本書は中国経済をどう見るかを論じたものです。グラフや表がふんだんに使われ、それらに基づいた考察がなされるという論述スタイルで、信頼感があります。
序章では「奇跡の成長とバブル」ということで、中国の現状を短く表現しています。奇跡の成長を遂げたけれども、今はバブルだというわけです。
第1章「急速に少子高齢化する中国」では、一人っ子政策による中国の年齢別人口構成を見ていきます。中国は日本の25年遅れの状態だということです。バブルも25年遅れといえるのでしょうか。
第2章「中国はごく普通の開発途上国」では、投資額が異常に多い中国の変な仕組みを論じます。いずれにせよ中国を「開発途上国」とみれば、不思議ではないのかもしれません。
第3章「成長から取り残される農民」では、農民の貧しさを描きます。いろいろな統計資料を駆使して、中国政府が公表したくないところまで何とか探ろうとしています。これだけでも、中国がいかにいびつかが納得できます。
第4章「都市住民は豊かになったのか」では、都市の生活に焦点を当てます。すると、統計資料からでは、クルマを買ったり住宅を買ったりすることは困難のように思えるけれど、現実には売れているわけで、どうも、公の統計資料に現れない裏金(役人の賄賂など)がけっこうな量に達しているようだということになります。
第5章「中国解剖図」では、なぜ中国が奇跡の成長を遂げられたのか、その裏技を描きます。わかってしまうと、なあんだという感じになりますが、ここで描かれているような汚職が全国的に蔓延しているとしたら、中国人は幸せになれないような気がします。
第6章「中国共産党と国家」では、具体的な人数の推定を入れながら、共産党がどのように中国の支配者となっているかを描きます。
第7章「中国の「失われた20年」が始まった」では、無人マンションとかのバブルの影響を描きます。中国は、内需だけでは成長できないのですね。いよいよこれから問題が噴出するようです。
第8章「日本への影響」では、中国と貿易の比率が高い日本が中国のバブル崩壊によってどんな影響があるかを描きます。
一読して、中国の全体を把握できたように思います。投資家としては、こういう中国に関わり合いたくない気分にもなりますが、まあ、資金の一部は中国に突っ込んでおいたほうがいいのでしょうね。バブルが崩壊しない可能性もゼロではないわけですから。