2012年06月10日

瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ

 乙が読んだ本です。「熟年日本男性のタイ・カンボジア移住事情」という副題が付いています。
 タイが中心でカンボジアも1割くらい記述されています。
 日本人男子高齢者がタイやカンボジアに移住(ないしロングステイ)していますが、そういう人たちが経験したさまざまなことを描いています。
 著者は映像ジャーナリストということで、多数の日本人にインタビューし、それをまとめて1冊にしています。
 出てくる話は、若い女性との恋愛・結婚、あるいは破局や詐欺が多く、次に、ビジネスをしていく上で騙された話もたくさんあります。
 個々のケースについて具体的に書いてあります。
 しかし、エピソードがあまりに多いので、読み進めるうちに、いくつかの話がこんがらがってしまうような感覚になりました。
 日本で結婚しなかった(できなかった)高齢男性が、タイで若い女性を得て幸せに暮らしている例もあるわけですが、彼女らが巧みに日本語を話すのは、そうすることで彼女らの(さらにはその親や親戚などの)生活が成り立っているからです。つまり、日本人高齢者は、どうみてもネギをしょったカモなのです。「財布がもてている」のが現実なのです。日本では普通の金額にあたるようなものでも、現地では相当な額になるので、それをねらう人々が活躍するわけです。厚生年金をもらっているような人もねらい目です。結婚して、先に男性が死ねば、その後、女性は遺族年金で暮らしていけばいいわけで、一生安泰です。そういう知識は現地の女性たちに行き渡っています。
 結婚・恋愛も、金とつながっています。儲け話に騙されるのも同根の話です。
 そんなわけで、やはり、アジアで暮らしていくのもなかなかむずかしいものだということになります。
 自分はどんな人生を送っていきたいのか、考えさせられる本でした。
 乙は、まだ年金をもらうような歳ではありませんが、本書に出てくる人たちの考え方がわかるような気がします。
 本書は、「定年後は海外でロングステイを」と考えている人には必読書になるでしょう。


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2012年06月09日

増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス

 乙が読んだ本です。
 一口で言うと、世界の経済を概観する本です。
 第1章は「全米市民もようやく目覚めたのか アメリカは財務省。ウォール街複合体に潰される!?」です。アメリカはいよいよ格差が大きくなっており、中間層が没落し、一部の人たちが富を独占し、多くの人たちが貧困にあえいでいる国です。それを具体的に記述します。
 第2章は「アメリカの金権社会は、荒療治でしか直せない」です。金融業界がいかに腐ってしまっているか、綿密に描きます。
 第3章は「悪夢と化したアメリカン・ドリームとこれから隆盛するジャパニーズ・ドリーム」です。平均寿命、エネルギー、ドル安政策、米国債など、マクロな目でアメリカ社会を見ていきます。著者によれば、アメリカは、あちこちに問題点大あり社会ということになります。
 第4章は「ほんとうに危ないのはドイツとイギリス 復活は永遠にありえないユーロ経済の真実」です。この章では、ギリシャ危機をはじめ、スペイン、イタリアの問題を取り上げ、フランス国債の下落の問題も扱います。そして、各国の抱える問題と、それが影響するドイツ・イギリスを取り上げ、ユーロ圏はどこもかしこも危機であり、もうどうしようもないとしています。
 第5章は「明らかに変調する中国 崩壊へのカウントダウンはすでに始まっている!」です。リーマンショック以来、中国経済がおかしくなっているというのです。共産党内部の問題、為替政策、外交や軍事の問題まで幅広く取り上げ、めちゃくちゃぶりを描きます。
 こうして、アメリカも、ヨーロッパも、中国も、問題を抱えて、どうしようもないという現状を述べた後、第5章「なぜかマスメディアは絶対報道しない 日本と金だけが一人勝ちする世界」が続きます。著者は、つまり、これからは日本と金(ゴールド)に投資するのがよいというのです。
 乙は、驚きました。普通に言われていることとまったく違います。
 一つのものの見方として、おもしろいと思いました。
 では、日本と金に投資するか。いや、話はそう簡単ではないと思います。著者の意見は意見として、そうではない見方もあるわけで、社会のありかたがおかしくても、それがそのままで経済的に発展していくことだってあると思います。世界各国でさまざまな問題があることはその通りだけれど、だからといって、そこに投資しないという否定的な態度を取る必要はないと思います。
 本書は、大いに危機を煽っていますが、ある意味ではパニック本的なにおいもしています。世界のこれからを予想することはむずかしいと思います。著者のいうことを信じていくのもいいですが、はずれることとだってあると考えておくのが無難な態度でしょう。


ラベル:増田悦佐
posted by 乙 at 07:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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