、すこしわかるような気がしました。著者は、光文社で雑誌や本の編集を手掛けてきた人です。一応関係者に取材して書いています。しかし、どうにも突っ込みが足りないような印象を受けます。なぜかといえば、著者が自分自身で投資をしていないからでしょう。経済学や金融などの知識もあやしいものです。乙の読後感では、不満が残る内容でした。
 週刊誌を読んでいるようなものだと思えば「不満」はないものと思います。


posted by 乙 at 15:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする