高速道路無料化を説きます。
しかし、本質は、高速道路にあるのではなく、それを通じて日本の経済のあり方を考え、さらには、政治のあり方を考えるところにあります。
おもしろくて、乙は一気に読んでしまいました。とにかく、読むと気分が明るくなる本です。
こんなことが実現できたらいいなあと(単純ですが)思いました。山崎氏は大きなビジョンがあります。こういう人が総理大臣にでもなったら、日本の政治は根本から変わるような気がしますが、まあ、百年河清を待つような話でしょう。
高速道路無料化は、実際に実現可能な政策だと思いますが、乙がたった一つ心配なのは、かなり通行料が高い現在でも高速道路はしばしば渋滞があるのに、無料化したら、それこそ全線が渋滞だらけにならないのかという点です。用もないのに遠方に行く人はいないはずですが、一方で、高速道路を無料化したら、どう考えても利用者は増えるに決まっています。山崎氏も、使われない高速道路を造ることはムダであり、高速道路はみんなが使うことによって日本全体に大きな効果をもたらすものだとしていますから、利用者増は当然のことです。
高速道路無料化は、高速道路の一般国道化と同義ですから、そういう制度にしてクルマが集中したら、現在のような渋滞だらけの国道がもう1本増えるだけで、早く走れるという高速道路のメリットが全然なくなってしまいます。つまりは、高速道路が高速道路でなくなってしまうのです。
乙は、東京在住ですから、他の地域のことは知りませんが、東名・中央・関越などは、現在でも東京近辺ではかなり混雑しています。山崎氏は、首都高速や阪神高速は(混雑を防ぐために)有料のままにしようとしていますが、高速道路が首都高速に接続するあたりでは、無料化によって大量のクルマが押し寄せるように思います。5月の連休のときや、正月休みのときなど、現在でも高速道路にクルマの長い列が続き、テレビなどでも報道されますが、高速道路が無料化されたら、これがいっそうひどくなるでしょう。
本書中では、この問題に触れていませんが、きちんとしたシミュレーションが必要ではないでしょうか。
なお、1冊読む時間がない人は、「山崎養世の「東奔西走」」の中の「高速道路は無料にできる」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071009/137073/
を読むと、エッセンスがわかります。こちらなら、たった4ページですから、手軽に(しかも無料で)読めます。
山崎養世氏について、さらに知りたい人はブログなどへどうぞ。
http://blog.livedoor.jp/zackyamazaki/
http://www.yamazaki-online.jp/index.php
http://business.nikkeibp.co.jp/bns/bnclm.jsp?TOPID=135842
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また、山崎氏はブログもわかりやすい&面白いので、おすすめですよ。